美しさの新しい地平を切り拓く
SHISEIDO BEAUTY WELLNESS
Vol.3 研究・コミュニケーション篇 生活者ひとりひとりの文脈に入り込んで
2024年2月1日に発売した新インナービューティーブランド、「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS」の価値創造にかかわったメンバーに話を聞くシリーズ、第三回です。最終回は、生活者とどのようにつながりをつくっていくのか、その設計について、資生堂 インナービューティー事業部 グループマネージャー 久野慶一郎と、資生堂みらい開発研究所 新領域価値開発センター長の小杉浩章に話をききました。
「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS」とは、人の美しさを外見や「肌」のみではなく、肌、身体、心の調和が取れている状態こそが健康的で美しいと捉え、日々の生活を通じて、一人ひとりのここち良い独自の「健康美」の実現を目指したブランド。2024年2月に3商品ブランドを発売しました。
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●株式会社ツムラと共同開発した「TUNE BEAUTE(チューンボーテ)」
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●カゴメ株式会社と共同開発した「ROOTINA(ルーティナ)」
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●刷新した「The Collagen(ザ・コラーゲン)」
体感としての肌・身体・心のつながりを「見える化」する
インナービューティーアルゴリズム
―2024年2月1日に発売したSHISEIDO BEAUTY WELLNESS(以下SBW)ですが、おふたりはいつからどのように参画されましたか?
久野 私は、2023年の1月に着任しました。それまでは資生堂ジャパンで化粧品ブランドのブランドマネージャーをしていました。SBWではブランドローンチにあたってのコミュニケーションの構築、実行を主に担当しています。
インナービューティー事業部 グループマネージャー 久野慶一郎
資生堂みらい開発研究所 新領域価値開発センター長 小杉浩章
小杉 私は、約2年前、2022年に資生堂に入社して、現在はみらい開発研究所で食品、毛髪再生医療、コスメトロニクス(美容機器、診断機器)など、資生堂にとって領域を広げる研究を担当しています。入社直後にツムラさんやカゴメさんとの協業を知ったとき、資生堂の枠を超えた大きなプロジェクトに参加できることに非常にわくわくした記憶があります。
―美容の新領域に踏み出すにあたり、研究の進め方も特徴があったとか?
小杉 肌と身体、心の関係は誰しも体感では気づいていることです。その、わかっているようではっきりしていないことをサイエンスで解き明かし、理解し、活用できるようにすることが大きなチャレンジです。
みらい開発研究所では、従来からの仮説検証型ではなく、5年間で2500名以上の女性に協力を頂き集めた膨大なデータを解析し、身体と心がどのように肌とつながっているのか紐解いていきました。データ的に「ここは紐づいていそう…」と読み取れる瞬間があります。が、それは意味のない関連の場合もある。そのさまざまな関連について、データサイエンスと掛け合わせて本物かどうかを見極めていく。
―膨大なデータを、資生堂ならではの直観も含めて読み取るようなことでしょうか?
小杉 意味づけをするときに、長年肌を見てきた資生堂の専門的な視点や、培ってきたサイエンスが重要になります。資生堂のこれまでの知見が“ふるい”となって、本当に意味がある関係性、身体と心と肌の因果関係が浮かび上がってきました。それをSBW向けに整理したものを我々は“インナービューティーアルゴリズム”と呼んでいます。
久野 SBWではその“インナービューティーアルゴリズム”を使って、お客さまとのコミュニケーションを深めていきます。なぜ美しさは変化するのか、なぜ身体や心の変化が見た目に現れるのか。誰もが実感として持っている変化にサイエンスの裏付けがあることをご紹介すると、腹落ちするし、ブランドに対する信頼が芽生えるのではと考えています。この、感覚と納得の組み合わせは、資生堂のDNAであるアート&サイエンスのひとつのかたちではないかという自負があります。
インナービューティーアルゴリズムとは
生活者の文脈に入るブランドコミュニケーション
―なんとなく感じていることをきちんと理解できると、うれしいものですよね
久野 SBWの商品は体内に取り入れていただくものなので、裏付けに基づく確かなものであり、「このブランド、わかってるな」「このブランドからもっと情報を知りたいな」と信頼してもらうことが重要だと考えました。信頼できないと、商品を生活の中に取り入れて、それを習慣にしようとは思わないので。
―化粧品のコミュニケーションとの違いはありますか
久野 食品は、より生活、ライフスタイル全体に近いものです。だからこそ、いわゆる健康文脈の機能訴求をメインとしたサプリメントとは異なる、美の文脈に強みをもつ資生堂だからこそ実現する姿を見せたいと思いました。特にターゲットの女性は日々、肌・身体・心のバランスの中で揺れ動いていますし、変化を繊細に感じ取っています。美というのは出来上がった何かではなく、自分自身と一緒に生きている“動的”なもので、ひとりひとりが自分でコントロールしながら丁寧に育てていけるものだよ、ということをお伝えしたいと。そこに共感があれば、新しい習慣の提案が定着するのではないかと考えています。
―そこで「美しい、は生きている」というメッセージが生まれるわけですね
久野 美容の新しい地平を切り拓くために、本質的で普遍的な“構え”となるメッセージが必要だと考えたのです。お客さまに向けたメッセージであることはもちろん、つくる側の我々がブランドの本質を見失わないためにも指針となるブランドフィロソフィーを表現した言葉です。そして、「肌・身体・心のつながりを通して自分らしい健康美と生き方をしているひと」を体現するミューズとして、清野菜名さんと市川実日子さんのお2人に出演いただきました。
―研究側から見るとこのメッセージはどんな感想を持ちますか
小杉 研究側というより個人的な意見ですが、その人の生き方とかチョイスとか、そういうものを肯定している感じがする言葉だと思いました。研究所の中でもアイデア出しの時に大事にしているのは、否定ではなく肯定する感覚です。共感できるし、面白いです。
―お客さまが自分で自分の中を育てていくよう促すというコミュニケーションスタイルなのですね
久野 新しい領域を切り拓くために、カゴメさん、ツムラさんというプロフェッショナルとの協業によるブレイクスルーが必要でした。そして生まれた新しいソリューションを生活者に届けていくには、世の中の文脈にしっかり入って行くことが大事かなと。
コロナを経て、社会が落ち着くにつれて自分自身をコントロールすることで幸せや喜びを手にする…本質的で内面的な世の中になってきているなという実感があります。例えば、多忙な生活でも睡眠の質を高めるとか、ちょっと前からですがサウナで整うとか、こまめに身体を動かすとかが定着しています。我々資生堂としてもこうした生活者文脈で新しい習慣、自分自身をより良くして健康や美しさを手に入れていくという価値をもたらすことができると思います。
まず、“考え方”でお客さまとつながる
―小杉さん、2022年に資生堂に入社し「資生堂ってこうなのか」、というような驚きの瞬間はありましたか?
小杉 そうですね…ブランドとして、複数の製品をもって、“考え方”を提案するというのが新鮮です。考え方、ひいては、文化を広めます、っていうところがすごく、資生堂ならではの大きな目標というか大きな視点だと思います。
久野 長く生き続けるブランドをつくるには、お客さまとまず考え方でつながって、納得して続けてもらって、結果途切れずに商品を買っていただけること、最終的にはさまざまな接点で自分にぴったりの体験が得られるかどうかが購入につながると思っています。
今回は専用ECを立ち上げ、OMO(Online merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)モデルを実践しています。ここでブランドからインナービューティーを取り巻く情報を通して直接お客さまとつながりながらファンになってもらい、しっかりとした愛用者基盤を作っていく設計です。
店頭では、パーソナルビューティーパートナーとお客さまとの語らいが大きなブランド体験になると期待しています。対面でお客さまに寄り添い、トータルなお客さまのお話から悩みに深く入り込んで最適な提案を行うことができますから。オンラインオフラインを通じて、取得したお客さまデータを元にSBWならではの質の高い体験・サービスを展開していきます。
SHISEIDO BEAUTY WELLNESS ウェブサイト
<3商品ブランドの取扱店舗>
ザ・コラーゲンの取扱店舗
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※SBWウェブサイト、資生堂の総合美容施設「SHISEIDO THE STORE」、資生堂の美容総合サイト「資生堂オンラインストア」、全国のドラッグストア、GMSでも販売
チューンボーテ取扱店舗
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※SBWウェブサイト、資生堂の総合美容施設「SHISEIDO THE STORE」、資生堂の美容総合サイト「資生堂オンラインストア」 でも販売
ルーティナ取扱店舗
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※SBWウェブサイト、資生堂の総合美容施設「SHISEIDO THE STORE」、資生堂の美容総合サイト「資生堂オンラインストア」 でも販売
資生堂を冠するブランドとして
―SBWはSHISEIDO、と社名を冠したブランドです
久野 ブランドに社名を冠するということの重みを感じます。2030年にPERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANYを目指す資生堂の、将来を見据えたからこその名前だと思います。領域を拡張しながら、お客さまに合ったすこやかさや美しさを目指す、そこで成長していくブランドだ、という意思が込められています。
―ここが資生堂ならでは!と思われているところはありますか?
小杉 真面目。あらゆることにしっかりと裏付けを取る。これなら信用できるなと、自分も仕事をしながら思います。資生堂を冠したブランド名にはその真面目さだったり、正しいもの、ちゃんとした製品をお客さまに届けるぞという信念が潜んでいる。
例えばツムラさんと作ったチューンボーテは5種類あります。肌や体の悩みがある時に「原因ってひとそれぞれ違うよね」と、わかっていても意外とごまかして生きてしまうところを、SBWでは「内側にいろんな理由がありますよね、人それぞれ違いますよね」とちゃんと発信しています。独自の切れ味で、人間のちょっとモヤッとしたところに真面目に光を当てて解明して、よりよくなることを提案している。そういう真面目さがあります。
久野 改めて小杉さんの話を聞いて…今を生きている人々にとって信頼できるブランドであるということに、ものづくりから情報開発から、すごくこだわってきました。それが資生堂がこれまで大切にしてきた姿勢と紐づいているかもしれません。
加えて、協業先を含め、外部の専門家の知見もたくさん取り入れました。自律神経、女性ホルモン、睡眠、東洋思想から野菜学まで、専門外と思えるフィールドに関してもインナービューティー情報を出せるブランドでなければ、真に生活者の役に立つことはできない。美に向かうルートはまだまだ数えきれないほどあることを、私たちは知っています。独自の鼻骨格チェックもあれば、問いと答えの専門家コンテンツも用意しています。
BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLDとは
―お二人にとって、資生堂の仕事を通じて目指すBETTER WORLDとはどんなものですか
久野 わたしは、ひとりひとりに最適で、自分の暮らしや美しさを叶えることを価値として提供したいです。資生堂は、それを通して、ひとりひとりのBETTER WORLDをつくるサポートができる会社だと思っています。
小杉 私は、自己肯定が集まった世界かなと。個人的には娘を見ていると、自分がやってることや選択に自信が持てているのか、キラッキラして見えるんです。自分で選んで美しくなって、その肯定感がぐるぐる回ってるというのが幸せな状態なのかなと。そういう個人がいっぱいいると、世の中としてもよりよくなるのではと思います。
久野 肯定感がぐるぐる回る、っていう話で思い出しました。このSBWのマーク、体内の循環を表しているんです。体内を良きものがめぐり、美しいエネルギーになるイメージを、資生堂クリエイティブのチームが作ってくれました。このマークが表していることは、BETTER WORLDのひとつのかたちかもしれません。
SHISEIDO BEAUTY WELLNESSのロゴ