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資生堂中国でのコラボレーションから生まれるイノベーション

~中国のお客さまとしっかりと向き合い、その人に最も適した美しさを提案する~

2022年2月17日

資生堂中国でのコラボレーションから生まれるイノベーション~中国のお客さまとしっかりと向き合い、その人に最も適した美しさを提案する~

資生堂は、中国に最も早く参入した外資系化粧品会社のひとつとして、メイクアップ・スキンケアの理念と商品を中国に導入しました。そして「美」の力を伝え、見つめ、創造し続けて40年が経ちました。
2017年より、生産、マーケティング、研究開発を統合した組織体制を築き、また資生堂の各ブランドの運営を中国地域に根ざしたものするため、上海に資生堂中国地域本社を設立。資生堂(中国)投資有限公司、資生堂麗源化粧品有限公司、資生堂香港有限公司、資生堂化妆品制造有限公司、資生堂(中国)研究開発中心有限公司(中国イノベーションセンター)が互いに協力し、魅力的な商品と細やかで行き届いたサービスを中国のお客さまに提供しています。

中国に、日々イノベーションを模索しながら協力し合う、まったく違ったバックグランウドを持つ2人の社員がいます。英仏米の企業でのキャリアをもつインターナショナル・ビジネスのエキスパートのキャロル・ゾウ (中国事業創新投資室 ビジネスイノベーションヘッド)。そして資生堂本社の研究部門で数々のイノベーションを推進してきたサイエンティストの田村昌平 (中国イノベーションセンター総経理)。
この2人に世界で最も勢いのあるビューティーマーケットで引き起こそうとしている資生堂のイノベーションについて、話を聞きました。

ゼロから独自のイノベーションを築き上げたい

―資生堂に入社した当時、中国のマーケットはどのような状況でしたか?そして資生堂のイノベーションにどう取り組んでいるのか教えてください。

キャロル・ゾウ

キャロル 私が資生堂に入社したのは2019年1月です。当時中国では、ECの売上がかつてない急成長を遂げていました。中国は「世界の工場」から、新しい技術やビジネスモデルを実現する「グローバルイノベーションハブ」に進化していたのです。そんな中、資生堂は中国事業創新投資室という新部門を立ち上げて、中国で新しい価値を創造していくという、これまでにない革新的なビジョンを掲げました。
私はこれまで、ユニリーバ、ロレアル、アムウェイ、バーバリー、マリオットなどの多国籍企業で、多くのブランドやサービスの立ち上げに携わり、常に新しいイノベーションに取り組んできました。
そして資生堂でも新しい価値を創造するという目標を実現し、築き上げたいと思っています。

―その目標に向けて、どのような挑戦に取り組んできましたか?

キャロル 資生堂に入社した当初、イノベーションに関連した会議やイベントに何度も足を運びました。参加している他企業は、ほとんどがテック企業やその関連企業でした。資生堂はテック企業ではないので、イベントの主催者や参加者が我々に気づくと、 「なぜここに?」 と聞かれました。その都度私たちは中国で新しい価値を生み出すという私たちのビジョンと目標を説明しました。このように各組織との関係構築に時間がかかりましたが、今ではビューティーイノベーションや中国の消費者市場について私にも問い合わせが来るようになりました。
資生堂はもともとイノベーティブな会社ではありますが、それを積極的に語ったりすることはあまりしていませんでした。今こそ、もっと発信していくべきだと考えています。

―資生堂のイノベーションの歴史は、現在中国のマーケットにおいてどのような強みを持っていると言えますか?

キャロル 中国には世界最大規模のデジタル経済が存在します。全小売売上の30%以上がオンラインによるもので、インターネットユーザーは10億人近くに上ります。中国では、新しいテクノロジーへの適応速度が非常に速いのです。物事は瞬時に変化していて、私たちはこれを「チャイナスピード」と呼んでいます。消費者の嗜好が急速に変化していくため、多くのスタートアップではスピードが重視されます。
しかし優れたブランドは時間をかけて確立されるもので、ブランドは様々なプラットフォームやお客さまとの接点を通じ、一貫した体験を提供する必要があります。
資生堂は150年の歴史を通じて、多くの優れたブランドとサービスを提供してきました。その基盤の上に新しいスタートアップ企業とのコラボレーションが加わり、これからも多くの画期的なイノベーションを生み出すことになります。さらに、資生堂は安全で高品質な製品を保証する企業としての定評があります。これらが、今の中国のビューティーマーケットにおいて強みとなっています。

―マーケットや中国独特のイノベーションを理解することで、ビジネスの可能性はどのように広がったのでしょうか?

キャロル 新型コロナウイルス感染症の影響で、外見と内面は切り離せないという考え方が進んでいます。肌の状態、日々の習慣、ライフスタイル、健康状態などを結びつけるホリスティックビューティーを重視するお客さまが増えています。そこで私たちは、インナービューティーを軸とした新しい事業領域も視野に入れています。

“資生堂には、皮膚科学研究に基づく新しい知見や、様々な使用性を実現するために、最適な原料を組み合わせて製品化する技術などの強みがあります。
その強みと外部の技術を融合させることで、イノベーションを起こしていきたいと思っています。”

田村昌平 資生堂中国イノベーションセンター 総経理

―中国のビューティー産業について、研究開発領域から見た特徴と課題を教えてください。

田村 中国のお客さまの新しいものへの反応は早く、その傾向はビューティー産業にも見られ、ソリューションの広がりや技術力の向上は著しいですね。
例えば化粧品領域で言えば今伸びているのは生産技術です。特にOEMメーカーは設備投資に積極的で、新しい設備をすぐに使いこなし、そこから新しいものを生み出そうという意気込みはかなりのものです。
一方でこのトレンドに乗って過度なアピールや品質担保が不十分な商品・サービスも増えています。政府当局もそれを課題としてとらえていて、今年行われた化粧品に関する法規制の改訂では、そういった点がしっかりとルール化されています。

田村昌平

―現地企業とのコラボレーションはどのように進めていますか?その中で、資生堂本社の研究開発部門の役割はどのようなものでしょうか?

田村 資生堂には、例えば皮膚科学研究に基づく新しい知見や、様々な使用性を実現するために、最適な原料を組み合わせて製品化する技術などの強みがあります。しかしながら当然私たちが得意としていない、もしくは取り組んでいない分野もあるため、そういった分野の技術を外部の企業から取り込んで私たちの強みと融合させて、イノベーションを起こしていきたいと思っています。そしてこうした活動を持続的に行うためにも、Win-Winの関係を目指す協業が重要だと考えています。
中国の他企業とのコラボレーションを進めるにあたって、やはり資生堂本社の研究開発部門の存在は大きいですね。当社の強みの領域である皮膚生理探求からのメカニズム解明やそれに基づくより適切なソリューションなどについてアドバイスをもらったり、ベーシックな安全性の確認など、様々なサポートは日本の本社研究開発チームから提供されています。

―中国のお客さまの求めているものは、どのようなものですか?

田村 中国のお客さまは健やかさと美しさということに繋がりを強く感じています。そして“対処する”よりも“防ぐ”という考えが根底にあります。そのためホリスティックな観点でのスキンビューティーを実現することに取り組んでいて、具体的に言うと内服で効果を発揮する食品シーズの開発、そしてもう一つは、美容医療の施術から学ぶ新しいビューティーアプローチの研究を始めています。
今までは海外志向で海外からそのようなものを取り入れる傾向が強かったのですが、最近若い世代を中心に、中国国産のものへの支持が高まっています。中国の方々は自分のやりたいことをとても大事にしていますし、強い実現意欲も感じます。例えば化粧品においても、自分の人生を満足させるために、より良いプロダクトを求めていくという傾向が続いています。

“欧米や日本とは異なり、中国のスタートアップは成長が著しい。
2年以内に5億人民元を超える成長を遂げるスタートアップも出てきています。
人々がアクセスしやすいブランドを迅速に作ること、また適切なコラボレーションを創出することが、中国におけるイノベーションの重要な要素です。”

キャロル・ゾウ 中国事業創新投資室
 ビジネスイノベーションヘッド

イノベーションを実現するための協働アプローチ

―イノベーションハブについて教えてください。なぜその場所を拠点にすることが重要なのでしょうか?

キャロル イノベーションハブは、現地のパートナーと協業する場となっています。協力者は病院から皮膚科医まで幅広く、彼らは現地のマーケットや製品に関するインサイト、またよりよい製品を作るためのノウハウを持っています。
例えば、現在進行中のプロジェクトのひとつに、機能性皮膚科学と医療美学の分野があり、この分野の専門家と協力して新しい製品を開発する予定です。
このイノベーションハブをスタートアップのコミュニティとして活用するというビジョンがあり、2021年8月には独自の「資悦ファンド」(Shiseido Beauty Innovation Fund)を創設しました。これは、私たちの戦略目標と合致するアーリーステージのスタートアップに投資するために作られました。
欧米や日本とは異なり、中国のスタートアップは成長が著しく、2年以内に5億人民元を超える成長を遂げるスタートアップも出てきています。人々がアクセスしやすいブランドを迅速に作ること、また適切なコラボレーションを創出することが、中国におけるイノベーションの重要な要素です。
私たちは、長年の研究に渡る皮膚美容に関する知見やノウハウを持っています。その知識をスタートアップ企業が持つ独創的なビジネスモデルやお客さまインサイトを組み合わせることで、真のお客さま価値を創り出し、新しい事業の成長を実現したいと考えています。
田村昌平

―2021年、東方美谷に中国で3ヵ所目となる研究所を設立しましたが、東方美谷で具体的に行っていることを教えてください。また実際にどのようなサポートやメリットが得られるのでしょうか?

田村 東方美谷は上海市南部に位置する化粧品の研究開発・生産の一大拠点を目指しているエリアです。上海市が積極的に後押ししていて、中国国内でもかなり注目されています。
このエリアには既に多くの化粧品関連企業の工場や研究所が参入しており、また食品や薬品などの企業も多くあります。大学や生命科学の研究を行っている機関もあります。
政府のサポートも厚く、困ったときには相談しやすく、企業間の横の繋がりも支援してくれます。例えば開所式(2021年10月27日に東方美谷に資生堂の新研究開発拠点がオープン)の翌日、化粧品関連企業の研究開発トップや大学教授を招いてフォーラムを行ったのですが、政府からの働きかけで参加者の招集など円滑に進めることができました。
外部の研究機関や企業とのコラボレーションによってイノベーションを起こすにはとても適した場所だととらえています。
キャロル・ゾウ

―資生堂にとってコロナ収束後の世界について、どう考えていますか?

キャロル 中国は全事業売上の27%(2021年)を占めています。資生堂にとって最大のグローバルマーケットであり、私たちは中国においてビジネスをさらに推進させ、お客さまの行動をより理解する必要があります。
以前と比較して、お客さまは身体の健康状態だけでなく、メンタルヘルスやウェルネスにさらに関心を持つようになりました。コロナ禍で免疫系サプリメントの売り上げはあがり、家庭でのフィットネスも人気になり、ビューティーの捉え方も広がりました。
中国マーケットでも、健康やウェルネスがより重要視され、考え方が変化してきています。中国の方々はメンタルヘルスについてあまり語りませんが、ロックダウンを経験したことでより重要視するようになりました。

“自分らしい健康美を実現するため、
「インナービューティー」に着目した、新しいインジェスティブル(摂取型)
ビューティーブランド“INRYU”を開発。”

田村昌平 資生堂中国イノベーションセンター 総経理

―最近人々の関心が高まっているインナービューティー、すなわち内側から美しくなるというニーズに合わせて開発された商品について教えてください。

田村 私たちは長年、肌の表面の研究にとどまらず、体の中の状態が肌に及ぼす影響を研究してきました。これらの研究成果を活用した商品が2022年に発売するINRYUです。自分らしい健康美を実現するため、体の内面を整え健やかで美しい肌を目指す「インナービューティー」に着目した、新しいインジェスティブル(摂取型)ビューティーブランドというコンセプトで開発しました。
商品はタブレット状で、健康と美しさを内側から育むというコンセプトで3タイプが揃っています。具体的な商品企画・設計はキャロルたちの中国事業創新投資室や日本の研究開発部門と一緒に行いました。
開発段階では、中国のお客さまに実際に使用してもらい、好評価を得ています。日本で生産し中国へは越境ECで展開されます。

INRYU(インリュー)

―今後、どのようなビューティーのイノベーションが必要とされると思いますか?

田村 コロナ収束後は、これまでよりも人の繋がり、自分らしさをもっと大事にする傾向が強まると思っています。
つまり自分の最善の状態、それを維持させることを強く求めるようになるのではないかなということです。そうなると自分をより深く知る、そして本当のプロフェッショナルからアドバイスをもらうというプロセスがもっと重要視され、そこに私たちだからこそ担える役割があるのではないかと考えています。
個々人にしっかり向き合い、その人に最も適した美しさを提案し、それをサイエンスの力で維持する、この実現に向けていかに貢献できるかが使命だと感じています。

“この世界をよりよくするイノベーションを起こし続けていきたい
そう一緒に思える仲間と働きたいです。”

田村昌平 資生堂中国イノベーションセンター 総経理

―資生堂中国でのワークスタイルや、あなたのチームについて教えてください。

キャロル 私はアメリカ、フランス、イギリスの会社で働き今回が7社目です。日本の会社は初めてですが、みんなが自分の業績に対して謙虚であると思います。その謙虚さとお互いを尊重する気持ちが、チームワークを向上させるため、とてもよいことだと思います。

私のチームに関しては、フレキシブルな職場環境の中で、全員がベストの自分を発揮できるようにしたいと思っています。私は明確で透明性のあるコミュニケーションを心がけ、一人ひとりがプロフェッショナルとしての責任感をもって仕事に取り組むことを期待しています。
尊敬と誠実さ、そして互いへの思いやりを基盤に最高の職場文化が築かれ、それがチームとして多くの成功へとつながると信じています。

私は資生堂で働くことに誇りを感じていますし、私たちは150年もの間、世界中のお客さまから愛され続けている高品質のブランドを生み出していると自負しています。

チーム

―一緒に研究開発していく上で、どのような仲間と働きたいですか?

田村 私たちのミッションである、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」に合致するようなしっかりとした目的意識を持った方々とともに、この世界をよりよくするイノベーションを起こし続けていきたいと思っています。
そしてなにより化粧品が好きな人がいいですね。自分なりに美意識を考えて持っている人と一緒に仕事をすると、すごく楽しいなと普段から思っています。

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