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太陽と、ひとと、アネッサと

後編:「すべての人の人生のすこやかさのために、ANESSA Sunshine Project」

2024年7月25日

宮下麻子 角谷香菜

角谷香菜 グローバルプレミアムブランド本部 アネッサグローバルブランドユニット 部長(写真右)

宮下麻子 グローバルプレミアムブランド本部 アネッサグローバルブランドユニット DX&ヒーローコミュニケーション グループ
マネージャー(写真左)

2024年、アネッサはアジア12の国と地域で横断的に行う社会貢献活動、「ANESSA Sunshine Project」を始動しました。太陽のもとでの活動を通じた、子どもたちの心身の成長支援を中心とするプロジェクトです。日本サッカー協会(JFA)の協力のもと、この6月に行なわれた日本での体験イベントを皮切りに、2030年までにアジア全域で約30万人の子どもたちを支援することを目標としています。この活動が生まれた背景と、目指すゴールについて、アネッサブランドを率いるふたりに聞きました。

―まず、アネッサでの役割についてご紹介ください

角谷 プロダクトの開発からコミュニケーションまで、アネッサのすべてを見ています。今回のソーシャルバリュープロジェクトも含め、全般に俯瞰してブランド価値を上げ、社会に貢献していく役割を担っています。2020年からアネッサのチームに参画し、2022年の1月からこの立場になりました。

宮下 私はDX &ヒーローコミュニケーショングループに所属しています。国や地域を問わずすべての市場でアネッサの魅力を伝えられるデジタルアセットの開発が仕事です。今年からは今日お話する社会価値活動のプロジェクトをリードしています。

―1992年に日本で生まれて今やグローバルブランドとなっているアネッサですが、そのようなブランドを受け継いでいくというのはどういう心持ちですか

角谷 私は、日本のブランドを海外に展開してグローバルNo. 1 にしたい、という夢を叶えたくて資生堂に入ったんです。いい技術や製品を資生堂から海外に出して、日本のモノづくりでNo.1になりたいと思っていました。ですので、今は夢が叶っている状態が続いてるっていうことですね。また資生堂は「商品をしてすべてを語らしめよ」という言葉にあるように、製品技術もデザインも商品の力が強いです。今は加えて、経験価値とか、社会にどう貢献しているのかというストーリーをブランドとして包括的に見られる時代です。そんな時期にアネッサに携われるのは、すごく楽しいという思いがあります。

アネッサが子どもに向けた活動に注力する意味

―そこで今回のSunshine Projectの話です。子どもたちに向けたアクションに注力するに至った経緯について教えてください

角谷 まず、アネッサとして解決したい社会課題を規定することには時間をかけました。アネッサとしてできることと社会で課題になっていることを掛け算しながら、やるべきことを精査していった感じですね。
宮下 アネッサの「Free to shine(太陽のもとで誰もが輝ける世界をつくる)」というブランドパーパスに紐付いていることが重要でした。アネッサがもっと社会に貢献していくブランドになるために何をすべきか、チーム全員でブレストをして。サステナビリティや自然に対するアイデアもあったなか、もっと「ひと」に特化すべきなのではないか、と。調査していくなか、太陽の下で遊ぶことで気持ちがオープンになるなど心の成長にも影響があることがわかってきているのに、今の社会では子どもたちがなかなか外で自由に遊べていないことがわかりました。遊び場の減少とか、習い事が忙しいとか、外に出かけなくても家で十分に遊べるものがたくさんあるとか。ならば太陽のもとで心身を動かす場所をアネッサで提供してはどうだろう、と考えました。

―外遊びと心の成長の関連についてはどのように考えを深めていったのでしょうか

宮下 早稲田大学人間科学学術院で子どもの健康福祉学を専門に研究されている前橋教授にコンタクトして、お話を伺いました。その中で、外で遊ぶことには身体的、心理的、情緒的、社会的、知的、と五つの観点で子どもの成長にすごく役立つことを学びました。自律神経が整って、睡眠の質も良くなる、ということも言われています。

―商品以外で社会とコミュニケーションするには、たくさんの投資をしたり、人的なパワーを注入したりする必要がありますが

角谷 「太陽のもと、誰もが輝き続けられる世界へ」というパーパスを掲げるブランドとして、それを体現している必要があると考えています。ブランドの存在理由に対して正しいことをやっていれば、売上はついてくると信じています。商品の訴求力で買ってくださる方を、本当の意味でアネッサのファンにしたい。信頼して頂き、長く愛してもらう。ビジネスの言葉で言えば、ライフタイムバリューを作っていくということですよね。本当にブランドが社会に対して正しくいいものを提供し、いい行動をしていること自体がすごく重要なので、社会価値でビジネスを伸ばすことはできない、とは思っていません。マージしていくべきことだと考えています。短期的な売り上げの貢献にはならないかもしれないけれど、中長期的なブランドエクイティへの貢献に絶対的につながると思っています。

啓発活動そのものを、義務ではなく楽しいものとして設計する

―アネッサには、日本国内での色素性乾皮症(XP)患者さんへの支援が2004年から、小学生に向けた「紫外線教育」が 2018年から、と、長く続けてきた活動があります。今年から子ども向け体験イベントとして、日本サッカー協会(JFA)さんと組んでサッカーイベントの実施をはじめました。今後、アジア12の国と地域で横断的に行う社会貢献活動とするにあたって、プロジェクト自体が自走していくようなスキームを設計していると聞いています

宮下 子ども向けにイベントを一回やる、ということであれば、それなりに投資してやれば成功すると思います。しかしこのような活動は継続することに意味があると考えていますので、どういう座組で実施すると継続できるのかはパートナー選定のときにも大きなポイントでした。世界中のさまざまなパートナー候補の中からJFAさんと組むことになったのは、日本にある団体でブランドホルダーである我々と協働しやすく、日本からアジアへの発信力があるというところが大きかったです。
角谷 活動そのものをポジティブなものと捉えることが、なにより大切だと考えています。太陽には圧倒的な明るさとエネルギーをもたらすポジティブな面と、紫外線というネガティブな側面がある、その二面性を理解して、未来への希望を生むためには、義務感ではいけないと。みんなの共通の課題について楽しく学んだり、笑って自ら取り組んだりしていたら、結果、社会に対していいことになっている、というのが理想です。そんなスタイルを目指していて、今回JFAさんとも、サッカーを楽しむことを通じて私たちの思いをアジアに広げていこうという、その明るさとか楽しさとか、そんな DNA を共通して持っていたことが決め手でした。

6月16日のJFAとの共催サッカーイベントの様子

―前回(前篇のインタビューにリンク)も、アネッサはブランド自体がとにかく外向きで明るいんだ、という発言がありました。打ち合わせや会議などもそうですか?

宮下 やっぱり、なにをするにも最初に考えるのが「太陽の光」についてです。コミュニケーションの表現を考えるときも、太陽、光へのこだわりがすごいんですよ。ロゴに太陽を背負っていますし、Free to Shineって、自由に人がどんどん輝くことを目指しているので。明るくなりますよね。

角谷 お客さまの使用シーンも外ですし…あっ、この間メンバーの一人が、全然アウトドア派じゃなかったのに、アネッサのチームに入ってからキャンプに行き始めて「めちゃめちゃ私、Free to Shineになりました」と部会で話してくれました。やっぱり太陽って気持ちいい、だんだん気持ちも明るくなっていったと。

社会活動を通じて、ブランドにかかわるメンバーも力を得る

―サッカーイベントでは何か新しい発見がありましたか?

宮下 私は、これまでJFAさんが実施していたイベントにも参加していて、そのたびに感動しているんです。その、子どもたちの本当に生き生きとした表情がすごく良くて。今回、私たちと一緒にイベントに参加してくれた社員に、アンケートで感想を聞いたら、やっぱりみんなそれを書いてくれました。子どもたちが真剣に学ぼうとしている姿とか、楽しんでいる姿に本当に心が動いたと。
角谷 イベントの中で日焼け止めの塗り方を、わかりやすく音楽に乗せた体操にしてお伝えしました。もちろんきちんとしたテキストブックも小学校と連携して作ってもいますけれども、今回は、楽しく伝わることを目指しました。紫外線で色が変わるTシャツも作りました。最初は白で、紫外線を浴びると黄色いヒマワリの絵が現れます。色が変わることで、普段は目に見えない紫外線のパワーを感じられます。驚きを持って楽しく理解する様子を見て、「わあ、楽しい!」っていうことが継続のためにはすごく重要だなと、改めて思いました。大人だときちんとしたエビデンスをもってご説明するのが当たり前ですが、子どもたちが「塗ったから大丈夫だよね!」なんて言っているのを見ると、その純粋な反応と学んでいく姿に感動して、私たちももっと頑張るぞ!と。

室内で塗り方を習うときはTシャツのヒマワリは白

紫外線を浴びるとヒマワリが現れる

―何のために、誰のために、何をしているかということが、ブランド側の人にも見える時間なんですね

角谷 アネッサの仕事は明るいとは言いましたが、日々の仕事は本当に、地味なんです。どうやったらUVブロック膜が落ちずに長持ちするか、でも落ちなさすぎるとテクスチャーが悪化したりや石鹸で落としにくくなるのでお客さまには使いにくくなってしまう、このせめぎ合いの中でイノベーションを起こし続ける、実直で、ストイックな仕事です。だからこそ、子どもたちの笑顔があると、「このためにやってるんだ!」と思えます。頑張る力が沸きます。

―自分たちの仕事によって、自分たちがエネルギーをもらう、良循環ですね。別の活動として、色素性乾皮症(XP)の患者さんという非常に困難な状況にある方の支援もしています

宮下 XP患者さんへの化粧品提供の支援は2004年からです。資生堂全体のカメリアファンドの中の施策として、社員からの募金も集めています。この病気は、日光を浴びると強い日焼けや色素沈着などを起こし、日光にあたって皮膚がんになる確率は健康な人の約2000倍と言われています。特に日本には進行性神経症状を発症する重度のタイプの患者さんが多く、進行を少しでも遅らせ日々を大切にしたいと工夫なさっている方が多いのです。もちろん日焼け止めを塗ることで治るわけではありません。でも、症状を出にくくすることができます。三か月ぐらい前にXP患者の家族会の方にお話を伺う機会がありました。症状が深刻なお子さまがいらっしゃるご家族も、お子さまたちが外に出ることは今しかできない、外で遊ばせてあげたいって。紫外線に当たるから外出させない、ではなく、今の時間を充実させてあげたいという思いで、日焼け止めを使う方もいらっしゃるんです。私たちの活動によって、XPという病気の認知も高まって、研究が進むきっかけになったらと願っています。
  • カメリアファンドとは:資生堂グループ社員による社会貢献活動。毎月の給与一口100円から社会課題に取り組むNPOの活動を支援することができる

メンバーそれぞれが内発的な動機で動き、ブランドを強くしていく

―紫外線と人間との関わりの中の課題で、解決できそうなものに対してアネッサは多角的に取り組んでいるわけですね。プロジェクトでは、最終的にアジア全域で30万人の子どもとの接点を持つ計画です

宮下 小学校での活動、あとは保育園のサンプリング、今後もっともっと接点を増やしていきます。紫外線について教育できる人材も増やしていきたいと思っていますし、先ほどのJFAとの活動が自走するような仕組みを実現していきます。 JFA のコーチの皆さんに紫外線教育を広げる活動をしていただきます。子どもたちはコーチをよく見ているので、試合や練習のたびに、サンケアが身近になり習慣になっていくことを目指します。今後は、日本以外のアジアの国での実施の企画も検討中です。昨年12月にJFAの子どもたち向けのサッカーコーチの方々にレクチャーをしたんですが、太陽光からの恩恵、紫外線、対策方法など非常に興味を持っていただき、早速子どもたちに伝えるといった声もあり、本当に真剣に取り組んでいただいています。

―よりよい世界にむけて、社外も巻き込んで活動していることがわかります。会社内でも、各リージョンの担当者やクリエイティブも集まってワークショップをしたと聞きました。アネッサのメンバーとして、どういうマインドで仕事をするか、というセッションだったとのことですが

角谷 3日間にわたってブランドに携わる社内のメンバーが一堂に集まり、ブランドについて理解・議論するという場を設けました。1日目は、研究所で商品について学び、2日目は、ブランドの社会価値活動についての議論。そして、3日目には、サッカーイベントに参加というものでした。私たちは今年の戦略に、「Accelerate Inclusion」を置いています。大きいビジョンの実現は、本社だけでできるものではありません。ブランドに関わっている私たち全員がまずひとつにならないと、社会や世界にインパクトを出していくことなんてできないですよね。ですので、メンバーの内なるパワーを最大限に上げることには本当に力を入れています。一人一人が自走的に、ある意味勝手に、アネッサのスピリットを持って動き、ブランドを大きくしていくようなあり方が理想だと思っています。これは現地の仕事、これはクリエイティブの仕事、ではなく、お客さまとパーパスの元で私はどう動くか。誰かから伝達されるのではなく同時に考えて動けるチームにしたい。得意な分野でそれぞれが「こうやったらいいんじゃない?」みたいなことをやっていくことが最終的に強いブランドを作る力になると思うので、今回みんなで集まって、熱量を高めることができました。

アネッサを通じて目指すベターワールドとは

―ひととしても、ブランドとしても、内発的な動機があるということが何より強い、未来を見ているチームらしいあり方だと思いました。最後に、アネッサを通して実現したいベターワールドとはどんなものでしょうか

宮下 ビジネスと社会価値がお互い補完し合うことが理想です。ドラッグストアでアネッサを見たときに、よりよい未来のための活動をしていることが思い浮かぶくらいなところまで、この活動を浸透させていきたいです。SPF や機能訴求だけではなく、アネッサだから買う、アネッサだから信じられる、そんなブランドにするということですね。
角谷 私はアネッサの掲げているFree to shineというパーパスに心から共感しています。私たちは企業として社会活動をするので、最終的に経済活動と社会活動の両輪を通じて、ブランドがパーパスを体現し、社会を、未来を良くしていける循環を生むことが必要だと考えています。そう考えると現在のビジネスに加えて、今回の活動にもつながりますが、未来を担う子どもたちが健全な心身を持って生き、世界や未来はよりよくなっていくという希望に対して貢献する責任があります。最終的に人々が幸せになれることをしているブランドがNo. 1 になると思っているので、引き続き芯をぶらさずに支持されるブランドでありたいですし、アネッサが考えるベターワールドは、やはり太陽のもとで誰もが自由に、楽しく前向きに輝き続けられる世界だと思います。