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一見相反するふたつの価値を
巧みに融合し、
「DYNAMIC HARMONY」を紡ぐ。
資生堂R&Dにおける新しい成長戦略とは

一見相反するふたつの価値を巧みに融合し、「DYNAMIC HARMONY」を紡ぐ。資生堂R&Dにおける新しい成長戦略とは

資生堂の企業理念である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(ビューティーイノベーションでよりよい世界を)」は、「美」の力を通じて人々が心身ともに健やかで幸せに過ごせること、そして持続可能な社会を実現することを目指し、イノベーションを起こし続けていくことを掲げています。その一貫として2021年11月、研究開発(以下R&D)領域において、独自の理念「DYNAMIC HARMONY」を新たに制定。創業から150年が経とうとしている令和の今、「西洋の科学」と「東洋の叡智」という「異なる価値の掛け合わせ」にて資生堂が誕生したことに原点回帰し、そこにR&D戦略の核を見出しました。「異なる価値の掛け合わせ」を掲げた5つの研究アプローチを軸に、資生堂R&Dの強みと独自性を「DYNAMIC HARMONY」として可視化。今までにない革新的な「美」を生み出すことをビジョンに掲げ、新しい商品やサービスの具現化を目指します。かつてはブランド「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」の責任者としてマーケティングに携わり、2021年1月にR&Dの責任者・チーフブランドイノベーションオフィサー(以下CBIO)として着任し、当社のR&Dをリードする岡部義昭に、立ち上げの思いから今後の展望までを聞きました。

スキンビューティーカンパニーの中核・R&Dにてイノベーション創出を
より強化していく

―「DYNAMIC HARMONY」制定の思いや意気込みを教えてください。

岡部 私がかつてブランドの責任者として外から見て感じていたのは、資生堂のR&Dにはもっと力があるのではないか、生活者に付加価値を与える商品やサービスをもっと提供できるのではないか、ということでした。創業当時から資生堂にはすばらしい研究員がいて、数知れない実績を積み上げています。とはいえ、内容が難しく生活者に届きにくいという課題も抱えていました。研究開発者と生活者が近い存在であるためには、まずは我々のミッションを言語化し共通認識する必要がある。そこで「DYNAMIC HARMONY」を掲げるに至りました。「資生堂の強みとは、何か」を、研究員はじめ社員全員が同じ言葉で語れたら、面白い。いままでそういったものがなかったので、一つのワードを作ることは、とても意義があると思っています。

岡部義昭

―確かに「研究開発」と聞くと、難しいイメージもあります。だからこそマーケティングという生活者に近い存在で携わってこられた岡部さんがCBIOとして就任されたんですね。

岡部 就任直後はびっくりしました。マーケティング出身の自分がR&Dをリードできるのか、研究員の力になれるのか、悩みました。しかし多様化する生活者のニーズを取り入れて研究に生かすことは、私のマーケティングの経験が大きな武器になると考えました。「研究員と生活者の距離を縮め、繋いでいく」それこそが、私の一番のミッションです。

―「繋いでいく」ために、実践していることは?

DYNAMIC HARMONY

岡部 大きく3つあります。1つ目は生活者のインサイトや時代の潮流などのマーケティングの視点を研究員が把握すること。例えば最近では、コロナ禍で変わった消費者の生活がどんなものなのかを、研究員も肌で感じる必要があります。

2つ目は、スピード。基盤研究とは時間がかかるもので、ものによっては10年単位でかかるものもあるかもしれない。ですが、研究の成果をなるべく早く生活者に届けるスピード感を醸成していく必要があります。
3つ目は、言語化。難しい研究内容をいかに分かりやすく落とし込み、世の人々に知ってもらうか。それには研究員自身が、自分の言葉でわかりやすく研究の内容や成果を伝えることが大切です。これは「DYNAMIC HARMONY」の制定とも繋がっています。

―R&D戦略として注力していることは?

岡部 資生堂は2030年までにスキンビューティーカンパニー領域における世界No.1を目指すべく、中・長期的なグローバル戦略として「WIN 2023 and Beyond」を掲げています。その実現に向けて、我々の強みである皮膚科学、マテリアルサイエンス、感性科学を基盤としスキンケアカテゴリーを強化しつつ、食品など新たなインナービューティーカテゴリーにチャレンジしていきます。それらを支えるのが、これまでR&Dにおいて長年培ってきた資生堂の基盤研究です。その研究に最前線で携わる研究員たちが「私たちは何のための研究をしているのか」「本当にこの研究が事業に貢献しているのか」「生活者の役に立っているのか」と迷うことがないよう、イノベーションを具現化しました。それが、「①不変の肌悩み追求」「②ブランドコア価値進化」「③Game Change」「④既存技術の価値拡張」「⑤新領域への挑戦」「⑥アジャイル開発」そして、それら全てのベースとなる「基盤研究」です。アジャイル開発は記憶に新しいものだと、「マスクにつかない口紅を開発する」といったようなもの。来たる未来にどういった変化が起きるのか、どんなインサイトが得られるようになるのか。そういうことを常に予測しながら、研究基盤を強化していきます。

―そういった具現化は、研究員のモチベーションアップにもつながっていきそうですね。

岡部 その通りです。それがまさに資生堂が大切にしている「PEOPLE FIRST」の考え方とも繋がっています。「イノベーション」というワードだけを聞くと、それが大きく世の中を変えるもので、そういった研究に携わっている人だけが賞賛されがちな風潮があります。ですが、資生堂R&Dに関わる約1200人の研究員、すべての力が必要です。イノベーションとは決して画期的なものだけを指すのではなく、生活者の期待を少しでも上回るものを指すと思うのです。だからこそ、研究員と生活者をもっと繋いでいくべきだと、思っています。

「DYNAMIC HARMONY」が人や社会にもたらすもの

―「DYNAMIC HARMONY」の5つの研究アプローチについて教えてください。

岡部 「資生堂の強みとは、何か」。それを研究員だけでなく、マーケター、営業、ビューティーコンサルタント、OB、外部のクリエイター……と、あらゆる人の意見を取り入れつつ、形にしていきました。そうして導き出されたワードが「DYNAMIC HARMONY」という、ユニークな理念でした。資生堂R&Dが有するアプローチとは一つの価値だけでは決して定義できず、一見相反する両立の難しい価値を巧みに融合し、独自性のある「DYNAMIC HARMONY」を生み出す、という意味が込められています。

その5つは、

  1. ① Inside/Outside(肌の内/外)
  2. ② Functionality/Japan Quality(機能性/日本品質)
  3. ③ Science/Creativity(科学/感性)
  4. ④ Premium/Sustainability
    (プレミアム/サステナビリティ)
  5. ⑤ Individual/Universal(個/普遍)

となります。

DYNAMIC HARMONYについて語る岡部CBIO

DYNAMIC HARMONYについて語る岡部CBIO

―それぞれの目指すところを、教えてください。

岡部 「Inside/Outside」は、肌とホリスティックビューティーの関係性をわかりやすく表現するために「肌の内と外」としました。肌の内外から美しさを引き出す研究を目指していく、というアプローチです。
「Functionality/Japan Quality」は、圧倒的な機能性とともに、確かな日本品質を届けていくことです。例えば中味のテクスチャーひとつとってもそう、フタがしまる感覚ひとつとってもそう。細部まで日本人のこだわりを光らせ、機能美を追求します。
「Science/Creativity」は、より多くのお客さまの満足をめざして、お客さまの潜在的・主観的な感性や気持ちを、客観的な科学で解き明かすというアプローチをさしています。私たちはビューティーカンパニーを銘打っている以上、客観的な科学的データだけではなく、主観的な経験やセンスなど感性の部分とも、真摯に向き合い続けます。
「Premium/Sustainability」は、今社会が必要としているサステナビリティの考えを大切にしつつ、ワクワクするプレミアムな体験ができる製品やサービス作りを目指すものです。サステナビリティは、社名の由来である「至哉坤元 万物資生(いたれるかなこんげん ばんぶつとりてしょうず)」にも通じる考えですし、プレミアムであることは初代社長である福原信三が「商品をしてすべてを語らしめよ」「ものごとはすべてリッチでなければならない」と語っていたことに通じ、その美意識は現在のクリエーションにも受け継がれています。
「Individual/Universal」は、長年蓄積してきた世界中の膨大なお客さまデータを活用し、お客さま一人ひとりにパーソナライズした最適なソリューションを生み出すことで、多様な価値観をもったお客さまニーズを満たす独自価値を創出するということ。そして、生涯を通じ、人々の健康美を追求するパートナーになるということです。
これらの5つの研究アプローチには、テクノロジーのユニークさだけでなく、生活者のベネフィットも常に意識して織り込んでいます。研究アプローチは時勢に応じて常に変化しながら、6つ目、7つ目のアプローチを創出し、進化を続けています。
  • 中国の古典、四書五経のひとつ「易経」の一節。「大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。全てのものはここから生まれる」という意味を持つ

―取り組み例について教えてください。

岡部 私達は、「DYNAMIC HARMONY」の理念に基づき、さまざまな取り組みを行っていますが、外部との融合も、積極的に進めています。例えば、慶應義塾大学 先端生命科学研究所 所長 冨田勝教授と、脳科学者 中野信子氏とのアドバイザリー契約の締結や、ロシアの科学アカデミー(RAS)と米航空宇宙局(NASA)が推進する宇宙開発プロジェクトに参画し顔の表情を利用したストレス評価の研究をするなど、国内外の外部研究機関との共同開発を進めています。イノベーションを起こして変革をもたらすには、いろんな人の力が必要です。ここも「DYNAMIC HARMONY」と繋がっているといえます。

岡部義昭

―紫外線を肌に良い作用をもたらす光へと変換する革新技術についてもお話を聞かせてください。
紫外線というネガティブなイメージのものをポジティブに変換するという発想ですよね。

岡部 世の中にある、よくないと思われているものを味方にするソリューションの考え方も大切だと思っています。例えば紫外線や、湿度や、温度……。人を取り囲むよくないとされているものを、逆転発想で、共生しつついいものに変換していく。それをR&Dを通じて叶えていけたら、という思いです。また、「目に見えるものと見えないものを紐づける」ことへの挑戦も続けています。いろいろな掛け合わせがありますが、例えば、「血液と肌」「リンパ管と肌」「ストレスと肌」など。目に見えないものと肌の関係性を探ることで、新たなソリューションが生まれていきます。
基盤研究の普遍的なテーマは、予防と改善だと思っています。改善することにフォーカスしがちですが、その前段階の予防をするためのアラートを何らかの形で出す。それに対するソリューションを提供するという構造を目指しています。ビューティーカンパニーである以上、改善だけでなく予防の段階から研究に取り組まなければならない。そして、健康や未病への関心が高まっている現代人に寄り添うこと、それが当社の役割だと考えています。

―R&Dの現場でイノベーション創発をし続ける秘訣を教えてください。

岡部 画一的ではなく柔軟な考え方を持ち続けるために……、私たちがグローバル戦略を持ち多様性のある人々の集団であることが、強みとなってきます。アカデミアの現場では、まだまだ年功序列や男性優遇の考え方が根付いており女性が遠慮してしまう場面も見られる中、資生堂ではその垣根は取っ払って考えています。性別も、年齢も、仕事上のポジションも、国籍も、関係ない。多様性を重んじるというのが、資生堂の文化です。僕もマーケターでしたが、今はR&Dの場におります。いろんな人が融合し、多様な人材が活躍している。それこそが、資生堂のR&Dです。

これからの資生堂R&Dのあり方

―「DYNAMIC HARMONY」が、研究員にもたらすものとは?

岡部 一言でいうのは難しいですが、「サイエンスの力で事業やブランドに貢献している」という実感ですかね。基盤研究がきちんと利益を生み出し、ひいては、人々の幸せな生活に貢献していく。そういった未来を作っていきたいという思いは、約1200人いる全研究員が、共通に持っているものだと思います。資生堂の研究員には「できない」ではなく「どうやったらできるようになるか」と考える、創業時から受け継がれてきた不変のDNAがあります。「DYNAMIC HARMONY」という研究開発理念に基づくアプローチを掲げることで、各研究員のベクトルの方向を合わせ、さらに強みとしていきたいです。もっというと、イノベーションは研究員だけでできるものではありません。マーケター、営業、ビューティーコンサルタント……。関わる一人ひとりがワンチームとなり、資生堂 R&Dの強みを言葉にしつつ価値を作れるかが、大切だと思っています。

―最後に。今後の展望を教えてください。

資生堂R&Dの力で、より多様化するこれからの人々の生活や世の中の課題に対するソリューションを、商品やサービスを通じて提供していくことを目指します。「美」の力で、世の中をよくする。資生堂R&Dチームは、常にそれと連動していきます。