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経営戦略として、そして、自分たち一人ひとりの課題として。
国際女性デーに考える資生堂のDE&I

2024年3月8日

資生堂は、人は本来、多様であるとの認識のもと、固定概念や偏見、同調圧力を払しょくし、一人ひとりが自分らしい人生を実現できる社会を目指し、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を重要な経営戦略として位置付けています。

チーフDE&Iオフィサーの廣藤綾子、海外現地法人から資生堂に転籍しグループマネージャーとして活躍するBea Asavajaru、Angelina Puzikovaに、自身の経験から資生堂におけるDE&Iについて聞きました。

―はじめに、資生堂にとってDE&Iはなぜ重要なのですか。

廣藤 資生堂は、企業使命を「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」と掲げています。実現には多様な知の融合によるイノベーションの創出がキーとなりますが、それを生み出すためにはDE&Iの推進が不可欠だと考えています。異なる価値観を尊重し共感しながら新しい価値を生み出していく思いを「LOVE THE DIFFERENCES」(違いを愛そう)と表現し、当社のDE&I活動のスローガンとしています。

チーフDE&Iオフィサー 廣藤綾子

―3月8日は国際女性デーです。
女性がより活躍する社会の実現に向けて、企業はどのように向き合う必要がありますか。

廣藤 企業が女性活躍推進を進める上で、特効薬はありません。何よりも重要なのが、この課題に真剣に取り組むというトップのコミットメント。つぎに、本人が自律的に自らのキャリアビジョンを描くこと。そして、それを支援するような経験、スキルを磨くための機会を会社と上司が提供することだと考えています。多様で柔軟な働き方を可能にする人事制度の設計、長時間労働に対する働き方改革、終身雇用など日本の伝統的な雇用慣行からの脱却も求められています。また、特に日本では性別役割分担意識が根強く残っているので、古い慣習を打ち破り、アンコンシャスバイアス(無意識の偏見)の払拭にも社会全体で取り組む必要があります。

―資生堂における女性活躍推進の現状、今後のビジョンについてお聞かせください。

廣藤 社員の女性比率がグローバルで80%を超える資生堂では、女性が能力を発揮できる労働環境の整備が必須で、法整備に先駆けて女性のキャリア成長のための取り組みを進めてきました。2030年までに、あらゆる階層において機会平等の象徴である男女比率50:50を目指しており、2024年1月時点の国内資生堂グループ女性管理職比率は40%(速報値)です。女性リーダー育成の研修や、アンコンシャスバイアス払拭のためのeラーニングなどを広く展開しています。
そして女性活躍推進に向けた諸制度の整備・運用強化は、女性だけに限らず、多様な属性の能力を発揮できるインクルーシブな環境づくりにつながると考えています。

―これまでどのようなキャリアを歩んできましたか。

廣藤 投資銀行を経て資生堂に入社し、15年以上が経ちました。経営企画、海外現地法人の資生堂コスメティクス インドネシアで代表取締役社長として経営に従事し、直近では戦略財務、IRの部門長として財務管理統括、企業価値向上を図ってきました。2024年よりエグゼクティブオフィサーに就任し、チーフDE&Iオフィサー、チーフインベスターエンゲージメントオフィサーを務めています。私生活では一児の母です。

―働きながら育児をする中で心掛けていることなどはありますか。

廣藤 常にパーフェクトでいようとせずに、必要な時には周囲や外部にサポートを求めることです。人生には様々なライフイベントがあり、仕事と生活の適切なバランスを保つことは決して簡単ではありません。人生における優先順位は何か、本当に正しい決断をしているのか、何か犠牲にしているものはないか等、途切れのない問いかけが自分の中にあります。特に日本社会では母親に対する期待度が高く、見映えの良いお弁当を作ったり、学校行事へ積極的に参加したり、常にパーフェクトを目指すのは大変です。既に社会からのプレッシャーがあるのですから、さらに自分を追い込んでひとりで全てを解決しようとしなくて良い、これは私が学んだレッスンでもあります。

―海外駐在の経験はご自身のDE&Iの考え方にどのような影響を及ぼしましたか。

廣藤 日本で暮らし働いていた時に当たり前としていた常識は現地では通用せず、文化や言語の違いからくる孤独や難しさも体験しました。日本から離れて海外に身を置き、マイノリティ(少数派)の立場も経験することで、インクルーシブな職場環境を整えることがいかに重要であるかを学びました。

―資生堂でグループマネージャーとして活躍するBeaさん、Angelinaさんにもお話を伺います。お二人はどのようにチームをリードしていますか。

SHISEIDOグローバルブランドユニット
マーケティング&CX開発部 グループマネージャー Bea Asavajaru

Bea 海外現地法人の資生堂アメリカズから2018年に資生堂へ転籍し、現在はブランドSHISEIDOでソーシャルメディアとPRのチームをリードしています。日本は、調和を大切にするため、集団での合意を重んじる社会だと感じました。もちろんそのメリットもありますが、イノベーションを起こしたい時、機敏さが求められる場面では、それが阻害要因にもなり得ます。よって、「私たちは上司と部下という関係の前に、一緒に働くチームメイトである」と言葉にして伝え、上下関係や形式張ったやり方を少し崩し、連帯感や仲間意識を高め、長期的に信頼を築けるチーム作りを心掛けています。

コミュニケーションのスタイルも、アメリカ人のマインドセットで強く主張しきっぱりとした態度を取る時、自分のルーツであるタイらしさで柔らかく意見をまとめる時と、臨機応変に使い分けています。そして、リーダーとして、チームメンバーが自身のやり方を見つけ出す手助けをすることに、非常にやりがいを感じています。

Angelina 海外現地法人の資生堂EMEA(欧州エリア)から2019年に資生堂へ転籍し、現在はブランド価値開発研究所で、R&D領域におけるサステナビリティ戦略・実行のチームをリードしています。メンバーの潜在能力を引き出すことを強く意識しながら、周りと調和を取るだけでなく、イニシアティブを発揮する重要性を伝えています。国籍や文化というより、一人ひとりの個性やパーソナリティを大切にして、互いに学び合うことを大切にしています。メンバーの隠れた才能が開花し、より活躍する姿を目の当たりした時、喜びを感じます。リーダーシップのスタイルは、Beaさんと似ています。フィードバックもトップダウンで一方的に行うのではなく、メンバーからももらい、自分自身の成長に繋げています。

ブランド価値開発研究所 R&Dサステナビリティ&コミュニケーション部 グループマネージャー Angelina Puzikova

Bea 「常にパーフェクトでいようとしない」という廣藤さんの話にも通じますが、私は失敗をした時、チームメンバーに対してオープンにそれを認め、改善に向けたフィードバックを仰ぎました。何か新しいことを成し遂げるためには、失敗はつきものです。メンバーがそんな姿を見て失敗することを恐れなくなれば、それはチームとしての成功だと思います。

―さいごに、みなさんにとっての「LOVE THE DIFFERENCES」とは。

Bea チームメンバー、自分が理解できないこと、そして自分自身に対して、好奇心を持つことだと思います。アメリカから来日しこれまでとは全く異なる文化・環境に身を置き、言葉の壁もあるメンバーとのコミュニケーションは、自分自身を内省するプロセスでもありました。しかし、興味深く周囲や自分自身に向き合うことで、多くのことを学び、スポンジのように吸収することができました。
Angelina 謙虚であること。自分は何でも知っていると驕ることなく、自分には知らないことや分かっていないこともあると自覚すること。これは日本特有の謙虚な自信(humble confidence)にも通じるものがあります。相手の話によく耳を傾け、観察すること。それが新たな学び、挑戦に繋がると思っています。
廣藤 他者と違うことを恐れずに、自分らしさを大切にすること。
自分自身の人生を歩みながら、会社のDE&Iをリードし発信する彼女たちの存在は、日々周囲に影響を与え、長い歴史を持つ資生堂が次のステージに向かって前進し、真にインクルーシブな会社になるための力となっています。これからも自分らしく、表現し続けてほしいです。