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「資生堂」に込められた
サステナブルな思いを実践

2024年2月8日

(左から) 経営革新本部 サステナビリティ戦略推進部長 中村 亜希子氏/
経営革新本部 サステナビリティ戦略推進部 シニアスペシャリスト 大橋 憲司氏

2030年に向け「美の力を通じて人々が幸福を実感できる“サステナブルな社会の実現”」という目標を掲げる資生堂。サステナビリティ戦略推進部長である中村亜希子氏は、同社の企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現に向け、サステナビリティ戦略アクションが着々と進行していると語る。環境部門のシニアスペシャリストとして活躍する同部の大橋憲司氏も、同社のサステナビリティに関する情報開示への取り組みが開く未来に自信を見せる。

社名に込められた自然と社会との共生の願い

経営革新本部 サステナビリティ戦略推進部長
中村 亜希子氏

「資生堂」という名前は、中国の四書五経のひとつである「易経」の一節にある「至哉坤元 万物資生(大地の徳は何と素晴らしいものであろうか。すべてのものはここから生まれる)」という一節に由来しています。大地のように新しい創業精神いうことに加え、大地の恵みに感謝するというサステナブルな思いが創業精神にも込められています。

資生堂はお客さまに対して、美を通じて、いかに自己実現や幸せな気持ちを後押しできるかを考えながら、ESG(環境・社会・企業統治)に取り組んでいます。

S(社会)の分野では、ジェンダーギャップ(ジェンダー格差)の解消に向けた女性活躍推進、美の力によるエンパワーメントの取り組みを中心に、長年力を入れてきました。

その歴史は1934年、「良家の子女は職業に就かない」という当時の価値観に対して女性に新しい選択肢を提案した「ミス・シセイドウ」(現代の美容職の前身)。

また、1956年、戦禍によるやけどや傷痕など肌に深い悩みを持つ方の精神的苦痛を和らげるために発売した、日本初の専用化粧品「スポッツカバー」にさかのぼります。

人は本来、多様であるとの認識のもと、一人ひとりが自分らしい人生を実現できる社会を目指して活動しています。

E(環境)についても資生堂は着実に取り組んできました。化粧品を主力とするものづくりを通じ、環境課題に全社でコミットし、中長期的なKPI(重要業績評価指標)を設けています。

資生堂は環境領域において、3つの戦略アクションを立てて実行しています。1つ目は「地球環境の負荷軽減」です。二酸化炭素(CO2)排出量の削減、水使用量の削減、そして埋め立て廃棄物ゼロを目標にしています。CO2排出量は燃料の消費に伴う自社の工場の排出(スコープ1)、他者から供給されたエネルギーの消費に伴う自社のオフィスの排出(スコープ2)、その他のバリューチェーンからの間接排出(スコープ3)のそれぞれについて具体的な数値目標を定めています。例えば、国内外のすべての工場で電力の100%カーボンニュートラルを達成し、現在も工場、オフィス、研究所で計画を作成し、取り組んでいます。

2つ目は「サステナブルな製品の開発」です。化粧品成分と包装容器の両方で進めています。包装容器ではプラスチックの削減を進め、2025年までに100%サステナブルな容器※1を実現する目標を掲げています。おしろいのつけかえ(レフィル)容器はすでに1926年から手がけており、化粧品の「つめかえ・つけかえ」習慣が浸透していない海外でも早くから展開し、2022年時点で770以上のSKU(商品の最小管理単位)を取りそろえてきました。23年には、「ボトル製造」と「中味液充填」をワンステップで実現し、原材料調達~生産~使用~廃棄のサプライチェーン全体でCO2排出量※2を削減できる新技術「LiquiForm®(リキフォーム)」を世界で初めて化粧品に採用しています。本体容器を繰り返し使用することにより、使用後廃棄するプラスチック量を92%削減※3できます。

加えて容器のリサイクルも積極的に進めています。小売店で容器を回収したり、ケミカルリサイクル(使用済み資源を化学物質に分解、原料に変えてリサイクル)の技術を持つ他社とも協力したりして、活用の方法を研究しています。

1934年に女性の活躍支援で誕生したミス・シセイドウ

1926年につけかえの概念を社会に発信

3つ目は「サステナブルで責任ある調達」です。特に焦点となるのは、化粧品の原材料となることの多いパーム油です。汎用性が高く価格もリーズナブルなため、食品や日用品にも幅広く活用されています。

パーム油はインドネシアやマレーシアといった亜熱帯地方のアブラヤシの果実から採取しますが、農地開発のため熱帯雨林の森を伐採することによる森林破壊が問題となります。ほかにも、子供や女性の労働による人権問題、焼き畑による野生動物の絶滅危機など生物多様性への影響といった様々な問題が生じています。資生堂は責任ある調達をするためRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)認証を活用しています。

資生堂では、商品の開発段階で全体的な環境負荷がどれくらい変わるのか、自動計算できるシステムを開発しています。世界120の国と地域で事業を展開している資生堂は、サステナビリティへの取り組みが最も先進的な欧州のネットワークがあることが強みと考えています。

ESGのG(ガバナンス)は企業の長期的な目標に対する自己管理体制ですが、企業の持続性に対する投資判断として大切な情報です。これらの取り組みを自社のサイトやSNS(交流サイト)での発信を通じて、しっかりとわかりやすく伝えていくことが大事です。資生堂は生活者と接点があるBtoC企業として、正しい情報を透明性とともに伝える方法を考えています。

E(環境)とS(社会)は現代の生活者に望まれる情報でもあり、自分が買っている商品や自分の購買行動が環境にいいのか、社会の課題に役立っているのかを知るきっかけになります。例えば「エリクシール」というエイジングケアブランドでは、未来の象徴である「ドラえもん」と製品がコラボをすることで、日々の行動を変えることが環境負荷軽減に貢献するというメッセージを伝えています。生活者に情報を伝え啓発することで、行動の変容を促しながら、お客さまとともにサステナビリティを推進していくことが大切だと考えています。

サステナビリティに取り組んでいて感じるのは、1社だけでは限界があるということです。他社と競合するのではなく、共通の社会・環境課題に対して協業したり情報共有したりして、共走することがサステナビリティの実現には必要です。

例えば、藻類基点のサステナブルな新産業を構築するプロジェクト「MATSURI」には日本企業も複数参画していますが、ここに資生堂も参画しています。太陽光を唯一のエネルギー源とした藻類の大規模生産と事業化に強みをもつ、ちとせグループが主体となり、藻類基点のサステナブルな新産業を構築するプロジェクトです。競合他社を含めた企業間での連携を強化することで、ステークホルダー(利害関係者)の範囲も広がり、サステナビリティへの展望が広がっていきます。資生堂という一企業としての活動の範疇(はんちゅう)を超えて、日本そして世界全体のサステナビリティの取り組みにも貢献していきたいと考えています。

  1. ※1:プラスチック製容器について
  2. ※2:ディスペンサーやオーバーキャップの再利用を目的に、容器に仮キャップを装着したつけかえ容器を一部製品で販売する従来型のつけかえ容器と、リキフォームによる新規つけかえ容器を同じ容量で比較した結果です。
  3. ※3:お客さまが2本目を購入時、本体容器を廃棄する場合と、使用後にレフィル容器のみ廃棄する場合との比較。

環境に対する3つの戦略アクション

  1. ※1:資生堂全事業所(対2019年)
  2. ※2:資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体、経済原単位(対2019年)
  3. ※3:資生堂全事業所、売上高原単位、2014年比
  4. ※4:自社工場のみ
  5. ※5:プラスチック製容器について
  6. ※6:RSPOの物理的なサプライチェーンモデルによる認証:アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマスバランスに基づく
  7. ※7:製品における、認証紙または再生紙など

社会に対する3つの戦略アクション

よりよい環境社会を実現したい

資生堂は、財務に影響のある気候関連情報の開示を推奨する気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に2019年に賛同するなど、サステナブル経営に取り組んできました。もちろん気候変動リスクに対する取り組みは、それ以前から継続して実施しています。

経営革新本部 サステナビリティ戦略推進部 シニアスペシャリスト
大橋 憲司氏

化粧品に使う油、界面活性剤、保湿剤の原料である農作物の栽培には大量の水を必要とします。どこでどれだけ水が使われているのか、水のバリューチェーンを10年以上前から研究してきました。今後、気候変動が進んだときに水を安定的に使い続けられるのか、どの地域のどの農作物に影響があるのかについて、調査・分析しています。

温暖化ガス排出量を示すスコープ3の算定手法は、バリューチェーンを通じた水消費の分析にも生かされており、TCFD・TNFD(自然関連財務情報開示タスクフォース)のリポートにも結果を開示しています。水のバリューチェーンをはじめ、サステナビリティに関する情報開示には将来予測が求められるため、事業状況と比べて不確実性が高くなります。影響は長期にわたるため、完璧な報告書を出すことはできません。ですが、たとえ完璧でなくても、今できる範囲で最も効率のよい方法(ベストプラクティス)を透明性とともに開示することが大事です。

このような情報開示を含めて、サステナビリティの取り組みは楽しんで行うことも大切だと考えています。その一環として、社内で親子を集めて海に行く「海のいきもの観察会」も続けています。楽しみながら、科学に寄り添った方法で活動を続けていきたいと考えています。

情報開示の目的は「開示すること」にあるのではなく、あくまでも事業の成長や存続のための取り組みが土台となり、ESGの情報を必要としている人に届けることです。実のある取り組みや開示によって、環境がよくなっていくことが理想です。しっかりとした根拠に基づいた分析、情報収集、開示がさらに社会に浸透していくことを目指しています。

海のいきもの観察会の様子

進化するつけかえ容器。グローバルで展開する

ドラえもんを起用し、レフィル促進キャンペーンを
日本およびアジアの国・地域全体に拡大。
2023年には年間約400トンのプラスチック使用量削減を目指す

※日経電子版広告特集で2023年12月19日~2023年12月28日に掲載。記事・写真・図版など、すべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信等を禁じます。