2021年11月17日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、動きまで再現した電子皮膚TM「4DデジタルスキンTM」を開発
~異次元の扉を開く皮膚解析新技術~
資生堂は、国際医療福祉大学 医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授と自治医科大学、生理学研究所との共同研究により、革新的な皮膚解析技術、「4DデジタルスキンTM」を開発しました。これは皮膚が変形する過程を、内部構造まで超高精細にコンピューター上に再現する新技術です。この技術により、皮膚の変形で起きるシワやたるみの根源的な原因を解明し、対応手段の開発を飛躍的に進めることが可能となります。本研究成果の一部は「第31回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)※1横浜大会(2020/10/21-30)」で発表し、最優秀賞を受賞しました。発表者の江連智暢フェローは、IFSCC本大会で4回連続の最優秀賞の快挙を成し遂げました。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチで進めています。これは皮膚で起きる生命現象に、Inside (本技術)とOutside (独自の顔形状解析技術)から迫るアプローチで、この異なる観点の融合により、顔の老化に関する革新的な価値を創出していきます。
※1IFSCC : The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists
皮膚の本質を捉える
皮膚は常に重力や表情で変形し、またこれに柔軟に抵抗する「動き」のある器官です。この動きのバランスが崩れると、シワやたるみに繋がります。そのため、こうした美容上の問題を根源的に改善するには、皮膚の動きを解き明かすことが必要です。
これまで研究チームは、世界に先駆けて、「静止」した皮膚を、超高精細に3次元で解析する技術を開発してきました。その開発で集積した知見や技術を基に、今回さらに「動き」のある皮膚を解析する新技術の開発に挑みました。
コンピューター上に皮膚の動きを再現
はじめに研究チームは、皮膚検体に様々な変形を加え(圧縮、屈曲、引張等)、X線-CTで3次元的に皮膚内部を観察しました。次に、得られた膨大な画像データ上の様々な皮膚構造を、人工知能(AI)を用いて同定しました。さらに、各構造が皮膚の変形に伴い、どのように動いたかを追跡しました。そして、各構造の種類や動きに関する情報をデジタル的にコンピューター上に再現し、この電子皮膚TMを「4DデジタルスキンTM」と呼ぶこととしました(PDF内 図1)。
難解な皮膚の動きを直観的に理解
この4DデジタルスキンTMは、コンピューター上で皮膚を動かし、その動きを超高精細にカラーで表示して視覚的に理解することが可能です。また、デジタル的に創りだした皮膚のため、コンピューター上で自在に切断すること(デジタル解剖)(PDF内 図2)、特定の構造を分離すること(デジタルソーティング)も可能です(PDF内 図3)。さらに変形量を定量することや、変形の方向をベクトル表示して解析することも可能です(PDF内 図4)。このように4Dデジタルスキン TMは、複雑な皮膚の構造と、より難解なその動きを、コンピューター上で容易に解析し、直観的に理解することを可能としました。
皮膚解析の新たな時代の幕開け
4DデジタルスキンTMの開発は、研究対象を「静止」した皮膚から、本来の姿である「動き」のある皮膚へと、飛躍的に進化させました。またこの技術は、複雑な皮膚の動きを、コンピューター上で直感的に理解することも可能としました。本技術により皮膚の動きで発生するシワやたるみに関して、より根源的な要因を解明することが可能となりました。今後はこれらの技術革新を基に、革新的な美の価値創出を加速していきます。
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。