資生堂は、バリューチェーン全体でサステナブルなものづくりを目指しています。
お客さまに安心して、自信を持って製品を選んでいただけるよう、解決すべき環境・社会課題を抱える化粧品の原材料サプライチェーンにおいて、持続可能で責任ある調達が重要と考えています。
原材料調達のなかでも、特に生物多様性への影響が大きいと評価された素材について認証原料などの持続可能性に優れた素材への切り替えを進めます。
また、より解像度の高い実態把握を目的としてトレーサビリティの明確化を図るトップダウンアプローチと、取引のあるすべてのサプライヤーに対して環境や人権領域における問題発見と解決のPDCA サイクルを回すサプライヤーアセスメントプログラムによるボトムアップアプローチを組み合わせ、サステナブルで責任あるサプライチェーンの構築に努めています。
原材料の調達において、人権侵害、生物多様性、資源の有効利用など、さまざまなサステナビリティ課題に責任をもって取り組むことは、長期的に資生堂の原材料調達とサプライチェーン全体のレジリエンス向上に貢献します。そのため当社では、サプライヤーに対し調達方針・行動基準・ガイドラインを提示し、責任ある調達に努めています。また、人権や環境面での課題が懸念される原材料については、トレーサビリティを明確化することで、課題の把握と解決に取り組んでいます。
資生堂は2020年に、パーム油と紙について中長期的な目標を開示し、サステナブルな原材料への切り替えを進めています。パーム油、紙の調達に関してNDPE(No Deforestation, No Peat, No Exploitation:森林破壊ゼロ・泥炭地開発ゼロ・搾取ゼロ)を支持し、サプライヤーに対してもNDPEの遵守徹底を要求しています。環境だけでなく、人権など社会面も重視した調達を行うことを「資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン」に明示し責任ある調達を推進しています。
パーム油はその汎用性の高さから、食品から化粧品までさまざまな製品に使用される一方で、農地開発に伴う熱帯雨林の破壊や人権侵害に関わる課題も発生しており、サステナブルで責任ある調達が求められています。
資生堂は、2010年にRSPO※1に加盟し、「2026年までに100%サステナブルなパーム油の調達を達成」という中長期的な目標を2020年に開示しました。資生堂グローバル本社と地域本社の主要部門が緊密に連携し目標達成に向けた取り組みを推進しています。パーム油関連原料を取り扱うすべてのサプライヤーにRSPO加入および物理的な認証パーム油※2への切り替えを要請し、サプライヤーと協働で持続可能なパーム油由来原料の調達やトレーサビリティ調査に取り組んでいます。
2024年には、日本国内サプライヤー向けの購買方針説明会を実施し、パーム油のトレーサビリティ推進への協力を要請しました。2024年は、パーム油由来原料の80%※3を物理的な認証パーム油に切り替え、パーム油由来原料の100%に相当するRSPOクレジットを購入しています。また、資生堂の全工場がRSPOサプライチェーン認証を取得しています。※4
他企業との協働による課題解決の取り組み強化のため、資生堂はCGF※5の日本のパーム油ワーキンググループに参画するとともに、2019年にはJaSPON※6に加盟しました。加えて、パーム油ミル(搾油工場)の調査活動やASD※7への加盟などを通じて、すべてのパーム由来原料のトレーサビリティを強化しています。資生堂はASDを通じて、化粧品、ホームケア、ヘルス&パーソナルケア、油脂化学工業関連企業と協力し、パーム油およびパーム核油誘導体の調達における上流サプライチェーンの可視化に取り組んでいます。引き続き、パーム油ミルの情報収集を進めるとともに、将来的にはパーム農園までのトレーサビリティの確保を目指しています。
また、「資生堂カメリアファンド」※8を通じて、インドネシアの小規模パーム農家の育成などを行っているWWFジャパンの活動を支援しています。WWF※9は環境に配慮した生産方法や労働安全のトレーニング、生産者組合の設立のサポートなどを通じて、RSPO認証の取得や農家の生計の向上に取り組んでいます。資生堂は、上記活動の支援対象でありRSPO認証を取得した小規模農家が販売するRSPO認証クレジットを購入し、環境・社会課題に対応した持続可能な調達に貢献しています。
RSPO, Jonathan Perugia
私たちの進捗状況はwww.rspo.orgからご確認ください
紙の原料となる木質チップを生産する植林地には、森林破壊や生物多様性の喪失、地域住民の権利侵害が問題となっている地域もあります。このため資生堂は、製品のケースや能書に使用される紙について、2023年までに認証紙や再生紙などのサステナブルな紙※1を使用するという目標に向けて取り組みを進め、達成することができました。2024年も継続して達成する※2とともに、当社工場が調達した紙ケースについてトレーサビリティ調査を開始し、56.8%※3について原産地を確認しました。
さらに、販促物などについてもサステナブルな紙への切り替えを推進しています。特に、販促物については、2023年から社内において「POSMエコデザインガイド」に沿って取り組みを進め、紙器類を認証紙や再生紙に切り替えています。また、一部の化粧品サンプル台紙については統一化・標準化により、紙の使用量削減を進めています。
化粧品の容器包装には、環境配慮に加えて美しいデザインや重量に耐え得る強度などさまざまな特性が求められます。製紙メーカーとの協働により、こうした優れた特性や新しい機能の紙製容器包装のイノベーションにも取り組んでいます。
マイカは、美しい光反射や耐熱性から、化粧品産業だけではなく幅広い産業で使用されている鉱物です。一方で、化粧品に使用されるインド産マイカは採掘時に児童労働が関係している可能性が指摘されています。
資生堂は、インド産マイカのサプライチェーンにおける人権課題に真摯に取り組むために、RMI(Responsible Mica Initiative)に設立時の2017年から加盟しています。
RMIは、マイカ生産国の採掘現場から児童労働・強制労働を撲滅し、サステナブルで責任あるマイカ生産を確立することを目標に掲げています。2018年から2024年までの7年間で、NGO団体やインド政府、参加企業などと連携し、コミュニティエンパワーメントプログラムを実施してきました。具体的には、180の村において、マイカ生産によって生計を立てている約1 万6,500 の家庭(約9 万1,100 人に相当)に対し、彼らの収入と生計を改善するための支援を行いました。RMI設立当初はインドの2州にフォーカスしていましたが、現在はマダガスカルにも取り組みを拡大しています。
資生堂は、RMI加盟企業を通じてインド産マイカの調達を行うとともに、人権課題がないことの確認を進めています。今後もRMI加盟企業を中心に、社会的懸念のない生産者から供給されるマイカの使用に努めます。
Responsible Mica Initiative
資生堂では、多種多様な原材料を使用しており、「資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン」で言及している原材料にとどまらず、それぞれの原料を取り巻く課題をいち早く認識し、迅速に対応することを目指しています。
資生堂は、化粧品業界18社※から構成されるコンソーシアム「TRaceability Alliance for Sustainable CosmEtics(TRASCE)」に2023年から参加しています。TRASCEの長期的な目標は、化粧品業界のバリューチェーン全体にトレーサビリティを拡大することです。メンバー企業とともにISN 社が提供する共通のデジタルプラットフォーム「Transparency-One」を用いてバリューチェーン全体の情報をマッピングすることに取り組んでいます。このプラットフォームを通じてデータが収集されたあと、リスクを分析し、アクションプランが必要なサプライチェーンを特定することがコンソーシアムの目的です。
欧州地域本社では、他社との協働を通じて原材料農家を支援する取り組みを進めています。
香料の原料となるゼラニウム・ブルボン(ゼラニウムの一種)はフランスのレユニオン島で生産されていますが、生産や収穫の多くを女性が担っています。その労働条件を改善し、安定供給を図るため、サプライヤーおよび地元の農業協同組合と提携しています。取り組みの1つとして、持続可能な調達の確保や女性の労働条件改善のため、新しい収穫機器への投資を行っています。
また、糖蜜アルコールの長期的な供給確保とESG課題への対応を目指し、サプライヤーとパートナーシップを締結。2024年10月より、再生可能農業に取り組む農家が栽培したビーツを原材料としたアルコールを購入しています。
資生堂の事業活動は、地球の恵みと豊かな生物多様性に支えられています。TNFD分析によって事業と生物多様性の関係を分析し、原材料調達におけるインパクトが最大であること、特に陸域生態系への依存と影響が大きいことなどを特定しました。これらの結果は「資生堂 気候/自然関連財務情報開示レポート」として公開しています。
生物多様性の保全をグローバルで進めるために、各地域でコーポレート主導の取り組みを進めるとともに、各ブランドらしさを発揮した活動も活発に行っています。
欧州地域本社は、「SHISEIDO BLUE PROJECT」の一環として、イタリア最大のセーリングスクールCentro Velico CapreraとOne Ocean財団が行う長期プロジェクト「M.A.R.E.(研究と教育のための海洋アドベンチャー)」を展開しています。M.A.R.E.プロジェクトでは、地中海における海洋生態系保全を目指して、海洋調査、教育、生物多様性マッピングを進めています。
「M.A.R.E.」プロジェクト参加者の様子
日本では、古くから多くの薬草が栽培されてきた伊吹山※の自然保護活動を2022年より開始しました。独自の薬草園を開園し植物の栽培に加え、山麓に豊かな恵みをもたらす伊吹山の自然保護のため、当地域で環境保全に取り組むNPO法人「霊峰伊吹山の会」とともに、植生回復活動に取り組んでいます。2023年には、未利用の伊吹山の薬草を余すところなく活用するため、松田医薬品株式会社とともに薬草湯[蘇湯SOYU]を開発し、伊吹山の自然保護活動のためのクラウドファンディングの返礼品として活用しました。また、薬草園で栽培されたエンメイソウから抽出されたエキスを、ブランド「SHISEIDO」の「フューチャーソリューションLX」シリーズに配合しています。
資生堂は、さまざまなブランドや地域で生物多様性の保全に関する取り組みを行っています。
「SHISEIDO」は、2019年から “Respect for Ocean” をテーマに、グローバルで海を守る活動「SHISEIDO BLUE PROJECT」を実施しています。美しい海の実現に向けて、各国各地域の資生堂チーム、ローカルコミュニティやNGO団体と連携し、ビーチクリーンや植樹活動などを継続して行っています。6年目となる2024年は6月8日の世界海洋デーに、5カ国9カ所でビーチクリーン活動、地中海の海洋生物や生態系の保護保全活動を実施しました。
「樹木との共生」をテーマに掲げる「BAUM」は、森林資源の循環を促進する取り組みの一環として、製品の原料や、容器の木製パーツにおけるサステナブルな循環を目指し、店頭で育てた苗木を国内2カ所の森へ植樹しています。2021年から継続している「BAUM オークの森」での植樹に加え、2024年より、新たに「BAUMひのきの森」における植樹活動を開始しました。
BAUM ひのきの森
企業が持続的に発展していくためには、経済価値だけでなく社会価値の観点からも社会に貢献していくことが重要と資生堂は考えています。すべての事業におけるサステナブルで責任ある原材料調達を通じて、人権の尊重と環境の保全に取り組むことは私たちの務めです。
近年、社会課題や環境問題の深刻化に伴い、企業に対して各国法令の遵守はもとより国際条約や国際規約を尊重し、サプライチェーン全体でサステナブルな社会の実現に取り組むことが強く求められています。そのため、資生堂では調達に関する基準と方針などを定めています。
エシカルなサプライチェーンを実現するために、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」、「資生堂グループ 調達方針」、「資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン」を遵守し、また定期的にサプライヤー評価や監査によるモニタリングを行い、サステナブルで責任ある原材料調達を推進してきました。私たちの調達活動がサプライヤー行動基準や調達方針に相反することがないよう、グローバルで適切なKPIを設定し、その進捗を定期的に「購買責任者会議」や「Sustainability Committee」で報告・審議しています。これらの取り組みを通じて、サステナブルな調達が実践できているかを確認しています。
さらに、ステークホルダーとの課題の共有・解決に努めるとともに、国際的な人権の専門家や原材料産地で働く方々をはじめとするさまざまな関係者との対話を図り、専門的な知見に基づいた責任ある調達の活動に取り組んでいます。
資生堂グループ 調達方針
私たちは、お客さまに満足いただける安全で優れた製品を提供するために、すべてのサプライヤーを尊重し、社会・環境面に配慮した持続可能な調達の実現を調達方針として掲げています。
コストや品質といった経済価値に紐づく項目に加えて、公正な取引、法令順守、異なる文化や価値観の尊重、人権尊重、環境配慮といった社会価値の共創に向けた方針を宣言し、サプライヤーに対し方針の内容を共有しています。
2022年2月に、サプライヤーと更にサステナブルで責任ある調達を積極的に推進していくため、本方針を改定し公表しました。環境や人権面でサプライヤーに遵守を求める内容を方針に規定するとともに、第三者監査実施等による厳格で客観的なリスク特定と是正プロセスの導入や、サステナビリティ観点でサプライヤーを評価することを明記しています。
資生堂グループ サプライヤー行動基準
国連グローバル・コンパクトに参加したことを契機として、2006年に「資生堂グループ サプライヤー行動基準」を策定しました。この行動基準は、人権、法令遵守、労働慣行、知的財産の保護、機密の保持、環境保全、公正な取引に関する規範を明文化したもので、私たちと取引のあるすべてのサプライヤーに対して遵守を求めています。
サプライヤーと協働して持続可能な調達を実現するべく、サプライヤーアセスメントとその後の是正活動を含むサプライヤーアセスメントプログラムを定期的に実施しています。サプライヤー行動基準に違反していることが判明した場合には、是正要請、是正指導、支援を実施しています。
資生堂グループ サプライヤー行動基準(2019年6月発行版)[ PDF : 1.09MB ]
資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン
原産国において環境・人権問題が深刻化している可能性が高いと判断した原材料については、問題への不関与を第三者認証された原材料への切り替えや、国際的なイニシアティブへの参加による問題解決を進めています。
そのなかでも近年、森林破壊や労働問題が強く指摘されたパーム由来原料、紙、マイカについて問題解決に向けた目標と手段を明確化し、持続可能な調達を実現するためのガイドラインを策定しています。
資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン [ PDF : 662KB ]
資生堂は「資生堂グループ 調達方針」にある「よきパートナーシップの構築」「公正な購買取引」「契約の履行」「責任ある調達の推進」「多様な価値観の尊重」という方針に基づき、世界各国・各地域のサプライヤー860社※と取引を行っています。
取扱品目は当社製品に関するパッケージ、原材料、香料などの生産用材、販売支援ツール、およびOEM調達品、生産委託品です。
戦略サプライヤー特定のプロセス(年1回特定)
契約締結・取引開始 |
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戦略サプライヤーの特定 |
資生堂が2030年に最も信頼されるビューティーカンパニーとなるため、戦略的な関係を築き、共に成長を目指すビジネスパートナーを戦略サプライヤーとして定義※1しています。
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戦略サプライヤー |
| サプライヤー数 |
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1次 | 23社 |
1次以外 | 3社 |
合計 | 26社 |
1.新規取引先と当社のコンタクト | |
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1.新規取引先からの提案 | 2.当社からの連絡(調達希望品目の案内) |
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2.提案内容の検討 | |
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3.取引先の審査 | |
以下の点について審査いたします。
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4. 商品化に向けた詳細の検討・評価 | |
提案内容に対する具体的な商品ニーズがある場合には、商品化に向けた詳細な検討を行います。その際、製品仕様に基づいた詳細な見積りをお願いいたします。 評価用サンプルによる検討も同時に行います。 |
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5. 最終交渉・購買契約締結 | |
調達にあたってのすべての条件について再度確認・調整のうえ購買契約を締結いたします。 なお、購買契約にて、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」への遵守も合意いただいています。 |
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6. 取引開始 | |
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7. パフォーマンスレビュー | |
毎年1回、取引先をQCDST※1およびサステナビリティの観点※2から評価しています。 詳細は「サプライヤーパフォーマンス評価」をご確認ください。 |
資生堂は購買品目におけるカテゴリー戦略を立案し、それに基づいてソーシング活動を行っています。カテゴリー戦略は、QCDST※のビジネス面での要求事項、およびサステナビリティ観点での要求事項を踏まえて策定しています。定期的にカテゴリーのパフォーマンスをレビューし、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」の遵守状況に応じて、戦略を見直しています。
このように、当社の購買慣行を定期的にレビューし、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」との整合性を担保するとともに、サステナビリティ観点での要求事項との矛盾がないことを確認しています。
資生堂は、持続可能なサプライチェーンの構築とサプライチェーン全体におけるリスクを可能な限り排除することを目指し、サプライヤーアセスメントプログラムの実施を進めています。
当社は、2022年に改定した「資生堂グループ 調達方針」に基づきプログラムを実施しています。サプライヤーアセスメントによりリスクが高いことが判明し、監査で発見された課題が是正されていないサプライヤーとは取引を行いません。
すべてのサプライヤーを対象に取引を始めるにあたり、まずEcoVadis/Sedex/資生堂SAQのいずれかの評価法※1でサステナビリティ(人権・労働安全衛生・環境・ビジネス倫理)の基準に対してセルフアセスメント(自己評価)を実施しハイリスクでないことを確認し、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」の遵守に対し合意を得たうえで取引を行います。
既存のサプライヤーに対しても、前述の評価法を用いてサプライヤーを評価することで「資生堂グループ サプライヤー行動基準」の遵守状況を継続的に確認しています。
資生堂では、リスクの程度やビジネス上の重要性から、優先的にアセスメントすべき重要なサプライヤー※2をスクリーニングしています。スクリーニングにあたっては、サプライヤーのリスク(ESGリスク、国・産業・商材リスク)、スペンド、QCDST※3パフォーマンスなどを考慮しています。
セルフアセスメントの結果については、リスクの程度に応じてローリスク・ミドルリスク・ハイリスクの3種類にサプライヤーを分類し、ハイリスクに該当する場合は第三者監査※4を実施しています。
また、すべてのサプライヤーに対して対面またはオンラインでアセスメント結果のフィードバックを行うとともに、必要に応じ従業員がサプライヤーの拠点を訪問し、改善に向けた議論も行っています。
第三者監査では、現場視察に加え労働者インタビューや必要書類の検証などが行われます。監査により発見された課題については、課題の是正を要請しています。重大な課題が見つかった場合は、再度第三者監査により是正状況を確認し、一定期間内に是正されていない場合は、取引の停止を検討しています。
ツール | ツールの説明(主な評価項目など) |
---|---|
EcoVadis |
方針、実施対策、結果を通して企業のESGマネジメントシステムの質を評価する。評価は、環境、労働慣行と人権、倫理、持続可能な資材調達の4つのテーマにおいて実施される。 質問票は、回答企業の業種、ロケーション、企業規模などに応じてカスタマイズされる。また、回答の際、回答を裏付ける証明書類の提出が求められる。 |
Sedex |
労働基準、安全衛生、企業倫理と環境に基づく設問によりサプライヤーを評価する。設問の量はサプライヤーの業種によって異なる。 リスクレベルは、質問票への回答に加え、国やセクターなどに固有のリスクも考慮し算出される。 |
資生堂SAQ (Self-Assessment Questionnaire) |
「資生堂グループ サプライヤー行動基準」に基づく設問表で、人権・労働、安全衛生、環境、ビジネス倫理の4つの基準で評価を行う。 |
資生堂では、調達カテゴリー・地域・サプライヤー階層の観点で徐々にサプライヤーアセスメントプログラムのスコープを拡大しています。
調達カテゴリーでは、生産用材・OEM調達品・生産委託品、販売支援ツールを対象とし、グローバルスコープで実施しています。サプライヤー階層の観点では、直接取引のあるサプライヤーに加え2次以降のサプライヤーも対象としています。
サプライヤーアセスメントプログラムの方針や結果は、「Sustainability Committee」にて審議された後、取締役会に提案、報告しています。
1次サプライヤーアセスメント
2024年には、これまでの直接材・POSM※1に加えて、間接材※2にもサプライヤーアセスメントプログラムの対象カテゴリーを拡大しました。
直接材・POSMについて、2024年は、2023年末までに是正が完了しなかったハイリスクサプライヤー3社の是正活動を行いました。また、リスクの程度やビジネスの観点で重要な1次サプライヤー35社を対象にグローバルでサプライヤーアセスメントプログラムを実施し、1社がセルフアセスメントでハイリスクに該当しました。これらのハイリスクサプライヤーに対しては、第三者監査により是正を確認しました。
間接材については、2025年からセルフアセスメントを開始することを踏まえ、2024年はグローバルで約20,000社を対象に、リスクスクリーニング※3を行いました。その結果、セルフアセスメントの対象となる156社を特定しました。
1次サプライヤーアセスメント実績
実施年 | アセスメント社数 | セルフアセスメントにより特定したハイリスクサプライヤー数 | 2024年度末時点でのハイリスクサプライヤー数 |
---|---|---|---|
2021 | 279 | 17 | 0 |
2022 | 67 | 10 | 0 |
2023 | 860 | 12 | 0 |
2024 | 35 | 1 | 0 |
2次以降(上流)サプライヤーアセスメント
資生堂では、1次サプライヤーのみならず、2次以降(上流)のサプライヤーに対してもアセスメントプログラムを実施しています。上流サプライヤーが広範囲に及ぶことから、優先順位づけを行い、対象を限定してアセスメントを行っています。
具体的には、当社の戦略サプライヤー(1次・2次)が指定した重要な製造サプライヤーを対象としています。これらのサプライヤーに対し、EcoVadisやSedexを使って評価を行うよう依頼しています。
その結果、2024年は220社の上流サプライヤーに対して評価を完了し、ハイリスクに該当する取引先はありませんでした。また、2023年にハイリスクに該当した1社については、2024年に第三者監査を受け、ハイリスクではないことを確認しています。
2次以降(上流)サプライヤーアセスメント先
(KPI.1)サプライヤーセルフアセスメント比率(1次サプライヤー、社数ベース)
年度 | 2021 | 2022 | 2023 | 2024 | |
---|---|---|---|---|---|
実績 | 実績 | 実績 | 実績 | 目標 | |
比率 (アセスメント社数)※1 |
97%(279) | 100%(67) | 100%(860) | 100%(35) | 100% |
スコープ | グローバル本社 欧州地域本社・ 一部のサプライヤー |
全リージョン・ 重要1次サプライヤー |
全リージョン・ 全1次サプライヤー |
全リージョン・ 重要1次サプライヤー |
(KPI.2)戦略サプライヤーのセルフアセスメント比率(1次サプライヤー、社数ベース)
年度 | 2021年実績 | 2022年実績 | 2023年実績 | 2024年実績 | 2025年(目標) |
---|---|---|---|---|---|
比率 (アセスメント社数) |
100%(17) | 100%(23) | 100%(24) | 100%(23) | 100% |
2024年は4社に対して第三者監査を実施しました。当年中に下記の是正対応を行い、是正が完了したことを確認しています。
分野 | 課題の詳細(例) | 是正内容(例) |
---|---|---|
労働安全衛生 | 倉庫エリア内の防火証明書の期限が切れている。 | 証明書を更新した。 |
廃棄予定の廃液の保管が不適切である。 | 関係者に訓練を実施した。 | |
危険物を扱う場所に洗眼器が設置されていない。 | 洗眼器を設置した。 | |
消防訓練の対象が全社員ではなかった。 | 全社員を対象に訓練を実施した。 | |
非常口の標識が荷物で遮られ視認できない。 | 視認できる場所に非常口を示す表示を取り付けた。 | |
人権 | 従業員の長時間労働が発生している。 | 現場責任者による管理を徹底した。 |
環境 | 課題なし |
資生堂は2023年3月に「パートナーシップ構築宣言」を公表しました。この宣言は、サプライチェーンにおいて発注者である企業が、サプライチェーン全体の連携・共存共栄を目指すことを代表者の名前で宣言するものです。
中小企業庁(日本)が推進しているこの宣言は、サプライヤーとの関係を強化するとともに、直接取引のあるサプライヤーを通じ、その先のサプライヤーにも働きかけることで、サプライチェーン全体で持続可能な成長を果たすことを目的としています。資生堂は、サプライヤーとのパートナーシップを妨げるような取引慣行の防止や商慣習の改善を通じて、サプライヤーとの共存共栄の構築を目指します。
当社では1年に1回、QCDST※およびサステナビリティの観点からサプライヤーのパフォーマンス評価を実施しています。評価結果は、ビジネスミーティングなどでサプライヤーにフィードバックし、改善を依頼するとともに、カテゴリー戦略に反映しています。なお、評価基準において、サステナビリティ関連は全体20%のウエイトを占めています。具体的には、セルフアセスメントの結果などを考慮しています。
当社は、高いパフォーマンスを発揮したサプライヤーのトップマネジメントを招待し、資生堂の中期経営戦略、調達活動の方針、およびサプライヤーへの期待事項を共有するために、「Shiseido Suppliers’ Day」を開催しています。
2021年に、グローバルで初めてオンラインで開催しました。このなかで、資生堂におけるサステナビリティの中期目標やアクションや人権・環境・社会の面でのサプライヤーへの期待事項も説明し、理解と協力を依頼しました。
資生堂は、時代の変化や社会からの新たな要求に応えていくためにも、調達に関して、サプライヤーにタイムリーで的確な情報共有が重要であると考えています。
したがって、購買方針について周知を図ることを目的に、定期的にサプライヤーとの「購買方針説明会」を開催しています。各カテゴリーにおける購買方針や依頼事項について直接共有するとともに、サプライヤーからの質問事項、要望に応える場として活用しています。
また、サプライヤーとより一体となって「責任ある調達」を推進していくため、2023年より日本国内および一部の海外事業所にて、サステナブルな調達に関する人権や環境の方針、および依頼事項についても説明する機会を設けています。
2024年には「購買方針説明会」において日本のお取引先約300社を対象に、近年の国際的なサステナビリティ動向やサステナビリティに関する中長期的な目標、サプライヤーアセスメントプログラムの推進などについて説明を行いました。加えて、モチベーションの向上と感謝の意を込めて、サプライヤーアセスメントプログラムで優れた成果を出したサプライヤーに対し、「感謝状贈呈式」を実施しました。今後も説明会の開催に加えてこのような取り組みを継続し、サプライヤーエンゲージメントを強化していきます。
購買方針説明会の様子
資生堂では、グローバル各拠点の購買責任者と定期的に会議を開催しています。会議では、サステナビリティをはじめとする重要なテーマの方針や戦略を討議し、緊密な連携を図っています。
また、1年に1回グローバル各拠点の購買責任者が一堂に会するSPS(Shiseido Procurement Summit)を開催しています。この場を通して、サステナビリティ活動のグローバルへのさらなる浸透も進めています。2023年は東京、2024年は上海で開催しました。
中国で開催したShiseido Procurement Summit
当社はサステナブルで責任ある調達を資生堂グループ全体で実行するため、購買部門の社員を対象に、人権・労働安全衛生・環境などの観点でさまざまな教育を行っています
実施年 | 教育テーマ | 参加対象 |
---|---|---|
2022年 | 「資生堂グループ 調達方針」に関する社内説明会 | 全リージョン 購買部門 |
EcoVadis社主催 バイヤー向けトレーニング※1 | グローバル本社、中国・トラベルリテール地域本社、 アジアパシフィック地域本社関連会社、欧州地域本社、 米国地域本社の各購買部門 |
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EcoVadis プログラムキックオフ※2 | 全リージョン 購買部門 |
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2023年 | DE&I 男性育児休業に関する意見交換会 | グローバル本社購買部門 |
DE&I 価値観や文化が異なる相手との コミュニケーションに関する勉強会 |
グローバル本社購買部門 | |
サステナビリティに関連した課題と 資生堂のサステナビリティ戦略に関するセミナー |
欧州地域本社購買部門 | |
気候変動とカーボンニュートラルに関するセミナー | 中国・トラベルリテール地域本社購買部門 | |
サプライヤーの人権課題とリスクマネジメントに関する ワークショップ※3 |
グローバル本社購買部門 | |
2024年 | DE&I 介護と仕事の両立に関する勉強会 | グローバル本社購買部門 |
DE&I ハンディキャップに関する意見交換会 | グローバル本社購買部門 | |
気候変動に関するワークショップ | 欧州地域本社購買部門 | |
間接材アセスメントに関するトレーニング | グローバル本社、中国・トラベルリテール地域本社、 アジアパシフィック地域本社関連会社、欧州地域本社、 米国地域本社の各購買部門 |
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サステナブルな容器開発ポリシーに関する社内説明会※4 | グローバル本社、中国・トラベルリテール地域本社、 欧州地域本社、米国地域本社の各購買部門 |
資生堂では、取引先のESGパフォーマンス向上や、当社の人権・環境に関する方針に対する理解を深めることを目的として、以下のような取り組み、トレーニングを定期的に行っています。
項目 | 対象 | 詳細 |
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資生堂グループ 調達方針の説明 | すべての取引先 |
|
セルフアセスメント結果のフィードバック | すべての取引先 |
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eラーニング (EcoVadisアカデミー) |
戦略サプライヤー |
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近年は以下の説明会、セミナーを実施しました。今後もより多くのサプライヤーへ教育プログラムを提供できるよう検討を進めています。
項目 | 対象 | 詳細 |
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EcoVadis説明会 (2021年~2022年) |
すべての取引先 |
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CDP説明会 (2023年5月) |
日本の取引先 |
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サステナビリティ 方針説明会 (2023年・2024年) |
日本の取引先 (2023年11月) 中国の取引先 (2024年6月) |
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EcoVadisスコアアップ セミナー(2024年6月) |
新規受審の取引先・一定 スコア未満の日本の取引先 |
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購買方針説明会 (2024年11月) |
日本の取引先 |
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EcoVadisスコアアップ セミナー個別相談会 (2025年5月) |
新規受審の取引先・一定 スコア未満の日本の取引先 |
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当社は2022年より、化粧品業界のサステナビリティに関連したイニシアティブであるRBI(Responsible Beauty Initiative)に参加しています。メンバー企業間でのベストプラクティスの共有や業界全体での課題に関するディスカッションを通じて、化粧品業界におけるサプライチェーン全体のサステナビリティ向上に努めています。当社、欧州本社購買部門の購買部長がRBIの最高意思決定機関であるステアリングコミッティーのメンバーとなっています。
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