企業が持続的に発展していくためには、経済価値だけでなく社会価値の観点からも社会に貢献していかなければならない、と資生堂は考えています。すべての事業におけるサステナブルな原材料調達を通じて、人権の尊重と環境の保全に取り組むことは私たちの務めです。
エシカルなサプライチェーンを実現するために、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」、「資生堂グループ 調達方針」、「資生堂グループ持続可能な原材料調達ガイドライン」を遵守し、また定期的にサプライヤー評価や監査によるモニタリングを行い、サステナブルな原材料調達を推進してきました。
さらに、ステークホルダーとの課題の共有・解決に努めるとともに、国際的な人権の専門家や原料産地で働く方々との対話を図り、専門的な知見に基づいた責任ある調達の活動に取り組んでいます。
近年、社会課題や環境問題の深刻化に伴い、企業に対して各国法令の遵守はもとより国際条約や国際規約を尊重し、サプライチェーン全体で持続可能な社会の実現に取り組むことが強く求められています。そのため、資生堂では調達に関する基準と方針などを定めています。
●資生堂グループ サプライヤー行動基準:国連グローバル・コンパクトに参加したことを契機として、2006年に「資生堂グループ サプライヤー行動基準」を策定しました。この行動基準は、人権、法令遵守、労働慣行、知的財産の保護、機密の保持、環境保全、公正な取引に関する規範を明文化したもので、私たちと取引のあるすべてのサプライヤーに対して遵守を求めています。サプライヤーと協同して持続可能な調達を実現するべく、定期的に調査・監査を通じたモニタリングを実施しています。サプライヤー行動基準に違反していることが判明した場合には、是正要請、是正指導、支援を実施しています。
●資生堂グループ 調達方針:私たちは、お客さまに満足いただける安全で優れた製品を提供するために、すべてのサプライヤーを尊重し、社会・環境面に配慮した持続可能な調達の実現を調達方針として掲げています。コストや品質といった経済価値に紐づく項目に加えて、公正な取引、法令順守、異なる文化や価値観の尊重、人権尊重、環境配慮といった社会価値の共創に向けた方針を宣言しています。
●資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン:原産国において環境・人権問題が深刻化している可能性が高いと判断した原材料については、問題への不関与を第三者認証された原材料への切り替えや、国際的なイニシアティブへの参加による問題解決を進めています。そのなかでも近年、森林破壊や労働問題が強く指摘されたパーム油由来原料と紙について問題解決に向けた目標と手段を明確化し、持続可能な調達を実現するためのガイドラインを策定しています。
取扱い品目は弊社商品(化粧品、トイレタリー製品、医薬事業)に関するパッケージ、化粧用具、原料、香料などの生産資材、販売支援ツールおよびOEM調達品です。
当社は「資生堂グループ 調達方針」にある「よきパートナーシップの構築」、「公正な購買取引」、「グローバルな調達に向けて」、「契約の履行」という理念に基づき、サプライヤーと取引を行っています。
当社は製品の生産用材を世界各国のサプライヤー約900社※1から調達しており、このうちグローバル本社購買部門が取引を行うサプライヤーは268社※2(2019年度実績)、欧州地域本社購買部門が取引を行うサプライヤーは225社(2019年度実績)、残りの約400社はその他地域(米州地域本社、中国地域本社等)の購買部門が取引を行うサプライヤーです。
当社では、毎年1回下記のとおりクリティカルサプライヤーを特定しています。
| サプライヤー数 |
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1次 | 170社 |
1次以外 | 31社 |
合計 | 201社 |
当社は、サステナビリティの観点からサプライヤーを定期的・継続的に評価し、持続可能なサプライチェーンの構築と責任ある調達の実現を目指しています。当社では、まず取引先が新規の場合、信用度調査、経営方針・姿勢ならびに機密保持の信憑性等の確認を行い、「資生堂グループ サプライヤー行動基準」への同意が得られたサプライヤーとのみ購買契約を締結しております。取引開始後は、資生堂SAQ※1、Sedex※2、EcoVadisのいずれかの手法※3で、年に1回評価を実施し、サプライヤーのサステナビリティに対する取り組み具合やリスクを把握しております。これらの評価結果を踏まえ、リスクの程度に応じてサプライヤーを分類し、ハイリスクに分類されたサプライヤーについては、フィードバックを通した問題の是正要請を行っています。また、一部のサプライヤーに対しては、第三者機関による監査も実施しております。
2019年度よりグローバル本社購買部門以外にも対象を拡大したことに伴い、KPIの見直し、目標の再設定を行いました。グローバルにアセスメントを行うべく、各リージョン間の連携を強め、今後もさらにスコープを拡大してまいります。
2019年度、グローバル本社購買部門では、前年度に取引実績があり、かつ当年度も継続して取引しているサプライヤー271社を対象に評価を行いました。そのうち、SAQでの評価を実施したサプライヤーが162社、Sedexが86社、EcoVadisは23社となっており、アセスメント比率100%を達成しました。また、欧州地域本社購買部門においては、85社を対象にEcoVadisによる評価を実施しました。
(KPI1)サプライヤーアセスメント比率(一次サプライヤー、数ベース)※1
2016 | 2018 | 2019 | 2021(目標) | |
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アセスメント対象スコープ | グローバル 本社購買部門 | グローバル 本社購買部門 | グローバル本社 欧州地域本社 購買部門 | 全リージョン 購買部門 |
サプライヤーアセスメント比率(アセスメント社数)※2 | 90% (224) | 89% (229) | 72% (356) | 70% |
(KPI2)クリティカルサプライヤーのアセスメント比率(一次サプライヤー、数ベース)
2019 | 2021(目標) | |
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アセスメント対象スコープ | グローバル本社 欧州地域本社 購買部門 | 全リージョン 購買部門 |
クリティカルサプライヤーアセスメント比率(%) (アセスメント社数) | 77% (131) | 100% |
当社では、SAQ、Sedex、EcoVadisの評価に基づき、サプライヤーをローリスク、ミドルリスク、ハイリスク、回答不足による評価不能の4種類に分類し、ハイリスクと判断されたサプライヤーに対し是正措置を要請しています。2019年度は、49社がハイリスクに該当し、グローバル本社購買部門と取引のあるサプライヤーについては、課題点とその理由を直接説明し、是正を要請しました。具体的には、法令で定められた残業時間・連続出勤の日数を超えた勤務や化学物質の管理方法等について指摘を行い、改善を求めました。また、2次のクリティカルサプライヤーのうち、計15社に対しても、評価を行い、ハイリスクに該当するサプライヤーはありませんでした。
資生堂は、時代の変化や社会からの新たな要求に応えていくためにも、調達に対する考え方について、サプライヤーにタイムリーで的確な情報共有が重要であると考えています。従って、購買方針について周知を図ることを目的に、日本、中国における調達部門において、毎年1回、サプライヤーとの『購買活動方針説明会』を開催しています。日本の調達活動部門では、原香料、材料、間接材の、各領域における購買方針やさまざまな業務、依頼事項について直接お伝えするとともに、サプライヤーからの質問事項、要望に応える場として活用しています。
グローバル本社購買部門では、2019年度は209社のサプライヤーにご参加いただきました。中国では89社のサプライヤーにご参加いただくことになり、志を同じくする全てのサプライヤーを尊重し、お互いの持続可能な発展に努めていきます。
資生堂は、購買方針に対し高いパフォーマンスを発揮して頂いたサプライヤーを招待し、毎年Shiseido Suppliers’ Awardを開催しております。2019年度は、横浜・みなとみらいに4月にオープンしたばかりの「S/PARK(エスパーク)」にて開催し、43社にご参加頂きました。また、QCDEST視点で特に評価が高かったサプライヤーを表彰しており、2019年度は5社を表彰致しました。サプライヤーに感謝の意をお伝えすると同時に、資生堂の未来を共有し、パートナーシップ強化に努めております。
当社はグローバル各拠点の購買責任者が一堂に会する「SIPM(Shiseido International Procurement Meeting)」を毎年開催しております。目先の課題共有だけでなく、中長期的な目標を共有し、グローバルでの購買戦略を討議しております。また、この場を通して、サステナビリティ活動のグローバル浸透も進めております。
会社全体で責任ある調達を実行するため、当社では購買部門の社員を対象に、様々な研修を積極的に行っています。
日時 | 教育テーマ | 参加対象 |
---|---|---|
2019年 9月 | 責任ある調達とサプライヤーアセスメントプログラム (社内セミナー) | 欧州地域本社 バイヤー |
2019年 10月 | ビジネスとヒューマンライツに関する国際会議 (経済人コー円卓会議日本委員会) | グローバル本社 サステナビリティ担当者 |
2019年 11月 | サプライチェーン労働・人権監査研修(外部コンサルタント及びNPO) | グローバル本社 カテゴリー責任者、サステナビリティ担当者 |
2019年 12月 | RSPO及びパーム油に関するセミナー(外部講師) | グローバル本社 原香料購買のバイヤー |
2019年 12月 | サステナビリティと持続可能な調達(外部講師) | グローバル本社 サプライヤーマネジメントに関わるバイヤー |
サステナビリティと持続可能な調達に関する教育(2019年12月)
(KPI)購買部門のESG教育受講率(部門教育)
2019※1 | 2022(目標) | |
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購買部門社員ESG教育受講率 | 85% | 90% |
当社は2013年から、サプライヤー向けに書面、Eメールでの通報・相談窓口「ビジネスパートナーホットライン」を設置することで、お取引先からご意見やご相談を受け付けています。
パーム油やマイカの生産地では、強制労働や児童労働などの人権問題が懸念されており、国際的なイニシアティブに参加しながら、生産地の問題解決に向けた取り組みを強化しています。
エシカルなサプライチェーンを構築するためには、パーム油生産地の環境保全や農園で働く人々の人権への配慮が不可欠です。 資生堂は、環境や社会に配慮したパーム油やパーム核油を調達するため、2010年にRSPO(持続可能なパーム油にのための円卓会議)に加盟し、「資生堂グループ 持続可能な原材料調達ガイドライン」を策定しました。
2018年からは、パーム由来原料の100%に相当するクレジットを購入することで、生産地のサステナブルなパーム油生産を支援してきました。今後は、RSPOの物理的なサプライチェーンモデル(アイデンティティプリザーブド、セグリゲーションまたはマスバランス)による認証原料に切り替えていくことで、サステナブルな調達を推進していきます。
それに伴い、物理的なサプライチェーンモデルの認証原料を取り扱うため、現在資生堂の工場でRSPOサプライチェーン認証※の取得を進めています。2020年には、新たに3工場で取得し、RSPOサプライチェーン認証を取得した工場は合わせて10工場となりました。
持続可能なパーム油の生産や調達の啓発と普及を目的として、2018年には、食品・消費財メーカーや小売業者が加盟する国際的な業界団体であるCGF(コンシューマー・グッズ・フォーラム)の日本サステナビリティ・ローカル・グループのひとつであるパーム油ワーキンググループに参画し、また、2019年にはJaSPON(持続可能なパーム油ネットワーク)に加盟しました。
CGFとJaSPONの活動を通じて、日本市場における持続可能なパーム油の調達と消費の促進に寄与し、パーム油に関わる環境問題や社会課題の解決に貢献していきます。
マイカは、ビューティー業界だけでなく、電子部品や塗料などさまざまな産業で広く使用されている鉱物です。化粧品では、主に肌につやや輝きを与える効果を目的として使用されています。近年、インド産マイカの採掘に児童労働の関与が指摘されています。そのため、サステナブルなマイカの調達を目的として、私たちは 2017年5月にRMI(Responsible Mica Initiative)に加盟しました。RMIは、さまざまな産業界のメンバーと協力して、2022年までにインド産マイカの採掘現場から児童労働や強制労働を全廃し、サステナブルなマイカ生産を確立することを目標に掲げています。
NGOなどとも連携しながら、RMIの活動を通じて、マイカ採掘労働者の雇用安定化や安全衛生面の改善、児童労働の撤廃を図るとともに、マイカ生産を支える周辺地域の経済振興や子どもたちの教育・医療・栄養面での支援に貢献していきます。
サステナブルで責任ある調達や、事業活動全体での人権尊重のために、資生堂はさまざまなステークホルダーと環境・社会の課題について対話し、情報共有や解決に努めています。
●NGO・NPOやパームヤシ小規模農家との協働
パーム油調達における人権問題を把握するために、2019年には経済人コー円卓会議日本委員会がインドネシアで主催したステークホルダーエンゲージメントプログラムに参加しました。NGO・NPOや小規模パームヤシ農家との対話を通じて、パーム油生産に関わる人権リスクや人権侵害、労働問題について理解を深めました。人権尊重の責任を果たす企業として、さまざまなステークホルダーとの対話をもとにエシカルなサプライチェーンの構築に努めていきます。
●人権専門家との協働
2019年10月、ワールド・ベンチマーキング・アライアンス(WBA)/企業人権ベンチマーク(CHRB)、大手調査会社のVerisk Maplecroft、そしてビジネスと人権とサプライチェーンに関するインドの専門家(Rishi Sher Singh氏)と対話し、当社における人権デューデリジェンスの進め方について助言をいただきました。こうした助言とSAQなどによる調査結果をサプライチェーンを通じた今後の取り組みに活かしていきます。
原材料の調達や生産・物流・廃棄に至るまで、資生堂の事業活動は、地球の生物多様性に大きな影響を与えています。
私たちは、生物多様性の重要性を理解し、今後も取り組みを強化していきます。
●長崎県の原料生産地での植林活動
資生堂のヘアケアブランド「TSUBAKI」には、長崎県産の椿油が配合されています。生産地である五島列島の耕作放棄地において、サステナブルで責任ある原料調達と社員の教育啓発を目的として、地域住民の協力のもと椿の保全・育成を行っています。9年間で352名の資生堂社員がこの活動に参加し、738本(0.194ヘクタール)のヤブツバキの苗を植樹しました。
●フランスの工場でのミツバチ保護活動
多くの作物が受粉をミツバチに頼っていますが、欧州ではミツバチの減少が懸念されています。そこで、フランスのバル・ド・ロワール工場およびジアン工場では、ミツバチの保護※と地域の生態系の保全をサステナビリティ計画に盛り込んでいます。ミツバチの巣箱を設置するとともに、工場敷地内での農薬の使用を禁止しました。設置したミツバチの巣箱からは、1年間で約150kgのハチミツが生産されました。
※参考
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