「商品をして、すべてを語らしめよ」。資生堂の初代社長のこの言葉には、資生堂が社会へ果たすべき使命や、ものづくりの意志が込められています。
資生堂は、原材料の調達、生産、物流だけではなく、すべてのバリューチェーンを通してサステナブルなものづくりに取り組んでいます。お客さまが製品を購入し、使用したあと廃棄に至るそのすべてのタイミングにおいて、私たちの製品は、サステナビリティへの信念を伝えることができると考えています。
それゆえ、サステナブルな製品を提供するとともに、常に信頼に応えることも資生堂に課せられた責任と認識しています。化粧品の中味成分においては効能効果と安全性、環境配慮の両立を追求しています。また、デザイン性とユーザビリティーは、アート&サイエンスをDNAに持つ資生堂の重要な価値です。
日本に生まれた企業として継承されている、「MOTTAINAI(モッタイナイ)」という精神に基づき、地球資源の使用量を最小限に抑え、可能な限り繰り返し使用することで環境との共生を図り、サステナブルな世界の実現に貢献していきます。
より環境フットプリントの小さな製品を提供するために、資生堂はLCA※1による分析を進めています。容器包装においては、調達段階と廃棄段階のフットプリントが大きいことから、その削減に有効な「リデュース」「リユース」「リサイクル」「リプレース」の取り組みを進めています。2020年、資生堂は、これらの取り組みの基本として、人、社会、環境を尊重する考えである「リスペクト」を加えた独自のパッケージポリシー「資生堂5Rs」※2を公開しました。また、サーキュラーエコノミーに賛同し、2025年までに化粧品容器を「リユース可能」「リサイクル可能」「生分解可能」のいずれかで、100%サステナブルな容器包装を実現するという目標※3を発表しました。
2020年は、「リデュース/リユース」が同時にできる「つめかえ・つけかえ」容器や、水や土の中でも分解する素材を使った容器の採用、店頭での美容液充填サービスなどに取り組んだ結果、日本で設計した製品のサステナブルな容器包装率は57%となっています。※4
近年、製品ライフサイクルの観点から環境負荷やプラスチック量削減を目的として、「つめかえ・つけかえ」製品がサステナブルな容器として注目を集めています。資生堂では、1926年に時代に先駆けて「つけかえ」可能な粉白粉のコンパクトを発売し、今日までその発想と技術を応用してスキンケア・メイクアップ・ヘアケアなど幅広いカテゴリーでサステナブルな容器を開発してきました。2020年、資生堂は53ブランドで、約1,200SKU※の「つめかえ・つけかえ」容器を提供しました。例えば、グローバルブランドの「エリクシール」のスキンケアでは、「つめかえ・つけかえ」容器は本体容器と比較して83%のプラスチック量削減となっています。
化粧水と乳液はLCA評価法の結果によると、製品ライフサイクルを通じたCO₂排出量が「つめかえ」製品の効果によって日本では56%削減できることがわかりました。これらの日本での知見と実績を踏まえ、今後も「つめかえ」容器の展開を拡大し、環境負荷の軽減を進めていきます。
「つめかえ・つけかえ」容器は、お客さまにとって経済的な利点となるだけではありません。企業の環境対応技術が、お客さまのひと手間があってはじめて環境課題の解決になることを示す好事例のひとつです。資生堂では、さらに素材や製造プロセスにおけるテクノロジー、サーキュラーエコノミーを成立させるビジネスモデルなど、多様な価値や技術から環境課題解決のイノベーションに取り組んでいきます。
エリクシール化粧水と乳液容器のCO₂排出量
限られた資源の有効利用と環境負荷軽減を目指し、2020年、「SHISEIDO」では、東京銀座の旗艦店 SHISEIDO Ginza Flagship Storeにて、お客さまに使用済み美容液の本体容器を店頭に持参いただき、洗浄・充填をするレフィルサービス「アルティミューン ファウンテン」を開始しました。日本では安心・安全を確保するため、厳しい行政基準が定められ、特に化粧品は中味組成が複雑で長期使用となるため、より厳しい基準が設けられています。しかしながら、資生堂は徹底した衛生管理と品質検査を行うことにより店舗での洗浄・充填サービスを実現しました。今後はこの取り組みで得た知見を製品やサービスの開発に活用していきます。2021年には、「Loop」※で化粧品を発売します。
SHISEIDO Ginza Flagship Storeの「アルティミューン ファウンテン」
サーキュラーエコノミーの実現のためには、資源の再利用を想定した素材選択、製品設計が重要です。資生堂は、シングルユースプラスチックを削減するため、使用後に分別と資源の再利用が可能になるモノマテリアル容器の積極的展開と、デザイン性を損なうことなく簡単に分別できる容器包装の開発と展開を同時に推進しています。2020年は、資生堂グローバルイノベーションセンターで開発された製品の25%がモノマテリアル容器でした。環境への影響の大きさを考慮し、特に「SENKA」の洗顔料や「TSUBAKI」のシャンプー・コンディショナー容器など、販売数量が多い製品での対応を進めました。クリーンビューティーから生まれたブランドの「Drunk Elephant」では、2021年までに100%リサイクル可能なデザインにすることを目標に掲げ、容器のパーツをモノマテリアルにするとともに、お客さまが使用後にふたやケースを簡単に分解できるような工夫を施しています。2020年に登場した新ブランド 「BAUM(バウム)」では、ガラス容器にリサイクルカレットを積極的に使用しています。
リサイクルを確実に進めるには、企業だけでなく、製品を使用するお客さまや回収に携わる企業など複数の関係者の協働が不可欠です。資生堂は、お客さまとともに環境課題を考え、課題の解決に貢献する取り組みとして、空き容器の回収・リサイクルをグローバルで推進しています。
日本では、2021年に、回収拠点となるイオンリテール株式会社(以下、イオン)と、リサイクルやリユースのサービスを担うテラサイクルジャパン合同会社とが協働し、資生堂は、大手化粧品・日用品メーカー(株式会社コーセー、日本ロレアル株式会社、P&Gジャパン合同会社)と共に、「グラムビューティーク リサイクルプログラム」を開始しました。イオンが運営する日本国内87店舗「グラムビューティーク」にてスキンケア、メイクアップ、ヘアケア、ヘアカラーの使用済み容器を回収し、プラスチック素材に再生し、新たな資源として活用していきます。
また、「資生堂プロフェッショナル」にて、サロンや家庭における使用済み容器(化粧品・ヘアケア製品)を回収し、資源としてリサイクルする活動を実施しました。
中国では、「イプサ」や「オプレ」ブランドの百貨店カウンターで同様の取り組みを開始しています。
資生堂では、プラスチック代替素材や環境負荷の低いバイオ素材、そして自然環境に流出しても生分解可能な容器の研究にも注力しています。2020年には、「SHISEIDO」から日本の素材メーカー カネカが独自に開発したカネカ生分解性ポリマー Green Planet™ を容器素材に100%使用した製品を発売しました。この素材は微生物の細胞内で生合成され、海水などの水があれば分解されることから、海洋プラスチックゴミ問題の解決策としての活用が期待されます。
サトウキビ由来ポリエチレンは、精糖後の糖蜜を原料としているため食糧生産と競合せず、搾りかすの繊維を燃料として使うことで石油由来のポリエチレンに比べCO₂排出量の削減が見込めます。資生堂では、販売数量の多いヘアケアブランド「TSUBAKI」、サンケアブランド「アネッサ」、スキンケアブランド「エリクシール」や「BAUM(バウム)」、メンズブランドの「uno(ウーノ)」などに活用を拡大しました。
世界で初めてGreen Planet™ を採用した「SHISEIDO アクアジェルリップパレット」
資生堂は、皮膚科学やマテリアルサイエンスに関する100年以上にわたる広範な研究知見を応用して、安全で高品質な製品やサービスを開発し、社会に提供してきました。
化粧品には天然由来原料が処方されていることから、持続可能で責任ある原料調達と使用は環境保全の観点で重要課題です。現在、世界7カ所のイノベーションセンターで研究開発を推進していますが、すべてを統括するグローバルイノベーションセンター(横浜)では、サステナブルであることを優先し原料の選定をしています。資生堂の原料・成分選定、処方開発は、人体への安心・安全、環境負荷軽減、エシカルであることを厳しく見極められたものです。こうして得られたデータや技術、特許は社会の共有資産と考え、可能な限り社会に役立てることに努めています。
気候変動によって、人が受ける紫外線曝露量は増加すると予測されています。紫外線は長時間浴びるとシミやシワなどの「光老化」の原因となることが知られ、今日では紫外線を防ぐさまざまな方法製品があります。一方、紫外線防御成分の一部はサンゴ白化の原因の可能性が懸念されています。資生堂は、環境負荷軽減を目指したサンケア製品の開発を優先課題に設定し、2020年にはブランド「SHISEIDO」から、サンゴ白化の原因の可能性が懸念されている成分を含まないサンケア製品「SHISEIDO Ultimate Sun Protector Lotion」を米国で発売しました。人と生態系と、そして地球との共生のため、資生堂はサンケア領域でのイノベーション実現のスピードを上げていきます。
SHISEIDO Ultimate Sun Protector Lotion
急激な地球環境や社会の変化に伴い、企業の社会的責任や環境対応、原材料に対する企業姿勢を重視するお客さまが増えています。資生堂は、環境や社会的責任を配慮し、エシカルな視点に基づいた製品開発ポリシーを開示し、全ブランドの製品開発・原材料対応を明確にしています。クリーンビューティーから生まれたブランド 「Drunk Elephant」は、持続可能な原材料の調達やアクションを積極的かつ継続的に実施。2020年に登場した新ブランド 「BAUM(バウム)」は、製品パッケージとしてリサイクルガラスや一部にバイオPET※1を採用、アップサイクル木材※2の活用や森林保全活動にも力を入れています。
資生堂は、2020年に世界で初めて化粧品産業から、世界知的所有権機関 「WIPO(World Intellectual Property Organization)」※1が立ち上げた「WIPO GREEN」※2という国際的な枠組みにパートナー企業として参画しました。資生堂が保有する、洗浄・ヘアケア製品に適用可能な「優れた洗浄力と、すすぎ時の節水の両立を図る技術」や「濃縮化により、製造・運搬のためのエネルギー負荷を低減する技術」などいくつかの環境関連技術を登録しました。これらの環境関連技術は、渇水や、地球温暖化の主な原因のひとつであるCO₂排出量削減など環境課題への解決に寄与すると考え、自社のみで独占せず社会で広く活用することを許諾しています。
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