IFSCC Congress 2020 横浜大会 最優秀賞(口頭発表・基礎部門)
皮膚の抗重力システム「ダイナミックベルト™」を発見
重力によるたるみ発生のメカニズムを突き止めた!
資生堂は、たるみ研究のパイオニアとして、長年たるみの解明やソリューション開発の研究を重ねてきました。その中で得た革新的な知見は、2018年までにIFSCCで3度も最優秀賞を獲得しています。さらにその後も、複雑に要因がからみあうたるみの全容を解明すべく研究は進化を続け、2020年横浜大会で4度目の最優秀賞を獲得しました。今回の研究では、たるみの根本的な原因である「重力」に挑みました。
日常生活の中で重力を意識する人はそういないでしょう。しかし、「加齢とともに重力に抗えなくなり、皮膚が垂れ下がってたるみが起きる」と言われると、ほとんどの人が納得するのではないでしょうか。実はこのたるみの大きな要因のひとつとされている重力ですが、たるみと重力との関連はまだ解明されていないのです。
今回の研究は、皮膚の変形を皮膚内部まで詳細にコンピューター上に再現できる4次元解析技術「4Dデジタルスキン™」を開発したことで、皮膚が重力に抗う「抗重力システム」と、そのシステムが失われ、たるみになる原因を解明したのです。
IFSCCで最優秀賞を過去に受賞した「たるみ」研究の詳細はこちら
立毛筋という小さな筋肉の群れが、重力に負けないように支えていた!
重力の正体は、ご存じのとおり、主に地球の中心に引っ張られる引力です。重力があるからこそ、手を離した物体は下に落ちてしまうのですが、顔の肌が大きく垂れ下がらずに維持できているということは、重力に抵抗する何かしらのシステムが皮膚に存在すると考えられます。
そこで、新たに開発した4次元解析技術を用いて、均一な力で押したときの肌内部の動きを解析しました。すると、肌の変形は均一ではないことが分かりました(図1)。
赤いところは変形が多い部分で、青いところが変形に抵抗したところです。この青い部分に「抗重力システム」の謎が隠されているのではないかと詳しく調べると、そこには立毛筋という筋肉が存在していることが分かったのです(図2)。
立毛筋は毛と皮膚の表面をつなぐ小さな筋肉で、寒冷や感情刺激で収縮し、肌に鳥肌を立たせるなど、時に大きな力を発揮する筋肉です。
肌を押したときの立毛筋の動きを観察すると、立毛筋の一部が肌が変形しないように肌表面をロックして押さえていることが分かりました。さらに、顔に高密度でたくさんある立毛筋は、重力に抵抗するように一つの方向を向いて並んでいることが分かりました(図3)。立毛筋群の大きな力で肌が変形しないように支えていることから、これが探し求めていた「抗重力システム」であることが分かります。資生堂では、これらの立毛筋群を「ダイナミックベルト™」と呼ぶことにしました。(図4)
残念ながら、立毛筋は加齢とともに減少してしまいます。加齢によって「ダイナミックベルト™」が失われ、重力に抵抗できなくなり、たるみが発生してしまうのです。これが重力によるたるみ発生のメカニズムです。
これまで、資生堂が数々の革新的な知見を生み出してきた「たるみ研究」。今後は、これらの知見を総称して「抗重力サイエンスV」と銘打ち、研究をさらに進化させるとともに、新たなビューティーケアへの応用を目指していきます。
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