気候変動は、熱中症などの健康被害だけでなく、洪水や旱魃、山林火災などさまざまな災害の原因となっています。将来、こうした被害が深刻化することに加え、島嶼国の国土喪失や生物多様性損失といった新たな被害の顕在化も懸念されます。持続可能な社会・経済を支える地球環境を維持するため、「1.5℃目標※1」が国際目標として合意され、世界各国・各地域で、ネットゼロに向けた努力が続けられています。
企業活動においても、気候変動は重要な事業リスクであるという認識が広がり、CO₂※2排出削減や、気候に関連するリスク緩和と機会拡大の取り組みが進められています。
気候変動は、「CO₂を排出する先進国・新興国」と「影響を受けやすい途上国・島嶼国」、あるいは「CO₂を排出する現世代」と「影響を受ける未来世代」など、地域間および世代間の不平等問題であるという認識が広がっています。
網の目のように世界中に張り巡らされた原材料サプライチェーンや販売網を持つ企業にとって、途上国を含めグローバルに影響が及ぶ気候変動は、単なる環境問題を超えて、環境規制や税制、自然災害による損害といった事業リスクの要因となります。加えて、時間の経過に伴い気温上昇や気候災害の被害は深刻化すると予想されており、緩和や適応への対応の遅れが事業リスクの拡大につながると懸念されています。
資生堂グループは、「パリ協定」と「グラスゴー気候合意」に賛同し、2050年のネットゼロを長期目標として設定しました。またそのための中間目標として2030年に向けて1.5℃目標に則した科学的根拠に基づくCO₂排出量削減目標(Science
Based Targets)※を設定し、SBTi から認証を受けています。
事業所における積極的な省エネ、太陽光発電設備の導入や再生可能エネルギーの利用拡大を通じて、自社サイトで使用する電力・燃料由来のCO₂排出量削減を着実に進めるとともに、自社以外のバリューチェーンからの間接排出(Scope
3)についても、ステークホルダーと協働して排出削減に取り組んでいます。
こうした気候問題に関わるガバナンス、戦略、リスク管理、指標と目標について、財務インパクトや取り組みの進捗とともに透明性を持って開示することにより、投資家をはじめとするステークホルダーへの説明責任を果たしています。
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2030年目標:
Scope 1・2 46.2%削減※1(SBTi)
Scope 3 55%削減※2(SBTi)
資生堂グループでは、グローバルの全工場・オフィス・研究拠点で再生可能エネルギーの利用を進めています。2025年には全社の電力における再生可能エネルギー比率は94%となりました。全11工場・自社物流センター、資生堂ジャパンの全自社ビルでは、すでに100%再生可能エネルギーの切り替えを完了しています。各国各地域の10施設※では太陽光パネルを設置している他、中国地域においては2023年に全拠点で100%切り替えを完了しました。
さらに、北京工場を含む中国・資生堂麗源化粧品有限公司北京事業所では、カーボンニュートラル認証コード(PAS2060-2014)の要件を満たし、カーボンニュートラル認証を取得しました。また、当社は事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブRE100に加盟しています。引き続き、化石資源由来エネルギーから再生可能エネルギーへの移行をより加速させていきます。
フランスのバル・ド・ロワール工場に設置された太陽光パネル
当社が運営する世界各国・各地域のすべての工場と物流センターでは、毎年CO₂排出量削減の数値目標を設定しており、2026年度は前年比4%のCO₂削減を目標としてエネルギー消費量の削減に取り組んでいます。また、環境マネジメントシステムISO 14001※に基づき、目標に対する進捗状況を月次で評価し、施策に取り組んでいます。
工場や物流センターの照明のLED化による消費電力の低減、フォークリフトの電動化などによるCO₂排出量削減の他、EMS(エネルギーマネジメントシステム)※を導入し、電気や蒸気、圧縮空気の関連設備ごとのエネルギー消費量やCO₂排出量の情報を可視化し最適化しています。
掛川工場では、EMSデータ分析に基づき、室内の人数や設備の稼働状況にあわせて空調の運転を最適化することで、CO₂排出量を年間約40トン削減しました。
上海工場では、太陽熱を利用した産業用給湯器を活用し、水を加熱する工程の一部をボイラー蒸気から代替することで、天然ガス使用量とCO₂排出量を削減しています。
資生堂グループでは、国内全社員を対象にサステナビリティのeラーニングプログラムを実施し、事業活動におけるCO₂排出の実態や、節電、省エネの推進など、環境課題の解決に全員で取り組むことの意義を啓発しています。プログラム修了時にはチェックテストを実施し、社員の理解度の把握にも努めています。また工場では、省エネおよび脱炭素の基礎教育のトレーニングプログラムに加えて、各工場の状況に即した活動を推進しています。
大阪茨木工場では、職場間で互いに省エネや廃棄物分別を確認し合う環境パトロールや、環境改善アイデアを募る「エコ提案の総選挙」を通じて、環境意識の醸成を図りました。また、アメリカ物流センターでは「省エネ意識向上」研修を通じて節電の意識醸成と削減に向けた行動を促進しています。
グローバルでは、全グループ社員を対象にサステナビリティ意識調査を実施し、国・地域、部門・職種別のサステナビリティ戦略(社会・環境)および具体的アクションの理解度や課題を把握し、経営へのフィードバックを通じて、組織的な理解の浸透とアクションの推進につなげています。
環境情報を発信するサイネージ(大阪茨木工場)
当社では、自社の活動で使用するエネルギー由来のCO₂排出のうち、約50%が工場での生産活動に由来しています。このため2023年より、工場設備の投資判断にインターナルカーボンプライシング(ICP)を導入しています。社内炭素価格を設定し、2025年も継続して当社の工場における省エネ設備や再生可能エネルギー設備などの脱炭素投資判断への活用を進めました。
バリューチェーン全体での排出量削減においては、間接的な排出についても把握し、積極的にアプローチしていくことが求められます。 当社は、バリューチェーン上の間接排出について、LCA(ライフサイクルアセスメント)の手法に基づき、2011年から算定を行ってきました。その継続的な評価結果をもとに、事業のなかでCO₂排出量の大きな活動を特定し、科学的根拠に基づいた長期の削減目標の設定と、ステークホルダーとの協働による削減を進めています。2025年のScope 3排出量は約88万tとなりました。絶対量では基準年比で47%の削減となりましたが、コア営業利益を分母とする経済原単位では、コア営業利益の影響により34%増加しました。2030年に向け収益体質へのシフトが進むにつれ、経済原単位でも削減が進むものと予想しています。
ネットゼロ社会を実現するには、電気やガスなどのエネルギーだけでなく、化学合成素材についても化石資源依存から脱却していかなければなりません。一方で、世界中で化石資源依存を下げる努力が進められる副作用として、森林開発や生物多様性への悪影響の増大が懸念されています。
当社は、ネットゼロ社会を前提とした未来からのバックキャストとグリーンケミストリー原則を踏まえ、2030年を1つのマイルストーンとして「化粧品成分の90%を、人間社会や自然のシステムの中で再生され、循環する原料とする」という新たな目標を設定しました。
特に森林破壊リスクが高いとされるパーム油由来原料と紙に関しては、NDPEを支持し、トレーサビリティ調査に積極的に取り組んでいます。また、RSPOの物理的なサプライチェーンモデルによる認証を得た原料や認証紙などを使用することにより、森林破壊と生物多様性の損失リスクに加えて、森林から農地への土地改変に伴う温室効果ガスの排出を防いでいます。
資生堂グループは、出荷における輸送ルートの最適化や積載効率の改善を図っています。また、他企業との共同配送やEVトラックの導入を拡大しています。
西日本物流センターでは、取引先の協力を得ながら、1梱包あたりの商品入数の拡大やまとめ発注などの施策を導入し、配送効率を向上させました。また、パレタイズの際に、段ボールの中身の高さを自動検知し、段ボールの高さを調整することで積載効率を向上させています。
加えて、納品頻度の多い容器サプライヤーと連携して、輸送用の包装材の適正化や輸送保護材の再利用などにより、廃棄物の削減およびCO₂排出量削減に努めています。可能な限り輸送資材を簡素化することで、店頭での廃棄物削減にも貢献しています。
さらに、容器調達時においては容器サプライヤーと連携し、当社の生産拠点と最も近いサプライヤーの拠点で生産を行う取り組みを推進しています。
段ボールの高さを最適化し、積載効率を向上させた出荷ライン
化粧品を販売する店頭で使用される資材の生産過程においても、多くの資源が使われ、CO₂が排出されています。当社は、気候変動と生物多様性損失の緩和を目的として、店頭ディスプレイツールに使用されるアクリル樹脂へのリサイクル素材の採用と、紙製販促物への認証紙の採用を進めています。リサイクルアクリル樹脂は、従来のバージン材と比べて製品ライフサイクル全体でCO₂排出量を約50~60%削減すると見込まれています。
適切な森林管理が実施された植林地から生産される紙製品は、自然林の保全だけでなく森林開発に伴うCO₂排出を防ぐとともに、生産地域の雇用を創出するなど、環境・社会の両面に好影響を及ぼします。
製品に使用される原材料だけでなく、私たちの活動で消費されるさまざまな資材についてもリサイクル素材や認証材といった持続可能な素材を積極的に使用することにより、バリューチェーンを通じた循環型モノづくりへの移行を推進していきます。
リサイクル素材を採用した店頭ディスプレイツール
資生堂では役員報酬において、2019年度より業績連動型株式報酬の一種であるパフォーマンス・シェア・ユニットを導入し、毎年支給することにより中長期的な企業価値の創造を動機づけています。その評価項目として「社会価値指標」を採用し、20%の評価ウェイトを設定しています。「社会価値指標」は複数のESG項目からなり、環境側面では「CO₂排出量削減」を目標に採用しています。
当社は、国際的な非営利団体であるCDPより、「気候変動」および「水セキュリティ」分野の透明性とパフォーマンスにおけるリーダーシップが認められ、2025年度のAリスト企業に選定されました。「気候変動」分野では4年連続、「水セキュリティ」分野では2年連続の選定となります。
Climate Water CDP A List 2025
業界全体の環境負荷の定量的な把握とCO₂排出量削減に向けて、当社は業界団体やイニシアチブに参画し、知見の交換や議論を行っています。
日本化粧品工業会(粧工会)サステナビリティ指針
LCA日本フォーラム
Sustainable Packaging Initiative for CosmeTics(SPICE)
EcoBeautyScore Consortium(EBS)
研究開発とSociety 5.0との橋渡しプログラム(BRIDGE)
| カテゴリー | 説明 | 内部データ | 排出係数 |
|---|---|---|---|
|
1.購入した製品・サービス |
原料、容器包装、宣伝広告サービス、パーム由来原料の生産に伴う土地利用転換などサプライチェーン上流からの排出 | 原材料調達量 POSM調達量 メディア宣伝広告費 パーム・紙関連の原材料調達量 |
AIST-IDEA v3.5 Ecoinvent 3.9 Reference-1 Reference-2 |
|
2.資本財 |
資本財を製造する際に発生する排出 | 設備投資額 | Reference-1 |
|
3.Scope 1・ 2に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 |
エネルギー・燃料の採掘、採取、精製、輸送の過程で発生する排出 | エネルギー消費量 | AIST-IDEA v3.5 |
|
4.輸送・配送(上流) |
調達輸送、出荷輸送、廃棄物の回収による排出 | 原材料調達量 製品重量(輸送量) 工場-販売店間の距離 移動手段 |
AIST-IDEA v3.5 Ecoinvent 3.9 |
|
5.事業から出る廃棄物 |
事業活動から排出される廃棄物処理の過程で発生する排出 | 素材別・廃棄処理方法別の廃棄物発生量 | AIST-IDEA v3.5 |
|
6.出張 |
従業員の出張・外出移動に伴う排出 | 移動費 行先別移動回数 移動距離 |
AIST-IDEA v3.5 Reference-1 |
|
7.雇用者の通勤 |
従業員の通勤に伴う排出 | 通勤費 | AIST-IDEA v3.5 Reference-1 |
|
8.リース資産(上流) |
リース物件(倉庫など) | AIST-IDEA v3.5 | |
|
9.輸送・配送(下流) |
販売や保管による排出 | 販売数量 製品の底面積 |
Reference-4 |
|
10.販売した製品の加工 |
該当なし | |
|
|
11.販売した製品の使用 |
製品使用時に発生する排出 | 製品使用時のエネルギー、水、消耗品の使用量 | AIST-IDEA v3.5 |
|
12.販売した製品の廃棄 |
内容物成分の分解に伴う排出および製品廃棄物の輸送や廃棄物処理の過程で発生する排出 | 成分および容器素材の分子を構成する化石資源由来炭素の量 素材別の廃棄物発生量 |
AIST-IDEA v3.5 |
|
13.リース資産(下流) |
該当なし | |
|
|
14.フランチャイズ |
該当なし | |
|
|
15.投資 |
非連結関連会社および株式投資先からの排出 | 非連結関連会社および株式投資先からのScope 1およびScope 2排出量 株式の保有割合 |
- |
Scope 3排出量の計算方法
1)地球温暖化対策推進法 算定・報告・公表制度における算定⽅法・排出係数⼀覧
2)Germer, J. et al. (2008) Environment, Development and Sustainability, 10, 697–716
3)サプライチェーンを通じた組織の温室効果ガス排出等の算定のための排出原単位データベース v3.5
4)経団連カーボンニュートラル行動計画 2025年度フォローアップ結果 個別業種編
水は、多様な生きものや人々の暮らしに欠かせない自然の恵みであり、さまざまな流域ステークホルダーで共有される資源です。飲用や農業・工業への直接利用のみならず、洪水調節や炭素貯留などの間接的便益や、文化や経済安全保障を支える資源としても大きな価値を有しています。
一度私たちが利用した水は、排水処理を経て流域に戻り、その地域で暮らす人々や企業により再び利用されます。流域ごとに、また同じ流域内においてさえも伏流や湧昇、季節変動といった自然の要因だけでなく、社会による利用の状況によって水資源の状況は異なることから、企業においても自社サイトでの水利用の管理とともに、流域や周辺地域まで視野に入れた活動を進めていくことが大切です。
化粧品事業では、化粧水などに配合される水はもちろんのこと、原材料となる植物の生育、生産現場における温度制御や設備洗浄、製品使用時のすすぎ、廃棄物の処理にいたるまで、さまざまな場面で水を利用しています。
水量や水質が悪化すれば製品の製造量や生産コスト、品質に多大な影響が及びます。また、工場が立地する地域で他産業等と水利用が競合すれば、地域コミュニティとの関係悪化につながりかねません。資生堂グループは、循環性や偏在性という水資源特有の性質に鑑み、流域における健全な水循環や水に関連する文化、水と衛生に係る人権を尊重しながら、持続可能な水利用を推進しています。
これまでも特に水ストレスの高い地域や気候変動に伴う将来の雨量の減少が懸念されている地域の事業所を中心に、節水や循環利用などの活動を進めてきました。自社サイトにおける製品の生産時に、取水だけでなく排水の量や温度、排水処理後の水質について法令で定められた基準値同等以上の水質になるように浄化設備による処理および水質の定期的なモニタリングを行っています。
また当社では、流域ステークホルダーと協働した水資源管理(水スチュワードシップ)に取り組んでいます。例えば那須工場では、自社の工場が使用する地下水が「どこから来て、どのように地域に影響を与えているのか」を把握するため、浸透起源や流域の状況把握、水収支の調査を行っています。これらの調査を地元の農業従事者や地域の高校などと協力して進めることで、地域社会や自然環境と調和した水利用の実現を目指しています。
また、化粧品成分の多くがバイオマス由来であることから、バリューチェーンで間接的に使用される水資源の持続可能性も当社にとって極めて重要な意味を持ちます。原材料素材の生産から使用・廃棄にいたるバリューチェーン視点で、水に関する環境影響とリスクの把握にも取り組んでいます。
2026年までに:水消費量 40%削減※(2025年実績:水消費量 58%削減)
2030年目標:水消費量 50%削減※
2030年に向けて私たちは、生産工場における直接的な水利用に関して経済原単位で2014年比50%削減するという目標を掲げ、工場の生産プロセスにおけるより効率的な水利用と持続可能な水資源の管理を目指していきます。
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直接的な水利用に関しては、各国各地域の工場の生産プロセスにおける水消費量の削減に取り組んできました。2023年以降は継続して目標を達成しています。
将来の雨量の減少が懸念される欧州に立地するフランスのバル・ド・ロワール工場では、従来の水消費量の削減に加えて洗浄設備のノズル形状を工夫することで1回の洗浄に使用する水の消費量を従来の30%削減しました。
アメリカのイーストウィンザー工場では、個別メーターによって異常・過剰な水使用を検知するモニタリングシステムを導入し、リアルタイムでの状況把握や傾向分析によるメンテナンス・運用変更を推進しています。
水の再利用の取り組みとして、久留米工場では真空ポンプの封水に純水装置からの排水を利用することで年間約2,700m³、上海工場ではトイレ・冷却棟の補給水や緑化・洗車への再利用で年間約13,800m³の水使用量を削減しました。
社内啓発・トレーニングにおいては、水使用量の目標に対する進捗を工場内に掲示する取り組みが行われています。上海工場では、仕事や日常生活における節水方法や注意事項に関する研修を全工場従業員に対して、2年に1回のeラーニングと1年に1回の講義を行い、基礎知識を高めています。
水は川や地下水を通じて地域の人々や自然とつながる共有の資源であることから、企業は自社の事業活動に関わる水資源管理のみならず、流域の水資源に対しても責任ある行動をとることが求められます。水スチュワードシップとは、水を「使う」企業としての責任を、自社の工場の中だけにとどめず、地域社会全体へと広げていく考え方です。
私たちは、水使用量の削減や水質管理といった工場内の取り組みに加え、水を共有する地域の状況に目を向け、地域と連携した2次利用やサプライヤーとの取り組みなど、流域の共有財産としての水スチュワードシップを進めています。
将来の雨量の減少が懸念される欧州に立地するフランスのバル・ド・ロワール工場では、年に数回、地域の他の業種の方々と好事例や法規制に関する情報共有を行っています。
水ストレス※1が高い中国の上海工場では、地元の環境保護協会に参画し、環境法令を含む環境関連情報を積極的に取得し、工場の節水活動に活用しています。また、政府に対して、毎月の水消費量を報告し、水利用率向上と節水管理強化に取り組んでいます。
那須工場は、工場が立地する那須野が原一帯の流域環境を地質学的な視点からだけでなく地域の歴史的な観点からも紐解く活動を進めています。これまでに、有識者、行政、土地改良区、農業従事者、高校等の教育機関など周辺地域のさまざまなステークホルダーと対話を重ねながら、地表や地下を流れる水の季節変動性、工場での地下水の汲み上げによる流量変化、工場からの排水が下流地域の農業用水路や水田を通じてどのように浸透しているかの解析などを実施し、流域や水資源利用に対する理解をともに深めてきました。また、那須塩原市が主導する「ネイチャーポジティブ那須野が原アライアンス」に参画しています。2025年7月に開催された那須野が原ネイチャーポジティブシンポジウムでは、那須工場の水循環プロジェクトについて発表を行いました。
久留米工場では2025年に、地下水の水源涵養域・水収支・バウンダリ等に関する調査を実施しました。得られた結果をもとに、今後は周辺の生物多様性に貢献する活動を行っていく予定です。
久留米工場および那須工場では、災害時に生活用水を提供し地域住民の安全と生活を支えられるよう、屋外に給水設備を設置しています。
国内各工場では、従業員が近隣の河川の清掃・美化活動にボランティア参加しています。
これらの取り組みが評価され、当社は水循環ACTIVE企業※2として認証されました。
世界規模での人口増加や人々の所得水準の上昇、購買力の向上に伴い、資源消費量・廃棄物量はともに増加し続けています。
限りある資源を大切に使うためには、使い捨ての直線型の経済モデルから、資源を繰り返し有効に使うサーキュラーエコノミー(循環型経済モデル)への転換が重要となります。企業は、国・地域ごとに定められた廃棄物管理に関わる法令や規制の遵守に努めるとともに、バリューチェーン全体を通して資源の使用を最適化し、廃棄物の発生を抑制していく必要があります。
資生堂グループは、循環型製品・モノづくりの実践に向けて、サーキュラーエコノミーの考え方を取り入れ、バリューチェーン全体を通じた資源の最適化を目指しています。その一環として廃棄物削減に取り組むとともに、自社で発生する廃棄物については長期にわたり抑制、再利用、再資源化を進めています。
2025年実績:直接埋め立てされる廃棄物量 0%※1
2030年目標:リサイクルまたはエネルギー回収する廃棄物 100%※2
資生堂グループは、サーキュラーエコノミー実現に向けた取り組みの一環として、廃棄物の削減とリサイクルに取り組んでいます。廃棄物の分別を徹底することで価値ある資源としての再利用を促進し、2030年までに、工場から排出されるすべての廃棄物をリサイクルまたはエネルギー回収します。
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各工場が排出する廃棄物の量と種類は、本社と月次で相互確認し削減とリサイクルを進めています。国内工場では、電子マニフェストによる管理データを運用して処理状況を確認し、データの透明性確保と法令遵守を徹底しています。
各工場では、排水処理で発生する汚泥を脱水・乾燥等により減容しています。
上海工場では、製品容器等の外装品受入時の段ボールをリターナブルボックスに切り替え、年間約60トンの廃棄物を削減しました。
各工場の社員食堂では、食べ残しや使い捨てプラスチック等の削減を推進しています。
大阪茨木工場では使用済み食用油をジェット燃料(SAF)の原料としてリサイクルしています。
不要備品は工場の環境事務局が情報を収集し、必要部署や従業員へ譲渡してリユースを促進しています。また、工場間でも不要な備品・什器を譲渡して有効活用しています。
国内では、資生堂グループ会社の廃棄物処理実務の担当管理職および担当者に対して、廃棄物処理法の理解と削減活動促進のためのオンライン講習会を開催しています。工場や事務所から排出される廃棄物の処理を処理業者に委託する場合、処理業者のアセスメントを行うこと、廃棄物が適切に処理されていること、産業廃棄物管理票(マニフェスト)管理の徹底、実地確認の重要性を伝えています。受講者は資生堂グループ独自のチェックリストをもとに遵法の徹底に努めています。
資生堂グループは、気候変動問題が事業成長や社会の持続性に伝える影響の重大性に鑑み、TCFD、TNFDおよびISSB/SSBJのフレームワークを参照して情報開示を行っています。脱炭素社会への移行や、気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされるリスクおよび機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオにおける短期・中期・長期の定性的・定量的に分析しました。自然・生物多様性に関しては、種の絶滅リスクや水資源の動態を考慮した定量的な長期リスクを特 定し、「資生堂 気候/自然関連財務情報開示レポート」として開示しました。
私たちはダブルマテリアリティを採用し、当社の活動が環境や社会に与えるインパクトと、環境や社会から当社が受けるリスクと機会の両面について評価の対象としました。気候関連リスクおよび機会については1.5/2℃から4℃の範囲で起こりうる社会や自然環境の変化を想定し、RCP-SSPシナリオに沿って分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化要因を考慮して、各シナリオ条件における影響を分析しました。
| マテリアリティの分類 | 中間指標 | 財務影響 | 被害対象 | 財務影響 |
|---|---|---|---|---|
| インパクトマテリアリティ | 気候変動 | 100億円 | 人間健康 | 37億円 |
| 水資源 | 0.3億円 | 社会資産 | 84億円 | |
| その他 | 76億円 | 生物多様性 | 32億円 | |
| 植物の一次生産(生態系サービス) | 24億円 |
| マテリアリティの分類 | リスクおよび機会の分類 | 要因 | 事象 | 財務影響 | ||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 財務マテリアリティ | 機会 | 気候変動 | UVケア製品の販売機会拡大 | 16億円 | ||
| 再エネ導入や省エネによる化石資源依存度の低下 | — | |||||
| 気候変動、自然 | つめかえなど循環型製品の販売機会拡大 | — | ||||
| リスク | 移行要因 | 気候変動 | 炭素税の導入拡大による操業コストの増加 | 5,300万円–22億円 | ||
| 炭素税の導入拡大による調達コストの増加 | 35億円 | |||||
| 物理的要因 | 急性 | 気候変動 | 自然災害(洪水)による生産、物流の停止 | 8.7億円 | ||
| 自然災害(洪水、渇水、熱波)によるパーム椰子生産の不安定化 | 1.4億円–2.9億円 | |||||
| 慢性 | 気候変動 | 水不足による生産活動の停止 | 32億円 | |||
| 自然 | 花粉媒介者の減少による調達コストの増加 | 26億円 | ||||
当社は、中長期の事業戦略に影響を及ぼすリスクを総合的・多面的に抽出し、特定しています。その中には、「環境対応(気候変動・生物多様性など)」「DE&I」「自然災害・感染症・テロ」といったサステナビリティ領域のリスクも含みます。これらも事業継続や戦略に影響を及ぼす要因として、科学的・社会経済的データに基づき分析し、全社リスクマネジメントに統合しています。特定したリスクは、リスクマネジメント部門が「ビジネスへの影響度」「顕在化の可能性」「脆弱性」の3軸で評価するとともに、CEOを委員長とし、オフィサーや地域CEOらをメンバーとする「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」で、全社レベルや個別事案のリスクと対応策を定期的に審議しています。 毎年特定・評価する重要リスクはグループ経営戦略の策定に反映されます。さらに影響を軽減するため、リスクごとにリスクオーナーを配置し、対応策策定から進捗モニタリング、上記コミッティメンバーや取締役との定期議論まで一貫した仕組みで運用しています。
当社は、2030年に向けた環境・社会領域における新たな中長期目標を、2026年に開示しました。設定された環境領域の新目標の多くは気候および自然関連のリスク緩和に関係しており、事業のレジリエンス向上に寄与するか、あるいは目標の達成に向けた取り組みを進めることにより、Scope 1・2およびScope 3の排出抑制につながり、SBTi※1の認定を受けた1.5℃シナリオに整合したCO₂削減目標の達成に帰結する構造となっています。
2024年にはインターナルカーボンプライシング制度の導入を決定し、1トンのCO₂排出相当量に対し130米ドルを適用して、脱炭素投資判断へ活用しています。 気候変動だけでなく、生物多様性保全や循環経済にも配慮したサステナブルな製品開発を強化しています。プラスチック製容器は、2025年までに100%サステナブルな容器を実現する目標に向け、「つめかえ・つけかえ」によるリユース促進、モノマテリアル化によるリサイクル設計、素材の見直し、軽量化等に取り組み、対象製品の98%※2でサステナブル設計を完了しました。2030年に向けては、PCR素材※3やバイオマス由来素材の積極活用により、これらの使用割合を15%まで高める目標を新設しました。また、PET製のプラスチック容器ではPCR素材の目標を30%とし、循環型モノづくりとCO₂排出削減を推進します。生物多様性に関しては、森林破壊リスクの高い原材料について、認証材など森林破壊に関与しない原材料への切り替え目標として開示し、自然・生物多様性への影響を最小化する持続可能で責任ある調達を進めています。
2026年6月、「資生堂 気候/自然関連財務情報開示レポート」 を公開しました
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