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化粧品の成分の動物実験廃止を目指す円卓会議

第五回「化粧品の成分の動物実験廃止を目指す円卓会議」を開催

第五回「化粧品の成分の動物実験廃止を目指す円卓会議」を開催
  • 開催日時:  2013年1月25日(金)13:00 - 15:40
  • 場所:    資生堂汐留オフィス会議室

・円卓会議にご参加いただいた方々(50音順)

  • 浅野 明子 氏     高木國雄法律事務所
  • 板垣 宏 氏      横浜国立大学大学院工学研究院 教授
  • 亀倉 弘美 氏     NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA) 理事
  • 河口 真理子 氏    株式会社大和総研 調査本部 主席研究員
  • 田中 憲穂 氏     鳥取大学染色体工学研究センター 客員教授
  • 中野 栄子 氏     株式会社日経BPコンサルティング プロデューサー
  • 藤井 敏彦 氏     経済産業研究所 コンサルティングフェロー
  • 山﨑 恵子 氏     動物との共生を考える連絡会
  • (司会) 川北 秀人 氏 IIHOE 人と組織と地球のための国際研究所 代表

・資生堂参加者

  • 岩井 恒彦       株式会社 資生堂 執行役員
  • 知久 真巳       株式会社 資生堂 品質評価センター長

・資生堂事務局

  • 塩島 義浩       株式会社 資生堂 CSR部長

資生堂の2012年度の主な取り組み進捗と成果

(1)実験動物使用数

(2)社内の安全性保証体系の構築状況について

(3)「動物実験に依存しない化粧品の安全性保証に関する討論会」の設立

(4)代替法の社会受容性・認知の獲得について

欧州および中国、日本の現状について

(1)欧州の最新動向について

  • これまでは「EU化粧品"指令"」であったものが、「EU化粧品"規則"」となり、EU加盟諸国が国内法に採択することなく、法的拘束力を持つものとなりつつある(本年7月末で完全移行)。

  • 2013年3月の期限までの代替法の完全な開発は困難なこと等を主な理由に、何らかの緩和措置が欧州委員会から出されるだろうとの見方が大勢を占めていたが、2013年1月現在、特に修正案は出されていない。したがって、当社は、"2013年3月11日には自動的に全面禁止"となる可能性が高いと考えている。

  • 動物実験全面禁止後の欧州域内における安全性担保について、「欧州化粧品指令」では、企業が製品技術文書(ドシエ)において、製品及び原料の安全性を担保しなければならないと定めているが、使用できるデータは、禁止前に実施された(現在禁止されていない)動物実験データ、代替法・ヒト試験結果・文献情報のみとなる。

(2)中国の現状と今後の動向について

  • 中国における化粧品は、一般化粧品(日本で言えば、化粧品に類似)と特殊用途化粧品(日本で言えば、医薬部外品に類似)に分類されるが、中国政府は、一般化粧品及び特殊用途化粧品の薬事申請について、最終製品での動物実験による安全性保証を要求している。

  • また、欧州や日本で安全性が確認されている原料であっても、"中国にとっての"新規原料扱いとなることがあり、動物実験による安全性保証が要求される。

  • 実験施設や方法についても、中国政府より指定される構造となっている。

  • 現時点では実効的な代替法開発への取り組みも活発に行われている状況ではなく、動物の福祉の向上や実験廃止に向けた機運は、あまり高まっていないのが現状である。

(3)日本の現状と今後の動向について

  • 現在、医薬部外品に用いる新規原料について、添加剤の場合は安全性8項目、有効成分の場合はそれに加えさらに全身毒性3項目について、動物実験による安全性保証が求められている。

  • 2006年7月19日付の厚労省事務連絡質疑応答集では、動物実験代替試験法等の利用に関して「OECD等により採用された代替試験あるいは適切なバリデーション(※)でそれらと同等と評価された方法に従った試験成績であれば、当該品目の申請資料として差し支えない」との記載がある。

    ※バリデーション…公的な研究機関が客観的に試験法の妥当性を検証すること

  • また、2011年2月4日付の厚労省事務連絡には、代替法の利用について再確認するとともに、試験法については「JaCVAMの情報も参考」にするよう記載がある。

ご参加いただいた皆さまからのご意見・ご提案(50音順)

浅野 明子氏/高木國雄法律事務所

浅野 明子氏/高木國雄法律事務所

【ご意見】中国における動物実験の継続が避けられないのであれば、まずは実験施設の環境について、日本の、もしくは資生堂としての基準が守られているかの第三者チェック体制整備を検討してはどうかと思います。最近ではCSRの観点から、環境マネジメントシステムを導入していない企業とは取引しないと宣言する企業も出てきていますから、同じように動物実験についても、「この基準を守らなければ取引はしない」という形で取引先企業に影響を及ぼすことはできるのではないでしょうか。遵守状況についての内容のアンケートを配布して回答を求めるのも、周知・啓発という点で大きな意味があると考えます。
また、日本においては、「手続保障」が全体的に弱い傾向があるように思います。動物愛護法に基づく基準(実験動物の飼養及び保管並びに苦痛の軽減に関する基準)により、実験動物の適切な飼養方法などが定められていますが、それが本当に守られているのかを、しっかりと確認していく必要があります。

板垣 宏氏/横浜国立大学大学院工学研究院 教授

板垣 宏氏/横浜国立大学大学院工学研究院 教授

【ご意見】化粧品も医薬部外品も「お客さまの安全を保証しなくてはならない」点は何も変わりませんし、安全性試験もほぼ同じです。ただ医薬部外品には、薬事法に基づく申請システムがあり、そこで動物実験による安全保証を求められるケースがあるということです。資生堂はすでに、化粧品に関する十分な独自の安全性保証体系を持っているので、新たに設置された討論会を活用した専門家の検証なども経て、その保証体系を医薬部外品にも応用できるよう認知を広めていけばいいのではないでしょうか。その中で、他社からもまた別の保証体系が提案されてくるかもしれません。動物実験なしの安全保証が社会から認められるようにしていくためには、そのようにして行政当局から「妥当」と認められるだけの既成事実を一つずつ積み上げ、公開し議論していくことが長い道のりかもしれませんがリーディングカンパニーの資生堂が果たすべきことではないかと思います。

亀倉 弘美氏/NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)理事

亀倉 弘美氏/NPO法人 動物実験の廃止を求める会(JAVA)理事

【ご意見】中国問題について欧州等では、これまで動物愛護団体から「動物実験をしていない」と認定されていた企業が、中国に市場を展開していることで認証取り消しとなるケースが相次いでおり、企業が「中国市場から撤退しろ」と迫られるケースも見受けられます。しかしながら、以前この会議でも「一企業、一団体で対応できる問題ではない」という意見が出されていたように、まさにユナイテッドフロントで取り組んでいくべき課題だと思います。
「(一部医薬部外品において)政府が動物実験を義務付けている日本と中国の問題は同じではないか」という向きもありますが、日本では新規原料の開発をしなければ動物実験の実施は義務ではなく、企業の判断で即時廃止が可能です。制度状況やアプローチ方法を同一視することは妥当ではないと考えています。
円卓会議の開催や企業内取り組みの開示、新たな討論会の設置など資生堂のこれまでの姿勢を評価してきましたが、今後の機関決定の結果によっては、当会はそれらの評価を白紙撤回せざるを得ません。そうならないように願っております。

河口 真理子氏/株式会社大和総研 調査本部 主席研究員

河口 真理子氏/株式会社大和総研 調査本部 主席研究員

【ご意見】五回目の会議ということで何らかの結論が出るかと思いましたが、逆により難しい課題が見えてきたというのが感想です。資生堂さんのこれまでのさまざまな努力には敬意を表しますが、これは一企業だけでなく消費者の問題でもあると思います。消費者が「美白」などの効能を求め続ける限り、そして「国が医薬部外品という範疇でその効能を認めている」根拠になっているのが動物実験だという構図がある限り、動物実験を完全に廃止するのは非常に難しいと感じるからです。その意味で、消費者に対しても、自分たちが変わることで企業も変わりやすくなるんだというメッセージをもっと打ち出していく必要があると思います。
また、中国での動物実験の問題については、一企業だけで対応できるものではありません。欧州との協力も必要ですし、日本や欧州のNPOも批判するだけではなく、中国国内のNPOに働きかけて協力していくことなども視野に入れるべきではないでしょうか。

田中 憲穂氏/鳥取大学染色体工学研究センター 客員教授

田中 憲穂氏/鳥取大学染色体工学研究センター 客員教授

【ご意見】資生堂の取り組みの中で、企業として自社が進めている安全性試験の代替法はこれでよいかどうかについて、社外の有識者や専門家の意見を聞く討論会の場を新たに設置されたことは、大変素晴らしい取り組みであると思います。今後も継続的に進めていかれることを期待します。
動物実験については、安全性保証の点で遺伝的に均一に作出された実験動物を用いますので、得られる結果についてはヒトの集団に比べて個体差が少ないなどさまざまな優れた点があり、個体レベルでの毒性を調べる方法としては、現在最も信頼できる方法であるのも事実です。一方で、開発されてきている代替法については、数多くの化学物質の有害作用について、簡便で安価に、そして迅速にスクリーニング(選定)できるなどの長所があります。したがって現在、環境中に存在する約2万種類ともいわれる既存化学物質の毒性を調べ、有害性のある物質については少しでも早期に身の回りからの排除するにはきわめて有効です。そうした代替試験法のメリットを打ち出していくことも、社会的受容の獲得につながるのではないでしょうか。
中国での動物実験については、実験施設の環境・設備もまだ開発段階で、日本と同等にGLPレベルの信頼できるデータが得られるレベルではないと聞いていますので、その点も懸念されます。

中野 栄子氏/株式会社日経BPコンサルティング プロデューサー

中野 栄子氏/株式会社日経BPコンサルティング プロデューサー

【ご意見】動物実験の廃止問題について、消費者の中には動物実験なしの安全性保証に不安を抱く人がいることも事実です。その不安を解消するためのリスクコミュニケーションにも力を注いでいただきたいと思います。
化粧品と医薬部外品のうち、医薬部外品は厚生労働省が安全性を所管していますが、動物実験なしでの申請に許可が下りなかった場合は、ただ単に「役所が認めてくれなかったので、動物実験を続けます」というのではなく、一般消費者に対して可能な範囲で情報提供をしていただけるようお願いします。一般の消費者の中には化粧品と医薬部外品の違いを正確に認識していない方もいますので、この機会にその両者の違いや動物実験は安全性を確認するものだといったことを、より広く知ってもらうことができればと思います。

藤井 敏彦氏/経済産業研究所 コンサルティングフェロー

藤井 敏彦氏/経済産業研究所 コンサルティングフェロー

【ご意見】動物実験なしでは製品の製造・販売ができない中国の制度が不合理だという声がありますが、日本の制度にしても、なぜ医薬部外品には薬事法に基づく安全性保証が強く求められ、化粧品は自社保証でよいのかなど、外から見れば不合理だと思われる部分もあるでしょう。その意味では、日中両政府には「根本的な」違いはないという言い方もできます。
そう考えると、代替法の開発などはもちろん重要ですが、根本的な解決は何よりも「制度の合理化」なのではないでしょうか。例えば代替法では安全性保証が不十分だと行政当局に判断され、やはり動物実験を廃止できないということになった場合に、非難されるべきは企業なのか、当局なのか。どちらをまず念頭に置くべきなのかという問いは、当然出てくるべきことだと思います。

山﨑 恵子氏/動物との共生を考える連絡会

山﨑 恵子氏/動物との共生を考える連絡会

【ご意見】中国での動物実験の問題は、当局の規制の側面のみが目立ってしまいますが、すでに禁止された国からの「実験動物の輸出」という側面もあり、非常に難しい問題だと思います。中国政府にも、製造技術や外貨獲得、動物実験産業の保護という意図も多少はあるのではないでしょうか。資生堂さんがそうであるということではなく、このような動物実験が許容されてしまうような地域で、実験が拡大するようなことがあってはならないということを申し上げたいのです。
また、河口さんがおっしゃったように、動物実験をなくすには「消費者が変わる」ことも必要だと思います。消費者教育は、これまで動物福祉団体が「もっとできないだろうか」と悩み、苦労してきた部分でもあります。例えば「医薬部外品と化粧品はこう違うけれど、あなたはどちらを選びますか」といった啓発活動をもっとやっていく必要があるのかもしれません。

(司会)川北 秀人氏/IIHOE 人と組織と地球のための国際研究所 代表

(司会)川北 秀人氏/IIHOE 人と組織と地球のための国際研究所 代表

【ご意見】今回の会議では、資生堂さんの機関決定を前に、課題がさらに明確になりました。中国の現状、そもそもの合理性、そして、非難されるべきなのは誰なのかといった、さまざまな問題が議論されました。動物実験を「ゼロにしていく」ことを目指すと同時に、制度面を含め現在の状況が果たして適切なのかを、常に確認していく必要があるということです。また、消費者への啓発については、各社が自社製品の特性を説明するだけでなく、世の中にある「医薬部外品」とはこういうものだという、一般的な情報提供を共同で進める必要があると感じました。
これまで五回の会議を重ねてきましたが、明確に進歩があったといえるのは、資生堂さんの取り組みのみだと思います。それ以外の行政・同業他社・消費者への働きかけなどについては、社会状況や海外の動向など、外部要素が大きいこともあって難しい状況のままです。今後、さらにそうした部分に踏み込めるように、この円卓会議の枠組みや取り組みを次の段階に移行していく必要性を感じました。

第五回会議を受けて