社会の新しい価値創出と、企業の持続的成長のため、資生堂はブランドを中心とした商品、サービス、活動に大きな変革をおこすことを目指しています。そのためには「美の感性」を磨き、強固な意志と情熱で未来を創造する意欲にあふれた人材で会社を埋めつくすことが重要と考えています。多様な知と能力、異なる価値観を尊重することで新しい価値創造につなげるため、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を大切にしています。そして、多様な社員がその能力を発揮し、それぞれが主体的にキャリア構築しながら活躍するための組織カルチャー醸成を強化しています。
資生堂グループの80%以上が女性社員で、グループ社員のうち女性管理職はグローバルで59.5%、日本国内では41.1%(2025年1月時点)を占めます。なお、取締役会における女性比率は54.5%(2025年4月時点)です。性別などの属性にかかわらず、社員のエンパワーメントがイノベーションを創出し、資生堂のさらなる成長と社員の自己実現につながると考えています。そのため、2030年までに日本国内のあらゆる階層における男女比率を機会均等の象徴である50:50にすることを目指しています。
日本国内では、1990年代初めから育児・介護休業法に先駆け、育児休業制度、育児による短時間勤務制度を導入するなど、長きにわたり、女性のライフイベントを支援するさまざまな制度や支援策を推進してきました。具体的には、事業所内保育所「カンガルーム汐留(2003年)※1」「カンガルーム掛川(2017年)」を開設し、いずれも近隣企業にも開放してきました。さらに「多様な働き方に合わせた柔軟な保育」を実現するため、2023年4月にシッターサービスを中心とした総合的な保育サービス「KANGAROOM+(カンガルームプラス)」を開始しました。集団保育ではなく1対1の保育サービスにすることで、時間と場所の自由度を上げるとともに、「小1の壁」※2に代表される社員の保育ニーズに合わせて、対象を未就学児から小学生までに広げています。また、育児による短時間勤務を取得する美容職社員の代替要員の仕組みとして「カンガルースタッフ体制」を2007年に導入しています。このような取り組みの結果、国内資生堂グループにおける育児休業からの復職率は93.9%におよび、高い水準を維持し続けています。
資生堂は女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を開催し、2024年は68名、開始から8年経ち累計334名の女性社員が参加しました。この育成塾は、女性社員がマネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムです。女性管理職比率を50%に引き上げるために、次期課長・部長・経営幹部候補向けの3つのプログラムに拡大し、着実に次世代のリーダーを育成するリーダーシップパイプラインの強化につなげています。また、エグゼクティブオフィサー※3と女性社員によるメンタリングプログラム「Speak Jam」には、2020~2024年にセールス、生産、R&Dなどさまざまな領域から累計213名の社員が参加しました。
女性リーダー育成塾「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」
資生堂では、毎年3月8日の国際女性デーの期間に、ジェンダー平等やダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)についての理解を深めるため、さまざまな取り組みを行っています。
資生堂では、国際女性デーに合わせて国内外の全社員向けウェビナー「Diversity Week for Gender」を実施し、全4回にわたるジェンダー平等に関するワークショップや個別テーマのウェビナーを開催しました。家事・育児の分担見直しをテーマにしたワークショップでは、参加者が家庭内でのジェンダー平等について考える機会を提供しました。また、チーフDE&Iオフィサーの廣藤綾子によるウェビナーでは、資生堂における女性活躍の歴史や自律的なキャリア形成についての体験談が共有され、参加者に豊かなインスピレーションを与えました。
家事・育児分担ワークショップの様子
チーフ DE&I オフィサー廣藤綾子による社内ウェビナーの様子
シンガポールに拠点を置くアジアパシフィック地域本社と中国・トラベルリテール地域本社が国際女性デーに開催したイベントでは、資生堂の女性のエンパワーメントの歴史の紹介とともに、リーダーたちの個人的な経験やキャリアの道のりが語られ、参加者に多くの学びを提供しました。また、シンガポールの非営利団体「United Women Singapore」とのコラボレーションで、スキンケアとメイクアップのマスタークラスを実施し、参加者に自信を持って職場に臨むための美容テクニックを伝授しました。さらに、ネパールの女性職人による手作りのサンクスカードを配布し、社員が感謝のメッセージを伝える機会を設けました。
米州地域本社では、自主的な社内の従業員リソースグループ「Women Empowering Women」の呼びかけで、国際女性デーをテーマとした社員のポートレート写真をSNSで発信するなど、女性たちのネットワーキングを支援しました。
アジアパシフィック地域本社と中国・トラベルリテール地域本社によるイベントの様子
資生堂は社内外のLGBTQ+コミュニティとアライに寄り添う企業として、LGBTQ+コミュニティへの支援に最大限に取り組み、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現を目指しています。社内では、資生堂グループで働く一人ひとりがとるべき行動を定めた「資生堂倫理行動基準」において、職場における「多様性の尊重・差別の禁止」を明記しています。
社員がありのままの個人としての可能性と魅力を発揮できるようにするための活動として、LGBTQ+に関する環境の整備や啓発にも力を入れています。当事者社員の体験談や外部有識者を招いたトークセッションなど、当事者を取り巻く現状について社員一人ひとりが考える機会となる社内イベントを実施しています。
また、日本国内では、特別休暇、介護制度、育児制度などの福利厚生等の利用にあたり、社員の同性パートナーも異性の配偶者と同様に対応することを就業規則で定めています。
このような取り組みにより、2024年一般社団法人work with Pride※1によるLGBTQ+に関する「PRIDE指標」において最高評価のゴールドを受賞するとともに、当社初のレインボー認定を受けました。
さらに2025年より、日本において性的指向や性自認による差別を禁止し、誰もが平等に扱われる職場・社会づくりを実現することを目的とした法律制定のための国際署名キャンペーン「EqualityActJapan (イクオリティーアクトジャパン)※2」の「ビジネスによる LGBT 平等サホート宣言」に賛同しました。
資生堂は、DE&Iの課題と範囲を広げ、よりインクルーシブな職場づくりにつなげています。2024年は国内資生堂グループ社員を対象に「Diversity Week」を2回開催し、延べ約1,500人が参加しました。従業員リソースグループによりLGBTQ+や障がいのある当事者との対話機会を増やし、当事者の視点を共有することで社員が自分事としてDE&Iを推進することを促しました。このようなステークホルダーエンゲージメントによって、取り組む社会課題の範囲を広げ、インクルーシブな組織文化の構築に役立てています。
同年には、日本地域のエグゼクティブオフィサー、部門長といったリーダー層に向けたDE&Iトレーニングを開始しています。
また、当社のブランド活動に本格的にDE&Iの視点を取り入れるインクルーシブ・マーケティング ラーニングセッションを展開しました。マーケティング・クリエイティブを担う社員が社内外の障がいのある方やLGBTQ+当事者との対話セッションを踏まえて、ブランドとして提供できる価値についてディスカッションを行いました。
「Diversity Week for PwD(視覚障がい体験)」の様子
日本国内の資生堂グループでは約370名の障がいのある社員が職場や職種を限定することなく、それぞれの経験や強みをいかして働いています。障がいの内容や程度もさまざまですが、一人ひとりの状態に合わせた配慮や工夫を重ね、職場の貴重な人材として活躍しています。
株式会社資生堂の障がい者雇用率は4.88%、日本国内の資生堂グループの障がい者雇用率は3.06%です(2025年6月時点)。主に知的障がいのある社員で構成されている特例子会社の花椿ファクトリー株式会社は、東京をはじめ、栃木、神奈川、静岡、大阪、京都、福岡の地域に9カ所の拠点を持ち、約60名を超える障がいのある社員が働いています(2025年6月時点)。
障がい者雇用ポリシー:
上記の障がい者雇用ポリシーに基づき、障がいのない社員と同じ人事制度で多くの障がい者が正社員として勤務し、研修を含めた人材育成プログラムも障がいのない社員と同じ内容となっています。
採用活動においては、希望する障がいへの配慮を事前にヒアリングしたうえ、面接を実施し、障がいのある学生向けには仕事の理解促進を目的に、仕事体験ワークショップを実施しています。入社前においては、配属先の上司と人事が必要な配慮を確認し合うとともに、必要に応じて配属部門の社員を対象に障がいへの理解を深めるためのセミナーなども行っています。
入社後も、上司や障がいのある社員の定着を支援する専任の担当者、産業医や保健師と連携しながらフォローアップを継続しています。障がいに関わる検査や通院、リハビリの際は「障がい者通院休暇」を利用することができ、障がいの状況に応じた支援ツールや設備・サービスなども、本人の要望に応じた柔軟な環境整備を進めています。さらに、2019年から始まった「視覚障がい者の職域拡大プロジェクト」では、視覚に障がいのある社員がみずから提案し、これまで視覚障がい者が担うことは難しいとされていた「通信営業」という新しいキャリアの可能性を生み出しました。2024年には聴覚に障がいのあるお客さまを対象とした無料のオンライン美容相談サービス「Online Beauty」を開始しました。手話を日常的に使っている障がいのある社員が採用され、資生堂パーソナルビューティーパートナー(PBP)として勤務しています。管理職向けにはトレーニングの中に障がい者雇用についてのコンテンツを取り入れ、グループ内の各人事担当者向けに情報交換の場を設けるなど、全社的に障がい者雇用への理解を深める取り組みを行っています。
2021年には「インクルーシブ社会」の実現を目指す国際的なネットワーク組織「The Valuable 500」の考えや活動に賛同し、加盟しました。「The Valuable 500」は、障がい者がビジネス、社会、経済にもたらす潜在的な価値を発揮できるような改革を、ビジネスリーダーが起こすことを目的とした取り組みです。今後も、障がい者の雇用や障がいのあるお客さまへのサービス提供など、本業であるビューティービジネスを通じて障がい者インクルージョンへの取り組みをさらに進めていきます。
資生堂は、海外グループ会社だけでなく、日本国内においても多様な国籍・文化的背景を持つ人材を積極的に採用しています。人材の多様化を価値創造につなげるため、2018年より日本国内においても英語公用語化を推進しており、インクルーシブな組織カルチャーを醸成することで、多様なバックグランドを持つ社員がさまざまな部門で活躍しています。なお、本社において外国籍の人材を採用する際は在留資格など入国管理制度を遵守し、入社後は就業規則を遵守して適切に処遇しています。また、信仰の多様性への配慮として、汐留オフィスには祈祷室を設けています。
東京証券取引所は、「コーポレートガバナンス・コード」において、実効的なコーポレートガバナンスの実現に資する主要な原則を公表しており、そのなかで、「上場会社は、中長期的な企業価値の向上に向けた人材戦略の重要性に鑑み、女性・外国人・中途採用者の管理職への登用等、中核人材の多様性の確保に向けた考え方と測定可能な目標およびその状況を開示すべき」としています。
資生堂は、多様な知と能力、異なる価値観を尊重することで新しい価値創造につなげるため、ダイバーシティ・エクイティ& インクルージョン(DE&I)を大切にしています。
一人ひとりの異なる強みの化学反応によって、インスピレーションに満ちた創造的思考と多様なアイデアを生みだすために、女性・外国人・中途採用者も含めて、個々の属性や考え方の違いを尊重し、中核人材の多様性確保に力を入れています。
女性活躍支援に関する測定可能な目標は、下記の「社会データ」に示されている通りです。外国人や中途採用者の中核人材登用は、国内資生堂グループでの2025年1月時点の管理職のうち外国人は約3%、中途採用者は約36%です。外国人や中途採用者については、その他のバックグラウンドを持つ社員と比較して、中核人材登用の機会に差がないと捉えているため、特段の目標設定は行っていません。
コーポレートガバナンス・コードの各原則と資生堂の対応はこちら
女性・外国人・中途採用者の状況は、「社会データ」をご覧ください。
資生堂のベテラン社員が意欲と能力のあるかぎり働き続けられるよう、60歳で定年を迎えた後の再雇用制度を2006年より導入しています。2021年には、担う役割と処遇体系を強化した「ELパートナーズAdvanced制度」として改訂し、人生100年時代の到来を見据えて、定年後も引き続き自己成長と会社への貢献に高い意欲を持つ社員が、年齢に関わらず積極的に活躍できるよう制度を転換しました。
日本国内の資生堂グループでは、労働関連法規に則り、有期契約社員を雇用し、法令で定められた各種の社会保険や休暇についても、就業規則や各種規程に則り適切に処遇しています。法令に則り、2018年からは契約期間が通算5年を超える有期契約社員から申し込みがあった場合には無期契約への転換を進めています。
国内資生堂グループでは、労働者派遣法に基づく派遣社員が就労しています。資生堂グループでの派遣社員の就労にあたっては、労働者派遣法や派遣先の講ずべき措置に関する指針、その他の法令に基づき、派遣会社との契約書の締結や台帳の作成・管理、管理責任者の設置などを行っています。今後も、法令の改正や解釈の変更に対して適切に対応していきます。
資生堂のダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)の取り組みは、さまざまな団体から表彰を受けました。今後も、女性に限らず外国人やキャリア採用者など多様なバックグラウンドを持った社員の活躍を支援し、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)をさらに加速させていきます。
外部評価・受賞についてはこちら
令和6年度 なでしこ銘柄 選定※1
MSCI日本株女性活躍指数2024※2
世界経済フォーラムとマッキンゼー・アンド・カンパニーが「DE&I」(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)を加速させることを目的として立ち上げた「The Global Parity Alliance」において、2022年度の「DEI Lighthouse」に唯一の日本企業として選定されました。
資生堂および資生堂ジャパンは、一般社団法人work with Prideが策定した、日本での職場におけるLGBTQ+など性的マイノリティに対する企業の取り組みを評価する「PRIDE指標」において、最高評価の「ゴールド」を受賞しました。さらに、「ゴールド」を受賞した企業の中から選出され、LGBTQ+が自分らしく働ける職場・社会づくりの実現に向けてセクターを超えた協働を推進する企業を評価する「レインボー認定」を獲得しました。
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