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マテリアルサイエンス

サンスクリーン技術開発

■「水・汗に触れても紫外線防御効果が落ちずに高まる」サンスクリーンの塗布膜研究

これまでの日焼け止めの技術では、水や汗に触れると紫外線防御効果がどうしても低下してしまうため、低下をいかに抑えるかという研究開発をしてきました。資生堂は、水や汗に含まれるミネラルなどに着目し、『水や汗に触れることによって塗布膜の機能が高まり、紫外線防御効果を高められないか』という逆転発想で、新たな研究開発に着手しました。水道水や海水、汗に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンなどのミネラルと、日焼け止めの膜を形成する成分の関係に着目しました。
その結果、「イオニックミネラルセンサー」を見出し、水や汗に含まれるミネラルと結合して日焼け止めの撥水性を高めるとともに、強固で均質な厚さかつ滑らかな塗布膜にし、紫外線防御効果を高める技術の開発に成功しました。

イオニックミネラルセンサーとミネラルがしっかり結合して撥水性を高め、強固で均一性の高い塗布膜になるので、紫外線防御効果が高まる

イオニックミネラルセンサーとミネラルがしっかり結合して撥水性を高め、
強固で均一性の高い塗布膜になるので、
紫外線防御効果が高まる

■サンスクリーンの環境影響評価

●サンゴに対する紫外線防御剤の影響研究

資生堂は、造礁サンゴ類やサンゴ礁生物にまつわる研究テーマに取り組んでいる琉球大学理学部の中村崇准教授と共同研究を実施し、ソフトコーラル(ウミトサカ目)とハードコーラル(イシサンゴ目)に含まれる2種類のサンゴ※1を対象とした各紫外線防御剤の影響評価を実施しました。評価方法として、サンゴ群体※2のポリプ収縮などの状態変化とともに、サンゴ体内に共生している褐虫藻の光合成最大量子収率※3の変化に着目しました。

●紫外線防御剤の海洋流出動態の研究

当社は国立研究開発法人産業技術総合研究所が開発した東京湾リスク評価モデルを用いて、実際に資生堂のレジャー用サンスクリーンを海で使用したときの海洋中の紫外線防御剤の存在状態(濃度)を検証しました。真夏の海水浴客が最も多い場面を想定した条件※4でシミュレーションを行っています。
なお、この評価モデルは行政、企業、大学などが化学物質の管理方法を検討する際に使用され、複数の報告書や論文においてもこのモデルが使用されています。

これらの研究は、サンゴ群体への影響懸念が極めて低い、当社の耐水性の高いレジャー用サンスクリーンの開発に活かされています。
資生堂は地球環境を守りながら、有害な紫外線から肌を守ることのできる製品開発に引き続き取り組んでいきます。

  • ※1 実験で使用するサンゴの採取は、沖縄県の規則に基づいた、県知事からの特別採捕許可を受けて採捕されています。
  • ※2 浮遊幼生期や稚サンゴ群体期を除いた、産卵可能サイズの群体
  • ※3 生物がある条件で光合成を行う場合の、もっとも光エネルギーを効率的に利用できている時の値
  • ※4 サンスクリーンの使用部位、使用量、過去の海水浴客数の実績などの情報から算出

素材開発

■リッチなコクとなじみの良さを両立する成分の開発

心地よい使用感触を実現する化粧品の研究開発を進めており、“塗布中にリッチなコクがありながらもスッと肌になじみ、塗布後の肌がべたつかない”という特徴をもった、これまでにない心地よい感触を実現する成分(新規水溶性高分子)の開発に成功しました。化粧品の感触を調整するなど用途に合わせて幅広く使用される高分子は、単一の分子を結合させること(重合)で長短様々な大きさを作り出すことができます。一般的により大きく長い方がリッチなとろみ・感触を出すことができます。しかし従来の重合法では、高分子中に様々な長さの分子が混在してしまい、ぬめりやべたつきが生じてしまう問題がありました。
特殊な重合法を用いることで、高分子の長さを適度に揃えることが可能になり、リッチなコクとなじみの良さを両立する高分子を6年の開発期間をかけ、つくりだすことができました。さらに本高分子配合基剤が心地よい感触であることを、感性工学・脳科学を用いて定量的に確認しました。

■油分・水分を自在に混ぜる新乳化技術「コアコロナ乳化」を開発

これまでの乳化で一般的に用いられている界面活性剤を使うことなく、さまざまな種類の油と水を自由な配合比率で自在に混ぜることができる、全く新しい乳化技術「コアコロナ乳化」を開発しました。両立が困難だった「みずみずしい塗り心地でありながら水に強いサンスクリーン」や「劇的にうるおうのにべたつかない保湿クリーム」など、画期的な化粧品のレシピを生みだす可能性を持つ新たな乳化技術となります。


コアコロナ乳化の電子顕微鏡写真(左)と拡大した模式図(右)

コアコロナ乳化の電子顕微鏡写真(左)と拡大した模式図(右)

分析技術

■電子顕微鏡“cryo FIB-SEM”で、化粧品の中味や塗布膜、毛髪内部の微細構造をリアルに観察

化粧品の微細な構造を観察するために、最新の電子顕微鏡“cryo FIB-SEM”を活用した観察技術を開発しました。この観察技術は瞬時に試料を凍結してダメージを極限まで抑えながら高倍率で観察することが可能なので、化粧品中の乳化粒子や粉末の分散状態を「リアルに」かつ「ありのままの姿」をナノオーダーで観察することができるようになりました。また、化粧品を塗ったときに肌の上にできる膜(塗布膜)の状態や塗布膜中の構造の変化も精細に観察でき、さらに生体試料の3次元画像化も可能となったため、生体試料の状態観察ができるようになりました。また化粧品の有用性評価などへも幅広く活用しています。
これらの分析技術は基礎研究や化粧品開発を支えるとともに、お客さまにもわかりやすい情報として提供しています。

乳化粒子、塗布膜、毛髪の微細構造観察画像

乳化粒子の微細構造

サンスクリーン製剤(SPF50+・PA+++)の塗布状態

健常毛の断面3次元画像(薄い灰色の粒状:毛髪メラニン)