現在、世界は地政学リスクや経済の不透明感の増大、気候変動の深刻化など、かつてない分断と不確実性に直面しています。このような時代だからこそ、私たちは自らの存在意義に立ち返り、社会に提供すべき価値を改めて問い直す必要があります。
資生堂グループは、「美」の可能性を信じ、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER
WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に向けて「ひととの繋がりの中で新しい美を探求・創造・共有し、一人ひとりの人生を豊かにする」というビジョンを掲げました。当社の提供価値は、商品やサービスにとどまらず、美を通じて人の心を豊かにし、前向きな変化をもたらすことにあります。一人ひとりが心豊かに生き、互いを尊重しつながり、誰もが自分らしく生きられる社会、自然や資源が大切に扱われ循環することで、人と地球環境が共生する世界を目指し、社会課題の解決と事業成長を両立させながら、持続的な企業価値の向上に取り組んでいきます。
2025年11月に発表した「2030 中期経営戦略」では、ビジョンの実現に向けて「サステナブルな価値創造」を、経営戦略の中核の一つとして位置付けました。
私たちは価値創造を通じて、多様な美の価値を創造し続ける企業文化を育み、人々の生涯を通じたQOLが向上している社会、そして社名の由来である「万物資生」※の考えに基づく地球環境との共生を目指します。そして、「2030
中期経営戦略」の策定に伴い、社会・業界の変化やリスク・機会を踏まえ、2019年に特定したマテリアリティを見直し、多様なステークホルダーとの対話を通じて19の重要課題を特定しました。この重要課題の解決を着実に前進させるため、社会・環境のそれぞれの領域に3つの戦略アクションと中期目標を掲げています。さらに、環境領域では対応する領域を広げるとともに、2030年に向けた目標へと更新し、全社で取り組みを推進しています。
社会領域では、「ジェンダー平等」「美の力によるエンパワーメント」「人権尊重の推進」の3つを戦略アクションとし、誰もが自分らしく生きられる社会に向けて戦略を推進しています。多様な個性を持つ社員が集い、その能力を存分に発揮していることが、私たちの大きな強みです。この強みをさらに高めるべく、まず社内における「ジェンダー平等」として、2030年までにあらゆる階層の女性リーダー比率を50%とする目標を掲げました。最新の女性管理職比率は取締役会50.0%、グローバル60.3%、国内43.3%と着実に前進しており、当社が長く培ってきたDE&Iの知見を事業やブランドを通じて社会へ広げ、価値創出へとつなげています。
さらに、社会へのコミットメントとして、「ジェンダー平等」と「美の力によるエンパワーメント」において、2030年までにそれぞれ100万人の支援を掲げており、2025年の達成率はそれぞれ95%、40%となっています。具体的な取り組みとして、前者では社会的に厳しい状況にある少女たちへの教育・自立支援を継続するほか、後者では深い肌悩みに対応する「パーフェクトカバー」の展開や、子どもたちの心と身体の健全な成長を支援する「ANESSA
Sunshine Project」などを実施しています。
環境領域では、「万物資生」※の考えに基づき、「循環型モノづくり」を軸に、バリューチェーン全体を通じて環境課題に取り組んでいます。
さまざまなステークホルダーと協働しながら取り組みを推進する「地球環境の負荷軽減」、処方や成分、容器包装を包含する「サステナブルな製品の開発」、森林破壊や人権侵害といった社会課題の解決に貢献するための「サステナブルで責任ある調達の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。
気候変動への対応では、2030年に向けてScope 1・2のCO₂排出量46.2%削減、Scope
3の55%削減(SBTi認定)を設定し、2025年度には全社の電力における再生可能エネルギー比率が94%に達しました。今後注力する課題は、CO₂排出量の割合が最も高いScope
3への対応であり、事業に関わるお取引先などステークホルダーのみなさまとの連携をより一層強化しながら取り組みを加速させていきます。
気候変動と水資源を含めた生物多様性の保全にも積極的に取り組み、CDPより「気候変動」および「水セキュリティ」分野において、最高評価のAリスト企業に選定されました。
「サステナブルな製品の開発」では、サステナブルな容器への切り替えに取り組み、2025年末時点で、設計ベースでの切り替え98%を達成しました。
これらの取り組みを通じて着実な成果を生み出すためには、資生堂グループの社員一人ひとりの力を欠くことができません。人材を最も重要な資産と位置付け、中期経営戦略と連動した新たな人材戦略を推進し、困難な時にあっても世界と本物の価値を分かち合おうとする「資生堂人」として社員が成長することを組織全体で支援し、挑戦を後押しする風土と学び続ける組織を構築していきます。その一環として、すべての社員が日々の業務において体現すべき共通の価値観と行動基準「The Shiseido Way」を制定し、グローバルでの組織能力強化に努めています。
資生堂グループの150年以上の歩みは、「美の力」による社会価値創造の歴史です。世界各地で不確実性が一段と高まる先行きの見えない時代においてこそ、私たちはサステナビリティへの歩みを決して止めません。長期的な視点に立ち、社会課題の解決と事業成長を両立させる価値創出を続けていきます。また、透明性と実効性を高めた確固たるガバナンスのもと、サステナビリティ活動をより一層進化させてまいります。卓越した研究開発力、ブランド力、多様な人材の力を結集し、ビジョンの達成とミッションの実現に向けて、持続的な企業価値の向上を目指します。
取締役 代表執行役 社長 CEO
藤原 憲太郎
資生堂は1872年の創業以来、常に新しい価値を創造し続けてきました。美の力を通じて、人々の生き方や価値観、そして文化そのものに新たな可能性をもたらしてきた軌跡です。
そしてその価値創造は、人や社会・文化だけでなく、地球環境への影響にも向き合いながら、持続可能な未来へとつながっています。
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