1. Home
  2. サステナビリティ
  3. 社会
  4. ジェンダー平等

ジェンダー平等

ジェンダーギャップ解消による女性活躍支援

資生堂は、国際機関、民間企業、地方自治体、関係団体などと連携し、女性が経済的に自立すること、また意思決定機関における女性の参画があたりまえの姿になることを目指しています。ジェンダーにかかわらず公正な機会を得ることで、一人ひとりが自分らしく生きることができる社会の実現に貢献していきます。当社は、日本社会全体のジェンダー平等の実現を目指すリーディングカンパニーとして、これまでの取り組みをさらに進化させ、社会と連携しながら女性活躍のための支援活動に注力していきます。

資生堂 DE&I ラボ の取り組み

2023年に発足した「資生堂 DE&I ラボ」では、多様な人材が持つ力を発揮することで、異なる価値観や考え方が新たなイノベーションを生むプロセスの共同研究を東京大学と行い、DE&Iと企業成長との関係を実証する取り組みを推進しています。また、これらの研究で得られた知見を「資生堂 DE&I ラボサイト」を通じて自社内だけでなく社会にも共有することで、DE&Iの実現による日本経済の成長促進に貢献していきます。

2024年には「女性活躍からジェンダー平等へ」をテーマにした実証結果を「資生堂 DE&I ラボサイト」に公開しました。研究からは組織のリーダーのジェンダーバランスの偏りがアンコンシャスバイアスを強める可能性が示唆されました。この結果から、企業はリーダーのジェンダーバランスの均衡を図り、特定の層だけに向けてではなく、組織全体の課題として全社的なアプローチを行うことの重要性が明らかになりました。
2025年3月には当研究機関主催のイベント「資生堂 DE&I ラボ シンポジウム」を開催し、共同研究者である東京大学大学院経済学研究科教授の山口慎太郎氏らとともに、最新の研究知見を交えながらジェンダー平等実現のためのディスカッションを配信しました。「資生堂 DE&I ラボ」は、真のジェンダー平等に向けて、これからも組織変革につながる実証研究を続けていきます。

  • 当研究機関は、山口氏が主幹となり、奥山陽子氏(ウプサラ大学経済学部助教授/東京大学 CREPE招聘研究員)が共同研究者として参画

SHISEIDO DE&I Lab

企業の意思決定機関における健全なジェンダーバランスを目指す「30% Club Japan」への参画

日本企業の役員※1に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」においてTOPIX 100、TOPIX Mid 400に含まれる企業33社※2の会長・社長からなるコミュニティ「TOPIX社長会」を2019年発足から資生堂がリードしてきました。トップによる会議は2024年までに11回開催され※3、「30% Club Japan」のメンバーであるTOPIX100、TOPIX Mid 400の会長・社長、延べ218名が参加しました。
イノベーションの創出には変化・対応力の高い組織文化への変革が必要であり、そのためには、とりわけ多くの部下を持ち、日常的な業務執行への影響が大きい執行責任者層(執行役員・ライン部長(組織長)層)のジェンダーバランスの実現が極めて重要です。その考えに基づき、「執行役員・ライン部長への女性登用」というテーマに加えて多様性をいかす組織文化変革など、より幅広いテーマについて参加各社の事例を通じて活発な議論を展開しました。
また、参加企業の実務責任者で構成されたプロジェクトマネジメントチーム(33社約80名)では、「TOPIX社長会」を通じて浮き彫りになった女性のキャリア成長を阻む3つのゲートに対応すべく、企業横断でのプロジェクト体制を組み、育児との両立期社員に対するベストプラクティスの共有、女性幹部候補者と同会のトップとの交流会など全社共通の課題解決に向けた具体的施策を推進しています。

また、2022年からは「30% Club Japan」の特長でもある、企業を起点とするステークホルダーで社会へ働きかける「統合的アプローチ」を本格稼働させ、企業を横断したベストプラクティスの共有や機関投資家・大学とのパートナーシップによるアクションが強化されました。

「TOPIX社長会」参加企業の役員に占める女性比率は国内上場企業の平均を12.5ポイント上回る24.9%に上昇し、事業責任者や工場長など、これまで女性が少なかったポストへの登用も進み、意思決定場面の女性参画が着実に進化しています。
資生堂は、女性活躍を推進することによって同質性からの脱却と、そこから生まれるイノベーションの創出に向け、日本企業の変革をリードしていきます。

  1. ※1:役員は取締役と監査役と定義
  2. ※2:2024年12月末時点
  3. ※3:2024年12月末時点

「TOPIX社長会 トップ会議」での藤原憲太郎CEO

地方自治体との協働による女性活躍支援

資生堂は、2024年に東京都が主催する「東京都くらし方会議」にエグゼクティブオフィサー チーフ DE&I オフィサー 廣藤綾子が委員として参加しました。会議では、当社のDE&Iの取り組みを共有し、女性活躍推進において本人が望まない不要な配慮は、本人のキャリア形成の機会を妨げるケースもありえるので、本人のキャリア志向を尊重し、積極的な業務アサインなどを通じて活躍・成長を支援することの重要性を伝えました。

この他2024年は、企業、地方自治体、大学、省庁、各種団体から、ジェンダー平等や女性活躍推進について延べ60社に及ぶ企業・団体に講演を実施しました。講演では、女性リーダー育成のための経営層のコミットメントの重要性をはじめ、資生堂の女性活躍推進の歴史や、意識改革のためのさまざまな人事施策など幅広い内容を取り上げました。
代表的なものとしては、長崎県主催の「第9回ながさき女性活躍推進企業等表彰」や、一般社団法人とちぎ圏央まちづくり協議会主催の「第5回SDGs交流会」に登壇しました。これからもジェンダー平等の実現に向けて蓄積した資生堂の知見や経験が、社会の変革に役立つよう取り組んでいきます。

子育て支援の取り組み

  • 2024年12月末時点

事業所内保育施設「カンガルーム掛川」で遊ぶ子どもたちの様子

「KANGAROOM+」における「産後サポート」の様子

自然科学分野の女性研究者支援の取り組み

日本における女性研究者の比率は18.3%と諸外国と比べて低い水準にとどまっています。この現状を改善するため、資生堂は自然科学分野で世界をリードするイノベーティブな研究に従事する国内の女性研究者を継続して支援しています。2007年より助成制度「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」を運営し、17回目となる2024年は10名の女性研究者に対して研究助成金を贈呈しました。この助成金は、研究目的であれば出産や育児などの女性のライフイベントへのサポートにも活用できる柔軟さが特長となっており、これまで延べ169名の研究者の研究成果とキャリア形成に貢献してきました。
2024年は「女性研究者ネットワークの深化」をテーマにした授賞式を資生堂グローバルイノベーションセンター(横浜)で開催しました。過去の受賞者も参加し、女性研究者ネットワークの深化をテーマにした研究報告会やパネルディスカッションが行われました。エグゼクティブオフィサー チーフDE&I オフィサー 廣藤綾子は「日本の女性研究者を取り巻く研究環境は依然として厳しい面もあるが、個性をいかしたリーダーシップを発揮し、ロールモデルとして後進に道を切り開いてほしい」と期待を込めたコメントを述べました。資生堂は今後も女性研究者の活躍を支援し、多様な人と知の交流機会を提供していきます。

  • 総務省2023年(令和5年)科学技術研究調査より

資生堂 女性研究者サイエンスグラント2024年授賞式

SCIENCE GRANT

サプライヤーにおける女性のエンパワーメント

資生堂は、2024年にサプライヤー企業の経営者と、マネージャー32名に対してダイバーシティに関する講演を実施しました。女性リーダー育成や柔軟な働き方などのテーマを中心に、工場での障がい者雇用や従業員のウェルビーイングについても意見交換を行いました。当社は製造業における女性や障がい者のエンパワーメントは社会的な課題と捉え、今後もベストプラクティスの共有によってサプライチェーン全体のESGパフォーマンス向上を支援していきます。

女性の就業支援

ジェンダー平等を推進する当社は、女性の就業支援団体やコミュニティと連携した支援に取り組んでいます。日本では育児や介護、療養、家族の転勤などの理由で一時的に仕事を離れた女性が、再び就業や再就職を果たすことは現在でも簡単ではありません。これまで資生堂ジャパンは地方自治体と協定を結び、女性の社会参画や就業支援などさまざまな取り組みを推進してきました。

2025年3月には資生堂は、女性のキャリア開発を支援する非営利団体 Mums@Work Asiaと連携してキャリアブレイク中の女性を対象とした交流会を東京で開催しました。このイベントでは、家事・育児などで時間が限られたなかでもできるスキンケアやメイク方法を学ぶ講座や、仕事を離れた経験を持つ資生堂の女性社員が自分の体験を共有し、参加者はみずからのキャリア開発に向けた新たな視点を得る機会となりました。

  • 育児、介護、療養、学業などによって一時的に仕事を離れている期間

キャリアブレイク中の女性を対象とした交流会の様子

キャリアブレイク中の女性を対象とした交流会の様子

グローバルにおける女子教育と経済的自立支援

資生堂では、ブランドと海外地域本社が連携して、ジェンダーギャップ解消、女性のエンパワーメントを目的に社会的に厳しい状況にある少女たちへの教育支援・自立支援を行っています。

「クレ・ド・ポー ボーテ」女子教育支援の取り組み

グローバルラグジュアリーブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」は、ユニセフ※1とSTEM教育※2や職業訓練、エンパワーメントプログラムを通じ、ジェンダーギャップ解消に取り組んでいます。両者はグローバルパートナーシップを通じて、2025年までにバングラデシュ、キルギス、インドネシア、中国、カザフスタン、ラオス、ナミビア、ニジェール、ペルー、ウズベキスタン、ベトナムの国々で、570万人の少女たちを支援することを目指しています。「クレ・ド・ポー ボーテ」とユニセフの代表は、2024年3月にこのパートナーシップの主な支援国の1つであるバングラデシュを訪れました。バングラデシュでは、ジェンダーに配慮したスキルベースのカリキュラムと教科書を導入した学校を視察し、さらに教育省レベルでの議論を通じて、学校に通えない少女たちを支援するSkills4Girlsプログラムを通じた技能訓練の提供を強化することを確認しました。

パートナーシップの効果を実際に体感するため、
重点支援国の1つであるバングラデシュを訪問

UNLOCK THE POWER GIRLS

また、同ブランドではグローバルチャリティープログラム「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」を設立し、少女たちの社会的地位向上とエンパワーメントを推進するために女子教育に貢献した女性を毎年表彰しています。第6回目となる2024年は、STEM教育によるジェンダーギャップ解消を推進するレシュマ・サウジャニさんを選出しました。サウジャニさんは、テクノロジー分野におけるジェンダーギャップの是正に取り組む国際的なNPO法人「Girls Who Code」の設立を通じ、コンピューター・サイエンスにおける女性の地位向上に尽力してきました。

「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」
2024年受賞者、レシュマ・サウジャニさん

ユニセフとのパートナーシップの寄付金※3および「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」の寄付金※4はブランドを代表する美容液である「ル・セラム」のグローバル売上から拠出されます。今後も資生堂は、社会にポジティブな影響をもたらす女性、そして外見だけでなく内面的な美しさや強さを目指す女性たちを応援していきます。

  1. ※1:国連児童基金。ユニセフは特定の企業やブランド、商品、またはサービスを推奨するものではありません
  2. ※2:科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)の教育分野を総称した名称
  3. ※3:「ル・セラム」が1本購入されるごとに、3米ドルをユニセフの活動へ寄付するCRM(Cause Related Marketing)キャンペーン
  4. ※4:「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」受賞者が選定する女性の教育推進のために活動する慈善団体へ寄付されます

親と離れ施設や里親のもとで暮らす子どもたちの自立・進学支援

公益財団法人 資生堂子ども財団※1は、「すべての子どもが笑顔にあふれ、自分らしく輝く社会」の実現を目指し、社会に巣立つ子どもたちの未来を後押しする「⼦どもへの⽀援」、子どもたちを育てる人の学ぶ機会をつくる「子どもを育む職員への支援」、子どもたちをみんなで支える社会をつくる「広く一般の方々に向けての情報発信・共有」の活動に取り組んでいます。

なかでも、「⼦どもへの⽀援」として、当社は、資生堂ジャパン株式会社、株式会社AOKI、株式会社リクルートなどの企業・団体と協働し、社会的養護※2のもとで暮らす中学・高校生を対象として自立生活に必要な社会的知識を専門家から学ぶ「自立支援セミナー」を開催しています。2024年度は中学生向けのキャリア支援コンテンツを立ち上げ、第1回を資生堂福岡久留米工場で実施しました。施設の見学や体験を通じ、工場のさまざまな仕事や、化粧品販売の仕事について学ぶ機会を提供しました。また、大学・短大・専門学校への進学支援として2007年に開始した奨学金事業では、2025年3月末時点で16名の奨学生が在籍し、通算では93名の奨学生を支援してきました。

その他にも、「子どもを育む職員への支援」として児童福祉施設職員向けの研修の開催や、「広く一般の方々に向けての情報発信・共有」として日本各地の児童虐待防止啓発イベントや子育て家庭向けセミナーへの助成なども行っています。
このように、ジェンダーに関係なく平等な機会を提供することで、将来のジェンダー平等の実現に寄与することを目指しています。

  1. ※1:2022年、設立50周年を機に、法人名称を資生堂社会福祉事業財団から資生堂子ども財団に変更
  2. ※2:さまざまな理由で親と暮らせない子どもたちを、公的責任で保護し、社会的に養育するとともに、養育に困難を抱える家庭への支援を行うこと。日本では約4万2,000人の子どもたちが社会的に養護されている

身だしなみ講座の様子

身だしなみ講座の様子

児童福祉施設職員向け研修の様子

児童福祉施設職員向け研修の様子