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日本におけるジェンダーギャップ解消による女性活躍支援

資生堂は、これまでの知見や経験を発展させ、国際機関、民間企業、地方自治体、関係団体などと連携し、女性が経済的に自立すること、また意思決定機関における女性の参画があたりまえの姿になることなど、ジェンダーにかかわらず、公正な機会を得ることで、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現に貢献していきます。

日本社会のジェンダーギャップ解消と女性活躍支援

資生堂は日本社会全体のジェンダー平等の実現を目指すリーディングカンパニーとして、自社での取り組みをさらに進化させ、女性活躍のための支援活動に注力しています。

資生堂DE&Iラボ

2023年に発足した「資生堂DE&Iラボ」では、多様な人材が持つ力を発揮することで、異なる価値観や考え方が新たなイノベーションを生むプロセスを東京大学との共同研究で検証し、DE&Iと企業成長との関係を実証する取り組みを行っています。また、これらの研究で得られた知見を「資生堂DE&Iラボサイト」を通じて自社内だけでなく社会にも共有することで、DE&Iの実現による日本経済の成長促進に貢献していきます。

美容職社員の働き方改革や女性管理職育成プログラムなど、これまでの知見や実績を「ACTIONS」、東京大学の山口慎太郎教授のチームと共同で進めている、多様な人材の活躍と企業成長の関係についての実証研究で得た結果を「RESEARCH」として「資生堂DE&Iラボサイト」で公表しています。
2024年には2つのテーマで実証結果を公表しました。1つ目のテーマ「女性活躍からジェンダー平等へ」の調査結果では、組織のリーダーのジェンダーバランスの偏りがアンコンシャスバイアスを強める可能性が示唆されました。この結果を受けてリーダーのジェンダーバランスの均衡を図り、全社的なアプローチを行うことの重要性を伝えました。2つ目のテーマ「ダイバーシティの先へ、インクルージョンの処方箋」では、“ヒーロープロダクト”を次々と世に送り出し成功しているマーケティングチームの事例を紹介しました。このチームは、外国籍や中途入社など多様なバックグラウンドを持つメンバーの意見を公平に受け入れるために、会議では事前資料「プレリード」を用意し、すべてのメンバーが自信を持って意見を共有できるインクルーシブな環境をつくりだしています。
「資生堂DE&Iラボ」は、真のジェンダー平等に向けて、これからも組織変革につながる実証研究を続けていきます。

  • 本研究機関は、山口氏が主幹となり、奥山陽子氏(ウプサラ大学経済学部助教授/東京大学 CREPE招聘研究員)が共同研究者として参画している

SHISEIDO DE&I Lab

資生堂DE&Iラボサイト「RESEARCH」ページ

企業の意思決定機関における健全なジェンダーバランスを目指す「30% Club Japan」への参画

日本企業の役員※1に占める女性比率の向上を目指す「30% Club Japan」は英国発祥のグローバルイニシアティブであり、日本では2030年をめどにTOPIX100企業で女性役員の比率30%※2を達成することを目標として2019年に発足し、2022年に第2期がスタートしました。当社 代表執行役 会長 CEO 魚谷雅彦が第1期に続き、第2期の会長を務め、TOPIX 100、TOPIX Mid 400に含まれる企業34社※3の会長・社長からなるコミュニティ「TOPIX社長会」で活動しています。

「TOPIX社長会トップ会議」は、2023年までに9回開催され※4、「30% Club Japan」のメンバーであるTOPIX100、TOPIX Mid 400の会長・社長、延べ172名が参加しました。イノベーションの創出には変化・対応力の高い組織カルチャーへの変革が必要であり、そのためには、とりわけ多くの部下を持ち、日常的な業務執行への影響が大きい執行責任者層(執行役員・ライン部長(組織長)層)のジェンダーバランスの実現が極めて重要であるとの考えに基づき、「執行役員・ライン部長への女性登用」というテーマに加えて多様性をいかす組織カルチャー変革など、より幅広いテーマについて参加各社の事例を通じて活発な議論を展開しました。また、参加企業の実務責任者で構成されたプロジェクトマネジメントチーム(34社約80名)では、「TOPIX社長会」を通じて浮き彫りになった女性のキャリア成長を阻む3つのゲートに対応すべく、企業横断でのプロジェクト体制を組み、若手女性社員のキャリア意識醸成や育児との両立期社員に対するベストプラクティスの共有、女性幹部候補者と同会のトップとの交流会など全社共通の課題解決に向けた具体的施策を推進しています。

また、第2期からは「30% Club Japan」の特長でもある、企業を起点とするステークホルダーで社会へ働きかける「統合的アプローチ」が本格稼働し、機関投資家33社から構成されるインベスター・グループ、9大学からなる大学グループと「TOPIX社長会」との連携によるアクションが具体化しています。

5年間の取り組みにより、「TOPIX社長会」参加企業の役員に占める女性比率は国内上場企業の平均を12.5ポイント上回る23%に上昇し、事業責任者や工場長などこれまで女性には不向きとされていたポストへの登用も進むなど、意思決定場面の女性参画が着実に進化しています。
資生堂は、女性活躍推進による同質性からの脱却と、そこから生まれるイノベーションの創出に向け、日本企業の変革をリードしていきます。

  1. ※1:役員は取締役と監査役と定義
  2. ※2:TOPIX100の取締役会における女性役員比率(監査役会設置企業は監査役を含む)
  3. ※3:2023年12月末時点
  4. ※4:2023年12月末時点

「TOPIX社長会トップ会議」の様子

30% Club

地方自治体との協働による女性活躍支援

資生堂は、2024年に東京都が主催する「東京都くらし方会議」に株式会社資生堂執行役 チーフファイナンシャルオフィサー、チーフDE&Iオフィサー 廣藤綾子が委員として参加しました。この会議は、都民の働き方や生き方に関わるさまざまな社会の制度や会社組織の状況などについて、有識者との意見交換を通じて検討を進めることを目的に東京都が設置したものです。第3回目の会議では、当社のDE&Iの取り組みを共有し、女性活躍推進において、会社の過度な配慮は本人のキャリア形成の機会を奪いかねないので、本人のキャリア志向を尊重し、積極的な業務アサイン等を通じて、活躍・成長を支援することの重要性を伝えました。
このほか、企業、地方自治体、大学、省庁、各種団体から、ジェンダー平等や女性活躍推進についての外部講演を依頼され、2024年の講演参加者は延べ約6,000名(主催約60社/団体)にのぼりました。講演では、女性リーダー育成のためのトップのコミットメントの重要性をはじめ、資生堂の女性活躍推進の歴史や、意識改革のためのさまざまな人事施策など幅広い内容を取り上げています。代表的なものとしては、長崎県主催の「第9回ながさき女性活躍推進企業等表彰」や一般社団法人とちぎ圏央まちづくり協議会主催の「第5回SDGs交流会」に登壇しました。これからもジェンダー平等の実現に向けて蓄積した資生堂の知見や経験が、社会の変革に役立つよう取り組んでいきます。

子育て支援の取り組み

  1. ※1:カンガルーム汐留は2023年3月末で終了し、同年4月より資生堂および提携企業社員向け子育ての支援サービス「KANGAROOM+」の提供を開始
  2. ※2:2023年12月末時点

事業所内保育施設「カンガルーム掛川」で遊ぶ子どもたちの様子

「KANGAROOM+」で開始した「産後サポート」の様子

自然科学分野の女性研究者支援の取り組み

日本における女性研究者の比率は18.3%※1と諸外国と比べて低い水準にとどまっています。この現状を改善させるため、資生堂は自然科学分野で世界をリードするイノベーティブな研究に従事する国内の女性研究者を継続して支援しています。2007年より助成制度「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」を運営し、17回目となる2024年は10名の女性研究者に対して研究助成金を贈呈しました。この助成金は、研究目的であれば出産や育児などの女性のライフイベントへのサポートにも活用できる柔軟さが特長となっており、これまで延べ169名の研究者の研究成果とキャリア形成に貢献してきました。
2024年は「女性研究者ネットワークの深化」をテーマにした授賞式を資生堂グローバルイノベーションセンター(横浜)で開催しました。女性研究者の現状について、過去の受賞者を対象にアンケート※2を実施したところ、80%以上の研究者が「女性ゆえに困っていることがある」と回答し、「家庭と仕事の両立が困難」「女性研究者が少なく、立場が理解されにくい」「周囲に相談・情報交換できる人がいない」という声が多く寄せられました。これらの回答から、日本社会に根づく性別役割分担意識を背景とした家庭と仕事の両立の困難さをはじめ、孤立しやすく、キャリア形成に不安を抱えている女性研究者の実態が浮彫りになりました。一方、助成金が得られたこと以外で本グラントを受賞してよかったことについては、「優秀な他の受賞者との交流が次の発想につながった」「受賞そのものが心の支えになった」「資生堂の研究員と交流がもてた」「周囲から認められるようになった」などがあげられました。
資生堂は今後も、本グランド受賞者に専門分野や領域を超えた多様な人と知の交流機会を提供し、厳しい環境にある優秀な女性研究者の活躍をサポートしていきます。また、本グラント受賞者と中高生との交流などを通じて、未来に向けても日本の科学界の発展に貢献していきます。

  1. ※1:総務省2023年(令和5年)科学技術研究調査より
  2. ※2:調査期間:2022年11月16日~30日、資生堂 女性研究者サイエンスグラント受賞者のうち回答者数:74名(送付者数:119名)

資生堂 女性研究者サイエンスグラント2024年授賞式

SCIENCE GRANT

サプライヤーにおける女性のエンパワーメント

資生堂は、2024年にサプライヤー企業の経営者と、マネージャー32名に対してダイバーシティに関する講演を実施しました。女性リーダー育成や柔軟な働き方などのテーマを中心に、工場での障がい者雇用や従業員のウェルビーイングについても意見交換を行いました。当社は製造業における女性や障がい者のエンパワーメントは社会的な課題と捉え、今後もベストプラクティスの共有によってサプライチェーン全体のESGパフォーマンス向上を支援していきます。