資生堂は、戦禍によるやけど跡で苦しむ方に向けた日本初のメイクアップ製品の発売(1956年)をきっかけに、あざや傷跡などの外見の変化に対応する化粧品の開発や美容技術の向上に取り組むなど、科学的なアプローチで「美には心を豊かにし、生きる喜びや幸せをもたらす力がある」ことを解明してきました。美の力を通じ、さまざまな悩みや困難を抱える人の心身および社会的な満足※を実現する活動を、各種支援団体をはじめ、医療機関、地方自治体などをパートナーとして継続的な取り組みを推進しています。
がんになっても自分らしく生きることのできる社会を目指して、資生堂は治療に伴う外見の変化に対する悩みを解決する活動を、グローバル共通の活動として推進しています。
2008年から、がん治療の副作用に関する外見ケアを手がけてきました。2015年に発刊したがん患者の方向けの小冊子は改訂を重ね、2022年には、性別を問わず、がん治療による肌状態や外見変化に対応した美容情報やテクニックをわかりやすくまとめた「外見ケアBOOK ~自分らしく、心地よく。~ 」を発刊しました。2023年はコロナ禍を経て、各国・地域※2でのがんサバイバーを対象とした外見ケアセミナーなどを活性化させ、グローバルで延べ6,045名の方と接点を持つことができました。
2023年6月、資生堂は「第8回日本がんサポーティブケア学会 学術集会(奈良県)」にて、聖路加国際病院との共同研究によるオンライン形式のがん外見ケアアドバイスが、がん患者の QOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)向上のための心理社会的支援として有用であることを研究成果として発表し、優秀演題賞を受賞しました。
日本では、資生堂ジャパンに所属する高度な技術を持ち、地域で専任的に活動している7名のソーシャルエリアリーダーと38名のソーシャルエリアパートナー※3が中心となり、地域の特性とそれぞれの社会課題に対し、「化粧のちから」を通じた社会活動の企画、実行をリードしています。
2023年、資生堂ジャパンは地方自治体との取り組みとして、山形市と「健康の保持・増進に関する協定」を締結しました。本協定は両者が相互に連携し、山形市民のがん対策および健康づくりの推進に向けた取り組みを通じて、市民のより一層の健康的な生活の実現を目的として定めたものです。同年には栃木県とも「がん対策に係る連携協定」を締結し、がん外見ケアセミナーを開催しました。栃木県と資生堂ジャパンは相互に連携し、栃木県民のがん対策を推進し県民のより一層の心身の健康的な生活の実現を目指しています。
2024年3月、島根県松江市で開催された「第34回全国椿サミット松江大会」では、松江市との初の共同取り組みを実施しました。この大会では、松江市立病院、松江赤十字病院とともに、「がんを正しく知って正しく向き合う」をテーマに一般市民、医療従事者、がん患者の方約70名に対して「がん外見ケアセミナー」を講演し、「メイク体験」には約40名の方が参加しました。
同月には、名古屋市の「AICHI AYA WEEK 2024」において、AYA世代※4のがん患者の方が、いつどんなときでも、自分らしく毎日を過ごせるように「がん外見ケア個別相談会」や、資生堂トップヘアメイクアップアーティストによる「ヘアウィッグを楽しむヘアメイクショー」などを開催、2日間で資生堂のビューティー体験には494名が来場しました。
また、福岡市で開催された「AYA WEEK 2024 大交流会」に参加し、資生堂癒しのタッチケア®※5、パーソナルBカラー診断🄬※6などを実施しました。
「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ 」のサイトはこちら
資生堂は2017年から、がんになっても笑顔で過ごせる社会を目指す、をテーマにがんサバイバーを支援する「LAVENDER RING 」に参画しています。
この活動において、当社は「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES 」を主導し、ヘアメイクとポートレート撮影を通して、がんになっても自分らしく生きていけるように、社会への復帰の一助となるよう後押しをしています。この活動は、2021年には公益社団法人 企業メセナ協議会からメセナ優秀賞を受賞しました。
また、2021年世界がんデーに、LAVENDER RINGフォトブック「自分らしく、を生きていく。」を出版し、書店をはじめ病院内の売店などで販売しました。がんサバイバー206名の方々のポスターやエピソードは、がんサバイバーご本人やそのご家族、サポーターの方々はもちろん一般の読者からも、「勇気や気づきを与えてくれた」「がんは誰にでも起こり得る身近なものだと感じられた」など多くの反響が寄せられました。
2022年から「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」のグローバル展開を開始し、2023年も日本をはじめ、中国、シンガポール、台湾、タイの各国・各地域で実施しました。協働した患者団体や医療機関からは「参加したがんサバイバーがポジティブな体験を通じ自信を高めました」「多くの人々に勇気を与えました。継続開催を期待しています」などの回答が寄せられました。
2024年には新たにフィリピンとマレーシアにもエリアを拡大しています。1月のフィリピンでのイベントには65名、5月のマレーシアでのイベントには15名のがんサバイバーが参加しました。
2023年、日本では「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」活動を拡大し、全国5エリア(東京、大阪、愛知、愛媛、福岡)で開催しました。これに加え、第31回日本医学会総会 2023東京 博覧会に「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」写真展を特別出展し、多くの方にサバイバーの笑顔とメッセージを届けました。
LAVENDER RINGの活動を開始した2017年から2023年までに、日本をはじめ、中国、シンガポール、台湾、タイにおいて医療機関・患者団体と協働のもと、30回の「MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」を実施し、653組のがんサバイバーの方々が参加しました。2024年2月に第38回日本がん看護学会学術集会内で、「LAVENDER RING MAKEUP & PHOTOS WITH SMILES」ポスター展を開催しました。
60年以上の実績を持つ「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」は、戦禍によるやけど跡で苦しむ方への日本で初めてのメイクアップ製品をはじめ、生まれつきのあざ、やけど跡、がん治療の副作用による外見ケア研究、美容情報や専用製品の開発を行っています。現在では日本をはじめ、中国、シンガポール、台湾の各国・各地域で専門施設である「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター」を拠点に展開しています。日本の「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター」は従来の深い肌悩み対応においても、2023年は顔面神経麻痺など顔の左右差に悩みを持つ方に対する美容情報を発信し、医療機関と連携し外出が困難な方に対しては個別オンラインカウンセリングを展開しています。
2023年は、プライバシーが保たれた空間での個別コンサルテーションの対応強化とともに、オンラインを活用したセミナーやイベント実施など、リアルとオンライン合わせて2,516回開催し、58,058名が参加しました。
中国では、2023年3月に「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」の専用製品「パーフェクトカバー(中国ブランド名:PF-COVER)」のリニューアル時に、キーオピニオンリーダー(KOL)を起用したオンラインコミュニケーションや、ソーシャルメディアを活用したコミュニケーション、白斑の症状を持つ方が集うプラットフォーム「白白手拉手」と提携などにより、多くの方々に情報を共有することができました。現在「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター(中国)」の来場者の約80%は、白斑の症状を持つ方々となっています。
台湾では、2023年は医療機関との連携を強化し、講演会や患者会のイベントなどを通じて、年間221回の「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」のセミナーを実施しました。また、高度な専門的技術をマスターした6名の美容技術者が継続的に「パーフェクトカバー」取扱店での美容技術向上をサポートしながら、紹介活動を行ってきました。
1995年、「資生堂 ライフクオリティー
メイクアップ」の専用製品として、光の技術を応用し、青あざ(太田母斑)・赤あざ(血管腫)・濃いシミなどをカバーする「パーフェクトカバー」を発売し、その後、白斑や傷跡などの凹凸の悩みなど、幅広く深い肌悩みに対応できる製品へ進化させてきました。
2022年、グローバルでの展開強化に向け、処方・パッケージを含めて全面リニューアルしました。がん治療の副作用による外見上の変化(強いくすみや色素沈着など)へのカバー機能を強化し、自然な仕上がり感、化粧持ちを実現しました。主力製品の「パーフェクトカバー
ファンデーション MC」は、なめらかな感触で肌へフィットし、あらゆる色悩みや凹凸のカバーに対応します。白斑のカバーに特化した「パーフェクトカバー ファンデーション VC」は、白斑の周りの肌の色に合わせて自然にカバーすることができます。コロナ禍を経て、メイクアップニーズの高まりとともに、カバーすることで自分らしくいたいという方にお応えしています。
現在、高齢化率※129.1%を記録し※2、世界で最も高齢化が進む日本では、厚生労働省の指針により地域で住民の健康増進に資する取り組みが強化され、がんサバイバーや高齢の方々を地域でサポートする体制づくりが進められています。
資生堂ジャパンは、高齢の方々の心豊かな社会生活の支援を目指し、日本各地域でリテールパートナーをはじめ、各種支援団体、医療機関、地方自治体などと連携を深め、健康寿命の延伸につながる活動「高齢者向け美容講座」を展開しています。2023年、埼玉県では、地域包括支援センターとウエルシア薬局株式会社と協働し、同薬局が提供するコミュニティスペース「ウエルカフェ」にて高齢の方々を対象に、18カ所56回の美容講座を開催しました。
さらに、高齢の方々に対しての「資生堂化粧療法」※3の研究知見を取り入れた「化粧健康法プログラム」を開発し、全粧協加盟※4の化粧品専門店497店※5に導入しています。身近な場所で美容を通して健康を実現する機会づくりを実施しています。
医療の分野では、高齢者のオーラルフレイル※6の問題が顕在化しています。「資生堂化粧療法」の研究によると、化粧をする動作には唾液腺に触れる動きが含まれ、口腔機能の向上にもつながることがわかっています。この研究結果から、歯科医や歯科医院と連携し、地域住民を対象としたセミナーを開催しています。
1980年代、資生堂は点字版美容テキスト、商品識別点字・墨字シール、使用量シールといった、視覚に障がいのある方をサポートするための美容教材の開発を始めました。2002年より、視覚障がい者の方々に向けた音声読み上げ美容情報サイト「資生堂リスナーズカフェ」を開設し、より多くの当事者にお届けするために、2022年全面的に改編しました。新しい動画のコンテンツを取り入れ、視覚に障がいのある社員が出演することで、実生活に役立つ美容情報を紹介しています。また、資生堂ジャパンのソーシャルエリアパートナーによる美容情報やイベントの告知など、これまでと同様に音声読み上げソフトに対応しながら、日常生活の中で楽しく取り入れていただける内容を掲載しています。
資生堂ジャパンでは、2019年に当事者ご自身で簡単にメイクができる当社独自の化粧法である「ガイドメイク」を開発し、「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセミナー」のメニューに追加しました。2021年には「視覚障がい者向けオンライン」メニューも拡充しました。コロナ禍に開催を見合わせていた「ガイドメイク」を2023年から再開し、さいたま、浜松、名古屋、京都、広島など全国各地の会場でリアルでもオンラインでも参加できるようにして開催しました。視覚に障がいのある方だけでなく、知的障がいや発達障がいなど、さまざまな障がいのある方にも「化粧のちから」通して、自分らしく過ごせる社会の実現を目指しています。
また、資生堂は、聴覚障がい者や耳が不自由な方の視聴普及を目的に2018年よりテレビ番組における「字幕付きCM」の放送を開始しました。段階的に拡大し、現在ではすべてのテレビCMで字幕対応が可能となっています。
2024年、資生堂の日焼け止めブランド「アネッサ」は、太陽のもとでの活動を通じて、子どもたちの心と身体の健全な成長を支援する「ANESSA Sunshine Project(アネッサ サンシャイン プロジェクト)を開始しました。この取り組みは、「アネッサ」が初めてアジア12の国と地域※1で横断的に行う社会貢献活動です。
世界保健機関(WHO)が5~17歳の子どもおよび青少年に1日60分以上(週7時間以上)の運動を奨励※2している一方で、現代社会において子どもたちが外で遊ぶ時間が減少しているといわれており、「アネッサ」がアジア4カ国(中国、日本、タイ、ベトナムの都市部)で実施した独自のアンケート調査※3結果では、すべての国において週7時間以上の外遊びが確保できている子どもが50%に満たないことが明らかになりました。外で遊ぶことは、子どもの発育・発達における5つの側面(身体・情緒・社会・知的・精神)をバランスよく育み、特に自律神経機能向上により、意欲や自発性といった生きる力を形成する※4ことから、「アネッサ」はこの社会課題に取り組みます。
また、この社会課題を達成するための活動の一環として、公益財団法人日本サッカー協会のパートナーシップ制度「JFA PARTNERSHIP PROJECT for DREAM」において、化粧品ブランドとして初めてJFAソーシャルバリューパートナー契約を締結しました。アネッサはJFAソーシャルバリューパートナーとして、JFAと共同で子ども向けの体験イベントを開催し、太陽光の恩恵を受けながら安全に太陽のもとで遊ぶための親子紫外線対策講座と、太陽のもとで心と身体を動かすアクティビティを実施します。
「ANESSA Sunshine Project」に関するリリースはこちら
JFAソーシャルバリューパートナー契約に関するリリースはこちら
ANESSA Sunshine Project「専門家インタビュー:外遊びと子どもの成長」編(日本語版)
資生堂は、2000年から日光に当たることができない紫外線過敏の難病「色素性乾皮症(以下、XP)」の患者の方々への支援策として、日焼け止め製品の寄付や、研究員・パーソナルビューティーパートナーによるセミナーなどを行っています。
セミナーでは、XP患者の方々も屋外活動を楽しむことができるように、日焼け止めを使って効果的に肌を保護する方法を伝えています。また、2005年から資生堂社員の給与積み立てによる募金「資生堂カメリアファンド」を利用した支援にも取り組んでいます。2023年は、イントラネットによる社員向けオンラインセッション「Brown Bag」において全国色素性乾皮症(XP)連絡会より、同会の活動内容および募金の活用方法などを共有し、社員へのXPに関する理解促進および意識啓発を行いました。
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