資生堂の人材育成とキャリア開発の支援策、公正な評価の取り組みを紹介します。
資生堂は「PEOPLE FIRST」という考えのもと、人材すべての価値創造・事業活動は人から始まり、「強い個が強い会社をつくる」ことを信じ、人材育成へ積極的に投資しています。「強い個」をつくるために力を入れているのが、ジョブ型人事制度に基づく、戦略的タレントマネジメント、パフォーマンスマネジメント、自律的キャリア開発支援です。グローバルな人材マネジメントをより効果的に実践するために、2020年に全社共通の人材像であるTRUST 8コンピテンシーを策定しました。TRUST8コンピテンシーをグローバル共通の選抜・評価や人材育成プログラムの基礎とし、さまざまな専門性を持った社員がそれぞれの強みをいかせる業務で成長しています。資生堂は社員のみずから成長する姿勢を奨励し、一人ひとりの自律的なキャリア開発を支援しています。
社員の専門性を強化し「グローバルで勝てる組織」となるよう、2021年から日本国内の管理職・総合職(美容職・生産技術職を除く)を対象としたジョブ型人事制度を導入しました。以下の4項目により、社員のレベルを判定する基準を個人の「能力」から「職務(ジョブ)」に移行することで、グローバルスタンダードに沿った客観的な評価や処遇を可能にしています。各部署における職務内容と必要な専門能力を明確化することで、社員一人ひとりのキャリアの自律性を高めることを狙っています。
当社ではグローバルにおける資生堂グループ全体での適材適所な人材配置と、戦略的タレントを育成するためのマネジメントを行っています。毎年、グローバル/リージョナル/ファンクショナルレベルでそれぞれタレントレビューを実施し、重要なキーポジションに対する後継者の指名・育成計画を作成しています。後継者の育成計画では、能力開発を主目的とした難易度の高い業務へのアサイン(ストレッチアサインメント)やグローバルでの異動機会、リーダーシップ開発プログラムなど、それぞれの強みや開発課題に基づく個別育成計画が策定され、CEOの承認・支援のもと、実行されます。
ビジネスと社員の持続的成長のために、パフォーマンスマネジメントを強化しています。2021年よりグローバルで共通のスキームを導入し、業績目標達成度とTRUST8コンピテンシーに則った行動発揮度の両方を評価するよう改訂しました。これにより中長期的な業績の向上と社員の成長を図っています。
資生堂のすべての社員は年度初めに業績目標を策定する際に、上司との面談を通じて個人業績目標を設定します。目標設定の際は所属グループの目標を各個人にカスケードし、各個人の目標がグループ目標の達成につながる設計となっています。また、社員各自のキャリアゴールやその実現に必要な能力開発を明確化するためのキャリア・ディベロップメントプラン(CDP)を設定します。
1年に1回以上の評価面談のみならず、期中は、日々の上司とのアジャイルな対話やフィードバックを通じて、進捗状況を定期的に確認し、必要に応じ軌道修正します。年度末には、上司との面談を通じて最終達成度を確認します。また、上司は他の社員にも自分の部下に対する評価を求めることができ、それらを含めてフィードバックすることで直属の上司の評価だけでなく、多面的に社員を評価することができます。
評価の揺れを回避するため、評価基準を確認する評価カリブレーション会議が行われ、正式な評価が確定します。また、期首においても、期待される水準のパフォーマンスに照らした目標が設定されているかを確認(目標カリブレーション)することで、各自がストレッチした業務アサインメントに挑戦し専門性を高めていきます。
資生堂グループは強固な企業集団であり続けるために資生堂グローバル人事ポリシーとして評価・処遇などについてのルールとガイドラインを定めています。
日本国内の資生堂グループでは、業務の成果とプロセスを適切に評価し、公平で納得性が高い制度を構築しています。評価の公正さを保つために、リーダー(部下を持つ職制マネジャー)に向けてマネジメントスキルの研修を充実化しています。新任職制マネジャー研修や評価者研修、マネジャートレーニングといった機会を通じて、マネジメントスキルの向上を図っています。1年に2回、日本国内資生堂グループ管理職向けに人事制度説明会を開催し、人事制度やその運用の理解を深めるための機会を設けています。
ジョブ型人事制度導入に際して、主体的なキャリア開発と専門性を強化するために、2020年から国内資生堂グループ全社員に対しキャリアワークショップやeラーニングを実施しています(2023年までに4,770名が受講)。また、社員自身が作成した中長期的なキャリアゴールを描くキャリア・ディベロップメントプラン(CDP)はパフォーマンスマネジメントの一環として扱われます。年度初めに業績目標を策定する際に、CDPを実現するための活動計画を上司と共有し、上司は効果的な業務アサインと人材育成につなげます。社員はみずからのキャリア開発にいかす基礎的なビジネススキルや、所属するジョブファミリーで必要な専門性を高めるさまざまな研修プログラムを自発的に利用できます。
資生堂の人材育成は「70:20:10の法則」※を重視していますが、とりわけトレーニングプログラムは、集中して新しい知見を学ぶ機会であり、優秀な社員と交流し、さらに成長意欲を高める機会となります。目的と対象者に応じ、選抜型プログラム・選択型プログラム・必須プログラム、の3種類の研修プログラムを提供しています。
2023年にはShiseido Future Universityをオープンし、選抜型研修を中心にリーダーシップ開発プログラムを実施し、社員に自己成長の機会を提供しています。
社員が専門性を高めるために、自律的な学習を推奨するラーニングプラットフォームとしてLinkedIn Learningを導入し、グローバルに働く社員が同じプラットフォームで受講できるよう展開しています。
女性リーダー育成の研修「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」は、幹部候補の女性社員がマネジメントや経営のスキルを学びながら、自分らしいリーダーシップスタイルを見つけるプログラムです。2023年は次期課長・部長候補者女性64名を対象に、8~10か月間にわたり、アンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)払拭のためのワークショップなど、自分のキャリア・プランを明確化し、リーダーシップを発揮するマインドセットや、マネジメントスキルを身に付ける機会を提供しています。同プログラムが女性社員へのエンパワメントとなり、これまでの受講者のうち47%が昇格し、女性リーダー比率向上に寄与しています。日本国内の女性管理職比率は2017年の29%から、2024年は40.0%に上昇しました。
資生堂は多様な人材をいかすために、リーダーシップ教育に重点を置いています。上司と社員の信頼関係を強化し、部下の成長を促すマネジメントスキルの強化を目的として、日本では上司向けのマネジャーワークショップを定期的に開催しています。2023年には1,600名が参加し、ワークショップ前後では、マネジメントに関する参加者の自信は、54ポイントから59ポイントへ向上しました。
戦略的タレント育成を目的に、資生堂グループ各領域の幹部候補社員に対しては、Shiseido Future Universityにおいて、能力開発と国を超えたネットワークの構築を促しています。Shiseido Future Universityでは、選抜された次世代リーダーに外部ビジネススクールと提携したプログラムを提供し、リーダーシップや経営スキルを学びます。また女性リーダー育成にも力を入れており、優秀な女性社員が自身や周囲のアンコンシャスバイアス(無意識の思い込みや偏見)から自由になるための「NEXT LEADERSHIP SESSION for WOMEN」を2017年から毎年実施しています。
社員が高いパフォーマンスを発揮し自律的なキャリアを形成するよう、みずから手を挙げて受講することができるプログラムを実施しています。日本国内では、職種を問わない基礎的なビジネススキル研修や、高い向上心を持つ若手社員を対象としたMBA派遣のほか、それぞれの専門領域のジョブファミリーでさらに専門性を高めるためのセールスアカデミーやマーケティングアカデミーなどを実施しています。
新入社員研修や3年目研修、新任職制マネジャー研修など、キャリア形成の節目となるタイミングで、必須プログラムを提供しています。リーダー(職制マネジャー)に対してはマネジャートレーニングやマネジャーワークショップでマネジメントスキルの研修を強化し、公正な評価と各部門での人材育成に努めています。
社員向け教育研修の実績は「社会データ」ページをご覧ください。
社員一人ひとりが、風通しのよい職場で、自分の仕事に意義ややりがいを感じて働けるよう、資生堂グループ全社員を対象に「資生堂グループ エンゲージメント調査」を実施しています。「エンゲージメント」「インクルージョン」「ウェルビーイング」「心理的安全性」「戦略の浸透」「経営層や上司への信頼」「成長の機会」「権限・裁量」「企業倫理」などの設問を設け、現状を把握しており、年1回の定期調査として組織の健全度を把握します。資生堂の社員は経営改革に際して多くの課題に挑戦する必要があり、社員は常に、意識と行動の変革が求められます。社員によって意識や取り組みの格差が生じると改革のスピードに影響する可能性があるため、この調査を通じて経営層みずからが社員の声に耳を傾け、現状の課題を明らかにするとともに、社員もまた、調査結果を見て、会社をよりよい場にするための具体的なアクションを考えます。資生堂は、経営者と社員とが双方向にコミュニケーションをすることで、真の変革を成し遂げられると考えています。また社内外に通報・相談窓口を設置し、雇用形態を問わず労働環境や職場の人間関係に関する相談や、就業規則違反や法令違反といった内部通報に対応しています。
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