ネイルエナメルを乾かす時間が面倒・・・。
IFSCC Congress 2000 第21回 ベルリン大会 最優秀賞(ポスター発表)
「水で乾くエナメルの開発」
発想の転換によって、「水につける」とわずか45秒で乾く、
画期的なネイルエナメルをつくった!
ネイルエナメルを手や足の爪に塗り、乾かしている最中にどこかにぶつけたり擦ったりして、最初から塗りなおしたという経験はありませんか?女性がネイルエナメルに求める機能は、「はがれにくい」「つややかな仕上がり」「色・発色」などさまざまですが、いちばん多いのがこの「乾きやすさ」です。
今回の受賞技術は、ネイルエナメルを速く乾かすために、これまでにない斬新なアイデアを取り入れたというもの。そこには、発想の転換が大きく寄与しています。一般的なネイルエナメルは、固めるための「皮膜剤」、その皮膜剤を溶かすための「溶剤」、色みを加える「色材」が主な成分。爪に塗ると溶剤が揮発することで、膜をつくる皮膜剤がカチッと固まり、乾くという原理です。
しかし、今回の受賞技術では、「溶剤を揮発させる」から「溶剤を素早く取り去る」に視点を変えました。溶剤を取り去るものとして、お客さまの最も身近なものの中から「水につける」ことで、瞬時に溶剤が溶け出すという方法を開発したのです。
この技術により、乾かす時間を45秒にまで縮めることができました。
アイデアが出るまでに1年。開発までは、さらに難題が山積み!?
「揮発させる」から、「水で取り去る」ことで速攻固まる素材を見つけ出す!
今回の受賞技術のポイントは、「水で溶剤を取り去る」ということ。従って、最初の難関は水には溶けない皮膜剤を溶かしつつ、水には溶けるという溶剤を見つけるところにありました。これまでに化粧品に使われたことのある溶剤には対応できるものがないので、ありとあらゆる分野の原料から、1年もかかってようやく見つけ出しました。
さらに難問は続きます。苦労して見つけた溶剤は水には溶けるのですが、これまでゆっくりと溶剤を揮発させていたのに比べて、溶剤が一気に取り除かれた皮膜剤の安定性が悪く、白くなったりぽろぽろと剥がれ落ちてしまうのです。したがって、ここからまた検討の日々が続きます。安全性はもちろん、水につけるということは環境にも配慮しなければなりません。また、水がない場所では使用できなくなるので、これまでのネイルエナメルと同じ時間で揮発させ、乾くような設計にもしておかなければならないのです。
こうした問題をすべてクリアした末に、ようやく水につけると乾くネイルエナメルが誕生しました。この技術は、2000年11月に発売された「資生堂S[エス] アクアドライネイル」に応用され、その後も、「化粧惑星」など多くの製品に活用されました。また、この研究で培った皮膜剤や溶剤の知見は、口紅やマスカラなどその他の商品の開発にも役立っています。
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