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「隠す」を超えて「自分らしく」。
70年続けてきた
「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ」の
これから

2026年7月31日

資生堂社員である小澤、青木が資生堂 ライフクオリティービューティーセンターのロゴを背景に横並びに笑顔で立っている

あざや白斑、やけど跡や傷跡、がん治療に伴う外見の変化など、肌に深いお悩みを持つ方に寄り添い続けてきた「資生堂 ライフクオリティー メイクアップ(以下、SLQM)」。1956年に誕生した「資生堂スポッツカバー」を原点に、商品や技術の開発とともに、一人ひとりと向き合う活動として70年にわたり受け継がれてきました。
今回は、この活動を支える専用ブランド「パーフェクトカバー」を担当する小澤史明と、肌に深いお悩みを持つ方を支援する専門施設「資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンター」を中心に、20年以上にわたり現場でお客さまと向き合ってきたメイクアップコンサルタントの青木和香恵に、その歩みと想い、そして未来への展望を聞きました。

INDEX

一人ひとりに寄り添う。その想いが70年続いてきた理由

2026年、SLQMは70周年を迎えました。国内でも先駆けて、肌に深いお悩みを持つ方々に寄り添い続けてきた本取り組みは、資生堂のサステナビリティ戦略の一環として展開され、現在は日本だけではなく、中国大陸、シンガポール、台湾、フランスの5つの国と地域で活動を展開し、資生堂を代表する社会活動として根付いています。

資生堂は2030年までに、「美の力によるエンパワーメント※1」を通じて100万人の人々を支援することを目標に掲げています。誰もが自分らしく生きられる社会の実現に向けて取り組む中で、SLQMはその理念を体現する象徴的な活動の一つです。

パーフェクトカバーのブランド担当者として、あらゆる人が自分らしく過ごせるための活動に携わる小澤は、この取り組みを「資生堂の価値観そのものを体現する活動」だと語ります。

小澤「活動に携わる人たちが、本当にこの活動を大切にしてきたのだと思います。青木さんは10年以上前にカウンセリングされたお客さまとのエピソードも昨日のことのように話される。それだけ深く向き合っているからこそ、信頼が積み重なり、70年続いてきたのだと感じています」

20年以上にわたり肌に深いお悩みを持つ方と向き合ってきた青木にとっても、SLQMはキャリアの原点です。医療機関でのメイクアップ支援が大きな転機になりました。

小澤が赤いソファに座り、パーフェクトカバーの商品を前に語っている姿

株式会社資生堂 経営革新部
サステナビリティ戦略推進室 DE&Iグループ
小澤 史明(おざわ ふみあき)

青木「やけど跡に悩む方へのメイクアップがあることを知り、化粧ひとつでその人の人生が変わっていく姿を目の当たりにしました。化粧には、その人を生かす力がある。その時に、化粧の意義はここにあるんだと感じたんです」

自身も関節リウマチを経験した青木は、「誰かの気持ちに寄り添う仕事をしたい」という想いを強く持つようになったといいます。青木は、活動を続ける原動力についてこう語ります。

青木がパーフェクトカバーの商品を手にし、笑顔で語っている姿

資生堂ジャパン株式会社 美容戦略部
社会活動企画推進グループ
メイクアップコンサルタント
青木 和香恵(あおき わかえ)

青木「化粧を諦めてしまう方に寄り添いたいと思うようになりました。ある日突然、顔面神経麻痺や白斑、がん治療による見た目の変化に直面し、外に出られなくなってしまう方もいます。そのような方が少しずつ前を向いていく姿が、私の原動力になっています。誰かの役に立てたと思えることが、自分自身の励みにもなっています。自分が元気で健康でいる限り、この場所で少しでも役に立ちたいと思っています」

一方、小澤がSLQMと出会ったのは、がんサバイバー※2を支援する活動「LAVENDER RING※3」がきっかけでした。

小澤「ヘアメイクアップアーティストや美容部員が、肌に深いお悩みを持つ方と向き合う姿を間近で見ました。化粧によって表情が変わり、笑顔になっていく。その瞬間を目の当たりにして、自分もこの活動に関わりたいと思いました。その後、自ら希望して異動し、2024年から本格的にSLQMに関わる業務を担当しています」

SLQMの歩みは、商品開発だけで築かれてきたものではありません。1990年代には医療機関との連携による個別相談活動が本格化し、現場で得た知見が商品や技術の進化につながってきました。現在では、資生堂が培ってきた商品・技術・美容職の専門性を掛け合わせながら、一人ひとりに寄り添う支援へと発展しています。

小澤「美の力で生活者の人生に寄り添う。SLQMは、その企業姿勢を体現する取り組みだと思っています」

長年にわたり受け継がれてきたのは、商品や技術だけではありません。目の前の一人に寄り添い、その人らしい一歩を後押ししたいという想いです。多様な価値観を尊重し、一人ひとりの可能性を引き出す美を届ける。その積み重ねこそが、SLQMを70年続く活動へと育ててきました。そしてその歩みは、資生堂が掲げる「美の力によるエンパワーメント※1」の実現に向け、次の未来へと受け継がれていきます。

  1. ※1 メイクアップを通じて「美の力」による自己効力感を育み、誰もが自分らしく生きることに寄り添うという活動
  2. ※2 がんと診断された方、治療中、経過観察中、寛解されたなど、がんに罹患したことのあるすべての方を、LAVENDER RINGでは「がんサバイバー」と表記しています。
  3. ※3 資生堂は、株式会社電通の社員有志、特定非営利活動法人キャンサーネットジャパンと、「すべてのがんサバイバーを笑顔に」をミッションに、すべてのがん種を示すシンボルカラーである「ラベンダー」を掲げ、LAVENDER RINGを運営しています。がんは身近な病気であるにも関わらず、がんサバイバーへの偏見や誤解が社会にはまだ多く存在しています。がんを正しく理解し、その理解の輪を広げることを目的とし、企業や団体、自治体や医療機関などと手を取り、2017年から日本で活動を開始しました。

「隠す」を超えて「自分らしく」

資生堂ライフクオリティーセンターの鏡の前に座るお客さまに対し、青木がパーフェクトカバーの使い方を使ったメイクレッスンをしている

メイクレッスンの様子

SLQMの本質は、単に肌をカバーすることではありません。資生堂が目指してきたのは、肌に深いお悩みを持つ方が自分らしく社会とつながり、自信を持って毎日を過ごせるよう支援することです。

資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターにカウンセリングに訪れる方の悩みは、あざや血管腫、白斑、やけど跡、顔面神経麻痺、がん治療による見た目の変化などさまざまです。だからこそ支援は、その方が何に悩み、どうなりたいのかを聞くことから始まります。

青木 「気になる部分をカバーすることも大切ですが、それだけではありません。ご自身の持つ魅力を生かし、カバーした部分に視線がいかないようにする工夫も必要です。メイクアップだけでなくヘアスタイルやウィッグまで含めた提案を行うこともあります。どのような時にカバーをされたいのか、その方がどんな生活を送りたいのか、日常生活ではどのようなことに困っているのかをお聞きしながら、一緒に考えていきます」

多様性が尊重される現代において、資生堂が大切にしているのは、一人ひとりの意思に寄り添った「選択肢」を提供することです。肌をカバーするかしないかは、一人ひとりが自由に選ぶもの。

実際に、お客さまの中には仕事や外出時にはカバーすることを選び、ご家族や親しいご友人と過ごす際にはカバーをせずに、ありのままの自分でいるなど、場面に応じて使い分けている方もいらっしゃいます。その人らしい選択を支え、日常に自然に寄り添う存在であること。それもまた、SLQMが大切にしてきた価値の一つです。

こうした支援を支えているのが、長年磨き続けてきた商品と技術です。専用商品である「パーフェクトカバー」シリーズの代表商品であるファンデーションは、高いカバー力と自然な仕上がりを両立するため進化を続けてきました。

「パーフェクトカバー」シリーズ

青木があざのあるマスクドールにパーフェクトカバーを塗布し、商品の使い方を実践している様子

カウンセリングの様子

小澤「研究員とヘアメイクアップアーティストが一緒になって商品や美容法を磨いてきました。科学と感性の両方を掛け合わせながら開発できることは、資生堂ならではの強みだと思っています」

近年は白斑への理解も広がりつつありますが、悩みを抱えている方は少なくありません。資生堂では情報発信や支援の拡充にも取り組んでいます。

青木 「最初は下を向いて来られた方が、帰るころには笑顔になっていることがあります。これこそが化粧の持つ力だと思います。気になっていたお悩み部分が目立たなくなり、『これならもっと外出してみよう』『また人に会ってみようかな』と思っていただける。その変化を見るたびに、この活動の意義を感じます」

SLQMが提供しているのは、単なるメイクアップサービスではありません。肌に深いお悩みを持つ方が自分らしく生きるための選択肢を広げ、一歩踏み出す勇気を後押しすること。70年にわたり受け継がれてきた価値は、そこにあります。

人生の一歩を後押しした、その先に

70年の歴史の中で、SLQMは数え切れないほど多くの方々と向き合ってきました。

青木「20年以上この活動に携わっていますが、今でもお顔や会話を覚えていることがたくさんあります。それくらい、一人ひとりとの時間が濃いんです。特に印象に残っているのが、白斑にお悩みの妹さんとそのお姉さまとの出会いでした。最初はとても緊張されていましたが、カバーメイクが仕上がっていくと、少しずつ笑顔が増えていって、一緒に来られていたお姉さまが、その様子を見られて、『ふさぎがちだった妹が以前に戻ったみたいです。ここに来て本当によかった』と涙を流されていました」

白い壁を背に青木が微笑みながらインタビューを受けている様子

また、結婚式を控えた女性との出会いも忘れられない出来事だったといいます。肌に深いお悩みを抱え、「ウエディングドレスを着たときに親戚縁者の集まる席で外見上の悩みを知られたくない。カバーしてなるべく目立たなくすることはできないだろうか。」と悩んでいたその方は、何度もカバー方法のレッスンを重ねて当日を迎えました。

青木 「式の後に、『人生で一番幸せな一日を過ごせました』という言葉とともに当日の写真が送られてきて、感動して思わず泣いてしまいました。私たちが変えているのは肌そのものではありません。その方が挑戦したいことや、やりたいことを後押しするお手伝いなんだと思います」

SNSやインターネットの普及により、さまざまな美しさのあり方が発信されるようになっています。

小澤 「以前に比べると、多様な美しさを認めようという社会の流れは確実に広がっていると思います。ただ、それでも悩みを抱えている方はたくさんいらっしゃいます。だからこそ、この活動を続ける意義があると感じています。社内でも共感の輪は広がっていて、活動を知った社員から『何か協力できることはありませんか』と言われることもあります。70年続いてきた活動が、今また新しい世代に受け継がれようとしていることを感じています」

「続けてきてよかった」と思う瞬間について、二人はこう話します。

青木 「やはり、カウンセリングに来られた方の表情が変わる瞬間ですね。『またもう一度、化粧をしてみようと思います』『友人と食事に出かけてみたいと思います』と言っていただけた時、この仕事を続けていてよかったと心から思います」

小澤 「活動そのものが目的ではなく、その先にいる一人ひとりの人生に少しでも良い影響を与えられること。それがこの活動の価値だと思っています」

70年という時間を支えてきたのは、一人ひとりとの出会いと、その先に生まれた笑顔や自信でした。

まだ届いていない誰かのために

1956年、戦禍によるやけど跡に苦しむ人々の心を癒したいと願った「資生堂スポッツカバー」の誕生から、70周年の節目を迎えた今、SLQMは新たなステージへ進もうとしています。

小澤が見据えるのは、活動のさらなる認知拡大です。

小澤「さまざまなお悩みのなかでも、例えば白斑は、まだ十分に知られているとは言えません。正しい情報や選択肢を必要としている方に届けるため、情報発信の強化を進めています。この商品や活動を知らない方は世界中にいらっしゃいます。資生堂が長年培ってきた知見や技術を、より多くの方に届けていきたいと考えています」

青木と向かい合いながら、小澤が笑顔でインタビューを受けている様子

青木も、まだ活動を知らない人たちへ想いを寄せます。

青木が真剣な表情で語っている様子

青木「まだ私たちの活動を知らない方もたくさんいらっしゃいます。本当は助けを必要としているのに、一人で悩みを抱えている方もいるかもしれません。そのような方々に、選択肢があることを知っていただきたいと思っています。化粧をするかしないかも、その方自身が選ぶことです。私たちは、その方が自分らしく過ごすための選択肢を増やしたい。そのお手伝いができればと思っています」

SLQMは、現場で寄り添う美容職、技術を磨く研究員、活動を支える社員たち、そして勇気を持って資生堂 ライフクオリティー ビューティーセンターに訪れてくださった方々によって育まれ、多くの人の人生に寄り添う活動へと成長しました。一人ひとりが自分らしく生きられる社会を目指して、私たちはこれからも美の可能性を広げ続けていきます。