創業以来、消費者志向の経営を掲げてきた資生堂のお客さま対応部門の歴史と、現在の取り組みや体制、最近の受賞歴などをご紹介します。
資生堂ジャパンでは、コロナ禍でのお客さまの購買行動の変化や、新たなニーズに対応するために、デジタルを活用した事業モデルへの転換を図りました。これに伴い、「資生堂お客さま窓口」は、オンライン総合美容相談「Online Beauty」と連携し、お客さまの目的にあわせて「美容相談」または「化粧品全般・資生堂に関するお問い合わせ」を選択できるようにしました。さらに、利便性を高めるために、従来のLINE公式アカウントに加えて、ブラウザチャットを導入しました。メニューからチャット担当者、またはAIチャットボット(AIみみちゃん)を選択いただき、チャット担当者を選んだ場合は、「美容相談」はパーソナルビューティーパートナーに、また、「化粧品全般・資生堂に関するお問い合わせ」は資生堂お客さま窓口のコミュニケーターにつながり、それぞれの領域のプロフェッショナルが対応を担当します。
2020年の新型コロナウイルス感染症拡大を受け、2021年1月、「お客さま窓口」担当者の在宅電話システムを導入し在宅での電話対応をスタートしました。導入にあたっては、システムの操作性ならびにネットワーク環境・音声品質等を検証・精査し、また、手もとで商品を確認することができない在宅においても出社時と遜色ない電話対応を行うことができるよう、「ミラー」(2011年導入、下記参照)の商品情報を整備するなど、対応品質を担保できる環境を整えました。在宅電話システムの導入によりコロナ禍における緊急事態宣言下でも、「お客さま窓口」を閉鎖することなく電話対応を継続して行うことが可能となったことに加え、窓口対応者であるコミュニケーターの働き方向上にも寄与しました。
聴覚障がいなどをお持ちのお客さまへ、手話または文字チャットで通話ができる「電話リレーサービス」からもお問い合わせいただけるようになりました。
『LINEで美容相談』は、Webビューティーコンサルタントによるチャット対応のパフォーマンスとクオリティが評価され、HDI Japan主催の『HDI格付けベンチマーク調査』(問合せ窓口格付け・チャット部門)において、最高格付けである『三つ星』を獲得しました。お客さまのパーソナルなご相談に対応する「LINEで美容相談」は、テキストでコミュニケーションを行うため、「5つのチャット対応スキル(読解力・文章力・検索力・会話力・パソコンスキル)」+「美容知識・カウンセリング力」とさまざまなスキルを必要とします。日々のお客さま対応の振り返りやトレーニングを繰り返し、定期的にスキル確認を実施することで、応対品質の向上と維持に取り組んでいます。
首都圏で大地震など災害が発生した場合でも「お客さま窓口」を継続運営することをねらいに、東京に加え大阪オフィスを設置し、2拠点での電話対応をスタートしました。
2018年2月にスタートした「LINEで美容相談」をさらに進化させ、2019年1月に「AIみみちゃん」を導入しました。「AIみみちゃん」は24時間365日、お客さまからの簡単な質問にすぐに回答するAIチャットボットです。これ以降「LINEで美容相談」は、パーソナルなご相談に対応するWebビューティーコンサルタントと「AIみみちゃん」の連携により、いつでも、どこでも、お客さまの好きなタイミングにご相談いただける体制を構築しました。「AI みみちゃん」は、お客さまのお役に立てるよう日々学習している新人Webビューティーコンサルタントをイメージしており、名前を漢字で書くと「美々(みみ)」です。美容のプロとしてお客さまの声に耳を傾けるの「耳(みみ)」という思いが込められています。
2012年よりパソコン、スマートフォンでのWebチャットサービスを展開してきましたが、より多くのお客さまをサポートできるよう2018年2月にLINEを使ったチャットでの美容相談「LINEで美容相談」へ進化しました。これにより若年層や男性のお客さまとの新たな接点が増加し、より幅広い層の方から相談をいただくようになりました。また、継続して利用できること、時間帯を問わず質問できること、時間のある時に自由に回答を確認できること、アクセスが簡単なことなど、LINEのさまざまな特長と、一人ひとりのご要望に応えるビューティーコンサルタントのカウンセリングを組み合わせることで、新しい価値を提供しています。
2013年より「クオリティモニタリング部門」において3年連続で「三つ星」を獲得したことから、2016年は「三つ星」に加え、さらに全社的なお客さま対応体制が評価される「五つ星」にもチャレンジし、両方を取得することができました。「五つ星」では、高品質な応対をお客さまに提供するためのインフラ(情報・環境・システム)が確保されており、特にお客さまの声を企業経営、マーケティングに最大限にいかすための社内フィードバックが仕組みとして確立されていることについて高く評価されました。
時代と共に常に変わりつつある生活者の声に耳を傾けるため、2011年よりツイッターなどソーシャルメディアのモニタリングを始めました。2015年、ツイッター上でお客さまへの対応をするための「お客さま窓口公式ツイッターアカウント」を開設。現在では、お問い合わせへの対応だけでなく、「どこで売っているのかわからない」などお困りの方にはこちらから声をかけたり、「お店の方の対応がとてもよかった」などのお褒めのツイートにはお礼のツイートをしたり、資生堂に直接は声をお寄せにならない方との窓口となっています。2017年には「Yahoo!知恵袋」でも公式アカウントでのサポートを始めました。
2013年「お客さま窓口」は、世界最大のサポートサービス業界の団体「HDI」(米国に拠点を置くヘルプデスク協会:Help Desk Institute)日本支部(HDI-Japan)が主催する「HDI格付けベンチマーク」調査の「クオリティモニタリング部門」で、最高評価の三つ星を獲得しました。
最高評価は、審査員が窓口スタッフの通話記録を「サービス体制・コミュニケーション・対応スキル・プロセス/対応処理手順・困難な対応」の分野に応じて4段階で評価するもので、審査を受けた企業の数パーセントに留まります。資生堂お客さま窓口は、顧客の視点に立った応対を心掛けていることが高く評価され、三つ星の評価を獲得しました。
1996年フリーダイヤル導入とともに使用してきたお客さまの声情報を収集活用するためのシステム「ボイスネットC」をグローバル仕様に進化させ、新たに「ミラー」と名付けて導入しました。これまでも日本、中国などではお客さま対応システムを使用し、お問い合わせ、ご意見、ご要望などの声を収集、分析して企業活動に有効に反映させてきましたが、新しく展開していく海外現地法人については声の収集、システムでの管理が課題でした。「ミラー」の導入により、リスク情報を世界的規模で収集蓄積することが可能となり、グローバル化していく際のリスクマネジメントの一翼を担うシステムとなりました。
お客さまの声をより積極的に収集し、企業活動に活かすために、フリーダイヤルを導入しました。お客さまからの電話の数の増加に備え、電話を受けるスタッフを新たに採用し、「お客さま窓口」の体制が大きく変わりました。同時に「ボイスネットC」というお客さまの声を入力・検索できるシステムを初めて導入し、お客さまの声を関連部門にフィードバックする仕組みが整備されました。パソコンソフトを初めて使うスタッフも多く、お客さま対応の練習に加え、システム操作や文章入力の練習を重ねました。お客さま対応方法は、従来のお客さまからのお問い合わせに紙の資料を見ながら回答するというアナログの対応から、パソコンを見ながら情報を検索しつつ、お客さまに対応し、その後結果を入力するというスタイルになり、働き方も大きく変わりました。
「資生堂コスメティックガーデンC」は、販売を一切行わず、お客さまに自由に化粧品を試していただくショールームとして東京・表参道にオープンしました。お客さまと資生堂を結ぶ新たなコミュニケーションの場として、その後、大阪・福岡にも設立し、お客さまの声や情報を収集して商品開発をはじめとするマーケティング全般に活用してきました。自由に商品を試せる売り場が増えたことなどから役目を終えましたが、ここで進化したパーソナルでプロフェッショナルなカウンセリングサービスは、現在では、東京銀座の「シセイドウ ザ ストア」での「パーソナルビューティーセッション」に引き継がれ、多くのお客さまにご好評の声をいただいています。
1987年、広報室の消費者部門を分離独立させ、お客さま対応機能を強化した消費者部を設立しました。この部門は、消費者相談窓口に寄せられたご意見への対応だけでなく、消費者への情報発信や、消費者セミナーの実施なども担当しました。コンシューマーズセンターと改称してからは、経営により多くのお客さまの声を反映させるため、窓口に寄せられる声だけではなく、広くビューティーコンサルタントが店頭でおうかがいした声を「お客さまの声カード」として収集することにも取り組み始めました。店頭で収集するこれらのお客さまの声は、ちょっとした使い勝手についてもご意見をいただける貴重なご意見として、現在ではタブレットを通してより迅速に収集し活用されています。
全国各地でのお客さまからのお問い合わせやご要望に迅速に対応するために、各地域の事業所にお客さまに対応する担当者、「消費者担任」を配置しました。「消費者担任」は、お客さまからのお問い合わせにすばやく対応し、時には、直接お客さまとお会いして詳しいお話を伺っていました。また、個人のお客さまに対応するだけではなく、地域での広報活動を通して社会に正しい情報を発信してきました。これらの活動は豊富な知識や高い判断力が必要なことから、経験を積んだビューティーコンサルタントが担当してきました。この制度は、資生堂ならではのお客さま対応体制として現在も全国の各事業所に、「コンシューマーサポートリーダー」という名称で配置されており、その精神が引き継がれています。
お客さまの商品に対する質問や企業に対するご意見に対して、しっかりと対応し、いただいた意見を企業経営に反映させるため、お客さま対応専任の担当者を1968年に配置しました。店頭におけるカウンセリングでのお客さまのご意見、ご要望をすばやく店頭へ反映するため、この専任担当者は販売部門と営業に責任を持つ部門である消費者係、のちの消費者課に所属し、お客さま対応業務を進めました。その後、消費者運動が盛り上がりを見せた1971年に、消費者とのコミュニケーションパイプを強力にするため新設された広報室へ移管されました。
1949年には、高校卒業予定者を対象に社会人の「身だしなみ」としての化粧法をご案内する「整容講座」をスタートしました。その後、化粧の社会への浸透とともに対象を拡大し、すべてのお客さまに美しくなっていただきたいという思いのもと、高齢者、障がいのある方、学校、企業などを対象に、全国の消費者担任がさまざまなセミナーを開催してきました。参加者や目的に応じて内容を変え、「消費者セミナー」「サクセスフルエイジングセミナー」として発展し、高齢者を対象としたセミナーでは、「メイクアップすることによって笑顔が増えた、社会参加の意欲が出た」など、化粧を通じて心の豊かさも提供していました。これらの活動が、現在の「資生堂ライフクオリティー ビューティーセミナー」に引き継がれています。
1972年(明治5年)に粗悪な医薬品ではなく、西洋医学を取り入れた医薬品をお客さまにお届けしたいという思いのもと、民間初の洋風調剤薬局として資生堂は創業しました。以来、創業者から代々受け継がれてきた経営の信条を、大正時代に基本理念「五大主義」として確立し、昭和2年(1927年)に成文化しました。「五大主義」は資生堂の姿勢を示す経営哲学であり、社会に対する宣言という要素と、社員が備えるべき心構えという意味を持っており、その中央に位置するのが「小売主義」(のちに「消費者主義」に改称)でした。「消費者主義」では「消費者志向の経営に徹する」とうたわれ、今の「資生堂倫理行動基準」の「お客さまとともに」や2017年に宣言した「消費者志向自主宣言」の基点です。
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