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サステナビリティマネジメント

藤原 憲太郎

資生堂は創業以来、人の幸せを願い、本業であるビューティービジネスを通じて、新しい価値を人々に提供し、世界中に喜びや自信や笑顔を届けてきました。2025年1月、私はCEOに就任するにあたり、資生堂が社会にどのように貢献できるのかという原点に立ち返り、人々の心を動かし人生を豊かにすることこそ、資生堂が提供できる価値と考えました。 人は美しいものに触れることで心がうるおい、周りの人々や自然環境に対し優しくなれます。化粧がかなえる「美」は日常に根ざしており、毎日の生活を前向きにする力を持っているともいえます。私たちは心を豊かにしてくれる「美」の可能性を信じ、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に向けて「美の力を通じて、人々が幸福を実感できるサステナブルな社会の実現」を目指します。

資生堂は、一人ひとりが尊重され、誰もが活躍できる多様性に富んだ社会、豊かな地球環境への貢献に取り組んでいます。「社会」と「環境」の領域において戦略アクションを定め、3万人を超える社員の力とさまざまなステークホルダーのみなさまとの対話や協働を通じ、2024 年も多くの活動を推進し成果をあげてきました。

特に「社会」の領域においては、自社だけではなく、ビューティー業界や社会全体の多様性の実現に向けた変革をリードすべく、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を積極的に推進しています。ジェンダー、年齢、国籍、性的指向、性自認、障がいなどにかかわらず、ライフスタイル、キャリア、働き方など、多様な個性を持つ社員が集いその能力を存分に発揮していることは、私たちの大きな強みとなっています。

「ジェンダー平等」の取り組みにおいては、2030年までにあらゆる階層における女性リーダー比率を機会均等の象徴である50%にすることを目標に掲げています。最新の実績では、取締役会における女性比率は54.5%、女性管理職比率はグループ全体で59.5%、日本国内で41.1%と、着実に前進を遂げました。また、ブランドと海外の地域本社が連携し、ジェンダーギャップ解消、女性のエンパワーメントを目的に、社会的に厳しい状況にある少女たちへの教育支援・自立支援も継続しています。
戦略アクションの1つである「美の力によるエンパワーメント」の取り組みのなかでは、あざや白斑、傷跡、がん治療の副作用など通常のファンデーションではカバーできない肌の色変化に対応した製品を展開してきたブランド「パーフェクトカバー」が、2025年に設立30周年を迎えます。「カバーすることで自分らしくありたい方」を応援するこのブランドは、日本、中国、シンガポール、台湾の各国各地域に加え、製品の全リニューアルとともにフランスへも提供範囲を広げ、誰もが自分らしい一歩を踏み出せる支援を拡大しています。
「サステナブルな製品の開発」においてはグローバルで31ブランドで「つめかえ・つけかえ」容器を提供し、プラスチック使用量削減による環境負荷軽減に取り組みました。
サステナブルな社会の実現に不可欠な「環境」領域の取り組みでは、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、イノベーションやビジネスモデルの構築を進めています。私たちは事業を通じたバリューチェーン全体での取り組みを重視し、他企業やステークホルダーと連携しながら、「地球環境の負荷軽減」、「サステナブルな製品の開発」、「サステナブルで責任ある調達」の3つの戦略アクションを推進しています。気候変動の課題においては、2030年に向けて全バリューチェーンを通じたCO₂排出量削減目標(SBTi)を設定し、再生可能エネルギーの導入やサステナブルな原材料を使用したものづくりなどによりCO₂排出量の削減に積極的に推進しています。2024年は、グローバルの全工場・オフィス・研究拠点で再生可能エネルギーの利用を進め、全社の電力における再生可能エネルギー比率は、89%を達成しました。今後注力する課題は、CO₂排出量の割合が最も高いScope 3への対応であり、事業に関わるお取引先などステークホルダーのみなさまとの連携をより一層強化しながら取り組みを加速させていきます。
気候変動と水資源を含めた生物多様性の保全にも積極的に取り組み、CDPより「気候変動」および「水セキュリティ」分野において、最高評価のAリスト企業に選定されました。これらの取り組みについては、「資生堂 気候/自然関連財務情報開示レポート」として公開しています。

資生堂の150年以上にわたる道のりは、「美の力」による社会価値創造の歴史でもあり、その精神はこれからも変わることはありません。私たちは常に長期的な視野に立ち、ガバナンスをもってサステナビリティ活動をより一層進化させていきます。卓越した研究開発力、世界中で愛されるブランド力、多様な社員の情熱と力を結集し、人々の心を豊かにし、美しく健やかな社会と地球が持続していくことに、確固たる意志をもって資生堂は挑戦し続けます。

取締役 代表執行役 社長 CEO
藤原 憲太郎

サステナビリティマネジメント

マテリアリティ

資生堂は、創業以来培ってきた「美」に関する価値創造で、人々の幸福感・充足感を高め、サステナブルな社会の実現を目指しています。事業を通じて取り組むべき環境・社会課題を選定するため、社内外のステークホルダーへのヒアリング、調査、議論をもとに課題を抽出し、社員、お客さま、取引先、株主、社会・地球といったすべてのステークホルダーにおける重要性と、資生堂のビジネスにおける重要性との2軸で課題を分類し、優先順位をつけ、18項目のマテリアリティ(重要課題)を2019年に定めました。なお、昨今の社会・業界を取り巻く環境変化を踏まえ、マテリアリティの見直しを進めています。

マテリアリティマップ

(2019年策定)

マテリアリティ策定プロセス

以下のプロセスを実施しマテリアリティを特定しました。

Step1>すべてのステークホルダーからの期待や要請などをさまざまな視点で社会課題を抽出

  • 国内外で活躍する環境・社会領域の有識者

  • お客さまの声を収集(世界5カ国で実施した企業調査)

  • 外部調査結果・主要国際機関の報告書(GRI・SASB・SDGsなど)

  • 投資家の声

  • エグゼクティブオフィサーおよび社員からの声

Step2>リストアップした課題を事業と関連性の高いものに絞り込み、さらに分析

  • エグゼクティブオフィサーや社内の幅広い部門とのディスカッションにより、事業と関連性の高い課題項目に絞り込む

  • すべてのステークホルダー(社員、お客さま、取引先、株主、社会・地球)にとっての重要性と、資生堂のビジネスにとっての重要性の2軸でスコアリングし、重要項目を選定

  • エグゼクティブオフィサーとその重要項目に関する課題と戦略アクションについて確認

Step3>特定した重要課題は経営会議にて承認

  • 2021年までは執行役員

サステナビリティ戦略の考え方

資生堂は、美には人の心を豊かにし、生きる喜びや幸せをもたらす力があると信じています。企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に向け、「美の力を通じて人々が幸福を実感できるサステナブルな社会の実現」を目指しています。
サステナブルな社会の実現のため、サステナビリティを経営戦略に組み込み、事業を通じた社会価値創造と環境・社会課題の解決に向け、環境・社会領域でそれぞれ3つの戦略アクションを掲げています。

「環境」の領域では、社名の由来でもある「万物資生」の考えに基づき、環境負荷を軽減し、サーキュラーエコノミーの実現を目指し、イノベーションやビジネスモデルの構築に取り組んでいます。バリューチェーン全体を通してさまざまなステークホルダーとともに取り組みを推進する「地球環境の負荷軽減」「サステナブルな製品の開発」、環境課題だけでなく人権課題にも対応した「サステナブルで責任ある調達の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。

「社会」の領域では、ダイバーシティ・エクイティ& インクルージョン(DE&I)を中心に社会課題の解決に取り組んでいます。ジェンダー、年齢、国籍、性的指向、性自認、障がいなどにかかわらず、公正な機会が得られ、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現を目指した「ジェンダー平等」、美しさに関する無意識の思い込みや偏見を払しょくし、個々の美しさに共鳴し合える社会を目指した「美の力によるエンパワーメント」、そして、すべての活動の根底となる「人権尊重の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。

  • 中国の古典「易経」の一節、「至哉坤元 万物資生(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、すべてのものはここから生まれる)」の一部

サステナビリティガバナンス

資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。迅速な意思決定と確実な全社的実行のため、専門的に審議する「Sustainability Committee」を設置し、2024年も定期的に開催しました。資生堂グループ全体のサステナビリティに関する戦略アクションや方針、気候変動と自然環境に関するリスクおよび機会や、人権対応アクションなど具体的な活動計画に関する意思決定を行っています。また、サステナビリティ戦略における中長期目標の進捗状況についてモニタリングしています。出席者は代表執行役を含む経営戦略・財務・研究開発・サプライネットワーク・人事・DE&I・コーポレートガバナンス・広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会に提案もしくは報告しています。また、戦略アクションに係る確実な業務執行・推進を行うため、「Sustainability Committee」の下部に、主要関連部門の責任者から構成される「Sustainability TASKFORCE」を設置し、長期的な目標達成に向けての推進方法やサステナビリティに関連した課題解決について議論し、地域本社や海外を含むその他の関連部門も巻き込んで推進しています。

サステナビリティ推進体制図

当社は、サステナビリティ活動を推進するため、社外取締役および常勤監査委員を除く取締役、執行役、エグゼクティブオフィサーに加え、国内外の重要ポジションのリーダーに対して、CO₂排出量削減や女性管理職比率などESGに関する社内外の複数の業績目標値も組み入れた長期インセンティブ型報酬を導入しており、その達成度に応じてインセンティブ報酬が増減する仕組みを取り入れています。

戦略アクション

資生堂では、策定したマテリアリティに基づき環境・社会それぞれの領域で、それぞれ3つの戦略アクションを定めています。これらの重要な取り組みに向け、各部門で経営資源を重点的に配分するとともに、全社横断で進めています。


マテリアリティ 戦略アクション
環境
  • ・気候変動対策
  • ・環境負荷を軽減する処方開発
  • ・サステナブルなパッケージ開発
  • ・サステナブルで責任ある調達
  • ・森林の保全
  • ・責任ある調達
  • ・廃棄物削減
  • ・水資源の効率的な使用
1.地球環境の負荷軽減
2.サステナブルな製品
の開発
3.サステナブルで責任ある調達の推進
社会
  • ・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン
  • ・お客さまの生活の質
    (QOL)向上
  • ・人財育成
  • ・従業員の労働安全衛生と健康
  • ・人権尊重
1.ジェンダー平等
2.美の力によるエンパワーメント
3.人権尊重の推進
  • ガバナンスに関するマテリアリティについて戦略アクションは開示しておりません。

中長期目標と実績

戦略アクション 目標 達成年 2024年実績
1.地球環境の
負荷軽減
CO₂ CO₂排出量削減
<SBTi, Scope 1・Scope 2>
46.2%※1 2030 56%(絶対量)
CO₂排出量削減
<SBTi, Scope 3>
55%※2 2030 43%(絶対量)
水消費量削減 40%※3 2026 57%
(2023年に達成)
2.サステナブルな製品の開発 パッケージ サステナブルな容器へ切り替え 100%※4 2025 76%
3.サステナブルで責任ある調達の推進 パーム油 サステナブルなパーム油へ切り替え 100%※5 2026 80%
サステナブルな紙へ切り替え 100%※6 2023 100%
(2023年に達成)
  1. ※1:資生堂全事業所(対2019年)。別途開示している目標(2026年までにカーボンニュートラルを達成、資生堂全事業所、オフセット含む)に対する実績は、環境データのページに記載
  2. ※2:資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体、経済原単位(対2019年)
  3. ※3:資生堂全事業所、経済原単位(対2014年)
  4. ※4:プラスチック製容器について。設計ベース
  5. ※5:RSPOの物理的なサプライチェーンモデルによる認証(アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマスバランスに基づくもの)、パーム油換算重量ベース
  6. ※6:製品における、認証紙または再生紙など、紙重量ベース
戦略アクション 目標 達成年 2024年実績
1.ジェンダー平等
  • ・あらゆる階層における女性リーダー比率(国内)
50% 2030 取締役 54.5%※1
エグゼクティブオフィサー 47.0%※1
日本国内の管理職 41.1%※2
  • ・国内における女性活躍
  • ・グローバルでの女子教育支援と経済的自立支援
100万人
(ダイレクトリーチ)
2030 達成率 84%
2.美の力によるエンパワーメント
  • ・美の力による自己効力感の醸成
  • ・「自分らしい美しさ」を制限する無意識の思い込みや偏見への取り組み
100万人
(ダイレクトリーチ)
2030 達成率 26%
3.人権の尊重
  • 詳細な活動は、「人権尊重の推進パート」に記載しています


  1. ※1:2025年4月1日時点
  2. ※2:2025年1月1日時点

国際的な規範への賛同・支持

国際的な規範への賛同・支持[PDF:389KB]