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サステナビリティマネジメント

藤原 憲太郎

私は1991年の資生堂入社以来、主に海外事業に従事し、多くの現地社員と一緒に仕事をしてきました。時に文化や習慣の違いに戸惑うこともありましたが、どの国でも共通していたのは、誰もが資生堂で働いていることに誇りを持っていたことです。その理由は、資生堂が創業以来、「美」の価値の発見・創造に挑戦し続け、「美の力」を通じて世界中の人々の日常に喜びと感動を与えてきたこと、そして経済価値だけではなく、本業を通じて社会価値の創造に取り組んできたことに共感し、同じ志をもって働いていたことにあると考えています。

私自身も資生堂で働くことに、喜びと誇りを持ってきました。2023年1月に資生堂の社長 COOに就任して以来、市場環境の激しい変化や、影響の大きさを実感しつつも、それらからもたらされる困難な状況を今後の成長に向けた機会にすべく、全社をあげて改革に邁進しています。この改革を通じ、2030年ビジョンである「Personal Beauty Wellness Company」の実現のため、各地域・各事業でもそれぞれの事業戦略とサステナビリティ戦略を一体化させた活動を推進しています。

私からは特に、社会からの期待や要請が高い「環境」領域についてお話しします。資生堂はグローバルで必要とされている取り組みをはじめ、日本においては他企業との連携の必要性や、業界をけん引していく責務も感じており、特にバリューチェーン全体での取り組みを重視しながら、地球環境の負荷軽減、サステナブルな製品の開発、サステナブルで責任ある調達、の3つの戦略アクションを推進しています。

気候変動への課題においては、2030年に向けて全バリューチェーンを通じた CO₂排出量削減目標(SBTi)を設定し、再生可能エネルギーの導入やサステナブルな原材料の調達などによりCO₂排出量の削減に積極的に取り組み、2050年までにネットゼロを目指しています。2023年には、全11工場・自社ディストリビューションセンターにおける再生可能電力への切り替えを100%完了し、中国地域では全拠点で100%切り替えを完了しました。CO₂排出量の割合が最も高いScope 3への対応については、今後最も注力する課題として、事業に関わるお取引先などステークホルダーの皆さまとの連携を強化していきます。
気候変動と生物多様性にも積極的に取り組み、環境調査・情報開示を行う国際的な非営利団体であるCDPの「気候変動」「フォレスト」に関する2023年度調査において、最高評価にあたるAリスト企業に選定され、資生堂として初めてダブルAに選定されました。気候変動と生物多様性については、本年も資生堂 気候/自然関連財務情報開示レポートにて開示しています。

製品開発においては、製品の効果や上質なデザインと、人や社会、環境への尊重・共生を両立させる、サステナブルな価値創造を実現します。2023年4月には、プラスチック製容器を収集・再生する循環型プロジェクトを立ち上げ、お客さま、お取引先、同業他社、その他の重要なステークホルダーとサーキュラーエコノミーの実現を目指しています。
企業経営にとってサステナビリティはさらに重要度を増しています。私はこれを成長機会と捉え、事業戦略とサステナビリティ戦略を一体化させることで価値を創造し、新たなビジネス機会をつくることができると考えています。これからも社内外の多様なステークホルダーとともに透明性を高く保ち、事業を通じた社会価値の創造に取り組んでいきます。

私たちの企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に向けて「美の力を通じて人々が幸福を実感できるサステナブルな社会の実現」を目指し、多様性を尊重し誰もが自分らしい人生を実感できる社会と、人と自然が共生する持続性のある地球環境の実現に貢献していきます。

取締役 代表執行役 社長 COO
藤原 憲太郎

サステナビリティ戦略の考え方

資生堂は、1872年の創業時から、人、社会、自然を敬い、社会価値の創造を行ってきました。企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD (美の力でよりよい世界を)」の実現のため、人財を当社の価値創造の源泉と考えています。人財への投資こそが企業価値を高めると強く信じ、「PEOPLE FIRST」の考えに基づき、ジェンダーや年齢、国籍などに関係なく一人ひとりの違いを認め尊重し合い、新しい価値創造に向けて議論する組織カルチャーの醸成、人事制度や施策を進化させ続けています。資生堂はビューティーカンパニーならではのアプローチで社会課題を解決し、2030年に向けて「美の力を通じて、人々が幸福を実感できるサステナブルな社会の実現」を目指し、本業を通じた社会価値の創造と社会・環境課題の解決に向け、社会・環境領域でそれぞれ3つの戦略アクションを掲げています。

「社会」の領域では、ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)を中心に社会課題の解決に取り組んでいます。ジェンダーにかかわらず、公正な機会が得られ、一人ひとりが自分らしく生きられる社会の実現を目指した「ジェンダー平等」、美しさに関する無意識な思い込みや偏見を払しょくし、個々の美しさに共鳴しあえる社会を目指した「美の力のエンパワーメント」、そして、すべての活動の根底となる「人権尊重の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。
「環境」の領域では、社名の由来でもある「万物資生」の考えに基づき、環境負荷を軽減し、使い捨てではなくサーキュラーエコノミーを実現できるイノベーションやビジネスモデルの構築に取り組んでいます。バリューチェーン全体を通してさまざまなステークホルダーとともに取り組みを推進する「地球環境の負荷軽減」「サステナブルな製品の開発」、環境や人権に対応した「サステナブルで責任ある調達の推進」の3つの戦略アクションを実行しています。

  • 中国の古典「易経」の一節、「至哉坤元 万物資生(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか、すべてのものはここから生まれる)」の一部

サステナビリティガバナンス

資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。迅速な意思決定と確実な全社的実行のため、専門的に審議する「Sustainability Committee」を設定し、2023年も定期的に開催しました。資生堂グループ全体のサステナビリティに関する戦略アクションや方針、気候変動と自然環境に関するリスクおよび機会や人権対応アクションなど具体的な活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表執行役を含む経営戦略・研究開発・サプライネットワーク・広報、およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会に提案もしくは報告しています。また、戦略アクションに係る確実な業務執行・推進を行うため、「Sustainability Committee」の下部に、主要関連部門の責任者から構成される「Sustainability TASKFORCE」を設定し、長期的な目標達成に向けての推進方法やサステナビリティに関連した課題解決について議論し、地域本社や海外を含むその他の関連部門も巻き込んだ活動を行っています。

サステナビリティ推進体制図

  1. ※1:事業計画や重要な案件について多面的に審議
  2. ※2:構造改革・成長戦略にかかわる進捗・レビュー

当社は、サステナビリティ活動を推進するため、社外取締役および常勤監査委員を除く取締役、執行役、エグゼクティブオフィサーに加え、国内外の重要ポジションのリーダーに対して、CO₂排出量削減や女性管理職比率などESGに関する社内外の複数の業績目標値も組み入れた長期インセンティブ型報酬を導入しており、その達成度に応じてインセンティブ報酬が増減する仕組みを取り入れています。

マテリアリティ

資生堂は、創業以来培ってきた「美」に関する価値創造で、人々の幸福感・充足感を高め、サステナブルな社会の実現を目指しています。事業を通じて取り組むべき社会・環境課題を選定するため、ステークホルダーへのヒアリング、社内外の調査、議論をもとに課題を抽出し、社員、お客さま、取引先、株主、社会・地球といったすべてのステークホルダーにおける重要性と、資生堂のビジネスにおける重要性との2軸で課題を分類し、優先順位をつけ、18項目のマテリアリティ(重要課題)を2019年に定めました。なお、近年の社会・業界を取り巻く環境変化を踏まえ、マテリアリティの見直しを検討しています。

マテリアリティマップ

(2019年策定)

マテリアリティ策定プロセス

以下のプロセスを実施しマテリアリティを特定しました。

Step1>すべてのステークホルダーからの期待や要請などをさまざまな視点で社会課題を抽出

  • 国内外で活躍する環境・社会領域の有識者

  • お客さまの声を収集(世界5カ国で実施した企業調査)

  • 外部調査結果・主要国際機関の報告書(GRI・SASB・SDGsなど)

  • 投資家の声

  • エグゼクティブオフィサーおよび社員からの声

Step2>リストアップした課題を事業と関連性の高いものに絞り込み、さらに分析

  • エグゼクティブオフィサーや社内の幅広い部門とのディスカッションにより、事業と関連性の高い課題項目に絞り込む

  • すべてのステークホルダー(社員、お客さま、取引先、株主、社会・地球)にとっての重要性と、資生堂のビジネスにとっての重要性の2軸でスコアリングし、重要項目を選定

  • エグゼクティブオフィサーとその重要項目に関する課題と戦略アクションについて確認

Step3>特化した重要課題は経営会議にて承認

  • 2021年までは執行役員

戦略アクションと対応するSDGs

資生堂では、マテリアリティに基づき環境・社会それぞれの領域で、それぞれ3つの戦略アクションを定めています。これらの取り組みに向け、各部門で経営資源を重点的に配分するとともに、全社横断で進めています。


マテリアリティ 戦略アクション 対応するSDGs
環境
  • ・気候変動対策
  • ・環境負荷を軽減する処方開発
  • ・サステナブルなパッケージ開発
  • ・サステナブルで責任ある調達
  • ・森林の保全
  • ・廃棄物削減
  • ・水資源の効率的な使用
1.地球環境の負荷軽減
2.サステナブルな製品
の開発
3.サステナブルで責任ある調達の推進
社会
  • ・ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン(DE&I)
  • ・お客さまの生活の質
    (QOL)向上
  • ・人財育成
  • ・従業員の健康と労働安全衛生
  • ・人権尊重
1.ジェンダー平等
2.美の力によるエンパワーメント
3.人権尊重の推進
ガバナンス・文化
  • ・ガバナンスの強化と説明責任
  • ・公正な取引
  • ・安心・安全な製品
  • ・責任あるマーケティング・
    宣伝広告
  • ・情報セキュリティ・プライバシー
  • ・アート&ヘリテージ
  • ・コーポレートガバナンスの実践・強化により経営の透明性・公正性・迅速性の維持・向上を図り、すべてのステークホルダー(社員、お客さま、取引先、株主、社会・地球)との対話を通じて、中期的な企業価値および株主価値の最大化に努めることとしており、あわせて、社会の公器としての責任を果たし、各ステークホルダーへの価値の分配の最適化を目指しています。
  • ・アート&ヘリテージについては、社会価値を創造する企業文化の継承と日本の美意識を発信する観点から活動を進めています。
  • ガバナンスに関するマテリアリティについて戦略アクションは開示しておりません。

中長期目標と実績

戦略アクション 目標 達成年 2023年実績
1.地球環境の
負荷軽減
CO₂ カーボンニュートラル※1 2026 60%
(2019年比削減率)
CO₂排出量削減
<SBTi, Scope 1・Scope 2>
46.2%※2 2030 2025年中に
開示予定※4
CO₂排出量削減
<SBTi, Scope 3>
55%※3 2030
水消費量削減 40%※5 2026 46%
(2023年に達成)
廃棄物 2022年までに埋め立て廃棄物をゼロ※6
2022 2022年に達成(2023年も継続)
2.サステナブルな製品の開発 パッケージ サステナブルな容器へ切り替え 100%※7 2025 69%
3.サステナブルで責任ある調達の推進 パーム油 サステナブルなパーム油へ切り替え 100%※8 2026 51%
サステナブルな紙へ切り替え 100%※9 2023 100%
(2023年に達成)
  1. ※1:資生堂全事業所(オフセット含む)
  2. ※2:資生堂全事業所(対2019年)
  3. ※3:資生堂全事業所を除くバリューチェーン全体、経済原単位(対2019年)
  4. ※4:事業譲渡に伴う目標修正をSBTiに申請中
  5. ※5:資生堂全事業所、売上高原単位(対2014年)
  6. ※6:資生堂自社工場のみ
  7. ※7:プラスチック製容器について
  8. ※8:RSPOの物理的なサプライチェーンモデルによる認証(アイデンティティ・プリザーブド、セグリゲーションまたはマスバランスに基づくもの)、パーム油換算重量ベース
  9. ※9:製品における、認証紙または再生紙など、紙重量ベース
戦略アクション 目標 達成年 2023年実績
1.ジェンダー平等
  • ・あらゆる階層における女性リーダー比率(国内)
50% 2030 取締役 45.5%※1
エグゼクティブオフィサー 40.0%※1
日本国内の管理職 40.0%※2
  • ・国内における女性活躍
  • ・グローバルでの女子教育支援と経済的自立支援
100万人
(ダイレクトリーチ)
2030 達成率62%
2.美の力によるエンパワーメント
  • ・美の力による自己効力感の醸成
  • ・「自分らしい美しさ」を制限する無意識の思い込みや偏見への取り組み
100万人
(ダイレクトリーチ)
2030 達成率13%
  1. ※1:2024年4月1日時点
  2. ※2:2024年1月1日時点

国際的な規範への賛同・支持

国際的な規範への賛同・支持[PDF:389KB]