IFSCC Conference 2021カンクン中間大会 最優秀賞(口頭発表)
「触感をつかさどるメルケル細胞が紐解く美しい肌」
肌に触れずに、香りで肌を美しく健やかな状態に導く新たなアプローチの可能性を見出した!
私たちは、肌を美しく健やかに保つために、毎日化粧品でお手入れをしたり、時には肌に良いと言われる栄養素をサプリメントなどで補ったりしています。
今回の研究では、化粧品やサプリメントなどではなく、ある香り成分を肌に感知させることで肌を健やかな状態に導くという、美肌への新しいアプローチ方法の可能性を見出したというものです。
先進技術の組み合わせで、肌内の触覚を担う“ある細胞”を詳細に捉えることに成功した
普段、私たちは何かに触れたり、触れられたりして「触覚」を感じています。触覚は、視覚=目、聴覚=耳といった専用の器官をもつ他の五感と違って、身体の表面を覆っている肌に触覚をキャッチする受容体が存在しています。今回は、肌で触覚を感じる細胞として考えられてきた「メルケル細胞」を研究したものです。
メルケル細胞とは、表皮と真皮の間にある基底膜に存在する(図1)触覚受容細胞で、何かに触れたり、触れられたときにその情報をキャッチして、神経を通じて脳に伝える役割を持っています。
資生堂のこれまでの研究で、メルケル細胞と接続している神経線維は、肌のハリやたるみに関連する真皮の構造維持に関係していることを明らかにしており、メルケル細胞が肌の老化に関わるという新たな考え方を示すことができました。(図2)。
そのメルケル細胞を観察するため、表皮を皮膚から剥離する技術と共焦点顕微鏡による3次元スキャン技術を組み合わせ、皮膚組織内でのメルケル細胞の分布を詳細に捉えることに成功。観察の結果、メルケル細胞は、神経線維と同じように加齢とともに減少することがわかりました(図3)。
さらにメルケル細胞の観察を続けたところ、メルケル細胞に香り成分をキャッチする「香り受容体」が発現していることを発見しました(図4)。様々な香りの中でも、サンダルウッド様の香り成分は、この香り受容体と結合することがすでに分かっています。そこで、サンダルウッド様の香り成分を含む溶液をヒトの皮膚組織に塗布したところ、メルケル細胞が活性化し、皮膚を健康に保つことで知られている「NGF(Nerve growth factor 神経成長因子)」が放出されることも発見したのです。
つまり、サンダルウッド様の香りをメルケル細胞が感知することで、肌を美しく健やかな状態に保てるということです。触覚で活性化するとされていたメルケル細胞を香り成分で活性化し、肌への塗布と香り成分の両方によって肌を健やかに保つという新たな美容アプローチの可能性を広げたといえます。資生堂では、今後も感覚や神経などと肌との関わりについて研究を深め、新たなビューティーケアの実現を目指していきます。
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