人によってアイシャドーの色みが微妙に違う!?
IFSCC Congress 1986 第14回 バルセロナ大会 最優秀賞
「新しい有色真珠光沢顔料の開発」
有色顔料を配合しなくても、それ自体が色を放つパール剤を開発。
人によって微妙に違う肌の色に左右されず、鮮やかな色を楽しめる!
アイシャドーや口紅などに配合され、光を浴びる角度によってキラキラと真珠のように輝くのが「パール剤」です。受賞当時の1980年代はもとより、現在でも多くの化粧品に配合されています。パール剤とは、一般的にマイカ(雲母)の周りを白い「酸化チタン」という膜で覆ったもの。アイシャドーなどの色みのあるアイテムでは、有色顔料と一緒に配合するのが一般的です。
今回の受賞技術は、この有色顔料を配合しなくても、それ自体が色を放つ特殊なパール剤を開発したというもの。光が持つ波動性によって光が強められたり弱められたりする「光の干渉」という現象を利用すると、パール剤だけで色を出せることは分かっていました。ただし、光の干渉だけではパール剤の下の色、化粧品の場合は肌の色みに影響されて発色の強さが変わり、人によって色の出具合が変わってしまうという難点がありました。そこで、マイカの周りの酸化チタンを黒く加工することで、どんな肌の色にも左右されず、常に鮮やかな色を発色するパール剤が可能となったのです。
白は光を反射し、黒は光を吸収する原理を活用。
有色顔料を使うことなく、光が当たる角度だけでさまざまな色を実現した!
通常、光は白いものには強く反射します。スキー場などで一面の雪に反射した日差しが目に眩しいのはこのためです。一方、黒は光を吸収するため、晴れた日に黒い洋服を着て屋外にしばらくいると、日差しによって服が温かくなります。
こうした色と光の性質を利用し、パール剤の外層である酸化チタンを黒く加工したというのがこの受賞技術です。光を吸収することでコントロールしやすくなり、肌の色に左右されないようにできたうえ、シャドウ効果が得られることも分かりました。斜めから当たった光が黒みを帯びるために、目もとなどにのせると立体感が際立つのです。
さらに、その黒い膜の外側にもう一枚、「酸化チタン」を重ねました。この膜の厚みを変えると光が入る角度を調整できるようになり、有色顔料を使わずにいろいろな色を生み出せるのです。パール剤だけで色みを出せるようになったのは、世界でも初めてのことでした。
これらの技術は後に、アイシャドーなどのメーキャップ製品に応用されたことはもちろんですが、自動車のメタリック塗装顔料や家具の着色顔料、印刷インクなどの顔料にも活用され、幅広い展開を見せています。
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