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化学物質の管理

資生堂は、一人ひとりの理想の美の実現のため、お客さまに安心してお使いいただける製品をお届けし、人と自然が共存する持続可能な社会への貢献を目指しています。当社は、2023年に採択された、「化学物質に関するグローバル枠組み(GFC: Global Framework on Chemicals - for a planet free from harm of chemicals and waste)」という国際合意を念頭に、製品や容器等に使用している化学物質について管理しています。また、欧州、米州、アジア、日本などの化学物質法規動向や化学物質に関する安全性の情報を広く収集しています。そのうえで最新の科学的知見に基づいて製品に用いる化学物質の人や環境に対する影響を評価し、安全性を確かめています。

人と環境を配慮した安全性への対応

データに裏付けられた人への安全性

資生堂において新たに採用する化粧品原料は、当社独自の厳しい基準を設けて厳選したうえで導入しています。国内外の安全性評価ガイドラインを参考に、独自の厳しい基準で項目別にデータを検証し、動物実験を行わない方法で安全性を評価しています。さらに原料中の製造工程などから想定される不純物も含めて安全性に問題がないことも確認しています。最新情報や最先端技術などの収集に努め、外部専門家とも議論し安全性を評価するうえで重要な専門性を深めています。

環境リスクへの対応

環境に関わるリスクは多岐に渡り、法規制は世界各国において年々強化されています。
このような状況を踏まえ、新しい環境に関する法規制や社会動向について情報収集・リスク評価を行ったうえで、海外を含む関連部門と情報を共有化し対応を図っています。さらに、生産部門においてはISO14001のシステムに基づいて環境法規制などの遵守評価を実施し、法令遵守を徹底しています。

資生堂の製品中の成分に関して、人の健康や環境への影響に対する懸念情報が報告された場合は、その時点での最新の科学的知見に基づき使用継続の是非を判断します。その判断に基づき必要に応じて速やかに当該物質の使用を止め、代替物質への変更を行っています。

各国の法規制への対応

資生堂は、日本以外においても、欧州、米州、アジアなどの化学物質法規動向や化学物質に関する安全性の情報を広く収集しています。そのうえで、製品に用いる化学物質について、それぞれの国で推奨される基準を守り、法規制への対応を行っています。主な対応は下記の通りです。

欧州REACH規則への対応

欧州REACH規則は2007年6月に施行された、欧州の化学物質規制です。日本から欧州域内に輸出する化粧品および容器など、化粧品に関する全ての化学物質が規制の対象となっています。特に、欧州域内への年間輸入量が1トン以上の物質については、REACH規則で定めた手続きに沿って登録が必要となります。資生堂は、登録が必要な物質について全て把握し、必要な対応を行っています。

資生堂は、欧州REACH規則の遵守に努め、高懸念物質(Substances of Very High Concern: SVHC)などの有害物質を配合した製品数の削減に取り組みます。例えば、環状シリコーンの一種であるD4(シクロテトラシロキサン)の使用を段階的に減らしてきました。そして欧州だけでなく、グローバルで全ての製品において2024年12月までにD4の使用を停止しました。

PRTR法への対応

資生堂は、PRTR法(化学物質管理促進法)で義務づけられた行政報告を実施するだけでなく、工場や研究所などで原料や試薬などの化学物質の使用と廃棄の自主管理を徹底しています。また、充填をお取引先さまに委託する場合など、PRTR法、労働安全衛生法などで指定された成分を含む内容物などの化学物質をお取引先さまへ提供する際には、労働安全衛生の観点からSDS(Safety Data Sheets:安全データシート)発行をシステム化するなどの対応を図り、お取引先さまへのSDS交付を徹底しています。

<PRTR対象物質排出量・移動量>

(単位:t/年)
指定番号(法) 物質名称(法指定) 排出量 移動量
大気 公共用
水域
土壌 下水道 廃棄物
1 亜鉛の水溶性化合物 0 0 0 0 0
56 エチレンオキシド(20%) 1 0 0 0 0
87 クロム及び3価クロム化合物 0 0 0 0 0
96 オクタメチルシクロテトラシロキサン 0 0 0 0 0
207 2,6-ジ-ターシャリ-ブチル-4-クレゾール 0 0 0 0 0
275 ドデシル硫酸ナトリウム 0 0 0 0 0
334 4-ヒドロキシ安息香酸メチル 0 0 0 0 0
360 2-(N-ドデシル-N,N-ジメチルアンモニオ)アセタート 0 0 0 0 0
405 ほう素及びその化合物 0 0 0 0 0
407 ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル 0 0 0 0 0
409 ポリ(オキシエチレン)=ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム 0 0 0 0 5
431 ヘキサデシルトリメチルアンモニウム=クロリド 0 0 0 0 0
460 ポリ(オキシエチレン)=アルキルエーテル(アルキル基の炭素数が12から15までのもの及びその混合物に限る) 0 0 0 0 0
463 ポリ(オキシエチレン)=ドデシルエーテル硫酸エステルナトリウム 0 0 0 0 0
588 4-イソプロピル-3-メチルフェノール 0 0 0 0 0
601 オクタメチルシクロテトラシロキサン 0 0 0 0 0
626 ジエタノールアミン 0 0 0 0 0
681 2-(N-ドデシル-M,N-ジメチルアンモニオ)アセタート 0 0 0 0 0
726 4,6,6,7,8,8-ヘキサメチル-1,3,4,6,7,8-ヘキサヒドロシクロペンタ(g)イソクロメン 0 0 0 0 0
734 2-ベンジリデンオクタナール 0 0 0 0 0
738 メチル=2-(3-オキソ-2-ペンチルシクロペンチル)アセタート 0 0 0 0 0
748 3-メチルペンタ-3-エン-2-オンと3-メチリデン-7-メチルオクタ-1,6-ジエンの反応生成物であって、1-(2,3,8,8,テトラメチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オクタヒドロ-2-ナフチル)エタノン,1-(2,3,8,8,-テトラメチル-1,2,3,4,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフチル)エタノン及び1-(2,3,8,8-テトラメチル-1,2,3,5,6,7,8,8a-オクタヒドロ-2-ナフチル)エタノンの混合物を80重量パーセント以上含有するもの 0 0 0 0 0
  • 対象物質:PRTR法の第一種指定物質で、1事業所での年間取扱量が1トン以上(特定第一種は0.5トン以上)の物質
  • 対象期間:2023年1月1日-12月31日
  • 対象範囲:株式会社資生堂 掛川工場・大阪工場・大阪茨木工場・那須工場・福岡久留米工場・久喜工場・国内研究所(グローバルイノベーションセンター・SPEC)

CMR物質への対応

CMR物質とは、発がん性(Carcinogenicity)、変異原性(Mutagenicity)、生殖毒性(Reproductive toxicity)のいずれかを持つ物質のことです。これは、単独または混合物として人体に有害な影響を及ぼす可能性がある物質のカテゴリです。EUでは、化学物質と混合物の分類と表示及び包装に関する規則であるCLP規則においてCMR物質が分類されます。CMRはそれぞれ根拠となるデータの確からしさに基づき、1A、1B、または2と分類されます。
世界で最も厳しい化粧品の規則の1つである欧州化粧品規則(EC) No.1223/2009は、消費者の健康を保護することを目的としており、いくつかの例外を除いて、CMR1Aまたは1Bに分類される物質を化粧品に使用することを禁止しています。
資生堂は、自社製品において、これらのCMR物質の使用に関して欧州の化粧品規制に準じた対応を行っています。

内分泌かく乱化学物質への対応

WHO(世界保健機関)によると、内分泌かく乱物質は「内分泌系の機能に変化をもたらし、その結果として未処置生物、子孫、個体群に有害な健康影響をもたらす外因性の物質または混合物」と定義されています。つまり、ホルモン活性を有することが既に知られている化学物質群、あるいはホルモン活性を有する可能性のある物質群のことを指します。
内分泌かく乱物質は、以前から欧州連合(EU)において重要な懸念事項でした。2019年、欧州委員会は化粧品に使用される内分泌かく乱作用の可能性がある28物質の優先リストをまとめ、これらを優先順位の高い物質からなるグループAと、優先順位の低い物質からなるグループBの2つのグループに分けました。安全性諮問機関であるSCCSは、これらの物質ごとにリスクアセスメントを実施し、結果を公開しています。評価結果に基づき、欧州化粧品規則(EC) No.1223/2009で制限または禁止するなどの対応をした物質や、評価の結果で内分泌かく乱物質の作用が確認されなかったものもあります。
資生堂では、物質ごとの必要性に応じて、安全性評価を含むコンソーシアム(共通の目的を持つ複数の組織や企業が協力して活動するための連携組織)に参加し、最新の情報を入手するとともに、安全性評価のアップデートを行い、これら物質を適切に使用できるようにしています。また、一部の物質については代替成分に代えることを進めています。今後も動向に注視するとともに、内分泌かく乱作用の懸念にすぐに対応できる体制にしています。