特集・インタビュー
2022年9月2日
1982年の誕生から40周年を迎えた「クレ・ド・ポー ボーテ」が、ブランドとしてサステナビリティに本格的に取り組み始めたのは、2019年のこと。以降、製品の成分・原料の選択基準に妥協を許さず、リサイクル素材やリサイクル可能素材の使用に努めてきたのはもちろん、女性の教育支援にも継続的に取り組んできました。「クレ・ド・ポー ボーテ」という最高級ブランドがサステナビリティに取り組む意義とその活動内容を、「クレ・ド・ポー ボーテ」のチーフブランドオフィサーの橋本美月に聞きました。
1997年に入社。国際営業本部、国際事業部などを経て、2012年、資生堂シンガポール取締役社長に就任。2015年、株式会社資生堂 グローバルプレステージブランド事業本部「クレ・ド・ポー ボーテ」ブランドユニット 推進グループリーダーとなる。その後、同ブランドユニットのビジネスプランニング&オペレーション部長、事業戦略部長などを経て、2022年1月より現職。
「サステナビリティ」という言葉を聞いて「環境保護」をイメージする人は多いと思いますが、「クレ・ド・ポー ボーテ」が取り組むサステナビリティはそれだけに留まりません。女性の教育支援も持続可能な世界を創造するためには欠かせない取り組みと考え、私たちは2019年から継続的に活動を進めています。では、なぜ「クレ・ド・ポー ボーテ」はこのような取り組みを始めたのか。
2015年に開催された国連持続可能な開発サミットで、17の目標と169のターゲットからなる『持続可能な開発目標(SDGs)』が設定されましたが、その多くは社会全体で取り組むべき目標であり、会社としても、「クレ・ド・ポー ボーテ」というブランドとしても、このような活動に参画するのは必然だと考えました。また、近年、環境破壊や異常気象などが人々の暮らしに悪影響を及ぼすなかで、お客さまの意識も変わってきたと感じています。そうしたなかで、ブランドとしてのサステナビリティへの取り組みを強く意識するようになりました。「きちんとサステナビリティへの取り組みを行なっている企業やブランドを応援したい」というお客さまからの声に真摯に向き合うことが非常に重要であると考え、次のような活動をスタートさせました。
そのひとつが女性の教育支援です。これは、ユニセフの「教育・就業につながるスキル・エンパワーメント」促進プログラムへの支援と、少女たちの教育に貢献した女性を表彰する「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」という2つの活動から成り立っています。前者ユニセフの支援ですが、ユニセフのジェンダー平等を目指す取り組みの分野において、「クレ・ド・ポー ボーテ」は世界最大規模となる寄付を行っています。
「クレ・ド・ポー ボーテ」は核となる価値をラディアンス=輝きと定義しています。この輝きとは、ただ表層的な肌の輝きのことだけを言及しているのではなく、女性一人ひとりの中に秘められた力、自らを変え、より自信にあふれた姿で世の中に出て、世の中を変えていくものであると、私たちは考えています。私たちは、一人ひとりのお客さまがもつ輝きを解き放つお手伝いをするブランドでありたいと考えています。このようなブランドの根幹となる考え方を中心に据え、また、私たちのメインのお客さまが誰なのかを考えた時に、女性の社会での活躍支援につながる活動を行うことこそが、理に適っていると考えました。同時に、持続可能な開発目標の5番目、SDG5(ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る)にも沿うことから、この活動に取り組むことを決めました。
女性支援といっても、そこには「児童結婚などの子どもの権利を侵害する慣行の撤廃」「学校の衛生環境を整える」など、さまざまな支援方法があります。「クレ・ド・ポー ボーテ」としてどこに焦点を当てたいのかと考えた時に、持続的に社会に還元されるものが良いと考え、教育に行きつきました。男女格差が大きいという点も、教育を選んだ理由です。知識は、一度与えられれば奪われることはありません。母親が教育を受ければ、次世代や、さらにその次の世代へと受け継がれていき、持続的な社会還元が期待できます。これは、「クレ・ド・ポー ボーテ」というブランドが行う支援としてふさわしいと考えました。こうした活動を行うにあたっては、価値軸をどこに置くかが極めて重要であり、そしてその価値軸をぶれることなく継承していくことが重要だと考えています。
例えば2021年には、ユニセフがバングラデシュで実施する「教育システムにおけるジェンダー平等の推進」「教育におけるジェンダー関連の障壁の緩和」「ジェンダーに基づく暴力の削減」を目的としたプログラムを支援。ユニセフは「クレ・ド・ポー ボーテ」の支援を受けて、社会的に弱い立場にある少女1,100人(15-18歳)に、スキル開発と雇用機会を結びつける代替教育プログラムを展開しました。
2018年に、スイスのジュネーブにあるユニセフ本部へ行き、どのように協業できるか話し合いました。既に4年の月日が流れましたが、私自身、まだ学んでいる最中であり、この活動をもっと根付かせていくことが大事だと思っています。このような取り組みは非常に手間もかかりますし、ビジネスとしてはすぐに結果が出るものでもありませんが、社会への還元として非常に重要な活動であるというだけでなく、ブランドの価値向上にも寄与する活動なので、それを理解していただけるように地道に活動していきたいと思っています。
もうひとつ活動としては、女性の進出が遅れているSTEM(科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Mathematics))の領域の教育に貢献した女性を年に1回表彰する「パワー・オブ・ラディアンス・アワード」があります。これは2019年3月に立ち上げたもので、これまで4組5人の女性を表彰しました。賞金として彼女たちが活動する団体に10万ドルを寄付しています。2020年に受賞したネパールのビニタ・シュレスタさんとプラティクシャ・パンディさんは、10歳から25歳までの少女や女性たちに、コンピュータサイエンスやプログラミングを教えていますが、この寄付金を活用して首都カトマンズに集中していた活動範囲を大幅に広げたと聞きましたし、ほかの方たちの活動も拡大したというお話も聞いています。
また、2022年の受賞者であるアマンダ・シマンジャンタックさんは、インドネシアの方なのですが、「クレ・ド・ポー ボーテ」のインドネシアのチームは、自国の女性が表彰されたということを非常に喜び、彼女を招聘し、彼女の活動を紹介するイベントを開催しました。地元の媒体でも、アマンダさんの活動を知らせる記事が掲載されたと報告を受けています。まだまだ局所的ではありますが、私たちの活動が少しずつ世の中に知られるようになっていくのは、喜ばしいことだと思っています。
これらの活動を支える寄付金は、「クレ・ド・ポー ボーテ」のベストセラー商品であるル・セラムのグローバルの売上から拠出されており、その意味では、ル・セラムをお買い上げいただいたお客さまひとり一人が女性の教育支援に貢献していることになります。
女性の教育支援はスタートして3年ほどですが、お客さまからも「意義深い活動」と評価していていただいています。毎年活動を継続していく中で、少しずつですが着実に活動が認知されてきており、ル・セラムの購入を通じ、活動を支持して頂く方も増えてきています。
加えて、「クレ・ド・ポー ボーテ」が積極的に取り組んでいるのが持続可能なモノづくりの推進です。昨今の気候変動問題などを考えるにつけ、環境保全を前提としたモノづくりは、社会的な要請ですし、ブランドの商品をお買い上げいただくお客さまにとっても重要な価値のひとつになってきていると感じます。
取り組みの事例の一つとして、レフィル可能な製品のラインナップを80%まで拡充することを目指していますし、ボトルやパッケージに関しても、「クレ・ド・ポー
ボーテ」らしさを大切にエコ素材への転換を進めています。審美眼の高いクレ・ド・ポー・ボーテのお客さまにご満足いただけるサステナビリティ対応を、深く突き詰めることが重要だと思っています。
女性の教育支援については、今後もユニセフとのパートナーシップを継続し、息の長い活動にしていきたいと考えています。同時に、グローバルレベルの活動を、より各地域に根付かせる活動に進化させていきたいとも考えています。
「クレ・ド・ポー ボーテ」の行っている女性の教育支援や環境保全などのサステナビリティの取り組みは、短期的なリターンが見えないこともあります。ぜひ、これらの活動は長期的視野に立って行っていくものだということをご理解いただけたら嬉しく思います。また、ブランドとしては、このような活動がブランドの価値を高め、結果として当社全体の成長に貢献できるように鋭意努めていく所存ですので、今後とも応援のほど、よろしくお願いいたします。
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