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リスクマネジメント

資生堂では、「あらゆるステークホルダーとの信頼関係を築き、中長期戦略の実現を一層確実なものとすること」を主眼にリスクマネジメントを推進しています。そのため、リスクを戦略実現に影響を与える「不確実性」と捉え、脅威だけでなく、機会も含めた概念として定義し、必要な体制を構築するとともに、積極的かつ迅速にリスクを管理し対応策を講じています。

グローバル本社(HQ)にCLO(Chief Legal Officer)直属のリスクマネジメント部門、各地域にはRMO(Risk Management Officer)を設置し関連情報を集約させています。そして、当社CEOを委員長とし各地域CEOおよび当社エグゼクティブオフィサー等をメンバーとする「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」にて、定期的に資生堂グループのリスクを特定し、対応策などを審議する体制を構築しています。また、リスクごとにリスクオーナーを設定し、対策の責任を明確化し、さらに透明性の高いモニタリングを実施するため、推進状況を定期的に上記Committeeおよび取締役会にて議論する仕組みを構築・運用しています。

リスクマネジメント

2021年度は、代表取締役社長 兼 CEOをはじめとしたエグゼクティブオフィサー、各地域CEOのリスク認識を把握するインタビューや、RMOによる地域ごとのリスク評価、当社関連機能部門との情報交換等を元に、リスクマネジメント部門による分析や外部有識者の知見を加えて、「WIN 2023 主要戦略」実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを特定しました。それらのリスクについて、「リスクが顕在化した場合の経営成績等に与える影響」、「リスクが顕在化する可能性の程度や時期」、「当該リスクへの対応の十分性」の3つの評価軸を設定し、上記Committeeや個別会議などを通じて、重要リスクの特定と優先付けおよび対策状況の検討を行いました。リスクの重要性評価においては、当社ポリシーに則って、人命・財産・事業継続の視点に加え、レピュテーションに与える影響も重視しました。

リスクアセスメントの結果抽出したリスクは、カテゴリーごとに集約し、外部の変化に起因する「生活者・社会に関わるリスク」、内部の活動に起因する「事業基盤に関わるリスク」、そして「その他のリスク」の3つのリスクカテゴリーに分類し、対応しています。
また、特筆すべき点として、各リスクの結びつきが強固になっていることから、対応策の相互依存関係が一層高まっていること、また、「生活者の価値観変化」および「優秀な人材の獲得・維持と組織風土」が他のリスクに与える影響が大きいことが挙げられます。
事業等のリスクの詳細は、以下のURLリンクより、有価証券報告書をご確認ください。

高収益構造への転換
  • ①事業構造改革による収益性改善
  • ②コスト競争力強化・生産拠点の生産性向上
  • ③中国を中心としたアジア圏での成長強化
スキンビューティーへ注力
  • ④スキンビューティーブランド育成・ポートフォリオ拡充
  • ⑤他社との協業によるイノベーション強化
  • ⑥インナービューティー事業の開発
成長基盤の再構築
  • ⑦サステナビリティを中心とした経営への進化
  • ⑧ブランドを強くするマーケティングの革新と組織強化
  • ⑨デジタル事業モデルへの転換・組織構築
  • ⑩人材・組織のさらなる多様化と能力開発

一方、長期的な観点から、当社事業における重要性が急激に増大しつつあり、かつ、潜在的な影響が長期に及ぶ可能性があるエマージングリスクとして、「化粧品の購買需要の減退」と「化粧品の研究開発・製造・販売の規制強化」があります。
これらのリスクについては、下記の通り事業モデルの変革を含め、他のリスクと共に適切な対応策を講じています。

リスクの名称 リスクの説明 事業への影響 リスク軽減策
化粧品の購買需要減退 テクノロジー社会の進展、ボーダレス化等により、生活者の価値観や行動、好みが速に変化し、多様化している。その変化の中で、スキンケアや、メイクアップ等の化粧品そのものの購買需要が減退するリスク。 生活者の「美・健康」に関する価値観の変化に適切に対応した経営戦略を策定し、需要に合致する化粧品やサービスを展開できなければ、当社の事業計画に多大な影響を及ぼす可能性がある。
  • ・当社が強みを持ち、かつ市場としても発展が期待されるスキンビューティーに経営資源を集中投下し、ブランドの育成とポートフォリオの拡充、新たな事業の開発を推進。
  • ・生活者の価値観の多様化に対応するブランドポートフォリオ強化。(新ブランド開発、M&A等)
  • ・生活者情報を適宜適切に入手するための市場情報に関する専門部署の設置。
  • ・他社とのオープンイノベーションによる価値・事業開発。
化粧品の研究開発・製造・販売の規制強化 グローバルでの環境意識の高まりにより、処方開発やUVケア、容器包装等への規制強化が多方面で進み、各国・地域において、当社の技術や化粧品が規制の対象となり、研究開発が停滞する、もしくは製造・販売が禁止されるリスク。 EUにおけるGreen Dealやその一環としてのChemicals Strategy for Sustainabilityの策定など、さまざまな国と地域で持続的社会の構築に向けて多くの提案がなされている。これらの規制強化に対して、当社が独自性のある戦略を立案し、サステナブルな商品開発を適切に行うことができなければ、提供できる化粧品やサービスが減少し、当社の事業計画に多大な影響を及ぼす可能性がある。加えて、当領域への取り組みが十分でない場合、社会や生活者からの信頼を失う可能性がある。
  • ・グローバル本社においてサステナビリティコミッティを定期的に開催し、中長期戦略の立案とKPIの設定、HQおよび地域本社の関連部門を巻き込み推進状況のモニタリングを実施。
  • ・各ブランドにおけるサステナビリティやSDGsの実現のための活動。(SHISEIDO、クレ・ド・ポー ボーテなど)
  • ・環境対応パッケージの採用。(カネカ生分解性ポリマー Green Planet®の共同開発、「Loop」の日本展開に参画)
  • ・認証パーム油および認証紙への切替えの推進。
  • ・主な環境負荷軽減項目(CO₂・パーム油・紙・水・廃棄物)の中期的目標設定・開示と、達成に向けた推進。
  • ・「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)」への賛同と、その提言に基づき、気候変動リスクが事業に与える影響を分析したシナリオの策定と情報の開示。

また、「個人情報保護」「贈収賄防止」「カルテル防止」「取引先リスク防止」の4項目については、コンプライアンスに関する強化テーマと位置づけ、コンプライアンスプログラムの整備を進めています。

インシデント対応

資生堂では、「資生堂グループ危機管理方針」を定め、この方針に沿って、発生したインシデントに対して迅速かつ適切な対応をとり、被害抑制と早期回復を図っています。日本においては、インシデントが発生した部門が、事実確認と被害拡大防止に努めるとともに、リスクマネジメント部門に迅速に報告します。リスクマネジメント部門は、被害の深刻度、拡大可能性、社会的な反響などの観点からインシデントレベルを判断し、対応に必要な部門を招集し組織を立ち上げます。さらに、被害拡大防止・被害者への対応・情報の開示などを検討するとともに、原因究明や対策の推進状況・再発防止策の内容を確認します。また、海外においては各地域CEOおよびRMOが中心となり、インシデントへの対応体制を構築します。他の地域に影響が及ぶインシデントなど、一定レベル以上のインシデントについては、速やかにHQリスクマネジメント部門へ報告し、必要な対応を迅速に講じることができる体制としています。

<資生堂グループ危機管理方針>

1.社員と家族の安全確保

2.会社資産の保全

3.業務の継続

4.ステークホルダーからの信頼の確保

事業継続マネジメント(BCM)

大規模災害などの発生への備えとして「事業継続計画(BCP:Business Continuity Plan)」を策定し、災害等発生時にBCPに沿って適切な対応が図れるように、定期的な訓練や啓発活動を実施すると共に、訓練などを通じて得られた知見を踏まえて定期的にBCPの見直しを行っています。

事業継続計画(BCP)

当社BCPは、「資生堂グループ危機管理方針」に基づき、次の考え方で策定しています。

<資生堂グループのBCP策定の基本的考え方>

1.人命尊重を第一とし社員とその家族の安全確保を最優先に安否を確認する。
その後の業務遂行においても、社員の安全に配慮し二次災害を防止する。

2.資金、情報通信システム、建物・設備などの会社資産の毀損を防ぐ。

3.復旧に必要な業務、緊急時にも継続すべき業務を目標時間までに確実に実施する。

4.上記を通じて、お客さま・取引先(得意先・調達先等)・株主・社員・社会などのステークホルダーへの影響を最小化し、企業価値の毀損を防ぐとともに、地域社会等への支援を通じてさらなる信頼を確保する。

当社BCPは、基本事項を記述する「基本計画」と復旧活動に必要な部門の具体的活動を記述する「行動計画」から構成されています。

大地震など事業継続に係る災害が発生した場合に、被害を最小限にとどめ早期の事業復旧を図るために、復旧業務・緊急時継続業務とその目標復旧時間を定めています。また、時間経過にあわせてフェーズ毎に収集すべき情報、決定すべき事項、情報伝達ルートを定めています。その実行にあたっては、リスクマネジメント担当エグゼクティブオフィサーを本部長とし社員対応・施設対応・情報通信・情報発信・資金調達・お客さま対応の各機能の部門からなる「HQ緊急対策本部」が全体を束ね、サプライネットワークの復旧・継続を司る「商品供給継続本部」、日本地域事業を担当する「SJ緊急対策本部」と連携し対応する体制としています。
また、突発的に発生する地震などの災害と異なり、段階的・長期的に被害が継続する感染症などの災害に対しては、各段階ごとの実施検討事項を定めた感染症BCPを別に定めています。

HQ緊急対策本部訓練

HQ緊急対策本部が緊急時に司令塔となりBCPに沿って適切な対応を図ることができるように、定期的にHQ緊急対策本部訓練を実施しています。訓練の結果、適宜、行動計画を見直し、また、不足している内容についてはBCP関連文書類を改定したうえで関係者へ周知することにより、常に最新の状態でBCPを整備し、HQ緊急対策本部のメンバー等社内関係者が緊急事態発生時に的確に対応できるように備えています。

社員啓発活動

大災害などの緊急事態発生時には、HQ緊急対策本部の指示に沿って、部門長・事業所責任者のリーダーシップのもと全社員が迅速かつ的確に対応する必要があることから、部門長・事業所責任者を対象とした会議でのBCPに関する説明会や、全社員を対象とした、年2回の安否確認訓練を実施しています。さらに、新入社員研修などの機会を通じて、防災意識を高める講座を開催するなど、社員一人ひとりの知識と意識の高揚に努めています。