容器包装

気候変動や海洋プラスチックゴミ問題などは、グローバルで喫緊に解決すべき環境課題です。生活者をはじめステークホルダーの気候や環境問題に対する関心はこれまで以上に高まると予想され、製品開発などを通じて社会の意識の変化に対応していくことは、当社の事業の持続可能性にとって非常に重要です。
資生堂は、独自の容器包装開発ポリシー「資生堂5Rs」に基づき、環境負荷を軽減し、サーキュラーエコノミーの実現に取り組んでいます。
2025年までに100%サステナブルな容器を実現するという目標達成に向け、リサイクル可能・リユース可能な設計やバイオマス由来素材・リサイクル素材の利用を促進し、容器の軽量化や「つめかえ・つけかえ」容器、リサイクル可能な単一素材容器の展開などに取り組んでいます。加えて、生活者や外部パートナーと協働し、使用済みの容器を資源として循環させる資生堂のサーキュラービジネスモデルを構築していきます。

資生堂 5Rs

リデュース/リユース

私たちは地球の資源が有限であるという前提に立ち、「資生堂5Rs」のポリシーに沿って、製品に応じた容器サイズの適正化、容器の軽量化や「つめかえ・つけかえ」容器によるプラスチック使用量の削減や環境負荷軽減を推進しています。

「つめかえ・つけかえ」容器は、使用する資源を削減するとともに、本体容器の再使用を促すことで、容器に使われるプラスチック総量を減らすことができます。LCAによる評価の結果でも、本体容器を使い捨てする場合と比較して「つめかえ・つけかえ」容器によって資源の投入量や廃棄物量が減り、CO₂排出量が大幅に削減されることが示されています。このように、環境負担軽減に大きく寄与する取り組みのため、資生堂は日本だけではなく、グローバルへの展開を広く推し進めることを目指しています。

私たちは1926年に資生堂初の「つけかえ」用製品を発売して以来、スキンケア・メイクアップなど幅広いカテゴリーで「つめかえ・つけかえ」が可能な容器を開発してきました。2022年は、グローバルで30ブランド、約770SKU以上の「つめかえ・つけかえ」容器を提供しています。例えば、プレステージスキンケアブランド「クレ・ド・ポー ボーテ」では「つめかえ・つけかえ」容器の展開を拡大し、クリーム「ラ・クレーム」の「つけかえ」容器は、本体容器と比較して95%のプラスチック量削減になります。同ブランドの2022年の「つけかえ」製品の全体の売上は、2021年比で30%増加しています。

また、環境負荷を軽減する製品のイノベーションにも取り組んでいます。世界88の国と地域で展開するブランド「SHISEIDO」から、2023年には、ボトル製造と中味液充填をワンステップで実現する技術LiquiForm®(リキフォーム)を世界で初めて化粧品に採用しました。LiquiForm®を活用した化粧品の「つけかえ」容器は、容器単体のプラスチック使用量を約70%削減可能となります。原材料調達・生産・使用・廃棄のサプライチェーン全体では、当社の標準的な従来の「つけかえ」容器(同容量)に対して約70%のCO₂排出量を削減します。

資生堂中国では、「つめかえ・つけかえ」容器に対する生活者の認識や行動を深く理解するため、中華人民共和国生態環境部とアリババグループと協働で、中国発の「つめかえ・つけかえ」容器のホワイトペーパーを発行しました。また、生活者のサステナビリティ対応製品への購入傾向の結果を踏まえ、中国人民共和国生態環境部とアリババとともに「つめかえ・つけかえ」容器の使用に関して、生活者に啓発していきます。

左から本体容器、「つめかえ・つけかえ」容器・、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「エリクシール」
「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「エリクシール」。それぞれ左が本体容器、右が「つめかえ・つけかえ」容器

リサイクル

サーキュラーエコノミーの実現のためには、資源の再利用を想定した素材選択、製品設計が重要です。
資生堂は、使い捨てプラスチックを削減するため、資源の再利用が容易な材料の使用と、デザイン性を損なうことなく簡単に分別や「つめかえ・つけかえ」ができる容器包装の開発を同時に推進しています。
「SHISEIDO」「クレ・ド・ポー ボーテ」などさまざまなブランドから、再生利用が容易な材料を使用した製品が発売されています。2022年に発売した、若年男性向け化粧品ブランド「SIDEKICK(サイドキック)」のチューブ容器には、プラスチック削減の取り組みとして、再生利用が容易なアルミニウムを採用しました。

SIDEKICK(サイドキック)
SIDEKICK(サイドキック)

リプレース

資生堂では、気候変動や海洋プラスチックゴミ問題の対応策として、リサイクル素材(PCR)やプラスチック代替素材、環境負荷の低いバイオマス由来素材の研究に加え、積極的な使用推進にも注力しています。
2022年から、「SHISEIDO」を象徴する美容液「アルティミューン」の「つけかえ」容器に100%リサイクルガラスを採用しています。同ブランドでは、化粧品容器だけではなく、ブランドが提供する店内のアクリル製ビジュアルマーチャンダイジングツールを100%再生材へ切替え、バージンプラスチック使用量の削減を実現しました。
また、サンケアブランド「アネッサ」の外袋やスキン&マインドブランド「BAUM」の容器などさまざまなブランドの製品や容器包装に、植物由来のバイオマス素材を一部使用しています。

ドラッグストアの店頭に設置していたプラスチック製の販売台や販促物についても、国内の同業他社と知見を共有しながら、小売店の店頭や売場で設置する販促物に使用する素材をプラスチックから紙製へ順次変更し、プラスチック使用量削減の取り組みを推進しています。2022年には、約70%の紙化を実現しました。

リプレースの箇所に掲載する商品
アルティミュー
ン
リサイクルガラスを使用した「SHISEIDO」アルティミューンのレフィル容器

循環モデル構築に向けた取り組み

資生堂は、生活者や取引先との幅広い接点を活用し、店頭を通じて使用済みプラスチック製化粧品容器の回収スキームを構築します。循環モデルの定着には、スキームの構築だけでなく、生活者の意識や行動変容が必要となります。使用済み容器=資源、であるという意識醸成に努めるとともに将来的には同業他社や他業界への拡大など、サーキュラーエコノミーの実現に向けて社会全体の行動変容を目指します。

店頭回収リサイクルの取り組み

資生堂は使用済み化粧品容器の店頭回収を実施し、廃棄後の容器を新たな素材としてリサイクルをしています。リサイクルを確実に進めるには、企業1社だけでなく、製品を使用するお客さまや回収に携わる企業、同業他社など複数の関係者の協働が不可欠です。

スキンビューティーブランドの「IPSA」ではリサイクルプログラムを国・地域で実施し、環境負荷軽減とお客さまへの啓発を行っています。2022年、中国では、94店舗の店頭において、約6万3,000本・1,400㎏、台湾では約2万2,000本の化粧品容器を回収しました。

日本では、イオンリテール株式会社(以下、イオン)とテラサイクルジャパン合同会社、ならびに同業他社とも協働し、イオン88店舗の店頭で使用済み容器を約3万本を回収しました。

3社協業によるプラスチック製化粧品容器の新たな循環モデル構築に向けた取り組み

化粧品容器は、中味の保護、使いやすさ、デザイン性が重視されるため、多種多様な素材からつくられています。それらの分別は難しく、プラスチック資源として循環利用する際の課題となっています。2022年に、資生堂は、積水化学工業株式会社と住友化学株式会社と協働し、プラスチック製化粧品容器を回収し、分別することなく容器の素材として再生する循環モデル構築に向けた取り組みを開始しました。3社が企業の垣根を超えて連携するとともに、関連する業界や企業にも参加を働きかけ、サーキュラーエコノミーの実現を目指します。

循環型の取り組み

プラスチック製容器の新循環モデル「BeauRing」の実証試験を開始

資生堂は、循環モデル実現の取り組みとして、使用済みプラスチック製容器を収集し、新たな容器へ再生する循環型プロジェクト「BeauRing(ビューリング)」を立ち上げました。当社だけでなく、当社以外の企業にも参画を呼び掛けることで、資源循環の輪が広がり、お客さまがより前向きに化粧品を使うことができるサステナブルな社会に貢献していくことを目指しています。2023年4月から実証試験として横浜市内の一部の資生堂化粧品販売店舗、資生堂グローバルイノベーションセンター、そして株式会社ポーラ・オルビスホールディングスと連携し、店舗にて使用済みプラスチック容器の収集を開始しました。

BeauRing BOX
BeauRing BOX
BeauRing ロゴ
「BeauRing」 ロゴ

イニシアティブへの参加

株式会社アールプラスジャパン

資生堂は2022年より、世界で共通となっているプラスチック課題の解決に貢献すべく、株式会社アールプラスジャパンに資本参加し、使用済みプラスチックの再資源化の実現に取り組んでいます。回収プラスチックの選別処理、モノマー製造、ポリマー製造、包装容器製造、商社、飲料・食品メーカーなど業界を超えた連携により、2030年の実用化を目指しています。

(株)アールプラスジャパン

処方/成分

資生堂は、皮膚科学やマテリアルサイエンスに関する100年以上にわたる広範な研究知見を応用して、安全で高品質な製品やサービスを開発し、社会に提供してきました。
化粧品には天然由来原料が処方されていることから、サステナブルで責任ある原材料調達と使用は環境保全の観点で重要課題です。
現在、資生堂グローバルイノベーションセンター(横浜)をはじめとした世界6カ所の研究拠点で、安全性や機能性だけでなく環境にも配慮した原材料や処方構築などの研究開発を推進しています。資生堂は、グリーンケミストリーの原則に鑑み、原料・成分の選定や処方開発を進めており、人体への安心・安全、環境負荷の最小化、自然由来原料やアップサイクル素材の活用、倫理的な調達に取り組んでいます。

環境への対応

UVケア

人と生態系、そして地球環境との共生のため、資生堂はサンケア領域でのイノベーションを加速させています。気候変動などの環境変化によって、人が受ける紫外線量は増加すると予測され、また紫外線の長時間曝露はシミやシワなどの「光老化」の原因となることが知られています。

資生堂は、これまでの化粧品では実現できなかった、肌に悪影響を及ぼすとされてきた紫外線を、肌によい作用をもたらす可視光(美肌光)へと変換する技術を開発しました。このような環境との共生を実現するイノベーションをはじめ、新たな価値をもつ製品やサービスの提供を目指し、さらなる研究を進めていきます。

琉球大学と共同で実施している紫外線防御剤によるサンゴへの生態影響に関わる研究と、海洋中での紫外線防御剤の濃度分布をシミュレーションした結果を組み合わせ、製品中の紫外線防御剤によるサンゴへの影響を精査しています。これらの結果は成分選定や、サンゴへの影響に配慮した処方設計へと活用され、「SHISEIDO」や「アネッサ」などのサンケア製品にも応用されています。

2023年には、化粧品成分が海洋生態系に対して与える影響を評価するため、任意の生態系を水槽内に再現する独自技術を持つスタートアップ企業の株式会社イノカとの連携協定を締結しました。海洋生物に甚大な影響をもたらすことが予測される「海水温の上昇」をはじめ、想定される未来の環境変化のシナリオを水槽に再現することにより、日焼け止めなどで使用している化粧品のさまざまな成分が、サンゴやその他生物を含めた海洋環境全体に与える影響を評価します。

イノカが開発した環境移送技術を用いて水槽中に再現した人工海洋生態系(実験写真)
イノカが開発した環境移送技術を用いて水槽中に再現した人工海洋生態系(実験写真)

透明性の開示

製品開発ポリシーの開示

資生堂は、人々の健康と環境に対して真摯に向き合うため、製品開発や社会的に疑義のある成分(例:オキシベンゾン、パラベンなど)の使用についての企業方針を公表しています。成分については、国や地域ごとの規制を遵守することに加え、厳格な安全性、環境への配慮や倫理的視点も含めた自社基準を設定し、選定しています。

持続可能な原料の調達

資生堂は、環境に配慮した、持続可能な原料の調達に取り組んでいます。
特に、保湿剤や油分など、さまざまな用途で化粧品や日用品にも使用されているパーム油は、環境への影響も重大といわれています。資生堂は、パーム油の調達について、中長期的な目標を開示し、サステナブルな原料への切替えを進めています。

生活者の多様なニーズへ対応するブランド

急激な地球環境や社会の変化に伴い、企業の社会的責任や環境対応、原材料に対する企業姿勢を重視するお客さまが増えています。資生堂は安全性に関する企業ポリシーの開示に加えて、環境や社会課題に配慮したブランドの製品開発・原材料対応を進めています。

アメリカで誕生し、40カ国で展開する「Drunk Elephant(ドランク エレファント)」は、持続可能で責任ある原材料の調達や、サステナブルなアクションを積極的かつ継続的に推進するクリーンビューティー市場において世界をリードする存在であり、ミレニアル世代やZ世代と呼ばれる若年層から高い支持を得ています。

「樹木との共生」をテーマに掲げる「BAUM(バウム)」の容器には、家具の端材をアップサイクルした木製パーツや植物由来PET、リサイクルガラスなどを積極的に採用したり、「つけかえ」製品を配置するなど、環境に配慮した製品を展開しています。パッケージに採用しているオーク(ナラ)を中心に岩手県にある「BAUMオークの森」に植樹し、森を育てています。また、その苗木を、「BAUM」店舗内でも育成しています。

2022年には、体の内外から健やかな美しさを目指す植物由来成分配合のスキンケアブランド「Ulé(ウレ)」をフランスで発売しました。「責任ある調達」「製品の有効性・安全性」「環境負荷の軽減」「透明性」を重視し、原料のトレーサビリティの明確化と輸送による環境負荷軽減のため、原料の調達とすべての製品の生産をフランス国内で行うとともに、原材料名や産地などをブランドサイトで公開しています。「Ulé」はフランスで最も権威のある美容賞マリ・クレール ボーテ大賞の「ヤングブランドとサステナブル部門」を受賞しました。

「Ulé(ウレ)」
「Ulé(ウレ)」

動物実験に対する取り組み

資生堂は、動物愛護の理念への理解と尊重を前提に、化粧品に関する法規制を遵守し、安全で効果的な製品をお客さまに提供することを使命としています。このため、すべての化粧品、医薬部外品について動物実験を行わず、培養細胞やIn silicoなどを用いた代替試験法による安全性保証システムを確立しています。
世界各国・地域の法規制に従ってそれぞれの国・地域の行政機関と連携し、製品の安全性を保証するためのより有効な代替試験法の開発を継続しています。

2023年2月には、各国の化粧品メーカー、サプライヤー、業界団体、動物保護団体が参画して動物実験を行わない安全性保証の普及・実装を目的として発足した国際プロジェクトICCS (International Collaboration on Cosmetics Safety)に、資生堂は発足メンバーとして参画しています。
資生堂は動物実験代替法に関する技術・知見の共有や、関連企業・団体との議論や連携、各国・各地域レギュレーションへの働きかけを通じて、動物実験を行わない化粧品安全性保証の普及・実装を推進していきます。

外部機関との取り組み

環境負荷軽減技術を東洋大学に許諾

資生堂は、2020年3月に化粧品業界からパートナー企業として世界で初めて「WIPO GREEN」に参画し、2021年には、「WIPO GREEN」データベースに掲載している「低エネルギー製造技術」を東洋大学に使用許諾しました。同大学は、許諾した技術を用いて環境負荷の小さいサステナブルなハンドセラムの試作開発を行いました。

WIPO GREEN

タンパク質繊維を用いた化粧品原料をSpiberと共同開発

2022年には、Spiber株式会社が開発した植物由来バイオマスを原料とする生分解性繊維(Brewed Protein™繊維)を基に化粧品原料を共同開発しました。本素材は、環境へ配慮しながら、しなやかで美しいまつ毛を演出するマスカラ繊維として資生堂の製品に配合するほか、今後当社の製品開発に広く活用を検討していきます。

MATSURIプロジェクトに参画

資生堂は、石油産業に代わる藻類の新産業の社会実装を目指す世界初の企業連携型プロジェクトMATSURI(まつり)に参画しました。光合成によりCO₂を吸収しながらタンパク質・脂質・炭水化物などを生成する藻類の活用は、CO₂の有効活用や排出量削減への貢献も期待されます。それらの生成物を化石資源や食用資源の代替として利用するために、パートナー企業間で連携して事業開発を行い、化粧品の脱化石資源を推し進めていきます。

藻類を活用した日本初の企業連携型プロジェクト『MATSURI(まつり)』