原材料の調達

製品の原材料の生産地では、乱開発による環境破壊や、そこで働く人たちの人権問題などが懸念事項になっています。特にパーム油や紙は生物多様性への影響も重大なため、企業の積極的な対応が求められています。
2020年に資生堂はパーム油と紙について中長期的な目標を開示し、サステナブルな原材料への切替えを進めています。マイカに関しては、自社での調達方針を明確にし、他企業と協働した生産地でのサポート体制の構築などを通じて、生産地域の問題解決に向けた取り組みを強化しています。

原材料の調達

生物多様性

資生堂の事業活動は地球の恵みと豊かな生物多様性に支えられています。しかしながら、近年、生物多様性の急速な喪失が多くの科学者やNGOなどから警告されており、種の保存の観点だけでなく、持続可能な事業の観点からも、事業と自然環境との関連についての透明性ある情報開示と、生物多様性の保全が求められるようになってきました。
資生堂は、Taskforce on Nature-related Financial Disclosure (TNFD)の枠組みを活用し、事業活動による自然への依存と影響の両面からリスク/機会の分析を進めています。その分析の結果、陸域の生物多様性への影響が大きいことが示されたパーム油関連原料や紙について、森林破壊ゼロを支持し、認証原料や再生材に切替えることにより、影響の最小化に努めています。
今後は、生物多様性の回復・再生まで導く活動が必要だと認識し、資生堂はより一層事業と生物多様性の共存に貢献していきます。

生物多様性に関する保全活動

資生堂は、さまざまなブランドや地域で生物多様性の保全に関する取り組みを行っています。
「SHISEIDO」は、2019年からサーフィンの世界的団体である「WSL(World Surf League)」のグローバルサステナビリティパートナーとして契約し、より美しい海の実現に向けて、海洋保護の推進や啓発活動に取り組んでいます。また、2021年には、2030年までに海洋の30%の保護を目指す「We Are One Ocean」の請願書を「国連生物多様性に関する条約締約国会議」に提出しました。

日本では、2022年より古くから多くの薬草が栽培されてきた伊吹山の自然保護活動を開始しました。独自の薬草園を開園し植物の栽培に加え、山麓に豊かな恵みをもたらす伊吹山の自然保護のため、当地域で環境保全に取り組むNPO法人「霊峰伊吹山の会」とともに、植生回復活動に取り組んでいます。

農作物の受粉に重要な役割を担っているミツバチの減少が懸念されており、フランスのバル・ド・ロワール工場およびジアン工場では、ミツバチの保護と地域の生態系の保全をサステナビリティ計画に盛り込んでいます。ミツバチの巣箱を設置するとともに、工場敷地内での農薬の使用を禁止しました。設置したミツバチの巣箱からは、2022年は約167kgのハチミツが生産されました。

パーム油

パーム油はその汎用性の高さから、食品から化粧品までさまざまな製品に使用される一方、開発に伴う熱帯雨林での環境破壊や人権問題も発生しており、サステナブルで責任ある調達が求められています。
資生堂は、2010年にRSPOに加盟し、2018年からはパーム油由来原料の100%に相当するRSPOクレジットを購入しています。2020年には「2026年までに100%サステナブルなパーム油の調達を達成」という中長期的な目標を開示しました。資生堂グローバル本社と地域本社の主要部門が緊密に連携し、目標達成に向けた取り組みを推進しています。2022年は、パーム油由来原料の36%(パーム油換算、重量ベース)を物理的な認証パーム油に切替えました。また、資生堂の全工場がRSPOサプライチェーン認証を取得しています。

他企業との協働による課題解決の取り組み強化のため、資生堂はCGFの日本のパーム油ワーキンググループに参画し、2019年からはJaSPONに加盟しています。また、パーム油調達における人権問題を把握するために、経済人コー円卓会議日本委員会がインドネシアで主催したステークホルダーエンゲージメントプログラム(2019年)に参加し、 NGO・NPOや小規模パームヤシ農家との対話を通じて、パーム油生産に関わる人権リスクや人権侵害、労働問題について理解を深めました。
加えて、「資生堂カメリアファンドを通じて、インドネシアの小規模パーム農家の育成などを行っているWWFジャパンの活動を支援しています。WWFは環境に配慮した生産方法や労働安全のトレーニング、生産者組合の設立のサポートなどを通じて、RSPO認証の取得や農家の生計の向上に取り組んでいます。資生堂は、上記活動の支援対象でありRSPO認証を取得した小規模農家が販売するRSPO認証クレジットを購入し、環境・社会課題に対応した持続可能な調達に貢献しています。

RSPO, Jonathan Perugia
RSPO, Jonathan Perugia
私たちの進捗状況はwww.rspo.orgからご確認ください

資生堂は、資源の持続可能な利用と海洋プラスチックゴミ問題の解決を目的として、化粧品の容器包装へのシングルユースプラスチックの使用を可能な限り削減するため、化粧品の外箱などの2次包装の紙化を積極的に進めています。一方で、紙の原料である木質チップを生産する植林地では、森林破壊や生物多様性の損失、地域住民の権利侵害が問題となっており、環境や人権に配慮したサステナブルな紙の使用が求められます。

資生堂は、2023年までに製品の容器包装に使用される紙を、100%サステナブルな紙に切替えるという目標を開示しています。2022年は、97%(重量ベース)をサステナブルな紙に切替えました。
化粧品の容器包装には、環境配慮に加えて美しいデザインや重量に耐えうる強度などさまざまな特性が求められます。製紙メーカーとの協働により、こうした優れた特性や新しい機能の紙製容器包装のイノベーションにも取り組んでいます。
さらに、販売台やハンディバッグ、リーフレットなどの紙器類の販促物、オフィスにおけるコピー用紙についても、認証紙や再生紙などのサステナブルな紙への切替えを推進しています。

マイカ

マイカは、美しい光反射や耐熱性から、美容関連産業だけではなく幅広い産業で使用されています。資生堂は、2017年にRMI(Responsible Mica Initiative)に加盟しました。RMIは、マイカ生産国の採掘現場から児童労働や強制労働を撲滅し、サステナブルで責任あるマイカ生産の確立を目標に掲げています。RMIは、2018年から2022年までの5年間で、NGOやインド政府、参加企業などと連携し、180の村のマイカ生産に従事することで生計をたてている約1万6,500人の家庭、約9万2,000人にコミュニティエンパワーメントプログラムのサービスを提供しました。彼らの収入と生計を改善させ、加えて、安全な飲料水や医療施設へのアクセス改善などの活動支援を行いました。
資生堂は、今後もRMI加盟企業を中心に、社会的懸念のない生産者から供給されるマイカの使用に努めます。

Responsible Mica Initiative
Mica
RESPONSIBLE MICA INITIATIVE

サプライヤーアセスメントプログラム

資生堂は、持続可能なサプライチェーンの構築とサプライチェーン全体におけるリスクを可能な限り排除することを目指し、サプライヤーアセスメントプログラムの実施を進めています。

サプライヤーアセスメントプログラム

資生堂は、新規の取引先に対しては、まずEcoVadis/Sedex/資生堂SAQのいずれかの評価法でサステナビリティ(人権・労働安全衛生・環境・ビジネス倫理)の基準に対してセルフアセスメント(自己評価)を実施し、ハイリスクでないことを確認したうえで「資生堂グループ サプライヤー行動基準」に合意いただいてから取引を行っています。

既存のサプライヤーに対しても、前述の評価法を用いてサプライヤーを評価することで「資生堂グループ サプライヤー行動基準」の遵守状況を継続的に確認しています。リスクの程度に応じてローリスク・ミドルリスク・ハイリスクの3種類にサプライヤーを分類し、ハイリスクに該当する場合は第三者監査を実施しています。第三者監査では、現場視察に加え、労働者インタビューや必要書類の検証などが行われます。監査により発見された課題については、課題の是正を要請しています。また、重大な課題が見つかった場合は、再度第三者監査により是正状況を確認し、一定期間内に是正されていない場合は、取引の停止を検討しています。

サプライヤーアセスメントプログラム

実績

2022年は、リスクの程度やサプライヤーの重要性を鑑み、合計72社(戦略サプライヤー28社、2021年度末時点でのハイリスクサプライヤー44社)を対象にグローバルでサプライヤーアセスメントプログラムを実行しました。

このうち10社がセルフアセスメントにおいてハイリスクに該当しました。

  • 全社に対し、結果のフィードバックおよび是正に向けたアクションプランの助言を実施しました。
  • 第三者監査を通じた是正、取引の見直しなどを行い、最終的にハイリスクサプライヤーは0となりました。

2022年サプライヤーアセスメント実績

1次サプライヤー
67社
2次戦略サプライヤー
5社

ハイリスクサプライヤー是正状況

アセスメント実施
ハイリスクサプライヤー数(年度末時点)
2020年
132社
2021年
44社
2022年
0社

サプライヤー向けの相談・通報窓口

近年、人権問題やコンプライアンス違反などへの適切な対応が重要視されていますが、資生堂では、2013年よりサプライヤー向けに書面やeメールによる相談・通報窓口「ビジネスパートナーホットライン」を設置しています。2022年は、コンプライアンス違反に相当する案件はありませんでした。

評価・受賞

CDP サプライヤーエンゲージメント評価

資生堂は、国際的な環境NGOのCDPから、サプライチェーン全体での温室効果ガス排出量の管理やリスク軽減に向けた取り組みが高く評価され、「サプライヤーエンゲージメント評価」において、最高評価である「サプライヤー・エンゲージメント・リーダー」 に2年連続で選出されました。今後も、サプライヤーとの協働を通じて環境負荷軽減活動を積極的に推進していきます。

CDPサプライヤーエンゲージメント評価

2023 Sustainable Procurement Leadership Award受賞

資生堂は、EcoVadis社(本社:フランス)が実施する「2023 Sustainable Procurement Leadership Award」の選定において、「Best Portfolio Performance Improvement」を受賞しました。
「2023 Sustainable Procurement Leadership Award」とは、国際的なサステナビリティ調査・評価機関であるEcoVadis社が、サステナブルな調達の取り組みにおいて、最も優れた企業を表彰するプログラムです。今回、資生堂と取引するサプライヤーのサステナビリティ基準の向上がEcoVadis社によって高く評価され、「Best Portfolio Performance Improvement」を受賞することができました。

Best Portfolio Performance Improvement受賞
Best Portfolio Performance Improvement受賞