ガバナンス
資生堂では、ブランド・地域事業を通じて全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。2022年はサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、専門的に審議する「Sustainability Committee」を定期的に開催しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。出席者は代表取締役を含む経営戦略・R&D・サプライネットワーク・広報など各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論をしています。その他、特に業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会にも諮り、審議しています。
戦略(シナリオ分析)
1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、RCPとSSPシナリオに沿ってリスクと機会について分析を実施しました。移行リスクについては、脱炭素社会への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を、物理的リスクについては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について、1.5/2℃および4℃の各シナリオを分析しました。2030年時点の移行リスクとしては、炭素税によって、導入される国や地域の数により約0.5~8.7億円規模の財務影響が発生する可能性を予測しています。物理リスクについては、洪水により約9億円、水不足により約35億円の潜在的なリスクを見込んでいます。
一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオにおいて、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まると予想されます。4℃シナリオにおいては、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大すると予想されます。イノベーションによる新たなソリューションの開発により、サステナブルな製品を提供していくことで、リスクの緩和と新たな機会の創出を目指しています。
リスクと機会のシナリオ分析
(主に1.5/2℃)
・クリーンビューティーなどのエシカルな製品の販売機会拡大
販売機会喪失
(主に4℃)
・気候対応型ソリューションの開発の販売機会拡大
原材料の調達コストの増加
リスクマネジメント
資生堂は2022年も、事業中長期の事業戦略の実現に影響を及ぼす可能性のあるリスクを総合的・多面的な手法を用いて抽出し、特定しました。その中には、「環境・気候変動」「自然災害・人的災害」といったサステナビリティ領域のリスクも含まれています。気候関連リスクも、事業継続や戦略に影響を及ぼす要因の1つとして科学的または社会経済的なデータに基づいて分析され、気候変動や自然災害に関わるリスクとして全社のリスクマネジメントに統合されます。特定されたリスクは、重要度に応じて、「Global Risk Management & Compliance Committee」や「Global Strategy Committee」、取締役会にて対応策などが審議される体制となっています。
指標と目標
資生堂は、CO₂排出量削減を目標として設定し、また定期的に気候変動に伴う状況をモニタリングし対応策を講じることで、リスクの緩和に貢献しています。特にScope 1およびScope 2のCO₂排出量については2026年までにカーボンニュートラルを達成し、2030年までに2019年比で46.2%削減することを目標として設定しました。Scope 3についても2030年までに2019年比で経済原単位で55%削減することを目標とし、SBTイニシアティブ(SBTi)の認証を取得しました。その他、事業所での水消費量やRSPO認証パーム原料への切り替え率など、気候問題に関連する適切な指標を選定し、レジリエントな体制の構築を進めています。