サステナビリティ戦略

マテリアリティ

(2019年策定)

資生堂は、創業以来培ってきた「美」に関するイノベーションによる価値創造で、事業を通じて人々の幸福感・充足感を高め、サステナブルな社会の実現を目指しています。事業を通じて取り組むべき社会・環境課題を選定するため、ステークホルダーへのヒアリング、サーベイ、ディスカッションをもとに課題をリストアップし、お客さま、取引先、社員、株主、社会・地球といったすべてのステークホルダーにおける重要性と、資生堂のビジネスにおける重要性との2軸で課題を分類し、優先順位をつけ、18項目のマテリアリティ(重要課題)を選定しました。

サステナビリティ推進体制

資生堂では、ブランド・地域事業を含む、全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。
2020年にサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、サステナビリティ関連課題について専門的に審議し決議するSustainability Committeeを設置しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定や、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。社長 CEOを含む、経営戦略、R&D、サプライネットワーク、広報およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論しています。
2021年は、従来のSustainability Committee開催に加えて、サステナビリティ課題を経営へ取り込むべく、関係するエグゼクティブオフィサーや主要組織の実務推進責任者とともに実行における対応を議論・決定する会議を追加実施し、全社での推進を強化しました。また、業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会にも諮り、審議しています。

2022年1月には、サステナビリティ活動を強化・拡充し、経営戦略・事業戦略と一体的に運用・推進していくため、組織改正を行いました。具体的には、経営革新本部内に全社のサステナビリティに関する戦略・推進機能を担う「サステナビリティ戦略推進部」を設置し、社内外に向けて当社のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)アクションを加速するために「D&I戦略推進部」を新設しました。
さらに当社は、サステナビリティ活動を推進するため、社内の取締役およびエグゼクティブオフィサーの長期インセンティブ型報酬の評価指標を見直し、社会価値に関する指標の評価ウエイトを10%から20%に高めています。さらに本年からは、当社のサステナビリティ戦略の中で重要な取り組みとなるCO₂削減を環境指標として新たに設定し、環境への取り組みを促進していきます。

戦略アクションと対応するSDGs

資生堂では、マテリアリティに基づき環境・社会それぞれの領域で、3つの戦略アクションを定めています。これらの取り組みに向け、各部門で経営資源を重点的に配分するとともに、全社横断で進めています。

マテリアリティ
戦略アクション
対応するSDGs
・気候変動対策
・環境負荷を低減する処方開発
・サステナブルなパッケージ開発
・森林の保全
・責任ある調達
・廃棄物削減
・水資源の効率的な使用
地球環境の負荷低減
サステナブルな製品の開発
サステナブルで責任ある調達の推進
・ダイバーシティ&インクルージョン
・お客さまの生活の質向上
・人財育成
・従業員の労働安全衛生と健康
・人権尊重
ジェンダー平等
美の力によるエンパワーメント
人権尊重の推進
・アート&ヘリテージ
・安全・安心な製品
・責任あるマーケティング・宣伝広告
・情報セキュリティ・プライバシー
・公正な取引
・ガバナンスの強化と説明責任
・アート&ヘリテージについては、社会価値を創る企業文化の継承と日本の美意識を発信する観点から活動を進めています。
・ガバナンスに関するマテリアリティについて戦略アクションは開示しておりません。
・コーポレートガバナンスの実践・強化により経営の透明性・公正性・迅速性の維持・向上を図り、すべてのステークホルダー(お客さま、取引先、社員、株主、社会・地球)との対話を通じて、中期的な企業価値および株主価値の最大化に努めることとしており、あわせて、社会の公器としての責任を果たし、各ステークホルダーへの価値の分配の最適化を目指しています。

環境関連の中期目標

項目
目標(2020年設定)
達成時期
2021年実績
CO₂排出量
カーボンニュートラル
2026年
△18%(2019年比)
水消費量 △40%
2026年
△22%(2014年比)
廃棄物
埋め立てゼロ
2022年
2020年に世界全12工場で
埋め立て廃棄物ゼロを
前倒しで達成・継続
容器包装
サステナブルな容器
100%
2025年
61%
パーム油
サステナブルなパーム油
100%
2026年
27%切り替え完了
(パーム油換算重量ベース)
サステナブルな紙
100%
2023年
72%切り替え完了
(紙重量ベース)

TCFD提言に基づく気候変動リスクと機会のシナリオ分析

資生堂は、気候変動問題が事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、2019年4月にTCFDへの賛同を表明し、TCFDフレームワークに沿った情報開示に着手しました。2020年はリスクと機会の定性分析の結果を開示、2021年は定量的に分析する手法を開発し、脱炭素社会への移行に伴うリスク・機会、および気候変動に伴う自然環境の変化によって引き起こされる物理的リスク・機会について、1.5/2℃シナリオと4℃シナリオそれぞれにおいて、分析結果と主な対応アクションを開示しました。

シナリオ分析の内容

1.5/2℃および4℃の気温上昇を想定し、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)が示したRCP(代表濃度経路)とSSP(共通社会経済経路)シナリオに沿ってリスクと機会について分析を行いました。リスクについては、1.5/2℃シナリオでは、脱炭素への移行に伴う政策、規制、技術、市場、消費者意識の変化による要因を分析し、積極的な気候変動対策がとられない4℃シナリオにおいては、気温上昇に伴う洪水の発生や気象条件など急性/慢性的な変化による物理的影響について分析を実施しました。その中で、特に影響の大きな炭素税、市場や消費者動向、洪水、水不足などに伴うリスク要因について、2030年時点での財務影響を定量化しました。
一方、機会に関しては、1.5/2℃シナリオでは、消費者の環境意識の高まりに伴い、サステナビリティに対応したブランドや製品への支持が高まることが予想され、4℃シナリオでは、気温上昇に対応した製品の販売機会が拡大することが予想されます。

今後は、事業と連携して対応アクションを策定し、経営・事業計画に反映させることでバリューチェーンを通じたリスクの緩和に努めるとともに、機会創出につながる取り組みについて、順次開示していきます。

シナリオ分析の前提情報やガバナンス、リスクマネジメント、指標と目標など、気候関連リスクと機会の評価の詳細については、「気候関連財務情報開示レポート」、「サステナビリティレポート2021」をご参照ください。

サステナビリティに関する外部評価やグローバルイニシアチブへの賛同状況は下記をご覧ください。