環境認識と「WIN 2023」初年度の位置づけ
「WIN 2023」策定時(2020年8月)は、2021年下期~2022年上期には新型コロナウイルス感染症の影響が収束に向かい、経済活動が本格的な回復に向かうと想定していました。しかし、変異株による影響から、グローバルで経済活動が停滞し、企業収益や雇用情勢の悪化などによる消費マインドの低下など、厳しい状況が続きました。特に日本市場は小売店の時短営業や外出自粛などによる来店客数減少に加え、インバウンド需要も低迷しました。一方、欧米などではワクチン接種の普及が進み、回復基調が見られました。
こうした中、「WIN 2023」初年度である2021年を「変革と次への準備」の期間と位置付け、With/Afterコロナへの対応・準備をしながら、事業ポートフォリオの再構築を中心とした構造改革および財務基盤の強化に取り組みました。
中でも、事業ポートフォリオの再構築に向けては、パーソナルケア事業やプレステージメイクアップ3ブランド(「bareMinerals」「BUXOM」「Laura Mercier」)の譲渡、「Dolce&Gabbana」グローバルライセンス契約解消などを実行しました。
2021年の業績概況
重点領域であるスキンビューティーブランドは、積極的な戦略投資を進めた結果、2桁成長を実現しました。Eコマースでは、プレステージを中心に確実に伸長し、Eコマース売上は20%以上の増収となりました。地域別では、日本を除く各地域で売上高が回復し、特に米州・欧州では力強い回復を見せ、市場環境が厳しい日本をカバーしました。
この結果、売上高は前年比12.4%増の1兆352億円、現地通貨ベースでは前年比7.8%増、事業譲渡影響を除く実質ベースでは前年比11.9%増となりました。
営業利益は、スキンビューティーへの集中と事業譲渡によりプロダクトミックスが改善したほか、市場環境の変化に合わせた迅速なコストマネジメントや構造改革による固定費削減が奏功し、前年比177.9%増の416 億円となりました。中でも、米州・欧州においては、プロダクトミックス効果や販売事業の組織最適化や固定費削減などにより、当該2地域で合わせて250億円以上の利益改善が図られ、全社の収益性回復に大きく貢献しました。
また、生産設備やDXなどへの成長投資を継続する一方、事業譲渡や在庫削減を通じたキャッシュ創出により、フリーキャッシュフローは+1,866億円となりました。
親会社株主に帰属する当期純利益は、「Dolce&Gabbana」に係る商標権の減損損失およびプレステージメイクアップ3ブランドの譲渡に伴うのれんの減損損失を計上した一方、営業増益およびパーソナルケア事業譲渡による利益計上などにより、前年比541億円増益の424億円となりました。
スキンビューティーブランドの概況
新型コロナウイルス感染症の影響などによる厳しい環境下ではあるものの、スキンビューティーブランドは力強い成長軌道を継続しています。グローバルブランド「SHISEIDO」や「クレ・ド・ポー ボーテ」、「イプサ」は2019年水準に回復したほか、「Drunk Elephant」は展開地域を拡大、「アネッサ」は日本市場のトップシェアを維持しています。
2021年主要ブランド 売上高前年比
お客さまニーズの多様化に対応した、従来とは異なるカテゴリーのブランドも伸長しており、「樹木との共生」をテーマにした「BAUM」や2021年10月より中国でも展開した「THE GINZA」が順調です。また、ヤーマン社との協働でスキンケアと美容機器を融合したエイジングケアブランド「エフェクティム」も好評を博しています。
2022年の重点方針
2022年も新型コロナウイルス感染症の感染拡大をはじめとする不透明な市場環境となりますが、こうした外部環境の変化に対応しながら、中長期経営戦略「WIN 2023 and Beyond」に基づき、引き続きプレミアムスキンビューティー事業やデジタルを中心としたビジネスモデルへの転換など、成長領域への投資を強化していきます。同時に、欧米事業のさらなる収益性改革を含め収益基盤の再構築を進めていきます。
2022年の重点方針は以下のとおりです。
- スキンビューティーブランド育成、M&A機会探索
- 欧米収益性改革の続行
- 日本・中国事業 下期の本格回復を目指す
- 中国・トラベルリテール 成長基盤を維持
- 全社DX加速
- 構造改革継続、収益力・生産性の拡大
- 長期取り組み強化(ESG、サプライネットワーク、R&D、FOCUS、人財)
なお、コロナ影響からの市場回復の見通しとしては、日本は2022年下期に回復、中国は期初ロックダウン影響があるものの、成長を継続する想定としています。米州はスキンケアですでに2021年にコロナ前の水準に回復している一方、メイクアップは2023年に回復する見込みです。また、欧州は2022年にコロナ前の水準に回復、アジアパシフィックとトラベルリテールは2022年中に回復することを見込んでいます(2022年2月の決算発表時点)。
2022年の見通し
2022年12月期の通期連結業績・配当予想については、2021年12月期通期決算発表時(2022年2月9日)に公表しました。詳細はこちらよりご参照ください。
当社は、グループ内の会計基準統一によるグローバル経営のさらなる推進、ならびに資本市場における国際的な財務情報の比較可能性の向上などを目的とし、2022年12月期第1四半期より、従来の日本基準に替えて国際財務報告基準(IFRS)を任意適用する予定です。なお、同基準による2022年12月期の連結業績予想につきましては、2022年第1四半期の決算発表の際に公表予定です 。
(2022年5月追加)
2022年12月期 第1四半期決算発表時(2022年5月12日)にIFRS基準での2022年12月期の通期連結業績予想を公表しました。詳細はこちらよりご参照ください。
(2022年8⽉追加)
2022年12⽉期 第2四半期決算発表時(2022年8⽉10⽇)に2022年12⽉期の通期連結業績予想を修正しました。詳細は こちらよりご参照ください。