指名・報酬諮問委員会 委員長からのメッセージ
資生堂が変化に対応し、企業価値を最大化し、社会に貢献していく。そのために、最大限努力することが社外取締役の使命です。
社外取締役は、これまでの経験を活かし、また客観的かつ独立性を有した立場から経営を監督するとともに、業務執行にかかる専門的な知見・アドバイスを提供することで、企業価値向上と株主利益を追求する使命を担っています。同時に、従業員、消費者、地域などの、社会の利益増大も両立する必要があり、ステークホルダー間のバランスをとっていくことも社外取締役の責務です。そのため、サステナビリティやESGの取り組みを後押ししていくことも重要な役割となります。
一方、社外取締役は事業への理解が初めから十分にあるわけではありません。資生堂では、エグゼクティブオフィサーや事業責任者から、社外取締役に対して定期的に充実した事業報告や課題共有が行われるほか、CEOの魚谷氏からも、直面している経営課題や、議論したい内容をタイムリーかつ率直に伝えていただいており、事業実態・経営課題の理解に役立っています。察知した環境変化や課題認識などを詳細に共有いただけることで、取締役会での質の高い議論が実現できています。
また、現場を知り、従業員の声を聞くことも、社外取締役として欠かしてはならない重要な役割です。2021年には、社外取締役・監査役が、新設の大阪茨木工場・西日本物流センターを訪問しましたが、引き続きこうした活動を続けていきたいと思います。加えて、改訂コーポレートガバナンス・コードで言及されている「社外取締役と資本市場の対話」なども、今後、取り組むべき項目だと考えています。
指名・報酬諮問委員会ではCEOのサクセッションプランが最大のテーマです。
企業は経営者によって大きく変わります。役員の選解任・評価というガバナンスにおける重要な要素を担うのが、社外取締役と代表取締役CEOで構成された指名・報酬諮問委員会です。
資生堂では従来、役員指名諮問委員会と役員報酬諮問委員会を設置していましたが、評価(報酬)と指名は表裏一体の関係であり、構成メンバーも同一であることから、2021年1月より両委員会を統合しました。私は、2021年9月より、前委員長の退任に伴い、委員長の任にあたっています。企業経営経験のない身としては非常に重責を感じていますが、ファシリテーション役として、質の高い議論が行われ、互いに納得感を持って意見が集約できる場となるよう努めているところです。
また、委員長として重視していることは、社外取締役と同様に独立役員として会社を監督している社外監査役との議論です。資生堂の取締役会では、社外監査役も積極的に発言するよう議長が差配しており、役員の指名・報酬に関しても、取締役会や社外役員ミーティングなどで社外監査役とも活発な議論を行えるようにしています。
指名・報酬諮問委員会の最大のテーマはCEOのサクセッションプランです。資生堂では、何年も前から具体的にCEOサクセッションの議論を重ねており、時間をかけて慎重に評価・検討を行っています。
現CEOの魚谷氏は、実績・経験・ケイパビリティ、いずれの面でも素晴らしい経営者で、その後任となる適当な候補者を選定・育成していくのは容易ではありません。だからこそ、指名・報酬諮問委員会の果たすべき役割は大きいと考えています。CEOに求められる要件を一つひとつ精査し、引き続き、サクセッションプランの進行に注力していく所存です。
また、役員報酬の面では、社会環境の変化や経営課題に応じて、基準や設計内容を検証し続けることも重要です。例えば、現在の業績連動報酬(長期インセンティブ型報酬)では、経済価値と社会価値の両面から評価できる設計としており、ESGに関する社内外の複数の指標や、株主との利益共有の観点から連結ROEなどを評価指標に加えています。
2022年からは、サステナブルな成長を実現するために社会価値を意識した事業活動がより重要になると考え、社会価値に関する指標の評価ウェイトをこれまでの10%から20%まで高めたうえで、サステナビリティ戦略の中で重要な取り組みとなるCO₂削減を環境指標として新たに設定しています。
生活者の変化を踏まえた、ビジネスモデルの再構築と経営改革が不可欠です。
「WIN 2023 and Beyond」の策定においては、取締役会で何度も議論を重ねました。
新型コロナウイルス感染症の拡大により経営環境が激変する中、収益力が低下し、経営改革が不可欠でした。生活者の価値観や購買行動の変化に対応したビジネスモデルを再構築しなければなりません。
重点課題は、人的生産性の向上です。
資生堂が今後、グローバルで成長していくためには、収益性を向上し、競争力を高めなければなりません。従業員1人当たりの営業利益などを見ても、競合企業とは乖離があります。販管費比率や投下資本の効率性などもさらなる改善が必要です。そのため、DXやコスト削減施策に加え、「選択と集中」、すなわち、 「スキンビューティーカンパニー」としての基盤を盤石にするための事業ポートフォリオの見直しや成長領域への積極的な投資などの断行が不可欠です。
そして、これらの改革の鍵を握るのが、従業員の意識改革とモチベーションです。痛みを伴う改革も含まれるため、従業員と危機感を共有し、改革の当事者となってもらわなければなりません。
しかし、意識改革、風土改革は最も難しいテーマでもあります。言うは易し、行うは難しです。
資生堂の改革は続きます。継続的な議論を行い、経営者を支え、サポートしていきます。
こうした中、2021年度は事業構造の再構築を大胆に実行しました。非常に難しい改革でしたが、複数の事業譲渡や構造改革を同時並行かつきわめて短期間で実行することができました。魚谷氏はじめ経営陣は、従業員とも丁寧なコミュニケーションをとっており、戦略共有のためのさまざまな施策を展開しています。従業員の理解度・納得度が向上し、意識改革は進みつつあると感じています。
さらに、2021年末からは、2030年に向けたボトムアッププロジェクト「Project Phoenix」もスタートしました。従業員一人ひとりが前例にとらわれずアイデアを出し、資生堂の未来を創る主役となっていくことが狙いです。意識改革の本流となる取り組みであり、全面的にサポートしていきたいと考えています。
資生堂の改革は続きます。
資生堂は、「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」という企業使命のもと、2030年に「PERSONAL BEAUTY WELLNESS COMPANY」として、生涯を通じて一人ひとりの自分らしい健康美を実現する企業となることを目指します。世界中の人々が幸福を実感できる社会を実現すべく、如何なる価値を提供し得るか、そしてそのためには何を為すべきか。これからも取締役会での議論は続きます。そして、その改革を進める経営者を全力で支え、後押ししていきます。
2022年4月
新任社外取締役からのコメント
社外取締役
チャールズ D. レイク II
150年という歴史の中で紡がれた独自の伝統や文化を価値創造の源泉として、お客さまや社会に価値を提供してきた資生堂の一員となれましたことを大変嬉しく思います。
近年、グローバル市場の競争環境は、地政学リスクをはじめ、不安定性、不確実性、複雑性、曖昧性が更に高まり、ステークホルダーの要請も日々進化しております。
これまでの日米における様々な立場での活動や経験を通して学んできたことを生かし、グローバルな視点を含む経営に対する助言、適切な執行の監督、ガバナンスのさらなる強化に向けて独立社外取締役としての職責を全うし、新たな価値の創造による企業価値の向上に貢献できるよう力を尽くして参ります。
社外取締役
得能 摩利子
創業150周年を迎える年に社外取締役として加わる事になり、大変光栄に思っております。
私は長年にわたり、海外ラグジュアリーブランドビジネスに携わってきました。仕事をした企業もフランス、イタリア、アメリカの複数にわたります。
それらで得たブランディングや経営に対する知見や経験を活かして、資生堂の更なる世界の市場での活躍をサポート出来ればと考えております。
加えて10年近くになる、異なる分野の複数の日本企業の社外取締役としての経験を活かして、資生堂の中長期的発展と企業価値の向上、そしてそれを支える肝である、ガバナンスの強化に少しでも貢献が出来る様、努力してまいります。