資生堂の文化的資産
資生堂が長きにわたり受け継ぎ、蓄積してきた「文化」は、当社の独自性を創造する上で重要な経営資産となっています。その資産である文化情報の発信は、企業理念である「美しい生活文化の創造」を具現化する活動の1つであると捉えています。同時に、文化的資産は、社員の意識や発想にも大きな影響力を持つと考えています。
資生堂の歴史は、1872年に東京・銀座に創業した日本初の洋風調剤薬局から始まりました。その後、化粧品事業に軸足を移し、生活と価値観の近代化が進む日本において、西洋の最先端の技術やトレンド、先駆的なアイデアを取り入れた高品質の化粧品を販売するなど、その時代の文化や女性の生き方を見つめながら常に新しい美を提供してきました。こうして140年以上にわたり培ってきた、ものづくりに対する姿勢、イノベーティブな発想や美意識は、「日本発のグローバルビューティーカンパニー」として世界で勝つための、資生堂ならではの強みです。これらを、未来の美を創造する社員に継承し、新たな価値創造につなげていきます。
文化的資産をイノベーティブな発想の源泉に
創業以来の商品や宣伝制作物、資料などの文化的資産を、資生堂企業資料館で収集・保管するだけでなく、将来にわたり有効活用できるよう検証・研究を行ってきました。この成果を活用し、資生堂の未来を創造するための新たな取り組みが2018年よりスタートしました。具体的には、グローバル化が進み課題が多様化する現在において、継承すべき「資生堂の強み」とは何か、調査・研究を行いました。その結果をもとに、世界で勝ち抜くための競争力の源泉となる要素「ESSENCE OF SHISEIDO」を抽出し、これを継承するツールとして「Questions for the Future(未来年表)」を制作、資生堂銀座ビルに展示しています。歴史の中で、資生堂が各時代にどのような課題解決をしてきたかに想いを馳せ、商品やサービスを通じて提供した価値を「問い」に対する「答え」として編集しています。歴史を踏まえ、未来に向けた価値創造の発想を得るツールとして活用することで、社員のイノベーティブな発想を引き出し、革新的なアウトプットの実現を目指します。
ESSENCE OF SHISEIDO
創業から続く「資生堂の強み」を未来へとつなぐために調査・研究し抽出した、3つのエッセンス。
それは、変わることのない「資生堂人としてのあり方」でもあります。
3つのエッセンス
具体的な価値創造活動の事例
1.資生堂の文化的資産を、未来の価値につなげる
2018年末に竣工予定のグローバルイノベーションセンターは、基礎・基盤研究や新領域の研究を担う、当社の研究開発の拠点となります。多様な知と人が融合することにより、新しい価値の創造を目指す同センターの1~2階は、一般のお客さまが自由に利用できるコミュニケーションスペースとしています。2階にはミュージアムを設置し、時代をつくってきた資生堂の歴代商品の展示や、インタラクティブな科学的体験を通じて、資生堂のものづくりへのこだわりと美意識を伝えます。また、研究員がワークショップ等を通じてお客さまと直接コミュニケーションをとり、そこからインスピレーションを得ることも検討しています。
2.世界に広がる資生堂の「おもてなしの心」
「プレステージファースト戦略」により、大きく成長している高価格帯のブランドは、主にビューティーコンサルタント(BC)によるカウンセリングを介して販売しています。世界で約2万名のBCは、プロフェッショナルとして美容に関する技術や知識を習得するだけでなく、日本文化を背景とした「おもてなしの心」を学び、一人ひとりのお客さまに寄り添いながら、心まで豊かになっていただくための応対を日々実践しています。店頭でのコミュニケーションを通じて、ブランドの価値をお客さまに直接伝える役割を担うBCは、ブランドのプレゼンスを高める上でも、欠かせない存在となっています。
3.「新しい美」の創造・発信
当社には、40名以上のヘアメイクアップアーティストが在籍しています。自社内にこれだけ多数のアーティストを擁する化粧品会社は稀で、宣伝広告やCMでのヘアメイクを行うほか、パリやニューヨーク、東京コレクションといったファッションショーのヘアメイクなど、ビューティーやファッションの最前線で美を創造・発信する活動をしています。また、市場のトレンドやお客さまの嗜好・化粧行動の研究を行い、積極的に社内外にフィードバックしています。こうした活動をメイクアップ製品などの商品開発にも活かし、時代と市場ニーズを捉えた新しい美の創造に貢献しています。