• TOP
  • CFOが語る財務戦略

CFOが語る財務戦略

キャッシュ・フロー創出力と資本効率を高め、中長期での企業価値向上を実現します 執行役員常務 最高財務責任者 直川 紀夫 キャッシュ・フロー創出力と資本効率を高め、中長期での企業価値向上を実現します 執行役員常務 最高財務責任者 直川 紀夫 キャッシュ・フロー創出力と
資本効率を高め、中長期での
企業価値向上を実現します
執行役員常務
最高財務責任者直川 紀夫
メッセージ動画を見る

事業基盤の再構築と位置づけた中長期戦略「VISION 2020」の前半3カ年を終え、さらに成長を加速するための新たな3カ年計画がスタートしました。これまでは、投資強化、プロダクティビティ強化をはじめ、サステナブルな成長に向けたさまざまな改革を実行しました。その結果、3カ年CAGRで9%の売上成長を実現すると同時に、2017年は営業利益も過去最高を更新し、9期ぶりの増配を実現できました。

安定的なキャッシュ創出で
重点領域への投資を強化

2020年以降も持続的な成長を確かなものとするため、人材、サプライチェーン領域、研究開発、ITなどの重点領域に対して、2018年からの3カ年累計で3,000億円超の成長投資を行います。この投資を支えるには、潤沢なキャッシュ・フローの創出が求められますが、2017年のEBITDAは、1,000億円を超えるなど、キャッシュ創出能力は着実に高まっています。2017年から2020年までの4年間で、累計3,500億円超の営業キャッシュ・フロー創出を見込んでいます。

コスト構造とバランスシートの
変革で資本効率を向上

資本効率の向上にあたっては、トップラインの拡大とコストストラクチャーのさらなる変革を通じて、営業利益率10%超を実現します。また、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)100日以下となる適正在庫管理の徹底などを通じて、バランスシートマネジメントも同時に進めます。ROEは、株主資本コスト5%を上回る14%超を、投下資本利益率(ROIC)は、加重平均資本コスト(WACC)4%を上回る12%超の実現を目指します。

中長期視点で株主の
皆さまへの還元を拡充

株主への利益還元については、配当による直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」を目指しています。配当金の決定にあたっては、連結業績やフリー・キャッシュ・フローの状況を一層重視するとともに、2018年より資本政策を反映する指標の1つとして、自己資本配当率(DOE)を採用し、会社業績の向上に伴う長期安定的かつ継続的な還元拡充を実現します。

企業価値向上への取り組み

企業価値向上への取り組み
  • ※1 ROIC(投下資本利益率)=営業利益×(1-実効税率)/(有利子負債+自己資本)
  • ※2 CCC:キャッシュ・コンバージョン・サイクル(日)=売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数(各指標の期中平均を使用)
  • ※3 株主資本コストおよびWACC(加重平均資本コスト)については当社試算

売上成長と収益性向上に向けて

1.ROE向上

資生堂はオーガニックな成長を通じてROEを高め、2020年に14%超を目指します。そのためのバリュードライバーは売上高当期純利益率(ROS)です。各地域本社の自立経営推進に伴う営業利益率の向上等により、6-7%に増加させる計画です。総資産回転率は、運転資本の改善や遊休資産の処分等を進め、2017年並みの1.0-1.1回転を維持します。

2020年ターゲット
2020年ターゲット

2.さらなるコストストラクチャーの変革

優先すべきは持続的な売上成長を通じた利益の最大化です。売上成長に伴い固定費比率を低下させるとともに、ブランドエクイティの向上に取り組むことで、マーケティングROIを高め、利益拡大に拍車をかけていきます。加えて、収益性やリピート率の高いプレステージブランドやスキンケアカテゴリーの強化により原価率を改善し、営業利益率10%以上を創出できるコスト構造を早期に実現します。

対売上高比率(%)
対売上高比率(%)

3.マーケティング投資強化とコスト削減

今後の成長モメンタムをさらに加速すべく、2020年までの3カ年で累計1,200億円マーケティング投資を強化します。このうち重点的に注力するデジタル関連に250億円、お客さまとの接点として重要な店頭カウンター関連に150億円、PR・イベント関連に150億円の投資を予定しています。また、投資原資を捻出すべく、3カ年累計で400億円のコスト削減を目標とします。サプライチェーンを含む原価やマーケティングコストの効率化に加え、社内のシステム統合や集約通じた生産性向上を図ります。

マーケティング投資強化
マーケティング投資強化
生産性の向上によるコスト削減
生産性の向上によるコスト削減

4.地域本社別営業利益率目標と取り組み

地域本社別営業利益率目標と取り組み

※米州、欧州の営業利益率目標は、のれん等償却前利益率

資本効率を高める
キャッシュ・フロー経営

5.適正在庫管理によるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善

財務面でグローバル企業と比肩するには、収益性の改善だけでなく、キャッシュ・フローの最大化に向けて資産効率の改善にも取り組む必要があります。そのため、キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)を重要な財務指標として位置づけました。現在、M&A等で取得したブランドの製品在庫の増加や、品切れリスクに備えた一部原材料の確保により、在庫水準が高まっている状況にあります。これに対し、より適正な在庫水準を目指し、CCC100日以下を2020年の目標とします。具体的には、大幅なSKUの削減による効率性改善、SKU別の効率性管理徹底に加え、調達・生産・供給にまたがるサプライチェーン全体のリードタイムの短縮などを行うことで、生産性を高めていきます。

適正在庫管理によるキャッシュ・コンバージョン・サイクルの改善

6.サステナブルな成長に向けた積極投資

事業からキャッシュを安定的に創出する力は着実に高まっており、このキャッシュ・インを原資として、持続的成長に向けた重点領域へ3カ年累計で3,000億円超の投資を計画しています。中でも、拡大する需要に対して適切な量をタイムリーに供給できる体制を構築すべく、新工場やサプライチェーンマネジメント(SCM)全体への投資を重点的に強化します。また、将来の成長に不可欠なイノベーションを創出する研究開発領域の強化を図るべく、グローバルイノベーションセンターを2018年に稼働させるほか、お客さまとの接点となる店頭カウンターへの投資も強化します。

重点領域への投資拡大
重点領域への投資拡大
設備投資計画
設備投資計画

7.目指すべきバランスシート

2020年に向けて3,000億円超の投資を予定しているため、総資産は拡大します。一方、現預金は成長投資を最優先にしながらも売上高1.5カ月分の健全な手元流動性を維持し、在庫は適正な水準に向けて圧縮していきます。
 負債と資本のバランスは、健全なバランスシートを維持し、有利な条件で資金調達を実施するために格付シングルAレベルを維持。その上で、投資する資金の性質や市場環境を踏まえ、デット・エクイティ・レシオ0.3、EBITDA 有利子負債倍率で1.0倍を目安とします。これらバランスシート、キャッシュ・フローのマネジメントを通じて、資本コストを上回るROIC12%超を実現していきます。

目指すべきバランスシート

8.株主還元方針

直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」という考えに基づき、持続的な成長のための戦略投資を最優先し、企業価値の最大化を目指します。また、資本コストを意識しながら投下資本効率を高め、中長期的に配当の増加と株価上昇につなげていきます。配当金の決定にあたっては、連結業績とフリー・キャッシュ・フローの状況を重視し、資本政策を反映する指標の1つとして自己資本配当率(DOE)2.5%以上を目安とします。当社の成長とともに、ROEの向上に合わせた長期安定的かつ継続的な還元の拡充を実現します。なお、自己株式取得については、市場環境を踏まえ、機動的に行う方針としています。

1株当たり配当金とROE
1株当たり配当金とROE
直接的な利益還元と
中長期的な株価上昇による
「株式トータルリターンの実現」
直接的な利益還元と中長期的な株価上昇による「株式トータルリターンの実現」