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CEOが語る経営戦略

より力強く、スピード感のある成長を続けます 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 魚谷 雅彦 より力強く、スピード感のある成長を続けます 代表取締役 執行役員社長 兼 CEO 魚谷 雅彦 より力強く、
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中長期戦略「VISION 2020」世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーへ 中長期戦略「VISION 2020」世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーへ

2015-17 事業基盤の再構築 2018-20 成長加速の新戦略 経営目標(2020年)

2020年に目標としていた売上高1兆円超を3年前倒しで達成し、営業利益も過去最高を記録しました。2018年からの3カ年は、「事業基盤の再構築」から「成長加速の新戦略」という飛躍のステージに入ります。

資生堂の輝く未来に自信と確信を得た2017年

2017年は、日本、中国、トラベルリテールを中心に全地域で売上を伸ばし、資生堂グループの売上高は 1兆円超、現地通貨ベースで前年比 16%増となりました。また営業利益も前年比で 2倍以上伸長し、過去最高の 804億円を記録しました。売上高が大きく拡大したことに伴う差益増により、相対的に人件費・経費比率等が低下しました。当初計画通り、マーケティング投資を拡大させながら収益力を強化することができました。
 当期純利益は、米国のベアエッセンシャル Inc.に関わる無形固定資産等の減損損失を特別損失として計上したことが大きく影響し、減益となりました。同社は 2010年の買収以降、当初計画していたブランドの成長を実現できていませんでした。 2017年は、「 VISION 2020」における「事業基盤の再構築」の最終年度であることから、現実を直視し、市場やお客さまの変化に合わせた収益計画に基づく再評価を行い、最終的に減損損失を計上しました。
 これらの結果、 2017年は中長期戦略「 VISION 2020」で掲げる、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーへ」の飛躍に向けた事業基盤が確実に整った 1年になりました。

2017年 業績面での主な成果
  • 売上高1兆円の目標を3年前倒しで達成
  • 過去最高の営業利益を記録
  • 世界全地域で売上を拡大
  • マーケティング投資を
    拡大しながら、収益性を向上
3年間の改革は成果へ
  • 注1. 2013年3月期は消費税増税前の駆け込み需要影響、2014年3月期は消費税増税後の反動減影響、中国・アジア流通在庫改革影響、米州の物流拠点トラブル影響を除く
  •  2. 2015年12月期より、当社および3月決算であった連結子会社は、決算日を3月31日から12月31日に変更。この変更に伴い、当社と全ての連結子会社の決算日が統一され、2015年12月期においては、当社および3月決算であった連結子会社は4月1日から12月31日までの9カ月間、12月決算である連結子会社は1月1日から12月31日までの12カ月間を連結対象期間としている

「スピード」と「成長」にこだわった3カ年の成果

2015年からスタートした中長期戦略「VISION 2020」は、2020年までの前半 3カ年を「事業基盤の再構築」の期間と位置づけ、さまざまな改革を実行してきました。国内外の各事業の課題解決に徹底的に取り組むとともに、累計1,100億円を超えるマーケティング投資を強化しました。
 この3カ年で実現した成果は多数あり、2017年の業績拡大のみならず、2020年に向けた成長を加速する基盤を強化しました。特にマネジメント面では、「世界で勝つ」ためのグローバル経営体制を整え、マーケティング面では「プレステージファースト戦略」を推進したことが大きく業績を牽引しました。
 2016年から導入したグローバル経営体制は、グループCEOである私と、6人の地域CEOが、それぞれの地域に適したマーケティング活動や機動的な意思決定を行うことで、お客さまの購買行動や市場変化への対応力を高めることを狙いにしています。各地域CEOは、経営の幅広い領域で権限を持つ一方、売上・利益への責任も併せ持つ仕組みです。

 同体制のもう1つの特徴が、「センター・オブ・エクセレンス」を導入したことです。これは、スキンケアは日本、メイクアップとデジタルは米州、フレグランスは欧州といった、各カテゴリーで世界の最先端の地域において、当社のグローバルな戦略立案・商品開発をリードするというものです。こうしたグローバルでの新たな経営体制の稼働により、2017年は全地域での売上伸長を実現しました。
 さらに2018年からは「Connected Multi-Value Creation体制」に進化します。これは、日本の本社が各地域を管理・コントロールするのではなく、それぞれの地域本社が、単なる販売拠点としての役割を越え、価値創造の拠点になることを目指します。それぞれの地域で得た知見は、全世界で共有し、マーケティングに活かしていきます。
 マーケティング面での最優先の取り組みは「プレステージファースト戦略」の推進です。これは、資生堂のブランド価値や収益を牽引する領域へマーケティング投資を集中し、成長を加速させるというものです。こうした選択と集中により、フレグランスを含むプレステージ領域の売上高は、2015から17年の3年間で1.5倍まで拡大しました。売上高構成比も43%から53%まで高まるなど、収益拡大に大きく貢献しました。

プレステージ + フレグランス
プレステージ + フレグランス
Connected Multi-Value Creation 体制 センター・オブ・エクセレンス(COE)のさらなる進化

 しかし、グローバル競合と比較すると、当社はまだまだやるべきこと、積み残している課題があります。過去の成果に満足することなく、謙虚な自信(humble confidence)を持ち、2018年以降も着実に成長を実現します。

2015 - 17年の成果
  • グローバルプレステージブランドの成長
  • ブランド・事業ポートフォリオの強化
  • 日本事業の成長性回復
  • 中国・トラベルリテール事業の成長基盤構築
  • 組織統合・効率化
  • グローバル経営体制の構築

「新3カ年計画」を策定・スタート

2018年3月、当社は「新3カ年計画」(2018-20)を発表しました。これからの3カ年の成長を実現する5つの重点戦略「Building for the Future」では、世界各地域のお客さまのニーズに対応したブランド戦略の徹底、これまで以上に積極的なマーケティング投資の継続、デジタライゼーションの加速や新領域開発、イノベーションによる新たな価値創造を進めていきます。そして、人材こそが全ての価値を生み出す源泉と考え、人材への投資強化を進めます。さらに、グローバル経営体制のさらなる進化を通じ、「VISION 2020」の実現に向け邁進します。
 2020年の経営目標は、基本計画に加え、サプライチェーンの課題解決を踏まえたストレッチ目標も同時に公表しました。これらの経営目標を達成することは、決して容易ではありません。より高い目標を目指すことで、新しい取り組みや変革が進むことを期待しています。

新領域の開発
新領域の開発

「新3カ年計画」の概要 2018-20年 5つの重点戦略「Building for the Future」 「新3カ年計画」の概要 2018-20年 5つの重点戦略「Building for the Future」

  • ブランド・事業のさらなる「選択と集中」
  • デジタライゼーションの加速・新事業開発
  • イノベーションによる新価値創造
  • 世界で勝つ、人材・組織の強化「PEOPLE FIRST」
  • グローバル経営体制のさらなる進化
2018 - 20年経営目標

5つの重点戦略

1. ブランド・事業のさらなる「選択と集中」
1. ブランド・事業のさらなる「選択と集中」

「プレステージファースト戦略」とは、当社の強みであるプレステージ領域を第一優先に、グローバルに強化するものです。投資するブランドの選択と集中を行うことにより、市場を上回る成長を実現します。当社のブランドポートフォリオの中では、「SHISEIDO」、「クレ・ド・ポー ボーテ」、「NARS」、「bareMinerals」、「イプサ」、「Laura Mercier」、「Dolce&Gabbana」に投資を集中し、成長を実現していきます。加えて、中国をはじめとするアジア地域では、コスメティクス・パーソナルケアブランドのうち、「メイド・イン・ジャパン」ブランドの「エリクシール」、「アネッサ」、「SENKA」、「インテグレート」を集中育成します。

2. デジタライゼーションの加速・新事業開発
2. デジタライゼーションの加速・新事業開発

全世界でデジタルマーケティング・Eコマースを強化します。Eコマース売上高構成比率を、2017年の8%から、2020年には15%(中国は40%)まで高めます。同時に、Eコマースサイトと店頭の顧客データの統合など、CRMの構築に取り組みます。
 新事業開発では、お客さま一人ひとりのニーズに合わせた価値提供(パーソナライゼーション)を実現するため、IoTなどのデジタル技術と既存ビジネスを掛け合わせた、新しい商品・サービスを生み出します。

3. イノベーションによる新価値創造
3. イノベーションによる新価値創造

これまでに蓄積してきた当社の知見と、M&Aなどによる新しいテクノロジーや専門性の高い人材が融合し、相乗効果を発揮します。これにより、化粧品のみならず、人工皮ふ、毛髪・皮ふ再生、先端美容など、新しい価値を創出します。イノベーション力を強化するために、今後も研究開発投資を強化し、2020年には売上高に占める研究開発費比率は3%、研究所員数は1,500人まで強化します。

4. 世界で勝つ、人材・組織の強化「PEOPLE FIRST」
4. 世界で勝つ、人材・組織の強化「PEOPLE FIRST」

今後の資生堂をリードする次世代リーダーの育成に向けた研修プログラム、2018年10月より取り組む英語公用語化に向けた研修の実施などにより、やる気のある多くの社員が自らのレベルアップに積極的に取り組んでいます。また、グローバルラーニングセンターをアジアを皮切りに各エリアで順次開設する予定です。

5. グローバル経営体制のさらなる進化
5. グローバル経営体制のさらなる進化

2016年にスタートしたグローバル経営体制では、各地域本社のCEOに責任と権限を委譲し、地域の経営を任せることで、市場環境に迅速かつ適確に対応しています。2018年からは、さらに進化させ、それぞれの地域が価値創造の拠点となる「Connected Multi-Value Creation 体制」をスタートします。それぞれの地域で得た知見は、全世界で共有し、マーケティングに活かしていきます。

解決すべき課題と対応策

「新3カ年計画」における経営目標を達成するには、直視すべき課題もあります。第1に、安定した商品供給体制の構築、第2に米州および欧州事業における収益性の改善です。すでにこれらの課題への対策は講じていますが、今後は成果を着実に示すことが大切だと考えています。
 資生堂ではこの数年の業績の急成長、とくに日本事業の急回復、アジアや中国における「メイド・イン・ジャパン」製品の需要増により、商品供給がひっ迫している状況となっています。このため短期的には、既存3工場への設備投資、人員体制の強化、生産品種の大幅な絞り込み、外部委託先の拡大に加え、需要拡大と連動した原材料調達の充実に取り組んでいます。
 さらに中期的には、自社工場の生産能力増強に向け、新工場の建設を進めています。2019年には那須工場(栃木県)が、2020年には大阪新工場(大阪府)が立ち上がる予定です。
 当社では、この一連の供給体制の再整備に向け、3カ年で累計1,300億円を投資する計画です。

供給体制の整備
  • 既存工場の設備増強
  • 外部委託先との協業
  • 那須・大阪 新工場設立
  • 品質管理の再強化
  • 製造現場社員の処遇向上
  • 有期契約社員 1,200人を正社員化

3カ年累計投資額1,300億円

 欧米事業は、2020年の営業利益率10%超の達成に向け、確実に収益性を改善していきます。米州では、「bareMinerals」の再生に向け、販売チャネルの最適化、固定費の見直し、デジタル・Eコマース強化を進めます。欧州は、2017年より自社生産が本格化した「Dolce&Gabbana」の売上拡大、「narciso rodriguez」の持続的成長を目指します。加えて、化粧品・フレグランス事業を統合したOne Shiseidoの組織をさらに最適化していきます。

欧米 収益の改善
米州
「bareMinerals」再生
  • 販売チャネルの最適化
  • 固定費の見直し
  • デジタル・Eコマース強化
欧州
「Dolce&Gabbana」の売上拡大、
「narciso rodriguez」の持続的成長
One Shiseidoの組織をさらに最適化

 2018年は、右記の通り引き続き増収増益を計画するとともに、配当金については、成長投資を最優先に据えながら、2.5円増配の30.0円を予定しております。

2018年 通期見通し(2018年3月5日発表)
2018年 通期見通し(2018年3月5日発表)

ESG重視の経営で企業価値を創造

資生堂は、中長期戦略「VISION 2020」で、将来のありたい姿として「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニーへ」を掲げています。100年先も持続的に成長を続けるために、世界中のお客さま・社会から信頼され、必要とされる会社を目指しています。そして、我々の経営ポリシーを「世界で最も信頼されるビューティーカンパニーへ」としました。
 当社は創業以来、「美しい生活文化の創造」という企業使命のもと、美しさを通じて人々が幸せになるサステナブルな社会の実現を目指しています。資生堂の事業活動は、社会価値の創造に大きく貢献できると考えており、「本業を通じた美のイノベーションで社会に貢献」することは、長期視点で企業価値を高めていくことにつながります。
 資生堂の商品は、人々のさまざまな要望や、社会課題の解決に役立つことができます。開発途上国に目を向ければ、化粧品は女性の社会進出を支援する役割を担っています。先進国でも、シニア世代、働く女性、新社会人、アスリートなど、年代やライフスタイルによって「美」に対する要望はさまざまです。私たちは、「ビューティーイノベーション」を通じて人々の「美」や化粧品に対する多様なニーズと課題に向き合い、解決策を提供します。
 「美は、世界を変えられる」。美は世界の人々に幸せな笑顔や健康をお届けし、人のエネルギーや自信を生み出すことができると信じています。当社の社員は、その考えに共感し日々の仕事に向き合っています。この考え方は、国連が主導する「持続可能な開発目標(SDGs)」の理念とも通じるもので、実現に向けて積極的に取り組んでいます。
 これにより、お客さまのみならず、社会、取引先、社員、さらには株主など、全てのステークホルダーに向けて価値創造を実現していきます。

資生堂グループの経営ポリシー 世界で最も信頼されるビューティーカンパニーへ

「世界で勝つ」人材育成に積極投資

ESG視点で、「世界で勝つ」ための競争優位性を考えたとき、資生堂の最大の資産は「人材」です。この数年間の成長や躍進を支えてきたのは、まぎれもなく社員です。人(社員)の力こそが成長を牽引することを、私自身が身をもって体験してきました。 2014年に社長に就任して以来、のべ 6万 5千人の社員と対話を重ねてきました。その一人ひとりが事業や商品にいかに強い想いで向き合っているかを直に知ることができ、勇気をもらいました。これから 50年、 100年と資生堂が持続的に成長を続けるためには、人材の強化は不可欠だと考えています。
 「新3カ年計画」でも、人材成長投資を重点戦略のひとつに掲げ、「PEOPLE FIRST」戦略を推進しています。グローバル人材をはじめマネジメント人材、さらにはプロフェッショナル人材など、将来を担う人材の育成プログラムを充実させました。2018年10月からは、本社の英語公用語化がスタートします。さらに、柔軟なワークスタイルの導入など、多面的な施策で人材・組織を強化していきます。
 加えて、多様な価値観や経験を持った人材が、社内で互いに切磋琢磨することで、新たな発想やイノベーションが創出できるよう、人材の多様性(ダイバーシティ)をさらに推進します。

人材成長投資の強化
  • リーダーシップ開発
  • トレーニング、育成強化
  • 留学制度の復活

  • プロフェッショナル人材の採用
  • グローバルモビリティ
  • アジアラーニングセンター開設(シンガポール)
  • ダイバーシティ推進
  • 英語公用語化
  • 1,700人が英語学習講座受講
  • グローバル人材データベース構築

3カ年累計投資額140億円

2020年のその先へ

資生堂は今、「VISION 2020」の達成を目指すとともに、2030年をも視野に入れた長期視点の経営を推進しています。2030年までには、日本・アジア市場でNo.1、グローバルプレステージ化粧品市場3位以内となることで、売上高2兆円超、営業利益3,000億円超を実現し、グローバル企業として、存在感を高めていきます。
 ステークホルダーの皆さまには、引き続きご支援をいただけますよう、よろしくお願い申し上げます。

2018年 6月

代表取締役
執行役員社長 兼 CEO

魚谷 雅彦

魚谷 雅彦