資生堂の社外取締役に就任して2年が経ちますが、この間、当社は大きな変革を遂げ、同時に業績を急回復させました。社外取締役として、さまざまな接点で資生堂の経営や事業に触れてきましたが、経営陣から現場の社員に至るまで、そのスピード感は目を見張るものがありました。加えて、変革に向けた社内の意識は極めて高く、議論と実践を繰り返しながら目の前の課題を着実にクリアにしてきました。その結果、普通の会社であれば10年かかってもできないことを、この短期間で成し遂げました。これは、「資生堂を良くしたい、そして資生堂を通して日本の社会を良くしたい」という全社員の想いが、1つの力として結集されたからだと思います。
取締役会では、原点に立ち返った議論も行われました。100年を超える歴史の中で、資生堂が持っている本当の強みとは何か。一方、今まで強みと思っていたことでも、実は世の中に先を越され、後れをとっていることがあるのではないか。そうした問題意識で、聖域なしの議論を重ね、資生堂はこれからどうあるべきかの検討も進みました。
取締役会以外にも、さまざまな会議への出席や意見交換を通し、資生堂のポテンシャルを一層強く感じるようになっています。資生堂は、単に化粧品をつくるだけの会社ではなく、世の中に美を提供する会社であり、その先にある健康や活力ある生活を実現する会社です。当社にはまだまだできることがたくさんあり、それを可能にする経営資産も持ち合わせているのです。
私は、マーケティングや医療・ヘルスケアの領域が専門で、化粧品の専門家ではありません。ですから、社会や消費者との架け橋として、資生堂や資生堂の商品が世の中からどう見られているのか、あるいは本来どうあるべきかという視点を提供することが、私が社外取締役として果たすべき役割だと思っています。資生堂が長年にわたって培ってきたブランドやその背景にある企業としての文化や思想は、グローバルに共感してもらえるものです。今後、資生堂が世界に向かってさらに大きく飛躍する上で、これら目に見えない資産が大きく活きていくことと確信しています。