価値創造の源泉研究開発

培われた基盤を活かし、研究開発を通して化粧品を超える価値を創出し続けます 代表取締役 副社長 チーフイノベーションオフィサー 島谷 庸一 培われた基盤を活かし、研究開発を通して化粧品を超える価値を創出し続けます 代表取締役 副社長 チーフイノベーションオフィサー 島谷 庸一

資生堂は常に時代の最先端をいく研究開発を進めてきました。歴史の中で培った、安全性を第一に考えた化粧品技術はもちろんのこと、従来の化粧品を超える価値を創出し続けることで、世界中のお客さまの新たなライフスタイルにつながる「ビューティーイノベーション」を実現していきます。

100年以上の歴史から培われた強み

資生堂は1916年に商品開発や改良を担う「試験室」を開設して以来、美に焦点を当て、東洋と西洋の科学を融合する研究開発を進めてきました。この歴史から、容易に模倣できない資生堂独自の3つの強みを培っています。
まず1点目は安全性です。私たちは、常にお客さまの視点に立ち、真に満足していただける安全で優れた商品とサービスの研究、開発、製造に努めています。法令はもとより、独自の厳しい基準を遵守し、一切の妥協を許さない安全性保証をご提供しています。新たな原料の開発を続ける上では、使用量、使用部位を考慮した上で、原料を厳選し、安全性が明確に確認された原料のみを配合しています。
2点目は、身体に内面深くからアプローチするホリスティック・エイジングケアです。私たちは保温や血行、神経系といった東洋医学の思想にも関連が深い身体の内面と肌の因果関係を、西洋科学的に解明する研究を長年行ってきました。このような東洋と西洋を融合させたアプローチは、主力のスキンケアブランドを支えると同時に、欧米の競合他社と異なる価値の提供につながっています。
3点目は、感性です。化粧品は医薬品と異なり、毎日使いたくなる楽しさ、気持ちよさなどがお客さまの心に届くことが重要です。そこで、私たちは歴史の中で感性にアプローチし、製品価値を高める研究を大切にしてきました。現在は脳科学や心理学の面から、上質で使い続けたくなるテクスチャー(触り心地や肌にのせた時の質感)をつくり出す技術を確立しています。従来、テクスチャーの設計は専門の研究員による主観的な方法が中心でしたが、現在では測定データを使った客観的な指標も取り入れることで、よりお客さまにとって魅力的な使い心地を実現しています。

100年の歴史から培われた強み

3カ年計画(2018~2020年)の進捗

この3年間は、研究開発への投資を戦略的に行い、特に基礎研究力と人材基盤、海外拠点での化粧品開発力を強化することによって、各拠点が現地のニーズを把握し、商品やサービスとして実現する機能を強化しています。さらに、2019年4月には、横浜にグローバルイノベーションセンター(以下、GIC)を設立しました。これまでは主に日本の研究所が基礎・基盤研究を担い、その成果を海外の研究所へつなぐ「ハブ&スポーク体制」を取っていましたが、2019年以降はこの体制をさらに発展させ、GICを含む世界8カ所の研究拠点がそれぞれの知見や研究成果をグローバルに展開する「マルチハブ体制」を目指しています。

グローバルイノベーションセンター(GIC)
グローバルイノベーションセンター(GIC)

研究開発体制

研究開発体制

さらなるイノベーション創出に向けて

今後のイノベーション戦略では、重要なポイントが3つあると考えています。
まず1点目は、生活者を中心に捉えた研究開発を徹底することです。GICには、都市型の研究所という他社に類を見ない特徴を持たせました。生活者のみなさまが毎日訪れてくださるこの環境で、共創の取り組みや、お客さまの潜在的な美容への悩みや要望を理解することを通じて、イノベーションを生み出します。
2点目に、サステナブルな社会に貢献する技術の開発です。私たちは以前より環境に配慮したパッケージの開発などに取り組んできました。現在も海洋ゴミ問題の解決、そして限りある資源の有効活用に向けての取り組み、生分解可能な化粧品パッケージの利用を積極的に進めています。パッケージのみならず、環境への負荷が最小限になる原料調達や処方開発など、独自の技術開発や社外とのコラボレーションを通じて、「美」の価値をつくっていきます。
3点目に、オープンイノベーションの促進と、それに伴う新しい商品やサービスの開発の強化です。当社の強みである安全性、ホリスティック・エイジングケア、感性という3つの軸と、社外の技術の融合による相乗効果を生み出せるように、新たなパートナー企業さま、スタートアップ企業さま、大学・研究機関さまと新しい領域へ挑戦していきます。
また、デジタル技術とGICにおける研究の融合にも注力します。米国で発足したテクノロジーアクセラレーションハブではデジタル技術の開発を行っています。デジタル技術と、GICが培ってきたお客さまの行動や皮膚科学などの多様な研究を融合することで、今後、さらに拡大が見込まれるパーソナライゼーションへの対応を進めることができると考えています。この領域では新たな美容体験やデジタル体験、カウンセリング体験を創出していきます。

AIを活用したGiaran Inc.のバーチャルメイクアップ技術
AIを活用したGiaran Inc.のバーチャルメイクアップ技術
グローバルイノベーションセンター(GIC)
グローバルイノベーションセンター(GIC)

今後も「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の実現に向けた資生堂の研究開発にご期待ください。

代表取締役 副社長
チーフイノベーションオフィサー島谷 庸一

中国・上海の美容・健康産業特区「東方美谷」に新たな研究開発拠点を設立

資生堂は、2020年3月に中国・上海奉賢区の美容・健康産業特区「東方美谷(The Oriental Beauty Valley)」(以下:東方美谷)に、中国イノベーションセンターの新たな拠点を設立することを発表しました。
東方美谷は2015年に設立された、化粧品、食品、医薬品、バイオテクノロジーなど美容・健康産業を中心とした経済特区で、世界の化粧品市場売上ランキング上位の化粧品会社で東方美谷に進出するのは、当社が初めてです。
今回設立する新拠点は、他機関・企業とのコラボレーションにより多様な発想を取り入れる研究スタイルを主軸とし、環境に配慮した化粧品の研究や、中国のお客さまの肌悩みへの化粧品効果を評価する研究に取り組みます。新たな技術革新の拠点設立により、本業を通じたサステナブルな価値の創造を目指していきます。

WWD Beauty Inc Top 10 Largest Beauty Manufacturers 2019より

資生堂中国 社長 CEO 藤原による式辞
資生堂中国 社長 CEO 藤原による式辞

国際化粧品技術者会連盟 ミラノ大会2019で「最優秀賞」を受賞

2019年9月末にイタリアのミラノで開催された、化粧品技術を競う世界最大の研究発表会「国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)ミラノ中間大会2019」で、当社の髙垣知輝研究員が、口頭発表部門において「最優秀賞」を受賞しました。当社の受賞は今回を含め通算27回目(うち最優秀賞は23回)となりました。これは世界の化粧品メーカーの追随を許さない最多の受賞回数であり、当社が化粧品技術をリードしていることを示しています。

髙垣研究員が発表したのは「ホリスティックビューティ/毛細血管の3次元的可視化とその老化における皮膚物性への関与」です。皮膚中の構造を3次元的に観察する技術開発を通じ、これまで未解明であった毛細血管の皮膚物性への関与を明らかにし、皮膚中の毛細血管を健康に保つことが皮膚弾力の維持につながることを見出しました。

これまでの受賞技術は製品開発に応用しています。本知見も新たなスキンケア製品に応用されています。資生堂は、今後も研究開発力を強みとして、革新的な価値を提供し続けていきます。

最優秀賞を受賞した髙垣研究員
最優秀賞を受賞した髙垣研究員