原材料の調達

製品の原材料の生産地では、乱開発による環境破壊や、そこで働く人たちの人権問題などが懸念事項になっています。特にパーム油や紙は生物多様性への影響も重大なため、企業の積極的な対応が求められています。
2020年に資生堂はパーム油と紙について中長期的な目標を開示し、サステナブルな原材料への切替えを進めています。マイカに関しては、自社での調達方針を明確にし、他企業と協働した生産地でのサポート体制の構築などを通じて、生産地域の問題解決に向けた取り組みを強化しています。

パーム油

パーム油はその汎用性の高さから、食品から化粧品までさまざまな製品に使用される一方、開発に伴う熱帯雨林での環境破壊や人権問題も発生しており、サステナブルで責任ある調達が求められています。
資生堂は、2010年にRSPOに加盟し、2018年からはパーム油由来原料の100%に相当するRSPOクレジット購入を開始しています。2020年には「2026年までに100%サステナブルなパーム油の調達を達成」という中長期的な目標を開示しました。資生堂グローバル本社と地域本社の主要部門は緊密に連携し、目標達成に向けた取り組みを推進しています。2021年は、パーム油由来原料の27%(パーム油換算、重量ベース)を物理的な認証パーム油に切替えました。また、資生堂の全工場におけるRSPOサプライチェーン認証の取得を進めています。2020年12月より稼働した大阪茨木工場を含め、認証取得工場は12工場となりました。

他企業との協働による課題解決の取り組み強化のため、資生堂はCGFの日本のパーム油ワーキンググループに参画し、2019年にはJaSPONに加盟しています。また、パーム油調達における人権問題を把握するために、経済人コー円卓会議日本委員会がインドネシアで主催したステークホルダーエンゲージメントプログラム (2019年) に参加し、 NGO・NPOや小規模パームヤシ農家との対話を通じて、パーム油生産に関わる人権リスクや人権侵害、労働問題について理解を深めました。
加えて、「資生堂カメリアファンド」では、環境を守る持続可能なインドネシアの「認証パーム油」生産農家の育成などを行っているWWFジャパンの活動を支援しています。

私たちの進捗状況はwww.rspo.orgからご確認ください

資生堂は、資源の持続可能な利用と海洋プラスチックゴミ問題の解決を目的として、化粧品の容器包装へのシングルユースプラスチックの使用を可能な限り削減するため、化粧品の外箱などの2次包装の紙化を積極的に進めています。一方で、紙の原料である木質チップを生産する植林地では、森林破壊や生物多様性の損失、地域住民の権利侵害が問題となっており、環境や人権に配慮したサステナブルな紙の使用が求められます。

資生堂は、2023年までに製品の容器包装に使用される紙を、100%サステナブルな紙に切替えるという目標を開示しています。2021年は、72%(重量ベース)を認証紙や再生紙などのサステナブルな紙に切替えました。
化粧品の容器包装には、環境配慮に加えて美しいデザインや重量に耐えうる強度などさまざまな特性が求められます。製紙メーカーとの協働により、こうした優れた特性や新しい機能の紙製容器包装のイノベーションにも取り組んでいます。
さらに、販売台やハンディバッグ、リーフレットなどの紙器類の販促物、オフィスにおけるコピー用紙についても、認証紙や再生紙などのサステナブルな紙への切替えを推進しています。

FSC®️N002397

マイカ

マイカは、美しい光反射や耐熱性から、美容関連産業だけではなく幅広い産業で使用されています。資生堂は、2017年にRMI(Responsible Mica Initiative)に加盟しました。RMIは、マイカ生産国の採掘現場から児童労働や強制労働を撲滅し、サステナブルで責任あるマイカ生産の確立を目標に掲げています。2021年、RMIは、NGOやインド政府、参加企業などと連携し、1万927世帯のマイカ扶養家族を対象にコミュニティエンパワーメントプログラムを実施しました。マイカ生産に従事することで生計をたてている家族の62%の収入と生計を改善させ、加えて、安全な飲料水や医療施設へのアクセス改善などの活動支援を行いました。

生物多様性

資生堂の事業活動は地球の恵みと豊かな生物多様性に支えられています。世界経済フォーラムの2021年度「グローバルリスク報告書」で生物多様性の損失が重大なリスクであると報告され、近年、環境破壊によって急速に生物多様性が失われていることを、私たちはバリューチェーン全体を通じた課題として認識しています。特にパーム油や紙など自然由来原材料の持続可能な調達を実施することで、生物多様性の保全に努めています。

資生堂は、その他にも各ブランドを通して生物多様性に関するさまざまな取り組みを行っています。「SHISEIDO」は2021年11月に2030年までに海洋の30%の保護を目指す「We Are One Ocean」の請願書を「国連生物多様性に関する条約締約国会議」に提出し、より美しい海の実現を目指した製品開発や活動を行っています。「BAUM」は、2021年10月、岩手県盛岡市にある「BAUM オークの森」での植樹活動を開始し、森を育て、再び「BAUM」に活用する循環を目指しています。
ミツバチの減少が懸念されている欧州では、フランスのバル・ド・ロワール工場およびジアン工場がミツバチの保護と地域の生態系の保全をサステナビリティ計画に盛り込んでいます。ミツバチの巣箱を設置するとともに、工場敷地内での農薬の使用を禁止しました。設置したミツバチの巣箱からは、1年間で約90kgのハチミツが生産されました。