CO₂排出量の削減

気候変動は、水資源やエネルギーなどさまざまな課題とも深くかかわる社会の中心的な課題として位置づけられています。
IPCC第6次評価報告書では、気候変動の原因が人間の経済活動にあることは疑う余地がないとされ、COP26グラスゴー会議では国際的に1.5℃目標が合意されました。CO₂排出量削減が根本的な気候変動緩和策としてより重要視されるとともに、企業には気候変動による自然環境や市場環境の変化に適応するレジリエンスと透明性のある情報開示が求められています。

資生堂は、長期的な気候関連リスク・機会がもたらす財務影響およびそれに伴う戦略などをTCFDのフレームワークに沿って情報開示していることに加えて、サステナブルな社会の実現に向けて、2026年までにカーボンニュートラルを達成するという目標を掲げています。また、私たちはバリューチェーン全体を通じた科学的な根拠に基づいたCO₂排出量削減目標(Science Based Target)を設定し、エネルギー効率の向上や再生可能エネルギーの利用を促進しています。2021年は資生堂グループ全体では2019年比で18%のCO₂排出量を削減しました。

再生可能エネルギーの利用

化石資源由来エネルギーから太陽光や水力などの再生可能エネルギーへの切替えは、気候変動の緩和に向けて重要な取り組みです。
資生堂では、工場だけでなくオフィスや事業所でも再生可能エネルギーの利用を進めています。国内の工場(大阪、掛川、久喜、那須の各工場)では、CO₂フリーの水力発電由来の再生可能エネルギーを活用しており、那須工場では電力の100%再生可能エネルギー化を実現しています。また、欧州7カ国に加えブラジルのオフィスでは、電力の100%を再生可能エネルギーに切替えています。

再生可能エネルギーの利用だけでなく、世界各国・各地域の工場や研究所の敷地内や建物に太陽光パネルの設置を積極的に推進し、発電も行っています。2021年には日本の掛川、フランスのジアン、中国の北京の3工場で、ソーラーパネルの新規設置や規模を拡大し、現在、資生堂全体で5工場に太陽光発電設備が設置されています。これらの取り組みの結果、2021年時点で7工場が電力の100%再生可能エネルギー化を達成し、資生堂全体での再生可能エネルギー利用量は、総電力の50%となりました。
加えて、私たちは、事業活動で使用する電力を100%再生可能エネルギーで賄うことを目指す国際的なイニシアティブRE100に加盟しました。今後、再生可能エネルギーへの移行をより加速させていきます。

ジアン工場のソーラーパネル(フランス)

エネルギー効率の向上

気候変動の緩和のための取り組みとして、CO₂排出に関わるエネルギーの消費を削減・効率化することが急務です。建物や設備の電気使用などのエネルギー効率の向上は、CO₂排出量削減のための重要な取り組みの1つです。
資生堂の工場では、建物の断熱設計や、省エネルギ―につながる効率的な設備の選定、環境マネジメントシステムISO 14001に基づく環境対策などを実施し、エネルギー効率の向上に努めています。
具体的には、日本の掛川工場では照明のLED化に加え、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の導入により使用電力を「見える化」し、エネルギー消費を最適化することで、電気使用量の削減につなげています。資生堂は、最新の高効率設備の導入や環境負荷の軽減設備への投資やエネルギー効率の改善計画の策定および実行を積極的に推進しています。大阪茨木工場および西日本物流センターでは、環境に配慮したさまざまなサステナブルな設計が施されています。例えば、建物の外壁に軽量で断熱性能に優れたサンドイッチパネルを採用することで、建物内の断熱性能を向上させ、運営に伴って発生するCO₂排出量を約30%削減することが可能となりました。

輸送時のCO₂排出量削減

資生堂は、工場や研究所、事業所などで排出されるCO₂排出量削減だけでなく、バリューチェーン全体を通しての環境負荷軽減に取り組んでいます。
輸送におけるCO₂排出量削減への取り組みとして、地域内および地域間の輸送ルートや積載における輸送効率の改善を図るため、日本国内で他企業との共同配送を行っています。また、日本と米国での海上貨物については、輸送条件の最適化により、コンテナの利用率を向上させ、運用コンテナ数と出荷回数の削減に取り組んでいます。
さらに、輸送用の包装材を製品形状や物量に合わせて適正化することや、輸送保護材の再利用なども実施しています。
2021年に稼働開始した西日本物流センターでは、資生堂初の取り組みとして、工場と隣接させたことで、製品輸送時に排出されるCO₂排出量を年間60t以上削減可能と見込んでいます。

取引先との協働

私たちは、原材料の調達におけるCO₂排出量削減も重要だと理解しています。情報共有や戦略方針の理解促進を図るためのカンファレンスを開催し、参加した取引先に対して、CO₂排出量の削減への協力を依頼しています。
さらに資生堂グループの調達方針を改訂し、これまでに掲げていた調達理念や基本方針に加え、サステナビリティ重視の方針を打ち出し、CO₂排出量削減への取り組みを推進することを明記しています。