CSOメッセージ
私たちを取り巻く市場環境は、長期化する新型コロナウイルス感染症の影響や、気候変動による異常気象の発生などにより、先行きが不透明で将来の予測が困難になっています。また、テクノロジーの進化により、瞬時にさまざまな情報へのアクセスが可能となり、私たちのライフスタイルに影響を与えています。その結果、人々のものの見方や価値観の多様化が進み、従来の画一的な豊かさや幸福の概念も、もはや一律ではなくなってきています。
資生堂は、企業使命である「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、2030年に向けて「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指しています。ブランドや各地域事業、コーポレート機能・組織を連携させ、事業活動を通じてサステナビリティアクションを加速しています。2021年はサステナビリティ関連課題について専門的に審議し決議する「Sustainability Committee」をより充実させ、実行における対応を議論・決定する会議を追加実施するなど、全社での推進体制をより強化しました。2022年からは、資生堂グループ全体のサステナビリティ戦略の策定・推進を担う機能を、チーフストラテジーオフィサーである私の指揮下に置くことで、これまで以上にサステナビリティを経営戦略の中心に据え、本業を通じ、各領域のアクションを実行していきます。
「環境」の領域では、2020年に設定したKPI達成に向けてアクションをさらに進化、加速させました。特に、気候変動問題が事業成長や社会の持続性に与える影響の重大性を踏まえ、TCFDの枠組みに沿って定量的にリスクと機会を分析し、情報開示を行い、再生可能エネルギーへの切替えを積極的に進めています。
「社会」の領域では、2022年より社内外のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)を推進するチーフD&Iオフィサーを新たに設置し、異なる境遇や環境に置かれた人々が、お互いを尊重し、多様な美しさを共感できるD&Iを推進しています。
環境と社会の各領域において資生堂が強みとし、グローバルでも喫緊の課題となっているアクションに取り組むことで、サステナブルな社会の実現へと着実に前進しています。
2021年は、環境領域では、3つのコミットメント「地球環境の負荷軽減」、「サステナブルな製品の開発」、「サステナブルで責任ある調達の推進」において、戦略的なアクションを実行しました。グローバルで各企業が取り組みを強化している「地球環境の負荷軽減」では、電力の100%再生可能エネルギーへの切替えとともに環境に配慮した設備の導入を進めました。さらに、科学的根拠に基づいた目標設定を行い、「SBTイニシアティブ(SBTi)」より認定を取得、また「RE100」に加盟しました。「サステナブルな製品の開発」では、サーキュラーエコノミーの考えに賛同し、容器の再利用を促すために、お客さまへの働きかけとともに「つめかえ・つけかえ」製品の販売を、日本に加えて中国やシンガポール、台湾などの国・地域でも開始しました。さらに、容器のイノベーションとして、リサイクルに適した単一素材容器、CO₂排出量の少ない植物由来の容器などを開発・販売するとともに、空き容器を回収し新たな資源として有効利用するリサイクルプログラムを、日本だけでなく中国でも実施しました。「サステナブルで責任ある調達の推進」においては、サプライヤーアセスメントプログラムの継続とともに、2022年2月には調達方針を改訂し、今まで以上に明確なリスク排除のプロセスや、サステナビリティ重視の方針を打ち出しています。
社会領域においては、「ジェンダー平等」、「美の力によるエンパワーメント」、「人権尊重の推進」の3つのコミットメントを掲げています。「ジェンダー平等」では、女性活躍に課題がある日本において、代表取締役 社長 CEOの魚谷が会長を務める「30% Club Japan」や地方自治体との協働などを通じ、日本企業の女性役員比率向上や女性活躍推進に向けた普及啓発や情報発信、職場環境づくりの貢献に取り組みました。長年、当社が事業を通じて、培ってきた研究や技術を活用し、自分らしく輝くことに貢献する「美の力によるエンパワーメント」では、化粧を通じてがん患者の方々を支援する活動において、社会課題に対して資生堂の経営資源をいかした新たな価値観を提案していることが評価され、メセナアワード優秀賞を受賞するなど、社会からも高い評価を得ました。また、すべての活動の根底となる「人権尊重の推進」では、人権デュー・ディリジェンスを実施し「サプライヤーにおける人権課題」「ハラスメント」などのリスクを特定し、関係各部門と連携して課題解決に取り組みました。
2030年に向けて、資生堂が目指す「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」のために、サステナビリティが企業経営に与える影響はますます重要になっています。グローバルでの急激な変化にも迅速に対応し、本業を通じた社会価値創出・社会課題の解決を行っていきます。
チーフストラテジーオフィサー
梅津 利信
サステナビリティ推進体制
資生堂では、ブランド・地域事業を含む、全社横断でサステナビリティの推進に取り組んでいます。
2020年にサステナビリティ関連業務における迅速な意思決定と全社的実行を確実に遂行するため、サステナビリティ関連課題について専門的に審議し決議する「Sustainability Committee」を設置しました。グループ全体のサステナビリティに関する戦略や方針、TCFD開示や人権対応アクションなど具体的活動計画に関する意思決定や、中長期目標の進捗状況についてモニタリングを行っています。代表取締役 社長 CEOを含む、経営戦略、R&D、サプライネットワーク、広報およびブランドホルダーなど各領域のエグゼクティブオフィサーで構成され、それぞれの専門領域の視点から活発に議論しています。
2021年は、従来の「Sustainability Committee」開催に加えて、サステナビリティ課題を経営へ取り込むべく、関係するエグゼクティブオフィサーや主要組織の実務推進責任者とともに実行における対応を議論・決定する会議を追加実施し、全社での推進を強化しました。また、業務執行における重要案件に関する決裁が必要な場合は「Global Strategy Committee」や取締役会にも諮り、審議しています。
2022年1月には、サステナビリティ活動を強化・拡充し、経営戦略・事業戦略と一体的に運用・推進していくため、組織改正を行いました。具体的には、経営革新本部内に全社のサステナビリティに関する戦略・推進機能を担う「サステナビリティ戦略推進部」を設置し、社内外に向けて当社のダイバーシティ&インクルージョン(D&I)アクションを加速するために「D&I戦略推進部」を新設しました。
さらに、サステナビリティ活動を推進するため、社内の取締役およびエグゼクティブオフィサーの長期インセンティブ型報酬の評価指標を見直し、社会価値に関する指標の評価ウエイトを10%から20%に高めています。本年からは、資生堂のサステナビリティ戦略の中で重要な取り組みとなるCO₂排出量削減を環境指標として新たに設定し、環境への取り組みを促進していきます。
戦略アクションと対応するSDGs
資生堂では、環境・社会それぞれ3つの戦略アクションを定めています。各アクションに対応したSDGs を示しています。
環境関連の中期目標
埋め立て廃棄物ゼロを
前倒しで達成・継続
100%
100%
(パーム油換算重量ベース)
100%
(紙重量ベース)