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2020年10月26日

発行元:(株)資生堂

技術・研究開発

資生堂、世界で初めて皮膚のリンパ管の老化メカニズムを解明

~桑の根エキスにリンパ管老化抑制効果を発見~

資生堂は、独自に開発した皮膚可視化技術(※1)を活用することにより、皮膚のリンパ管の老化メカニズムを世界で初めて解明しました。さらに、東京医科歯科大学との共同研究により、リンパ管の老化抑制効果を検証する試験法を開発し、薬剤の探索を行った結果、桑の根エキスに顕著な老化抑制効果を発見しました。これまでは、加齢によって皮膚のリンパ管の密度が減少することは知られていましたが、そのメカニズムについては分かっていませんでした。
今回の研究成果を元に、リンパ管の機能に着目した皮膚老化の改善に繋がる新たな技術の開発を行っていきます。
なお、本研究の成果の一部は第49回欧州研究皮膚科学会(2020/9/18-9/21)で発表しました。
※1 資生堂、リンパ管を立体的に捉える可視化技術を確立(2020年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002997

研究の背景

リンパ管は、一般的に人体の余分な水分や老廃物を運搬して排出する機能が知られており、特に皮膚のリンパ管は、リンパの流れの開始点として皮膚の老廃物を回収するという特徴があります。
これまでは一般的に皮膚のリンパ管は深いところに存在していると捉えられており、日常生活においてリンパマッサージのような強い刺激でしかアプローチできないと考えられていましたが、当社の独自技術である皮膚のリンパ管の可視化技術により、リンパ管が皮膚の直下まではり巡らされていることが確認され、リンパ管が皮膚表面において重要な役割を担っていることが示唆されました。また、近年は医療分野において、眼のリンパ管といわれるシュレム管が老化に伴うリンパ管内皮細胞(※2)の形質転換(※3)により、機能が不全になり、緑内障を発症するという報告がなされるなど、リンパ管の老化メカニズムが注目されています。
そこで、今回、当社はリンパ管内皮細胞の「形質転換」に着目し、リンパ管の機能改善および皮膚老化の抑制を目的とした、皮膚のリンパ管の老化メカニズムを検討しました。
※2 リンパ管内皮細胞: リンパ管を形成する細胞。血管内皮を形成する細胞と比較し、細胞同士の結合が弱く大きな分子を取り込める特徴がある
※3 形質転換: 異なる種類の細胞に変化すること

リンパ管の老化メカニズムの解明

リンパ管の老化メカニズムを解明するため、皮膚組織内でリンパ管内皮細胞が形質転換する像を免疫組織化学染色で可視化したところ、加齢した皮膚で老化リンパ管が多く観察されました(図2左)。
そこで、20歳代の若年層8名の皮膚のリンパ管と40歳代~60歳代のマチュア層10名の皮膚のリンパ管の老化割合を比較したところ、マチュア層では老化したリンパ管の割合が顕著に増加していることが明らかになりました(Yoshimatsu et al., PLoS One 2020)(図2右)。
また、リンパ管内皮細胞の培養を続けることによって老化させたところ、リンパ管に特徴的な遺伝子(Prox1)の発現が顕著に減少してリンパ管の機能を持たない別の細胞へ変化することが確認されました(図3)。さらに、リンパ管内皮細胞の老化、形質転換の引き金であるトランスフォーミング増殖因子β(TGF-β)によって、リンパ管が漏れやすくなり、その機能が低下することも分かりました(図4)。

図2. 老化した皮膚のリンパ管の様子(左)と老化したリンパ管の年代による比較

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図3. 継代老化による遺伝子発現の減少

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図4. TGF-βによるリンパ管の機能低下

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リンパ管の老化を抑制する薬剤の探索

東京医科歯科大学との共同研究で、リンパ管の老化を抑制する薬剤を探索するためのアッセイ系を構築しました。その結果、桑の根エキスにリンパ管の老化を抑制する高い効果が見出されました(図6)。

図6. 桑の根エキスのリンパ管老化抑制効果

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まとめと今後

これまでは加齢により皮膚のリンパ管の密度が減少することは分かっていましたが、その理由や皮膚内でのメカニズムは明らかではありませんでした。今回の研究により、皮膚のリンパ管を構成する細胞はその性質が変わることで老化が進み、皮膚の老廃物を回収する機能を失うことが分かりました。また、老化によるリンパ管の変化に対しては、桑の根エキスにリンパ管の老化を抑制する効果が見出されました。
今回の研究成果を元に、リンパ管の機能に着目した皮膚老化の改善に繋がる新たな技術の開発を行っていきます。

【参考:関連する主なニュースリリース】
・資生堂、リンパ管の機能低下がしわ形成の原因であることを解明(2008年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000000905/905_a5c92_jp.pdf
・資生堂、世界初・リンパ管の機能低下と「たるみ」の関係を解明(2015年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001834/1834_a4z87_jp.pdf
・シベリア人参がリンパ管に働きかけ「むくみ」を改善することを発見(2016年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000001963

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。