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2025年07月07日

発行元:(株)資生堂

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資生堂、M2マクロファージが太く丈夫なコラーゲンを「育成」することを発見

~セイヨウバラ抽出液がM2マクロファージの分化を促進~

資生堂は、免疫細胞である2種類のマクロファージ (M1/M2) ※1のバランスが、コラーゲン生涯サイクルに与える影響を研究してきました。今回、「産生」「分解」「消化」の一連のコラーゲン生涯サイクルに、「育成」という新しい視点を加えて研究を行った結果、M2マクロファージが線維芽細胞に働きかけてコラーゲン線維を太く丈夫にする機能を持つことを発見しました。さらに、M2マクロファージの分化を促進する薬剤として「セイヨウバラ抽出液」が有効であることを見出しました。紫外線などによる肌の老化でM2マクロファージの働きは低下してしまいますが、セイヨウバラ抽出液がその働きを助けることで、良質なコラーゲンを育て、肌の弾力性を高め、ハリをもたらすことが期待されます。

今後も、コラーゲン研究を深化させ、肌の老化との関連性解明を進めることで、健やかな肌を実現するための革新的なソリューションの提供を目指します。なお、本研究の成果の一部は、「第56回日本結合組織学会(2024年6月)」で発表し、Young Investigator Awardを受賞しました。また、「第17回アジア化粧品技術者会(ASCS)マニラ大会2025(2025年6月)」では、口頭発表部門で1等賞を受賞しました。

図1 本研究の全体像(イメージ)

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研究背景

健やかな肌を実現するために真皮コラーゲンを良好な状態に維持することの重要性は知られているものの、これまでの研究の多くはコラーゲンの主産生細胞である線維芽細胞に焦点を当てたものでした。しかしながら、真皮を構成する他の細胞の影響や線維芽細胞との相互作用は未解明な点が多くありました。
資生堂は、40年以上にわたるコラーゲン研究のなかで、2020年からコラーゲンを産生する線維芽細胞の働きをサポートする免疫細胞「マクロファージ」に注目しています。これまでに、M1/M2マクロファージのバランスが紫外線などの光老化によって崩れることで、線維芽細胞の老化を誘導し※2、コラーゲン生涯サイクルに悪影響を及ぼすこと※3などを解明してきました。
今回、マクロファージがコラーゲンの産生を促すだけでなく、太く丈夫なコラーゲン線維を育成することが可能かどうかを明らかにするため、コラーゲン研究をさらに深化させました。

M2マクロファージの役割とコラーゲン育成のメカニズム

M1マクロファージまたはM2マクロファージの培養上清を線維芽細胞に添加した実験では、M1マクロファージの培養上清を添加した場合と比べM2マクロファージの培養上清を添加した方がコラーゲン線維の育成に関連する、「プロセシング酵素(プロコラーゲン〈コラーゲン前駆体〉の両端を切り揃え、コラーゲン分子に変換する作用)」、「架橋形成酵素(コラーゲン分子を規則正しく集合させ、線維形成を促す作用)」などの遺伝子発現が高いことが明らかになりました(図2)。これは、M2マクロファージが線維芽細胞に働きかけ、種々の酵素群を誘導することで、より太く丈夫なコラーゲン線維の形成を促すことを示しています。

また、コラーゲン線維の質的変化を詳細に検証するため、M1マクロファージまたはM2マクロファージの培養上清を添加した線維芽細胞とコラーゲン溶液を混合した3次元真皮モデルを作成し、形成されるコラーゲン線維の様子を観察しました。その結果、M1マクロファージの培養上清を添加した場合と比べ、M2マクロファージの培養上清を添加した3次元真皮モデルの方が太く密なコラーゲン線維が認められ、明瞭な横紋構造(縞模様)が確認されました(図3)。この状態は、コラーゲン分子が整然と並び、成熟した線維が形成されていることを示しています。

図2 M2マクロファージの培養上清を添加した方がコラーゲン線維の育成に関連する遺伝子群の発現が高い

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図3 3次元真皮モデル中のコラーゲン線維 上段:走査型電子顕微鏡像、下段:透過型電子顕微鏡像

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セイヨウバラ抽出液によるM2マクロファージ分化促進効果

次に、コラーゲン育成に寄与するM2マクロファージの分化を促進する効果的な薬剤を探索したところ、「セイヨウバラ抽出液」がM2マクロファージの分化の促進に有効であることを見出しました。

図4 セイヨウバラ抽出液によるM2マクロファージ分化促進効果

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今後の展望

資生堂は、今後もコラーゲン研究を深化させ、肌老化との関連性の解明を進めるとともに、セイヨウバラ抽出液のような新しい薬剤の探求や他の薬剤との相乗効果の検証を重ね、革新的なソリューションを開発し、生活者の期待を超える価値を創造していくことを目指します。





※1 細菌や老廃物を取り込み処理することを主な機能とする免疫細胞の一種。M1 マクロファージは主に炎症反応を担い、病原体の排除や感染部位での防御、傷ついた組織のコラーゲン分解を助ける。M2マクロファージは抗炎症反応を促進し、炎症により傷ついた組織の修復を助ける。
※2 資生堂、世界で初めてマクロファージのバランスが皮膚老化に関与することを発見(2020年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003038
※3 資生堂、老化によるマクロファージのバランスの崩れがコラーゲン代謝に影響することを発見(2022年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003374

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。