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2025年07月22日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、レチノールに未来のシワを作らせない新機能を発見

~繊細なやわらかさを備える乳頭層がメカニカルストレスを吸収しシワを予防~

資生堂は、独自の「肌内外3D弾性イメージング技術※1」を応用して真皮上部に位置する乳頭層を「繊細なやわらかさを持った状態」に保つことがシワの予防に寄与することを明らかにし、レチノールにその機能があることを発見しました。

シワは、紫外線などの外的な要因だけでなく、表情を作るときに肌内で生まれるメカニカルストレス※2も原因となって作られます。メカニカルストレスが真皮へ伝わるとコラーゲンは分解され、深いシワの発生につながっていきます。当社は、やわらかい乳頭層にはメカニカルストレスを吸収し、真皮に伝わることを防ぐ機能があることを明らかにしました※3。また、やわらかい乳頭層ではⅠ型、Ⅲ型、Ⅴ型のコラーゲンが豊富に保たれ、それぞれが相互に結びついて繊細な線維を形成していることに着目し、これら3種のコラーゲンすべての産生を促す薬剤を探索しました。その結果、レチノールにその効果を確認しました。3種のコラーゲンは加齢で減ってしまいますが、レチノールを適用することで未来のシワ予防につながる可能性が示唆されました。

今回の研究成果は、既に定着したシワ改善に留まらず、未来のシワ予防をも可能とする新たなスキンケアのアプローチに繋がる知見です。今回の知見を、安心・安全かつ高性能なアンチエイジングスキンケアの開発設計に活用していきます。

※1 本多電子株式会社、豊橋技術科学大学との共同研究により開発した皮ふ内からの超音波反射信号を弾性率に変換する特許取得技術
※2 表情が作られるときに皮ふ内で発生するひずみによって細胞が受けるストレス
※3 豊田工業大学との共同研究

図1 レチノールがⅠ型、Ⅲ型、Ⅴ型コラーゲンの産生を促し 真皮乳頭層の繊細なやわらかさを維持

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研究背景

皮ふは、角層、表皮、真皮の多層構造をなしていますが、その構造の詳細は目で見ることができません。
「見えないものを見える化」することを強みとする当社は、見えない肌の内部を可視化することで、肌が内に秘めた機能を明らかにし、生活者への新たな美容の提案に繋げたいと考え研究を進めています。
「肌内外3D弾性イメージング技術」は目に見えない“肌内部の強度※4“を高解像度の超音波技術を用いて可視化する高度な技術です。当社はこれまで本技術により、“肌内部の強度”は層ごとに異なることを見出し研究を重ねてきました。
今回は、乳頭層と網状層で“肌内部の強度”が異なる真皮に着目し、特長的なコラーゲン構造を持つ乳頭層の“強度”にはどのような意味があるのかを明らかにするため、研究を深めることにしました。

※4 皮ふの弾性(圧縮した際の反発力)

図2 シワのない肌の “肌内部の強度”を独自技術で可視化 真皮の乳頭層と網状層では強度が異なる

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やわらかい乳頭層にはメカニカルストレスから真皮を守る機能があった

シワのない肌の真皮乳頭層が絹のような繊細なやわらかさを持つ理由を明らかにするため、シワ形成の原因の一つであるメカニカルストレス(ひずみの大きさ)の解析を行いました。やわらかい乳頭層がある皮ふモデルと、やわらかい乳頭層がない皮ふモデルをコンピューター上で作成し、それぞれを収縮させたときに発生するメカニカルストレスを解析しました。前者では乳頭層がメカニカルストレスを吸収し、真皮にストレスがほとんど及ばないのに対し、後者では大きなストレスが真皮に及ぶことが分かりました。つまりやわらかい乳頭層がメカニカルストレスを吸収することで真皮を守り、シワのない肌状態を維持していると考えられます。

図3 やわらかい乳頭層はメカニカルストレスを吸収

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やわらかい乳頭層を作る3種のコラーゲン

次に、やわらかい乳頭層を維持する方法を検討するために、層に存在する3種のコラーゲンを観察しました。肌では乳頭層のみに存在する希少なV型コラーゲンは、I型、Ⅲ型コラーゲンとともに線維を組み立てる役割を果たし、3種のコラーゲンが互いに影響し合いながら一体化して、細く整った線維となっていることが分かりました(図4)。

図4 Ⅴ型コラーゲンがI型、Ⅲ型コラーゲンの間に入り込み細いコラーゲン線維が形成されている乳頭層(左)と Ⅴ型コラーゲンがないため太いコラーゲン線維が形成されている網状層(右)

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レチノールが乳頭層をやわらかく保ちシワの予防に寄与

3種のコラーゲンで形成されたやわらかい乳頭層がシワ原因の一つであるメカニカルストレスを吸収し、シワを予防していることが分かりましたが、残念ながら、やわらかい乳頭層は加齢で失われていくことが明らかになりました(図5)。そこで3種のコラーゲンの産生を高める成分を探索した結果、レチノールにその効果を確認しました(図6)。今回の知見により、レチノールがシワの予防に寄与する可能性が示唆されました。

図5 やわらかい乳頭層は加齢で失われていく(左) 図6 レチノールのⅠ型・Ⅲ型・Ⅴ型コラーゲン産生促進効果(右)

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※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。