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2024年07月29日

発行元:(株)資生堂

サステナビリティ

資生堂 女性研究者サイエンスグラント 第17回授賞式を開催

~女性活躍推進企業として、次世代の指導的役割を担う女性研究者を多様な視点でサポート~

資生堂は、「資生堂 女性研究者サイエンスグラント」(以下本グラント)の第17回受賞者10名(総応募数107名)を選出し、2024 年7 月19日(金) に資生堂グローバルイノベーションセンターにて授賞式を開催しました。
本グラントは、「次世代の指導的役割を担う女性研究者を支援することは科学技術の発展につながる」という考えのもと、自然科学分野の幅広い研究テーマ(理工科学系・生命科学系全般)を対象に、2007年度の設立以来、毎年最大10名の女性研究者へ研究助成を実施しています。受賞者に贈られる各100万円の助成金は、出産・育児等のライフイベントと研究活動を両立するための環境整備(学会参加の際の託児費用や研究補助員の雇用等)にも柔軟に活用できることが特長として挙げられます。また、本グラントを通じた受賞者同士の交流が、その後の研究活動やキャリア形成のサポートにもなっています。
日本のSTEM※1領域におけるジェンダー・ギャップ解消への課題認識が高まる中、当社は女性活躍推進を積極的に推進する企業として、女性研究者の支援を通じた科学技術の発展による、サステナブルな社会の実現に貢献していきます。
※1 Science, Technology, Engineering and Mathematics

【受賞者代表挨拶 金沢大学 准教授 吉田直子さんのコメント】
今回の受賞を大変光栄に思います。15年前に金沢大学に助教として赴任し、現在は同大学で准教授として偽造医薬品をテーマに研究しています。必要と信じて取り組んできた研究を支援いただけることは自信にもつながりました。研究者として、これまで子育てと教育・研究活動を両立することができた背景には、周囲の理解と協力がありました。今後はその感謝の気持ち、そしてその経験を活かして、当該分野の研究のさらなる発展を目指すと同時に、良き理解者として、次世代の育成に貢献していきたいと考えています。将来を担う若手女性研究者のロールモデルとなれるよう、自己研鑽を続けて参ります。


【株式会社資生堂 執行役 エグゼクティブオフィサー 副社長 
チーフマーケティング&イノベーションオフィサー チーフブランドオフィサー ブランドSHISEIDO岡部義昭のコメント】
本グラントは、厳しい活動環境にある女性研究者の皆さんが研究指導者となり道を切り開く一助となればと思い実施しております。また、授賞式は当年、前年の受賞者に参加いただくため、ここが異分野の研究者との出会い、交流の場ともなります。学際的な研究が広がり、異分野交流が欠かせない昨今、優秀な本グラント受賞者同士が積極的にコミュニケーションを図り、コミュニティが活性化することで、将来女性研究者間のプラットフォームに発展させられたらと考えています。
資生堂の研究所には他の業種に比べて女性研究員、女性管理職が多く在籍しており、私達には多様性が価値創造に奏功する実感があります。本グラントを受賞した先生方のリーダーシップと研究成果の集積によって日本の科学界の多様性にも道が切り開かれることを願ってやみません。本グラントの受賞がその一歩となれば大変嬉しく、資生堂一同、受賞者皆さんの活躍を心から願っています。

【株式会社資生堂 執行役 エグゼクティブオフィサー 
チーフファイナンシャルオフィサー チーフ DE&I オフィサー 廣藤綾子のコメント】
6月に発表された世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数では、日本は146か国中118位と、男女格差が埋まっていない現状が示されました。女性活躍やDE&Iへの関心が高まる中、社会や企業は様々な取り組みを継続することが重要と考えます。
資生堂はDE&Iの戦略アクションの一つである「ジェンダー平等」において、「2030年までに日本国内のあらゆる階層における男女比率を機会均等の象徴である50:50にする」という目標を掲げています。当社のDE&Iは長年の活動の積み重ねによるものであり、今後も絶えず変化する環境下において、多様な個性をもつ人財とともに変化していきたいと考えています。
日本に根強く残る性別役割分担意識や、ライフイベントと研究の両立、環境やカルチャー等、日本の女性研究者を取り巻く研究環境は依然として厳しい面もあると思いますが、皆さんらしいリーダーシップを発揮し、ご自身がロールモデルとなり後進に道を切り開いていただきたいと思います。

授賞式典・研究報告会概要

・名称:第17回資生堂 女性研究者サイエンスグラント授賞式
・日時:2024年7月19日(金)11 :10~18:30
・会場:資生堂グローバルイノベーションセンター3F S/PARKホール(神奈川県横浜市西区高島1-2-11)
・挨拶:
 株式会社資生堂 執行役 エグゼクティブオフィサー 
 チーフファイナンシャルオフィサー チーフ DE&I オフィサー 廣藤綾子
・記念楯贈呈:
 株式会社資生堂 執行役 エグゼクティブオフィサー 副社長 
 チーフマーケティング&イノベーションオフィサー
 チーフブランドオフィサー ブランドSHISEIDO 岡部義昭
・受賞者代表挨拶: 金沢大学 准教授 吉田直子
・審査講評:
 株式会社資生堂 エグゼクティブオフィサー チーフテクノロジーオフィサー 東條洋介
・パネルディスカッション「女性研究者の活躍とネットワーク」
 モデレーター: NPO法人ミラツク 西村勇哉
 パネリスト : 東京工業大学 准教授 松下祥子(第1回受賞者)
         大阪大学 教授 丸山美帆子(第11回受賞者)
         株式会社資生堂 エグゼクティブオフィサー 
         チーフブランド&プロダクトイノベーションオフィサー 池田智子
・研究発表及び討論 第16回等本グラント受賞者11名
・懇親会

女性研究者の現状

日本において研究者全体に占める女性の割合は18.3%で※2、増加傾向にあるものの諸外国に比べ依然として低い水準です。当社が実施した過去の本グラント受賞者を対象とした女性研究者の現状に関するアンケートの中で※3、女性ゆえに困っていることとして、仕事と家庭の両立に関するものが多く挙がりました。加えて「女性研究者が少なく立場が理解されにくい」、「周囲に相談・情報交換できる人がいない」との声もあり、プライベートに限らず研究活動の場においても、活動環境が十分に整備されていない女性研究者もいることが明らかとなっています。
資生堂はこうした状況を踏まえ、指導的立場を目指す意欲があり、科学技術発展への貢献が期待できる女性研究者を支援することを目的に、2007 年に本グラントを設立し、活動を継続してきました。女性研究者がさらに活躍できる環境を整えていくことで、研究領域のダイバーシティを加速させ、日本の科学技術の発展への貢献を目指します。
※2 総務省 2023年(令和5年)科学技術研究調査結果(https://www.stat.go.jp/data/kagaku/kekka/youyaku/pdf/2023youyak.pdf)
※3 調査期間:2022/11/16~30、資生堂 女性研究者サイエンスグラント受賞者のうち回答者数:74名(送付者数:119名)

今後の展望

日本の科学界の発展への貢献と次世代の指導的役割を担う女性研究者の育成を趣旨に設立した本グラントの設立から17年が経過した現在、本グラント受賞者は延べ169名となり、過去の受賞者からは、教授や研究室を主宰する研究リーダーなどが多く輩出されています。資生堂は今後も、本グラント受賞者に専門分野や領域を超えた多様な人と知の交流機会を提供し、厳しい環境にある優秀な女性研究者の活躍をサポートしていきます。また、本グラント受賞者と中高生との交流等を通じて、未来に向けても日本の科学界の発展に貢献していきます。



【第17回受賞者一覧】
助成期間:2024年6月~2025年5月
氏名(敬称略、五十音順)
所属・職位
研究分野・受賞研究テーマ(研究の概要)

稲葉 泰子(いなば やすこ)
奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス領域 助教
【細胞生物学/発生生物学】
粘膜バリア形成に必要なかたちを特定する(病原体の侵入を防ぐ粘膜バリアが形成される際に、細胞のどのような形が必要なのか検証します)

江口 暁子(えぐち あきこ)
三重大学医学部附属病院 バイオバンクセンター 准教授
【細胞生物学/消化器疾患】
非侵襲的肝癌再発の予測バイオマーカーの開発(肝細胞癌を手術で切除した後に、再発する可能性が高い人を予測する血液バイオマーカーを見つけます)

黒木 菜保子(くろき なほこ)
お茶の水女子大学 基幹研究院 助教
【理論化学/溶液化学】
超臨界流体抽出を志向した第一原理分子シミュレーション法の開発(機能性物質を安全に高純度で抽出するための基盤技術の開発)

髙井(山下)千加 (たかい(やました)ちか)
岐阜大学 工学部 / 東北大学 多元物質科学研究所 准教授
【粉体工学】
農産物未利用資源から最高の繊維を-パルプ化効率向上へ-(栗の皮など非可食部を原料として、機能性繊維へ資源化する技術の開発を行っています)

野崎 優香(のざき ゆか) 
東京理科大学 薬学部生命創薬科学科 嘱託助教
【分子代謝学/ミトコンドリア】
急性炎症を緩和するミトコンドリアワクチン開発に向けた基礎的研究(ミトコンドリアをワクチンとして使う未来が来るならば、どんな特徴をもったミトコンドリアがベストなのか?)

藤戸 尚子(ふじと なおこ)
新潟大学脳研究所 基礎神経科学部門 システム脳病態学分野(進化脳病態) 准教授
【進化生物学/ゲノム生物学/集団遺伝学】
進化的視点から捉えるAPOBEC3とがん(ヒトの抗ウイルス因子が細胞のがん化に果たす役割を進化的視点から解析する)

前川 素子(まえかわ もとこ)
国立大学法人東北大学大学院 医学系研究科 器官解剖学分野 准教授
【神経科学/精神医学】
妊娠期の低栄養が子の精神疾患発症リスクに与える影響の解明(妊娠中の低栄養が子の脳発達に与える影響を明らかにします)

森屋 由紀(もりや ゆき)
国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 精神薬理研究部 /
東京都医学総合研究所 精神行動医学研究分野・依存性物質プロジェクト
リサーチフェロー / 協力研究員
【神経精神薬理学/行動薬理学】
オピオイド受容体をターゲットとした新規向精神薬の母体と胎児への影響(「絶対安全とは言えないが、病状安定のメリットが高い治療」から、「薬理効果が高く、身体にやさしい治療」へのパラダイムシフト)

吉田 直子(よしだ なおこ)
金沢大学 医薬保健研究域附属AIホスピタル・マクロシグナルダイナミクス研究開発センター 准教授
【レギュラトリーサイエンス/医療薬学/社会薬学/製剤学】
固体医薬品の直接分析における定性・定量精度向上に関する研究(錠剤に含まれる成分を錠剤のまま測定する方法を開発する)

渡邊 千穂(わたなべ ちほ)
広島大学大学院 統合生命科学研究科 総合科学部 准教授
【ソフトマター/生物物理】
脂質膜再構成系から読み解くタウオパチ―(物質科学の視点から神経疾患病理の読み解きを目指します)

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