1. Home
  2. ニュースリリース
  3. 資生堂、たるみの自己認識と実態の間に8.1歳のギャップが存在することを解明

2023年08月21日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、たるみの自己認識と実態の間に8.1歳のギャップが存在することを解明

~適切なタイミングでたるみケアを始めることの重要性を明らかに~

資生堂は、顔の見た目年齢に大きな影響を与える「たるみ」に関して、自己認識と実際の状態の間にギャップがあることを解明しました。たるみが顕著に表れる頬、目、フェースラインの3部位に関して調査を行った結果、最も大きなギャップが生じた頬において、その差は8.1歳にも達しました。さらに、自身のたるみ状態を正確に把握することは、たるみケアへの意欲を高めることを明らかにしました。この研究成果をもとに、本人の状態に合ったたるみケアと、それを適切なタイミングでサポートするソリューションの開発を進めていきます。
この研究成果は、皮膚科学分野の国際学術誌 「Skin Research and Technology」 に掲載されました※1。
※1 Ezure T. Perception gap of aged facial appearance; self-perception is younger than actual status due to angle of viewing. Skin Res Technol. 2023 Jul;29(7):e13398.)

研究の背景

加齢と共に、顔の肌が垂れ下がる現象、即ち「たるみ」が進行し、見た目の年齢を決める大きな要因となります。実際、たるみは美容に関する悩みの上位に挙げられます※2が、長年たるみ改善は美容医療以外の方法では難しいとされていました。そこで当社は、この研究領域にパイオニアとして取り組み、肌の複数の機能が衰え重力に抗えなくなることで、たるみが引き起こされることを明らかにしてきました。この一連の研究の中で、たるみは比較的早い年代から始まることを報告しています。しかし、多くの方がたるみを気にして、ケアを始めるのは中年代以後で、そこには大きな開きがあります。そこで、本人が自身のたるみの状態を、どの程度認識しているのか、また実際の状態と自己認識の差が生まれる原因は何かを、解き明かすこととしました。
※2 「顔の老化のメカニズム -たるみとシワの仕組みを解明する-」 江連智暢著(日刊工業新聞社)より

たるみの実際と自己認識とのギャップ

従来、たるみに関する自己認識を調査するためには主にWeb等を利用したアンケートによる研究手法が用いられてきましたが、たるみの程度を判定する基準のあいまいさや、回答者本人の意識・関心のばらつきにより、たるみの自己認識を正確に把握することが困難でした。この課題に対し、今回資生堂では、当社が開発し、学術的にも認められているたるみの判定基準写真※3を用いて、自身の写真を見ずに判定基準の写真を見て判定した自分のたるみ度合いをたるみの「自己認識」、別途撮影された自身の写真と判定基準の写真を同時に見て判定した自分のたるみ度合いをたるみの「実際の状態」とし、その「ギャップ」を調べました(図1)。
この方法を使いて、30~40代の日本人女性36名を対象とし、たるみが顕著に起きる頬、目、フェースラインに関して、自己認識と実際の状態の測定を行いました。その結果、たるみの自己認識は、3部位とも本人の自己認識の方が、実際の状態よりも有意に低く、たるみが少ない状態と認識していることが明らかになりました(図2)。また、この差を、たるみ度合いと年齢との関係を表す数式※4にあてはめ年齢に換算すると、頬部では8.1歳の差となりました。この結果から、自身のたるみの状態は正確に把握されていないことがわかりました。
※3 Ezure T et al. Sagging of the cheek is related to skin elasticity, fat mass and mimetic muscle function. Skin Res Technol. 2009 Aug;15(3):299-305.
※4 Ezure T et al. Comparison of sagging at the cheek and lower eyelid between male and female faces. Skin Res Technol. 2011 Nov;17(4):510-5.

●図1:頬部での測定例。対象者は、写真を用いた6段階のたるみ判定基準を見ながら自身のたるみ程度を判定する。マリオネットライン(白い矢印)と肌の膨らみ(黒矢印)の位置を基に、たるみ程度を判定する。自身の写真を見ずに判定した結果をたるみの「自己認識」、自身の写真を見ながら判定した結果をたるみの「実際の状態」とし、例えば前者が「1」、後者が「4」の場合には、たるみの自己認識と実際の状態との「ギャップ」は「3」とする。
●図2:たるみの実際の状態は、3部位ともに自己認識は、実際の状態(実態)よりも低く、自身のたるみを実際よりも少ないと認識していることがわかった。

図1 たるみの自己認識と実際の状態のギャップの計測方法

Download Small Image[172KB]

図2 たるみの自己認識と実際の状態とのギャップ

Download Small Image[100KB]

たるみの認識にギャップが生まれる原因

次に、このたるみ認識のギャップが生まれる原因を検討しました。様々な角度から対象者の顔の写真を撮影して比較したところ、正面から撮影した顔では、たるみを検出することは困難で、斜め方向から撮影した顔では、たるみが明確に認識できることが明らかになりました (図3)。これは、斜めから見た場合には、立体的な顔の形状の把握が容易なためと考えられます。日常生活の中では、鏡で自分の顔を正面から見る機会は多いものの、斜め方向から見ることは少なく、たるみの認識が困難な正面の顔を基に、自身のたるみ程度を認識していると考えられます。

●図3:a) 同一の対象者の顔の写真を、複数の角度から撮影。b) 顔を見る角度により、たるみの見え方は異なる。45°では、深く長いマリオネットライン(矢印)が確認されるが、正面に近づくにつれて、マリオネットラインは目立たなくなり、正面からはマリオネットラインは、ほぼ確認できない。

図3 顔を見る角度によるたるみの見え方の違い

Download Small Image[17.9KB] Download Large Image[250KB]

斜め顔は、たるみに対する意識を変える

さらに、この自分のたるみを正確に認識することが、本人にどのような影響があるのかを検討しました。斜めからの写真を見る前後で、たるみ改善への意欲を段階評価法で比較したところ、写真を見た後ではたるみ改善意欲が高くなりました(図4)。この結果から、たるみの認識のギャップにより、本人が適切と思えるたるみケアが実施できていない可能性が示されました。

企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」の実現を目指し、今回明らかになった、たるみの認識ギャップの存在とその原因をもとに、本人の状態に合ったたるみケアを、適切なタイミングで提供していきます。


●図4:斜めからの写真を見ることで、たるみ改善意欲に変化があった人の割合。たるみ改善意欲の向上が認められる。

図4 自身の斜めからの顔を見ることは、たるみ改善意欲を向上する

Download Small Image[17.7KB]

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。