2022年10月18日
発行元:(株)資生堂
研究・サプライネットワーク
資生堂、「折れ曲がり回転する」汗腺の加齢変化の実態を解明
~たるみ改善の新たな糸口~
資生堂は、国際医療福祉大学 医学部形成外科学 松﨑恭一主任教授との共同研究で、汗を作り出す皮膚の「汗腺」の加齢変化の実態を明らかにしました。複雑な汗腺の構造を、本研究チームが開発した3次元解析技術(デジタル3DスキンTM)で捉えることで、その加齢変化の解明に成功しました。汗腺の状態は、肌の乾燥だけではなく、皮膚の「たるみ」に関係することを、本チームは明らかにしてきました。そのため、今回明らかにした汗腺の加齢変化を基点として、皮膚の乾燥や、見た目の老化に関する研究開発を加速していきます。本研究の一部は、8月6日、7日に行われた第40回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(東京)にて、優秀演題賞を受賞しました。
汗腺の加齢は、肌の老化に繋がる
汗腺は、皮膚表面に汗を送りし、水分とその成分で皮膚を保湿し、また病原菌等から皮膚を保護しています。さらに、汗の蒸散により体表面の温度を低下させることで、体温調節にも寄与しています。加齢により、この発汗機能が低下することで、皮膚の乾燥や、それに伴う様々な肌悩み、熱中症の重篤化に繋がります。加えて、本研究チームは、汗腺の加齢変化が肌の「たるみ」に関係することも明らかにしています※1,2。
しかし、発汗機能が低下する原因や、汗腺の加齢変化の詳細は、十分には明らかにされていませんでした。
※1 資生堂、加齢に伴う真皮の空洞化が顔のたるみに繋がることを発見(2015年)
https://corp.shiseido.com/jp/releimg/2512-j.pdf?rt_pr=tr437
※2 資生堂、加齢に伴う真皮空洞化のメカニズムを解明(2016年)
https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000001958
高齢者の汗腺は折れ曲がり、回転する
本研究では、紫外線による影響を極力排除するため、非露光部である腹部の皮膚組織を用いて解析を行いました。若齢者群と高齢者群の汗腺を3次元的にコンピューター上に再現して、比較解析を行いました(PDF内 図1)。
その結果、汗腺の数(単位面積当たりの汗腺の数)や大きさには統計学的な差は認められず、高齢者でも維持される傾向にあることがわかりました。しかし一方で、高齢者の汗腺では、汗の通り道となる導管部の折れ曲がり度合が増加するという、特徴的な構造変化が認められました。(PDF内 図2)。また、高齢者の汗腺では、皮膚の表面に対する角度も浅くなり、汗腺が皮膚表面に沿う方向に回転していました。さらに、こうした変化と共に汗腺の位置が、皮膚表面側に移行していました。つまり、汗腺は加齢に伴い、折れ曲がり回転することで、皮膚表層側に移行すると考えられます。
汗腺の構造変化の原因に迫る
続いて、汗腺の構造変化の原因の解析に取り組みました。汗腺の最深部は、若齢者、高齢者共に真皮層と皮下脂肪層の境界部に位置していました(PDF内 図3)。また、加齢に伴い、真皮の厚さが減少していました。以上の結果から、加齢による真皮の変化(薄化)により、汗腺の構造が変化し、その位置とサイズが維持されると考えられます。つまり、真皮の薄化を防ぐことで、汗腺の構造変化を抑制し、ひいては肌悩みやたるみの予防につながる可能性が示唆されました。
本研究成果により、汗腺の加齢変化の詳細が明らかとなり、皮膚の乾燥やたるみのケアにおいてアプローチすべき対象がより明確になりました。資生堂は最先端の皮膚解析技術を活用することで、これまで観察が難しかった皮膚内部の状態と皮膚老化との関連を解き明かし、今後もお客さま一人ひとりのなりたい自分を実現するイノベーションを提供します。
※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。