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2022年04月08日

発行元:(株)資生堂

技術・研究開発

資生堂、老化によるマクロファージのバランスの崩れがコラーゲン代謝に影響することを発見

資生堂は、光老化した皮膚において、2種類のマクロファージ※1のバランス(M1/M2バランス)が、コラーゲンの産生や分解、除去など、一連のコラーゲン代謝に関与していることを明らかにしました。コラーゲン代謝への悪影響による皮膚中のコラーゲン量や性質の変化は、肌の弾力性低下などを引き起こす可能性が考えられます。これまで当社では皮膚での“インフラマエイジング※2 (Inflammaging: 炎症老化)”に着目し、皮膚内のマクロファージのバランス(M1/M2バランス)が、光老化によって崩れ、M1マクロファージが増加しM2マクロファージが減少すること、さらに、それによって真皮線維芽細胞の老化が引き起こされることを明らかにしています※3。
本研究は、資生堂独自のR&D理念『DYNAMIC HARMONY』のInside/Outsideというアプローチで研究を進めています。皮膚内で創傷治癒に関わることが知られている免疫細胞の一種であるマクロファージのバランスと、加齢や光による皮膚の老化との関係を明らかにすることで、お客さまの様々な肌悩みに対する新しいアプローチの提案を目指します。本研究の成果の一部は「日本研究皮膚科学会」(2021/12/3-12/5)で発表しました。
※1 細菌や老廃物を取り込み処理することを主な機能とする免疫細胞の一種。M1マクロファージは主に炎症反応を担い、外敵などを排除し、M2マクロファージは抗炎症反応や、炎症により傷ついた組織などの修復を促す。
※2 炎症反応は紫外線や乾燥などの外部刺激に対して生体に備わる必要な防御反応だが、近年、生体内の炎症反応が完全に収束せず、炎症が慢性化することで生体に様々な悪影響を及ぼすことがわかってきた。この慢性炎症により老化が促進される現象をインフラマエイジングと呼ぶ。
※3 資生堂、世界で初めてマクロファージのバランスが皮膚老化に関与することを発見 https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000003038

【研究の背景】
コラーゲンは皮膚真皮層のおよそ70%を占めるとも言われ、皮膚の形態的特性を決める重要な因子のひとつだと考えられています。このコラーゲンを生み出す主要な細胞としては線維芽細胞が知られています。紫外線などの影響で進む光老化では、線維芽細胞によるコラーゲンの産生が減ることやコラーゲンの過剰な分解が起こることが知られており、その結果、肌はハリや弾力を失い、シワやたるみが生じると考えられています。資生堂は以前より線維芽細胞をはじめ様々な要因に着目してこの分野における研究を進めており、皮膚の露光部では、2種類のマクロファージM1とM2の総数は加齢によって変化せず、そのバランス(M1/M2バランス)が変化することを明らかにしています※4。今回、皮膚のインフラマエイジングに関与することが示されたマクロファージバランスの崩れに着目し、新たな切り口での研究を進めました。
※4 Horiba S et al. JID Innov. 2022

M1/M2マクロファージのバランスとコラーゲン産生・分解との関連

M1/M2バランスは、皮膚の傷が治る過程(創傷治癒)におけるコラーゲン代謝のコントロールに重要であることが近年報告されています。そこで、M1、M2マクロファージが線維芽細胞によるコラーゲンの産生と分解に与える影響について検証しました。その結果、皮膚組織において、M1/M2バランスとコラーゲン発現に相関関係が確認されました。また、M1マクロファージの培養上清※5を線維芽細胞に添加した場合に、コラーゲン産生抑制・分解促進が起こることでコラーゲン線維が顕著に減少することが明らかになりました(図1)。加えて、M2マクロファージの培養上清を添加した場合には、M1マクロファージの培養上清を添加した時と比較してコラーゲンの前駆体であるプロコラーゲンを指標にした評価でコラーゲン産生が促進されることが分かりました(図2)。
※5 細胞を培養した際の培養液の上澄み。細胞からの分泌物が含まれる。

図1. コラーゲン繊維形成にマクロファージM1の培養上清が与える影響(青:繊維芽細胞の核、緑:Ⅰ型コラーゲン)

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図2. M2マクロファージによるコラーゲン産生促進効果

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M2マクロファージが分解されたコラーゲンを除去する

次に、マクロファージに特徴的な生体内物質を取り込み消化・除去する機能と、皮膚のコラーゲン代謝との関わりを明らかにする目的で、M1、M2マクロファージおよび線維芽細胞が変性コラーゲン※6を消化する能力について検証しました。その結果、M2マクロファージが顕著に変性コラーゲンを取り込み消化・除去していることが分かりました(図3)。線維芽細胞は、本来の健全な立体構造をもったコラーゲンと結合している方がより多くのコラーゲンを産生することが知られています。M2マクロファージによって変性コラーゲンが適切に除去されることで、よりコラーゲンが産生されやすい環境が作り出されている可能性が示されました。

図3. コラーゲンを各種細胞が取り込み処理する様子

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M1マクロファージへの分化を抑制する薬剤 オトギリ草抽出液

M1マクロファージは、そのもととなる一般的なマクロファージから分化することで機能を発揮することが知られているため、M1マクロファージへの分化を抑制する薬剤を探索しました。その結果、オトギリ草抽出液にM1マクロファージへの分化を抑制する効果があることがわかりました(図4)。M1マクロファージへの分化が抑制されることで、M2マクロファージが増えやすい環境になることが期待されます。

図4. オトギリ草抽出液によるM1マクロファージ分化抑制効果

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今後の展望

皮膚内のM1/M2バランスが崩れることにより、慢性炎症を止めることができずにインフラマエイジングを引き起こしているという発見に続き、本研究ではマクロファージのバランスの崩れが、コラーゲン代謝に影響をあたえることを見出しました。マクロファージバランスを健全に保つことにより、これまでのコラーゲン産生の維持・促進の効果に加えて、分解後のコラーゲン除去を含めた肌本来のコラーゲン代謝を適切に維持できることが期待されます。当社は今後もインフラマエイジングを始めとする、医療分野で注目されているような先端知見とさまざまな皮膚状態との関連について研究を継続し、お客さまの期待を超えたアプローチを生み出していきます。

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。