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2020年10月14日

発行元:(株)資生堂

研究・サプライネットワーク

資生堂、顔全体の毛細血管を3次元で可視化することに成功

健やかで美しい肌の実現に重要な血管の研究は新たなフェーズへ

資生堂は、肌を切らずに顔の毛細血管を可視化する独自技術※1を更に発展させ、顔全体の毛細血管を3次元で精細に可視化することに初めて成功しました。これまで、呼吸などによる体動の影響が大きく、立体的な構造をしている顔では、広範囲の血管を可視化することは非常に困難とされていました。しかし今回、血管観察技術で世界をリードするワシントン大学Wang教授との共同研究により、この新たな技術を実現しました。血管は、身体中へ酸素や栄養を運ぶ役割を担い、全身を巡回しています。当社は、肌全体を根本から健やかにするためには、こうしたホリスティックなアプローチが重要と考えて研究を続けており、既に毛細血管がシミや肌のハリなど、美容と密接な関係があることを様々な視点から明らかにしています※2。この新たな技術は血管研究をさらに深め、部分的なアプローチに留まらない顔全体のケアや、将来的には未来の肌予測への活用など、様々なことに応用できる可能性を秘めています。今後も、内外から健やかで美しい肌の実現を目指し、研究を進めていきます。
なお、本研究の成果の一部は化粧品技術者の世界大会(IFSCC※3 ミュンヘン大会2018) で口頭発表しました。

※1 肌を切らずに毛細血管を可視化することに成功 (2017年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002265
※2 末尾の「参考:関連する主なニュースリリース」を参照。
※3 IFSCC (The International Federation of Societies of Cosmetic Chemists): 世界中の化粧品技術者が集い、より高機能で安全な化粧品技術の開発へ向けて取り組む国際機関。

図1: 顔全体の毛細血管を3次元で可視化することに成功

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光干渉断層血管撮影技術(OCTA)

皮膚の血管は、非常に細かく複雑なネットワーク構造をしており、従来の技術では生きている人の皮膚血管を精緻に観察することは困難でした。そこで当社は2017年に、肌を傷つけることなく皮膚血管の構造を深さ別に高解像度で画像化できる手法(OCTA※4)を応用し、特に観察が難しいとされていた顔の毛細血管を観察する独自技術※1を開発しました。OCTAは、独自に開発したアルゴリズムを用いて血流の動きを特異的に抽出することにより、肌の中の毛細血管構造を可視化しています。この技術を用いて、これまでに毛細血管と美しい肌の様々な関係性を明らかにしてきました。しかし、この血管可視化技術は観察範囲が狭く(最大12x12mm)、顔全体に対応するケアの開発など更に血管の研究を深めていくためには、より広い視野で顔の毛細血管を可視化する必要がありました。

※4 光干渉断層血管撮影技術 (OCTA: Optical Coherence Tomography Angiography):眼底観察等を目的に医療現場でも活用されている技術。

顔全体の毛細血管の可視化

生きている人の顔の血管を広視野に可視化するためには、顔特有の立体的な構造に対応し、かつ、呼吸などにより生じる体動ノイズを適切に排除する必要があり、従来以上に高精度かつ高速な血管を検出するシステムが求められます。今回、ワシントン大学のWang教授との共同研究により、新たな次元の血管検出システムを適用することによって、顔全体の毛細血管を可視化することに成功しました。広い視野で肌の血管を捉えることにより、血管の部位ごとの分布的な特徴を正確に理解できるようになり、外見上はわからない血管の部分的な変調を検出することが可能になりました。
この新たな技術は血管研究の発展に大きく貢献します。従来は部分的にアプローチしていたシミやハリなどのケアを顔全体へのアプローチへ広げることや、血管による肌状態の予測など、様々な活用が期待されます。これからも、最先端の技術を駆使しながら、お客さまの健やかで美しい肌の実現を目指します。

図2: 顔の部位による血管の特徴を可視化

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参考:当社の血管観察技術について

当社は2018年に、資生堂の自社特許技術である皮膚組織の透明化技術を用いて、立体的な皮膚組織をまるごと観察することを可能し、毛細血管ネットワークの特徴を精細に明らかにすることに成功しています※5。この観察技術は、侵襲的に切り出した皮膚組織を用いており、免疫学的な解析も同時に可能であるという特徴があります。今後、今回開発したOCTAを応用した非侵襲解析技術と組み合わせながら、多角的に血管を解析、研究していきます。

※5 参考:シミの肌内部における血管構造異常の3D可視化に成功(2018年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002498

参考:関連する主なニュースリリース

・加齢による皮膚毛細血管の機能低下が皮膚老化に関与していることを解明(2009年)
https://corp.shiseido.com/jp/newsimg/archive/00000000001072/1072_s2e08_jp.pdf
・異常な毛細血管ネットワークがシミ形成に関与することを発見(2017年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002264
・肌の弾力と毛細血管の関係性を解明(2019年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002780
・毛細血管が肌の弾力を生み出すメカニズムを解明(2020年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002911
・シミ部位の血管密度が色素沈着の改善に影響することを発見(2020年) https://corp.shiseido.com/jp/news/detail.html?n=00000000002975

顔の肌血管を広視野で3D化することに成功|資生堂

※このリリースに記載されている内容は発表時点のものであり、最新の情報とは異なる場合がありますのでご留意ください。